今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「本日、米EU関税協議再開」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は続伸し、NYでは145円台に乗せる。米長期金利が上昇したこともあり、ドルは堅調に推移。
  • ユーロドルは小幅に下落。ドルが買われ、ユーロは1.1284まで下げる。
  • 株式市場は3指数が揃って下落。前日大幅高だったことから調整の売りも出て、ダウは244ドル安。エヌビディアの決算は予想を上回り、時間外取引で上昇。
  • 債券は売られ、長期金利は4.47%台に上昇。
  • 金は小幅に続落。原油は反発。
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5月リッチモンド連銀製造業景況指数 → −9
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ドル/円 144.33 〜 145.08
ユーロ/ドル 1.1284 〜 1.1324
ユーロ/円 163.34 〜 163.67
NYダウ −244.95 → 42,098.70
GOLD −5.90 → 3,294.50ドル
WTI +0.95 → 61.84ドル
米10年国債 +0.034 → 4.477%

本日の注目イベント

  • 豪 豪1−3月期民間設備投資
  • 米 1−3月GDP(改定値)
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 4月中古住宅販売成約件数
  • 米 グールズビー・シカゴ連銀総裁、質疑応答
  • 米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、座談会に参加
  • 米 ローガン・ダラス連銀総裁、イベント冒頭の挨拶
  • 米 クーグラー・FRB理事、イベント冒頭の挨拶
  • 米 決算発表→ デル、ギャップ
  • 加 カナダ1−3月期経常収支

本日のコメント

昨日の東京市場午前中ではドルの上値は重く、143円台後半まで押し戻される局面もありましたが、午後には再びドルが買われ144円台半ばまで上昇しました。その流れを受け、NYでは一時145円台を回復しています。「トランプ関税」の最終的な落着き処が依然として不透明なことから、ドルが売られる場面もありますが、それでも140円を割り込むほどの勢いはありません。一方で、関税次第ではインフレ再燃の可能性も完全に打ち消すことはできません。そのような背景が相場を決定しているようです。トランプ大統領により、EUに対する関税の発動は7月9日まで延期されましたが、EUのシェフチョビッチ欧州委員(貿易・経済安保障担当)は、29日にラトニック米商務長官およびグリアUSTR代表と協議を行うことを発表しています。

トランプ氏の「ディール」の常套手段として、「まず相手を恫喝し、その後落とし所を探る」と、筆者も何度かこの欄で指摘してきましたが、ウォール街のトレーダーの間でも「TACOトレード」として認知されています。トランプ氏が過激な関税措置を示唆した後市場が下落し、最終的にはその方針を撤回すると見込んだ投資家がその下げに乗じるという取引で、トランプ氏による関税政策の相次ぐ変更に対応しようとするトレーダーの間で使われているそうです。これは「Trump Always Chickens Out」の頭文字をとったものです。昨日の大統領執務室ではこの「TACO取引」に関する質問があり、トランプ氏は「これは交渉というものだ。馬鹿げたほど高い数字をわざと提示し、それから少し下げるというやり方は交渉の一環だ」と答えていました。さらに、この質問に対して「失礼だ。私が50%の関税をかけなかったら、彼らは今日ここに交渉に来ていなかっただろう」と述べています。「不動産王」の異名を与えられたトランプ氏、さすがに「商売人」で良くわかっています。

ロシアはウクライナに対し、第2回目の直接協議を6月2日にトルコで開くことを提案しているとラブロフ外相が発表しています。ロシア代表団は、和平を巡る同国の立場を記した覚書を提示する見込みのようですが、プーチン大統領の出席は伝えられていません。そのプーチン氏について、メルケル元ドイツ首相は日経電子版の動画配信サービスに出演し、「プーチン氏と会話を続けることが重要だ」としながらも、ウクライナでの停戦を拒むプーチン氏を「世界観が違う」と断じていました。「プーチン氏に失望したわけではないが、領土拡大への野望を隠さぬプーチン氏を、対話だけで説得することの難しさを首相在任中から感じていた」と話していました。

引き続き「トランプ関税」の結果次第で相場が上下する展開です。本日はEUと米国の関税協議があり、30日は赤沢経済再生相が訪米しベッセント財務長官との協議も行われます。上でも触れている「トランプ流の交渉術」が基本だとすれば、全てが常識的な水準で収まる可能性もありそうです。今朝のドル円は145円台半ばまで続伸しています。そして再び日足の「雲」に入ってきました。今朝の時点で「雲の上限」は147円35銭近辺になります。

本日のドル円は144円70銭〜146円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
5/22 ミラン・米大統領経済諮問委会(CEA)の委員長 「米国は強いドル政策を維持している」、(国際的なドル安協定の憶測について)「われわれが密かに進めているという事実はない。まったく根拠のない話だ」 ドル円は143円台半ばから144台前半まで買われる。
5/21 米財務省声明文 「為替レートは市場で決定されるべきで、ドル円相場は現時点ではファンダメンタルズを反映しているとの共通認識を再確認した」(日米財務相会談を終えて) ドル円は143円台半ばから144円40銭まで上昇
5/20 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「米国債市場のボラティリティにより、すでに高い不確実性がさらに高まる可能性があるが、市場の機能は現時点ではリスクになっていない」、「さらに不確実性が.加わることになれば、より正常なスタンスに戻るまでの時間が長引くと想定する必要が生じるだろう。なぜなら、状況の収束に今以上の時間がかかると考えるからだ」 --------
5/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「米中が関税の大幅引き下げで合意して、5月12日に対立激化が和らいだ後でも、関税は短期的な経済見通しに大きな影響をもたらすように思える」、「今はインフレとの闘い継続に対する国民の信頼を維持すべき時だ。当局はインフレ期待を注視すべきだ」 利下げ観測の後退により、ややドルが買われる。
5/7 パウエル・FRB議長 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 ドル円は143円台から144円まで上昇。
5/7 FOMC声明文 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 --------
4/24 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「6月までに明確かつ説得力のあるデータが得られ、その時点で進むべき正しい方向について判断できれば、委員会が動く可能性がある」 --------
4/24 ウォラー・FRB理事 「特に大規模な関税が再導入された場合、この先レイオフの増加や失業率の上昇が見られ始めても意外ではない。労働市場の悪化が顕著になれば、FRBの最大雇用の責務に基づき措置を講じることが重要だと考えられる」 --------
4/23 ベッセント・財務長官 (日米通商交渉での)「通貨目標は一切ない」、「G7合意を尊重することを日本に期待している」 ドル円は141円台後半から143円57銭まで買われる。
4/17 ラガルド・ECB総裁 「貿易摩擦の激化が輸出を抑え、投資や個人消費に重荷になる」、「世界的な貿易混乱の拡大は、インフレ見通しの不確実性を高めている」 --------
4/16 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「二重の責務の両面から圧力がかかることが想定される状況下では、インフレのさらなる高止まりのリスクと労働市場の減速に伴うリスクとの間でバランスを保つため、金融政策を現状維持とする根拠は強いと考える」、「明確さを得るのが困難な場合には、追加データを待つことが今後の道筋を見極める一助となるだろう」 --------
4/16 パウエル・FRB議長 「長期のインフレ期待をしっかり抑制し続け、物価水準の一時的上昇が継続的インフレ問題にならないよう確実に対処することが、われわれの責務だ」、「物価の安定がなければ、全ての米国民に恩恵をもたらすような長期にわたる力強い労働市場環境の実現は不可能だ」 --------
4/4 クルーズ・米上院議員 「政権が進める関税引き上げは、米経済にとって『巨大なリスク』となっており、来年の中間選挙で共和党が惨敗する恐れがある」、「世界各国からの輸入品に関税を課せば、国内の雇用は崩壊し、米経済に」深刻な打撃を与えることになる」 --------
4/4 ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 「関税により米国の消費者物価が『幾分上昇するかもしれない』」、「エコノミストやFRB当局者、一部議員による懸念は行き過ぎだ」 --------
4/4 ベッセント・米財務長官 「新たな関税は必要な措置だ。リセッションを織り込まなければならない理由は見あたらない」 --------
4/3 ジェファーソン・FRB副議長 「政策金利のさらなる調整を急ぐ必要はない、というのが私の見解だ」 --------
4/3 クック・FRB理事 「現時点ではインフレは上振れ、成長は下振れするリスクがあるというシナリオをより重視している。インフレ率が上昇し成長は鈍化するというシナリオは、金融当局に困難な課題をもたらす可能性がある」 --------
4/2 トランプ・米大統領 「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが、今後われわれが繁栄する番だ」 --------
4/1 フォンデアライエン・欧州委員長 「必ずしも報復したいわけではないが、必要であれば、強力な報復策を用意しており、それを用いる」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和