「週内にも米中首脳電話会談か?」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- 上値の重かったドル円はNY時間早朝に142円台半ばまで下落。その後、株高、金利高で反発したものの、依然上値の重い展開が続く。
- ユーロドルは続伸し、4月23日以来となる1.1449まで買われる。
- 株式市場は朝方売りから始まったが、今週にもトランプ大統領と習主席の電話会談があるとの報道に3指数はプラス圏で引ける。
- 債券は反落し、長期金利は4.44%台に上昇。
- 金は大きく買われ、原油も地政学的リスクの高まりから大幅高。
5月ISM製造業景況指数 → 48.5
5月S&Pグローバル製造業PMI(改定値) → 52.0
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ドル/円 | 142.55 〜 143.06 |
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ユーロ/ドル | 1.1405 〜 1.1449 |
ユーロ/円 | 162.94 〜 163.42 |
NYダウ | +35.41 → 42,305.48 |
GOLD | +81.80 → 3,397.20ドル |
WTI | +1.73 → 62.52ドル |
米10年国債 | +0.040 → 4.440% |
本日の注目イベント
- 豪 RBA、金融政策会合議事要旨公表
- 豪 豪1−3月期経常収支
- 日 植田日銀総裁、内外情勢調査会全国懇談会で講演
- 中 5月財新製造業PMI
- 欧 ユーロ圏5月消費者物価指数(速報値)
- 欧 ユーロ圏4月失業率
- 米 4月製造業受注
- 米 4月雇用動態調査(JOLTS)求人件数
- 米 5月自動車販売台数
- 米 グールズビー・シカゴ連銀総裁、質疑応答
- 米 ローガン・ダラス連銀総裁、イベントで冒頭挨拶
本日のコメント
昨日の東京時間から日経平均株価の大幅安を背景に上値の重い展開が続いていたドル円。欧州時間昼頃には142円53銭近辺まで売られましたが、その水準を底値にNYでは反発したものの、戻りは限定的でした。米中関税協議が合意に達したものの、その履行に関してトランプ大統領は中国を非難しており、これが再び米中関係を悪化させ、貿易戦争の一時停戦が崩壊しかねないとの懸念も浮上していました。そんな中、ホワイトハウスのレビット報道官が、「両首脳が週内に会談する可能性があることを確認できる」と発表したことで、やや事態改善の期待も高まっています。ただ、具体的な日程には言及せず、実際に会談が行われる保証はないとも、報道官は述べていました。トランプ氏もこれまで一貫して、米中の溝を埋めるには習主席との直接対話が不可欠との立場を表明してきており、電話会談が実現すれば直接対談の可能性も浮上するかもしれません。
一方米国の対日関税に関しては赤沢経済再生相の4度にわたる訪米にもかかわらず、目立った進展は見られません。赤沢氏は「日米双方の立場の認識が深まり、合意に向けた議論が進展した」と石破首相に報告したようですが、こちらも首相自らが出向いてトランプ氏と直接会談する必要がありそうです。首相も報告を受け日程を調整している模様ですが、今月15〜17日にカナダのカナナスキスで開催される「G7首脳会議」と、24〜25日にオランダで開催される「NATO首脳会議」のどちらか、あるいは両方での会談の可能性を模索しているようです。「相互関税」発動までの猶予期間である90日間も、残り1ヵ月ほどに迫ってきました。見切り発車にならないよう、政府も急ぐ必要があります。
ダラス連銀のローガン総裁は銀行関連の会議で、「2大責務の両面に見られるリスクはかなり均衡が取れているようだ。従って、データを待ち、辛抱強くなる上で良い位置にあると言える。リスクバランスの見通しを大きく変えるような重要な情報が得られた場合、当局は対応を準備する」と話していました。また、シカゴ連銀のグールズビー総裁も、「貿易の不確実性が過ぎれば」という条件付きながら、「2大責務に関する状況はなお良好に見えるため、今の不安定な時期が過ぎれば(利下げの)軌道にのることは可能になると考えられる」と述べていました。両氏ともトランプ関税の嵐は、いずれ収まると見ているようです。
ウクライナとロシアは2日、トルコのイスタンブールで停戦に向けた直接協議を行いましたが、双方の歩み寄りは見られませんでした。ウクライナ側が無条件の停戦を要求したのに対し、ロシア側は一部の前線について遺体を収容する目的で2−3日の停戦を要求。またウクライナは、月内に再び会合を開くことを提案しています。今回が2回目の直接交渉でしたが、この状況が継続されれば、停戦への期待も維持されそうです。
本日のドル円は142円〜144円程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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5/22 | ミラン・米大統領経済諮問委会(CEA)の委員長 | 「米国は強いドル政策を維持している」、(国際的なドル安協定の憶測について)「われわれが密かに進めているという事実はない。まったく根拠のない話だ」 | ドル円は143円台半ばから144台前半まで買われる。 |
5/21 | 米財務省声明文 | 「為替レートは市場で決定されるべきで、ドル円相場は現時点ではファンダメンタルズを反映しているとの共通認識を再確認した」(日米財務相会談を終えて) | ドル円は143円台半ばから144円40銭まで上昇 |
5/20 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「米国債市場のボラティリティにより、すでに高い不確実性がさらに高まる可能性があるが、市場の機能は現時点ではリスクになっていない」、「さらに不確実性が.加わることになれば、より正常なスタンスに戻るまでの時間が長引くと想定する必要が生じるだろう。なぜなら、状況の収束に今以上の時間がかかると考えるからだ」 | -------- |
5/20 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「米中が関税の大幅引き下げで合意して、5月12日に対立激化が和らいだ後でも、関税は短期的な経済見通しに大きな影響をもたらすように思える」、「今はインフレとの闘い継続に対する国民の信頼を維持すべき時だ。当局はインフレ期待を注視すべきだ」 | 利下げ観測の後退により、ややドルが買われる。 |
5/7 | パウエル・FRB議長 | 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 | ドル円は143円台から144円まで上昇。 |
5/7 | FOMC声明文 | 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 | -------- |
4/24 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「6月までに明確かつ説得力のあるデータが得られ、その時点で進むべき正しい方向について判断できれば、委員会が動く可能性がある」 | -------- |
4/24 | ウォラー・FRB理事 | 「特に大規模な関税が再導入された場合、この先レイオフの増加や失業率の上昇が見られ始めても意外ではない。労働市場の悪化が顕著になれば、FRBの最大雇用の責務に基づき措置を講じることが重要だと考えられる」 | -------- |
4/23 | ベッセント・財務長官 | (日米通商交渉での)「通貨目標は一切ない」、「G7合意を尊重することを日本に期待している」 | ドル円は141円台後半から143円57銭まで買われる。 |
4/17 | ラガルド・ECB総裁 | 「貿易摩擦の激化が輸出を抑え、投資や個人消費に重荷になる」、「世界的な貿易混乱の拡大は、インフレ見通しの不確実性を高めている」 | -------- |
4/16 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「二重の責務の両面から圧力がかかることが想定される状況下では、インフレのさらなる高止まりのリスクと労働市場の減速に伴うリスクとの間でバランスを保つため、金融政策を現状維持とする根拠は強いと考える」、「明確さを得るのが困難な場合には、追加データを待つことが今後の道筋を見極める一助となるだろう」 | -------- |
4/16 | パウエル・FRB議長 | 「長期のインフレ期待をしっかり抑制し続け、物価水準の一時的上昇が継続的インフレ問題にならないよう確実に対処することが、われわれの責務だ」、「物価の安定がなければ、全ての米国民に恩恵をもたらすような長期にわたる力強い労働市場環境の実現は不可能だ」 | -------- |
4/4 | クルーズ・米上院議員 | 「政権が進める関税引き上げは、米経済にとって『巨大なリスク』となっており、来年の中間選挙で共和党が惨敗する恐れがある」、「世界各国からの輸入品に関税を課せば、国内の雇用は崩壊し、米経済に」深刻な打撃を与えることになる」 | -------- |
4/4 | ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 | 「関税により米国の消費者物価が『幾分上昇するかもしれない』」、「エコノミストやFRB当局者、一部議員による懸念は行き過ぎだ」 | -------- |
4/4 | ベッセント・米財務長官 | 「新たな関税は必要な措置だ。リセッションを織り込まなければならない理由は見あたらない」 | -------- |
4/3 | ジェファーソン・FRB副議長 | 「政策金利のさらなる調整を急ぐ必要はない、というのが私の見解だ」 | -------- |
4/3 | クック・FRB理事 | 「現時点ではインフレは上振れ、成長は下振れするリスクがあるというシナリオをより重視している。インフレ率が上昇し成長は鈍化するというシナリオは、金融当局に困難な課題をもたらす可能性がある」 | -------- |
4/2 | トランプ・米大統領 | 「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが、今後われわれが繁栄する番だ」 | -------- |
4/1 | フォンデアライエン・欧州委員長 | 「必ずしも報復したいわけではないが、必要であれば、強力な報復策を用意しており、それを用いる」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書