今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米5月のNFPは13.9万人」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は5月の雇用統計を受け145円台に乗せる。144円前半での取引も、NFPが13.9万人だったことで7月の利下げ観測が後退しドルを押し上げる。
  • ユーロドルは小幅に売られ1.1372まで下落。
  • 株式市場では雇用統計の結果を好感し3指数が揃って大幅上昇。S&P500は61ポイント買われ、6000の大台を回復。
  • 債券は大きく売られ、長期金利は4.5%台まで上昇。
  • 金は続落し、原油は買われ64ドル台に。
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5月失業率 → 4.2%
5月非農業部門雇用者数 → 13.9万人
5月平均時給 (前月比) → 0.4%
5月平均時給 (前年比) → 3.9%
5月労働参加率 → 62.4%
4月消費者信用残高 → 17.873b
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ドル/円 144.11 〜 145.07
ユーロ/ドル 1.1372 〜 1.1431
ユーロ/円 164.35 〜 165.28
NYダウ +443.13 → 42,762.87
GOLD −28.50 → 3,346.60ドル
WTI +1.21 → 64.58ドル
米10年国債 +0.115 → 4.506%

本日の注目イベント

  • 日 1−3月期GDP(改定値)
  • 日 4月国際収支・経常収支
  • 日 5月景気ウオッチャー調査
  • 中 中国5月貿易収支
  • 中 中国5月消費者物価指数
  • 中 中国5月生産者物価指数
  • 米 5月NY連銀インフレ期待

本日のコメント

「5の雇用統計」は事前に心配したほどではなかったようです。4日に発表された「5月のADP雇用者数」が予想外に減少していたことで、「ひょっとしたら」との懸念もありましたが、やはり同指数と本番の「雇用統計」には強い相関関係は見られませんでした。5月の非農業部門雇用者数(NFP)は「13.9万人」と、市場予想の「13万人」よりもわずかに増えていました。上述のように、ADPの結果からのバイアスもあったのか、発表後はドルが買われ、約1週間ぶりに145円台までドル高が進みました。結局、142−145円のレンジ相場が続いていることになります。ただ、今回の結果からするとドルはやや買われ過ぎではないかと個人的には感じています。それは、過去2か月の雇用者数が大きく下方修正されていたからです。4月分は「17.7万人」から「14.7万人」に、さらに3月分も「18.5万人」から「12万人」に下方修正され、合計では「9.5万人」も減少していたことになり、かなりの数字です。実はこのところ、失業保険申請件数も徐々に増加傾向を見せています。米労働市場に静かな変化が出ているのかしれません、今後もこの点は注意深く見ていく必要があります。

今回の指標を受け、7月の利下げ観測はやや後退していますが、9月の会合では依然として利下げが見込まれています。利下げに関してトランプ大統領は再びパウエル議長に圧力をかけています。トランプ氏は6日、パウエル議長を揶揄する呼称を使って、「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」と書き込んでいました。トランプ氏は5月にホワイトハウスでパウエル氏に合った際にも利下げを要求していました。昨日の経済紙も触れていましたが、パウエル議長の任期は2026年6月までです。次期議長の有力候補にはケビン・ウォーシュ元FRB理事の名前も挙がっていますが、利下げをしないパウエル氏にいらだち、早期に次期議長を指名する可能性もあります。トランプ氏はウォーシュ氏を「非常に評価されている人物だ」と話していました。

6日ワシントンで5回目の関税交渉を終えた赤沢経済再生相は「合意に向けた議論がさらに進展した」と述べながらも「一致点は見いだせていない」とも話していました。毎週のようにワシントンに飛び、交渉終えてすぐトンボ帰りを繰り返している赤沢氏、ややお疲れのご様子・・・・。恐らく交渉は難航を極めているのでしょう。本当に「進展」しているのであれば、口から出て来る言葉も、もう少し異なっているのでないかと思います。今回の訪米ではベッセント財務長官と約45分、ラトニック商務長官とは110分協議を行ったと伝えられていますが、「合意が遅くなればなるほど日本にとっては不利になる」と言われています。「相互関税」上乗せ部分の猶予期限は7月9日で、ちょうどあと1か月です。残された時間は多くありません。一方米中の2回目の閣僚協議は今日ロンドンで行われます。トランプ氏と習近平主席が電話会談を5日行って以来最初の交渉となります。トランプ氏は電話会談後に「レアアース規制の問題はなくなるだろう」と話しており、中国がレアアースの輸出規制をどの程度緩和するのかが注目されます。また、中国にとっては半導体規制緩和が進むことを期待している模様です。

NYで一時145円台に乗せたドル円は、今朝は144円台半ばで推移しており、いつもの様な展開です。依然として145円台よりも上の水準ではドル売り意欲が強いものと思われます。おおむね142−145円のレンジでもみ合っているこの水準をブレイクするのは、日米関税交渉で合意か、あるいはFRBによる利下げ実施ということになるかもしれません。

本日のドル円は143円70銭〜145円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
6/6 トランプ・米大統領 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 --------
6/5 ラガルド・ECB総裁 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。
6/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 --------
5/22 ミラン・米大統領経済諮問委会(CEA)の委員長 「米国は強いドル政策を維持している」、(国際的なドル安協定の憶測について)「われわれが密かに進めているという事実はない。まったく根拠のない話だ」 ドル円は143円台半ばから144台前半まで買われる。
5/21 米財務省声明文 「為替レートは市場で決定されるべきで、ドル円相場は現時点ではファンダメンタルズを反映しているとの共通認識を再確認した」(日米財務相会談を終えて) ドル円は143円台半ばから144円40銭まで上昇
5/20 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「米国債市場のボラティリティにより、すでに高い不確実性がさらに高まる可能性があるが、市場の機能は現時点ではリスクになっていない」、「さらに不確実性が.加わることになれば、より正常なスタンスに戻るまでの時間が長引くと想定する必要が生じるだろう。なぜなら、状況の収束に今以上の時間がかかると考えるからだ」 --------
5/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「米中が関税の大幅引き下げで合意して、5月12日に対立激化が和らいだ後でも、関税は短期的な経済見通しに大きな影響をもたらすように思える」、「今はインフレとの闘い継続に対する国民の信頼を維持すべき時だ。当局はインフレ期待を注視すべきだ」 利下げ観測の後退により、ややドルが買われる。
5/7 パウエル・FRB議長 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 ドル円は143円台から144円まで上昇。
5/7 FOMC声明文 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和