今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米5月の消費者マインド大幅に改善」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 昨日の朝方に142円10銭近辺まで売られたドル円は大きく反発。トランプ大統領がEUへの関税賦課を延期したことや、消費者マインドが大幅に好転したことでリスクオンが加速。ドル円は144円47銭まで上昇。
  • ユーロドルは堅調に推移し、終始1.13台での動きに。
  • 株式市場では3指数が大幅に買われ全面高の展開。EUへの関税賦課延長が好感され、ナスダックは2.4%の大幅上昇。
  • 債券は買われ、長期金利は4.44%台に低下。
  • ドルが買われたことで金は大幅に反落。原油も売られる。
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4月耐久財受注 → −6.3%
3月ケース・シラ−住宅価格指数 → 4.07%
3月FHFA住宅価格指数 → −0.1%
5月コンファレンスボード消費者信頼感指数 → 98.0
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ドル/円 143.88 〜 144.47
ユーロ/ドル 1.1324 〜 1.1375
ユーロ/円 163.41 〜 163.94
NYダウ +740.58 → 42,343.65
GOLD −65.40 → 3,300.40ドル
WTI −0.64 → 60.89ドル
米10年国債 −0.067 → 4.444%

本日の注目イベント

  • 日 日銀金融研究所主催のコンファレンスで、永見野日銀副総裁とNY連銀総裁が対談。ウォラー・FRB理事もモデレーターとして出席
  • 日 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁講演(都内)
  • 独 独5月雇用統計
  • 米 5月リッチモンド連銀製造業景況指数
  • 米 FOMC議事録(5月6−7日分)
  • 米 決算発表 → エヌビディア、HP、セールスフォース

本日のコメント

上値の重い展開が続いているドル円は昨日の朝方、日銀本店で開かれた「国際コンファレンス」の挨拶で、植田総裁が「先行き中心的な見通しが実現していけば、2%の物価安定目標の持続的な達成を確かなものにするため、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」と述べたことで、一時142円10銭前後まで売られる場面がありました。ただ、その後は国内債券市場で金利が急低下したことで再びドルが買い戻されました。さらにNYでは、トランプ大統領がEUに対する関税賦課を6月1日から7月9日に延期すると発表したことが好感され、NY株式市場では株価が大幅に上昇したことで「リスクオン」が強まり、ドル円は144円台半ばまで続伸しました。1日で2円以上ものドル高が進み、相変わらず「トランプ関税」に大きく左右される相場展開です。この日発表された「5月の消費者マインド」が大きく改善し、4年ぶりの水準まで上昇したことも「リスクオン」を加速させました。

EUへの関税賦課を延期したトランプ氏はSNSで、「EUから会合日程を早急に決めたいとの要請があったと報告を受けた。これは前向きな動きであり、中国に対する要求と同じく、欧州諸国もようやく米国との貿易を開放することを望んでいる」と述べていました。トランプ氏はフォンデアライエン欧州委員長との電話会談で良い感触を得たようですが、このようにEUを称賛するのは異例のことのようです。一方、トランプ氏はロシアのプーチン大統領に対しては「火遊びをしている」と、厳しく批判しています。「ウラジミール・プーチンが分かっていないのは、私がいなかったらロシアには本当にひどいことがたくさん起きていたということだ。本当にひどいことが起きていたはずだ」とSNSに投稿しています。CNNテレビは、トランプ氏が数日以内にロシアに対して新たな制裁を科す可能性があると報じています。

ラガルドECB総裁は、二転三転するトランプ大統領の政策が混乱を生じさせているものの、今がユーロの国際的な役割を強化する「絶好の機会」でもあると、26日ベルリンでの講演で指摘していました。これまで米国のみに許されていた特権をユーロ圏も享受できる可能性があるとの認識を示し、防衛政策など、欧州レベルでより多くの共同債発行が行われるべきだとの考えを重ねて表明しました。ラガルド氏は「進展すれば投資家にとって証券の選択肢拡大につながる」と述べていました。

この案はかつてEU内で何度も議論されてきたことです。ユーロ圏では、ドイツ・マルクのように各国がそれぞれ自国の通貨を使っていたのを「統一通貨ユーロ」一本にしました。統一の過程では何度も紆余曲折があり、統一後も「ユーロ危機」などに見舞われたことは記憶に新しいところです。その後通貨だけではなく、ユーロ圏共通の「ユーロ債」の発行も議論されましたが、域内ではインフレ率、成長率、GDP、財務状況など各国がばらばらで、その典型的な例としてドイツとギリシャが良く比較されていました。「ユーロ債」の発行は、通貨統合以上に難しい部分があります。ただ、それでもラガルド総裁が述べたよぅに、米国の信頼の低下や「トランプ関税」の横暴を考えると、「再考」の余地はありそうです。そして、今がそのチャンスかもしれません。基軸通貨が「米ドル」と「ユーロ」になればリスクも軽減され、何よりも投資先としての選択肢が増えることは間違いありません。もちろん、今でも「ユーロ債」の発行は簡単ではありませんが、ラガルド総裁の意見に大いに賛成です。

NYでドル高と株高が進んだことで、今日の日経平均株価は大幅に上昇する模様です。輸出企業を中心にまだ、「ドルが上昇すれば売る」姿勢は変わっていないと見ています。従って、東京時間ではドルの上値は重いと予想します。レンジとしては、143円〜144円80銭程度でしょうか。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
5/22 ミラン・米大統領経済諮問委会(CEA)の委員長 「米国は強いドル政策を維持している」、(国際的なドル安協定の憶測について)「われわれが密かに進めているという事実はない。まったく根拠のない話だ」 ドル円は143円台半ばから144台前半まで買われる。
5/21 米財務省声明文 「為替レートは市場で決定されるべきで、ドル円相場は現時点ではファンダメンタルズを反映しているとの共通認識を再確認した」(日米財務相会談を終えて) ドル円は143円台半ばから144円40銭まで上昇
5/20 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「米国債市場のボラティリティにより、すでに高い不確実性がさらに高まる可能性があるが、市場の機能は現時点ではリスクになっていない」、「さらに不確実性が.加わることになれば、より正常なスタンスに戻るまでの時間が長引くと想定する必要が生じるだろう。なぜなら、状況の収束に今以上の時間がかかると考えるからだ」 --------
5/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「米中が関税の大幅引き下げで合意して、5月12日に対立激化が和らいだ後でも、関税は短期的な経済見通しに大きな影響をもたらすように思える」、「今はインフレとの闘い継続に対する国民の信頼を維持すべき時だ。当局はインフレ期待を注視すべきだ」 利下げ観測の後退により、ややドルが買われる。
5/7 パウエル・FRB議長 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 ドル円は143円台から144円まで上昇。
5/7 FOMC声明文 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 --------
4/24 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「6月までに明確かつ説得力のあるデータが得られ、その時点で進むべき正しい方向について判断できれば、委員会が動く可能性がある」 --------
4/24 ウォラー・FRB理事 「特に大規模な関税が再導入された場合、この先レイオフの増加や失業率の上昇が見られ始めても意外ではない。労働市場の悪化が顕著になれば、FRBの最大雇用の責務に基づき措置を講じることが重要だと考えられる」 --------
4/23 ベッセント・財務長官 (日米通商交渉での)「通貨目標は一切ない」、「G7合意を尊重することを日本に期待している」 ドル円は141円台後半から143円57銭まで買われる。
4/17 ラガルド・ECB総裁 「貿易摩擦の激化が輸出を抑え、投資や個人消費に重荷になる」、「世界的な貿易混乱の拡大は、インフレ見通しの不確実性を高めている」 --------
4/16 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「二重の責務の両面から圧力がかかることが想定される状況下では、インフレのさらなる高止まりのリスクと労働市場の減速に伴うリスクとの間でバランスを保つため、金融政策を現状維持とする根拠は強いと考える」、「明確さを得るのが困難な場合には、追加データを待つことが今後の道筋を見極める一助となるだろう」 --------
4/16 パウエル・FRB議長 「長期のインフレ期待をしっかり抑制し続け、物価水準の一時的上昇が継続的インフレ問題にならないよう確実に対処することが、われわれの責務だ」、「物価の安定がなければ、全ての米国民に恩恵をもたらすような長期にわたる力強い労働市場環境の実現は不可能だ」 --------
4/4 クルーズ・米上院議員 「政権が進める関税引き上げは、米経済にとって『巨大なリスク』となっており、来年の中間選挙で共和党が惨敗する恐れがある」、「世界各国からの輸入品に関税を課せば、国内の雇用は崩壊し、米経済に」深刻な打撃を与えることになる」 --------
4/4 ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 「関税により米国の消費者物価が『幾分上昇するかもしれない』」、「エコノミストやFRB当局者、一部議員による懸念は行き過ぎだ」 --------
4/4 ベッセント・米財務長官 「新たな関税は必要な措置だ。リセッションを織り込まなければならない理由は見あたらない」 --------
4/3 ジェファーソン・FRB副議長 「政策金利のさらなる調整を急ぐ必要はない、というのが私の見解だ」 --------
4/3 クック・FRB理事 「現時点ではインフレは上振れ、成長は下振れするリスクがあるというシナリオをより重視している。インフレ率が上昇し成長は鈍化するというシナリオは、金融当局に困難な課題をもたらす可能性がある」 --------
4/2 トランプ・米大統領 「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが、今後われわれが繁栄する番だ」 --------
4/1 フォンデアライエン・欧州委員長 「必ずしも報復したいわけではないが、必要であれば、強力な報復策を用意しており、それを用いる」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和