今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「4月のJOLTS予想を上回る」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 東京時間早朝には142円37銭前後まで売られたドル円は、再び144円台まで反発。5月の求人件数が市場予想を上回り、今週末の雇用統計にも期待が。ドル円は144円10銭まで買われる。
  • 前日1.14台まで買われたユーロドルは反落。5月のユーロ圏CPIが目標である2%を割り込んだことで利下げ観測が強まる。
  • 好調な経済指標を背景に株式市場では3指数が揃って上昇。ダウは214ドル買われ、ナスダックは156ポイント上昇。
  • 債券は続落。長期金利は4.45%台に上昇。
  • 金は大きく反落。原油は続伸し63ドル台を回復。
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4月製造業受注 → −3.7%
4月雇用動態調査(JOLTS)求人件数 → 7391千件
5月自動車販売台数 → 1565万台
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ドル/円 143.60 〜 144.10
ユーロ/ドル 1.1364 〜 1.1395
ユーロ/円 162.96 〜 163.87
NYダウ +214.16 → 42,579.64
GOLD −47.00 → 3,350.20ドル
WTI +0.89 → 63.41ドル
米10年国債 +0.014 → 4.454%

本日の注目イベント

  • 豪 豪1−3月期GDP
  • 独 独5月サービス業PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏5月総合PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏5月サービス業PMI(改定値)
  • 米 5月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値)
  • 米 5月S&Pグローバル総合PMI(改定値)
  • 米 5月ADP雇用者数
  • 米 5月ISM非製造業景況指数
  • 米 ベージュブック(地区連銀経済報告)
  • 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁、クック・FRB理事と討論会で司会
  • 加 カナダ中銀政策金利発表

本日のコメント

ドルの上値が重かった昨日の朝方、植田総裁の発言でドル円は142円40銭台から143円台前半まで買われる場面がありました。昨日都内の内外情勢調査会で講演を行い、一連の金融状況の説明の中で、「将来の利下げ余地を作るため、経済・物価情勢の改善が見込めない中で、無理に政策金利を引き上げる考えはない」と述べ、「先行きの政策運営を予告したり、利上げを決め打ちにしたりすることはない」と明言しました。また、「引き続き各国の通商政策を巡る不確実性は極めて高い」などと発言しました。発言内容はこれまでと同様に、金融正常化を進めていくとのことでしたが、「無理に政策金利を引き上げる考えはない」という部分が「ハト派的」と受け止められたのか、ドルの上昇につながりました。加えてNYでは「4月のJOLTS」が市場予想を超え、今週末に発表される「5月の雇用統計」でも好調な内容が示されるとの連想につながり、ドル円は144円10銭まで買われました。

結局今回も142円を割り込めずに144円台に乗せました。141−145円の基本的なレンジが維持されています。トランプ関税がもたらす「不確実性」が、為替も株も債券にも明確な方向性を与えず、これが収束するまでは不安定な動きが続くと予想されます。トランプ大統領は3日、鉄鋼・アルミニウム関税を25%から50%に正式に引き上げる大統領令に署名し、米東部時間4日0時1分から発効することになりました。鉄鋼・アルミニウム関税の引き上げにより、米国と貿易交渉を進めている相手国・地域との通商摩擦はさらに激化する可能性も出て来ました。

「4月のJOLTS」は739万1000件と、市場予想の710万件を大きく上回り、予想外の結果でした。経済的な不確実性が高まっているものの、求人は幅広い業種で拡大し、採用も活発化し、労働者への需要が依然として強いことを示していました。これで、今週末の「5月の雇用統計」では非農業部門雇用者数(NFP)が13万人と、前月の17.7万人から鈍化すると予想されてはいますが、上振れする可能性も出てきたとの見方もあります。多くのFOMCメンバーのこれまでの発言では、上記トランプ関税が落ち着けば、「利下げを行うのが適切だ」といった姿勢を示しており、現時点では少なくとも労働市場の現状は、利下げに対する障害にはなっていないようです。アトランタ連銀のボスティック総裁も昨日の講演で、このところ良好な物価データを目にしているものの、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」と述べていました。

正式にトランプ政権から離脱したイ−ロン・マスク氏は、トランプ氏の看板政策である大型減税法案を痛烈に批判しています。マスク氏は、「この大規模な、常識外れで、利益誘導だらけの議会歳出法案は忌まわしい愚策だ」とSNSに投稿し、「この法案に賛成した者は恥を知るべきだ」と述べています。もともとトランプ氏と同様に歯に衣着せぬ性格だけに、政権内では意見のぶつかり合いもあったと思われ、加えて本業のビジネスでは尻に火がついて来たことで政権から離脱しました。ただこれは、トランプ政権入りしたことと直接的には関係なく、マスク氏自身の舌禍によるものです。今度は「外野席」から政権に対してどのような批判を行うのか、注目したいと思います。

本日の「5月のADP雇用者数」は11.4万人と予想されています。4月は6.2万人でした。本日のドル円は143円〜144円80銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
6/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 --------
5/22 ミラン・米大統領経済諮問委会(CEA)の委員長 「米国は強いドル政策を維持している」、(国際的なドル安協定の憶測について)「われわれが密かに進めているという事実はない。まったく根拠のない話だ」 ドル円は143円台半ばから144台前半まで買われる。
5/21 米財務省声明文 「為替レートは市場で決定されるべきで、ドル円相場は現時点ではファンダメンタルズを反映しているとの共通認識を再確認した」(日米財務相会談を終えて) ドル円は143円台半ばから144円40銭まで上昇
5/20 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「米国債市場のボラティリティにより、すでに高い不確実性がさらに高まる可能性があるが、市場の機能は現時点ではリスクになっていない」、「さらに不確実性が.加わることになれば、より正常なスタンスに戻るまでの時間が長引くと想定する必要が生じるだろう。なぜなら、状況の収束に今以上の時間がかかると考えるからだ」 --------
5/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「米中が関税の大幅引き下げで合意して、5月12日に対立激化が和らいだ後でも、関税は短期的な経済見通しに大きな影響をもたらすように思える」、「今はインフレとの闘い継続に対する国民の信頼を維持すべき時だ。当局はインフレ期待を注視すべきだ」 利下げ観測の後退により、ややドルが買われる。
5/7 パウエル・FRB議長 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 ドル円は143円台から144円まで上昇。
5/7 FOMC声明文 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和