「ECB、予想通り0.25%の追加利下げ決定」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は東京の朝方には142円台半ばまで下げたが、この日もNYではドルが反発。米金利が上昇したこともあり、144円に迫る水準までドルが買われた。
- ユーロドルは続伸。ECBが予想通り利下げを決めたものの、利下げサイクルの終わりを示唆したことや、ドイツの製造業受注が上振れしたことを受け、ユーロは1.1495まで上昇。
- 株式市場では3指数が揃って下落。ナスダックはテスラ株の下落もあり、162ポイント下げる。
- 債券は反落。長期金利は4.39%台へ上昇。
- 金は反落し、原油は反発。
4月貿易収支 → −61.1b
新規失業保険申請件数 → 24.7万件
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ドル/円 | 142.78 〜 143.99 |
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ユーロ/ドル | 1.1414 〜 1.1495 |
ユーロ/円 | 163.17 〜 164.67 |
NYダウ | −108.00 → 42,319.74 |
GOLD | −24.10 → 3,375.10ドル |
WTI | +0.52 → 63.37ドル |
米10年国債 | +0.035 → 4.391% |
本日の注目イベント
- 日 4月景気先行指数(CI)(速報値)
- 日 4月景気一致指数(CI)(速報値)
- 独 独4月貿易収支
- 独 独4月鉱工業生産
- 欧 ユーロ圏1−3月期GDP(確定値)
- 欧 ユーロ圏4月小売売上高
- 米 5月雇用統計
- 米 4月消費者信用残高
本日のコメント
「両雄並び立たず」・・・・。
トランプ大統領の大型減税法案を痛烈に批判していたイーロン・マスク氏に対して、トランプ氏は反撃に出ました。マスク氏の連邦政府の契約や補助金を打ち切る考えを示唆したのです。トランプ氏は大型減税法案を強く批判するマスク氏に「実に失望した」と記者団に発言。「法案に盛り込まれたEVに対する税制優遇削減が不満なのだ」と述べました。これに対してマスク氏は、「何という恩知らずだ」とSNSに投稿。トランプ氏の発言中にリアルタイムで反論するという異例の展開になってきました。その上でマスク氏は、「私がいなければトランプは選挙に敗れていた」と主張。両氏の溝がさらに広がっていることが明らかになりました。マスク氏が巨額の資金をトランプ氏に献金し政権入りを果たした時から、このような事態になる可能性は想定できたことです。個性が強く、自己中心的で奔放な発言を繰り返す二人が相容れる可能性は低いと思っていました。まさに「両雄並び立たず」というところです。同法案には、7500ドル(約107万円)のEV税額控除は、当初の予定より7年早く、今年末までの大幅な縮小・廃止が盛り込まれています。アナリストによると、テスラの年間利益には約12億ドル(約1722億円)の打撃になると試算されています。テスラの株価はこの非難の応酬に、昨日は一時17%も急落(ブルームバーグ)する場面がありました。マスク氏はさらにエスカレートし、国際宇宙ステーション(ISS)への貨物や人員を輸送してきたスペースXの宇宙船ドラゴンを退役させると「X」で述べています。マスク氏はその理由を「President’s statement about cancellation of my government contracts」(私の政府との契約を取り消す大統領の声明だ)と投稿しています。
ECBは昨日の理事会で、政策金利である中銀預金金利を0.25%引き下げ、2%にすることを決めました。これで、今回の利下げサイクルでは8回目の利下げになります。市場はすでに利下げを織り込んでいました。前日発表された「5月の消費者物価指数」(CPI)が1.9%と、ECB目標の2%を下回ったことで、「利下げは必至」と予想されていました。ラガルド総裁は会見で、「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」と述べ、利下げの打ち止めを示唆していました。ラガルド氏はさらに、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」と述べ、トランプ氏の強硬な関税政策に立ち向かう姿勢も見せていました。また、ラガルド氏自身の任期満了前の辞任については、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」と明言していました。ユーロドルはこの一連の発表を受け、1.1495まで買われ、4月中旬以来の高値を記録しています。
トランプ氏は前日のロシアのプーチン大統領との電話会談に続き、中国の習近平主席と電話会談を行いました。トランプ氏は中国との貿易関係が過去にやや軌道を外れたことを認めつつ、「中国および貿易合意については非常に良い状況だ、特にレアアース磁石やその他の一部の争点に関して、整理することができた」と話しています。中国はトランプ関税が提唱されたことを契機に、世界でも70%以上を生産すると言われている「レアアース」の輸出を厳しく制限しており、これら「レアアース」は自動車生産には欠かせません。その影響を受け日本のスズキ自動車では先月下旬から一部車種の生産を停止しており、今後も規制が続けば、EVやハイブリッド車の生産を手掛けるトヨタなど日米の自動車メーカーにも大きな影響が出ると見られています。
5回目の日米関税交渉のためワシントンを訪れた赤沢経済再生相は5日(米東部時間)午前空港で、「5回目の日米閣僚会議は、誰といつ会うのか現在調整中だ。一連の関税措置の見直しを、強く求め続けていく」と述べていました。 赤沢氏の言うように、今回の交渉相手はベッセント財務長官になるのかどうかまだ決まっていない模様です。今回は事前に石破・トランプ電話会談が行われていることもあり、合意に向け一歩も二歩も前進があるのではないかと予想していましたが、雲行きは怪しくなってきました。
本日の「雇用統計」では、非農業部門雇用者数(NFP)の市場予想は「12.6万人」と見込まれていますが、ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)は「9.5万人」と予想しており、分かれています。
本日のドル円は142円〜144円80銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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6/5 | ラガルド・ECB総裁 | 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 | ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。 |
6/3 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 | -------- |
5/22 | ミラン・米大統領経済諮問委会(CEA)の委員長 | 「米国は強いドル政策を維持している」、(国際的なドル安協定の憶測について)「われわれが密かに進めているという事実はない。まったく根拠のない話だ」 | ドル円は143円台半ばから144台前半まで買われる。 |
5/21 | 米財務省声明文 | 「為替レートは市場で決定されるべきで、ドル円相場は現時点ではファンダメンタルズを反映しているとの共通認識を再確認した」(日米財務相会談を終えて) | ドル円は143円台半ばから144円40銭まで上昇 |
5/20 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「米国債市場のボラティリティにより、すでに高い不確実性がさらに高まる可能性があるが、市場の機能は現時点ではリスクになっていない」、「さらに不確実性が.加わることになれば、より正常なスタンスに戻るまでの時間が長引くと想定する必要が生じるだろう。なぜなら、状況の収束に今以上の時間がかかると考えるからだ」 | -------- |
5/20 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「米中が関税の大幅引き下げで合意して、5月12日に対立激化が和らいだ後でも、関税は短期的な経済見通しに大きな影響をもたらすように思える」、「今はインフレとの闘い継続に対する国民の信頼を維持すべき時だ。当局はインフレ期待を注視すべきだ」 | 利下げ観測の後退により、ややドルが買われる。 |
5/7 | パウエル・FRB議長 | 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 | ドル円は143円台から144円まで上昇。 |
5/7 | FOMC声明文 | 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書