「米中通商協議本日も継続」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は依然として上値が重く、欧州時間には144円を割りこむ。NYでは、米中通商協議の行方を見極めたいとする雰囲気から小動き。終始144円台で推移。
- ユーロドルは1.14を挟みもみ合い。
- 株式市場はまちまちの動きとなりダウはほぼ横ばい。ハイテク株が買われ、ナスダックは61ポイント上昇。
- 債券は反発し、長期金利は4.47%台に低下。
- 金は反発し、原油は3日続伸。
5月NY連銀インフレ期待 → 3.20%
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ドル/円 | 144.35 〜 144.77 |
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ユーロ/ドル | 1.1387 〜 1.1431 |
ユーロ/円 | 164.81 〜 165.19 |
NYダウ | −1.11 → 42,761.76 |
GOLD | +8.30 → 3,354.90ドル |
WTI | +0.71 → 65.29ドル |
米10年国債 | −0.032 → 4.474% |
本日の注目イベント
- 豪 豪6月ウエストパック消費者信頼感指数
- 豪 豪5月NAB企業景況感指数
- 英 英5月失業率
- 英 英ILO失業率(2−4月)
- 英 米中通商協議2日目(ロンドン)
本日のコメント
9日午後にロンドンで始まった米中の通商協議は、最終的な合意には至らず、本日も続けられることになりました。協議には米国側からベッセント財務長官とラトニック商務長官、グリアUSTR代表が出席し、中国側は何立峰副首相が代表団を率いていました。協議は、中国からのレアアース輸出規制緩和の確約が得られれば、米国としても半導体などの輸出規制解除を検討する用意があることを示唆していましたが、現時点ではどのようになったのかは判明していません。ベッセント氏は会合後「良い話し合いだった」と述べ、ラトニック氏も「実りある協議だった」と話していました。トランプ大統領もホワイトハウスで「中国とは順調にやっている。簡単な相手ではないが、良い報告しか届いていない」と述べています。また、ハセット国家経済会議(NEC)委員長は、「ロンドンでの協議では握手の後に、米国の輸出規制が緩和され、中国は多くのレアアースを供給する見通しだ」と、CNBCの番組で話していました。(ブルームバーグ)
今回の協議には米国側から主要3閣僚が揃って出席しており、力の入れようが伝ってきます。そのことを踏まえてか、今朝の経済紙は「関税交渉、『日本後回し』懸念」といった見出しで、日米交渉の遅れを報じています。経済紙は、「日米両政府が進める関税交渉で日本が米国に後回しにされる懸念が出ている。トランプ政権が中国との協議を優先しているからだ。日本が対中国の観点から打ち出した協力案を通じても交渉は前進しておらず、日米の一致点はいまだに見通せない」と論じています。米国は、「国益」を考えたら当然のことだろうと思います。米国にとって日本は「超友好国」であり、しかも交渉相手としては組みやすく、中国は手ごわい相手国です。先ずは、中国に対して全力投球を行い、その後日本とは余力を持って対峙するといった米国側の優先順位もあろうかと思います。
赤沢経済再生相は今週末には6回目の協議のため再度ワシントンに向かいます。その後15−17日にカナダで開催される「G7首脳会議」に出席するためカナダを訪れる石破首相と合流し、トランプ氏と直接交渉を行う可能性もありそうです。赤沢氏は、「G7」で日米首脳が会談する機会があることを念頭に「できる限り積み上げをした上で、一致点が見通せていなくても、どういう話を両首脳でしてもらうか考えていかなければならない」と述べていました。この発言で、米国と5回の協議を行ったものの、いまだ進展はしていないことが窺えます。首相も昨日の国会では、「米国の措置は自動車や鉄鋼など、日本の産業に大きな影響を及ぼしかねない。何が何でもサプライチェーンを守り抜く」と答弁していました。猶予期限は7月9日で、残り時間も限られてきました。
トランプ氏の移民取り締まりに対する抗議デモが、カリフォルニア州、ロサンゼルスで拡大し、一部が暴徒化したことに対してトランプ氏は鎮圧のため州兵を同地に派遣しました。これに対して同州のニューサム知事は違法だとして連邦政府を提訴しました。事態はさらに悪化し、今度はホワイトハウスのトム・ホーマン国境政策責任者は、ニューサム知事とバスLA市長に逮捕の可能性があると述べています。ニューサム氏もこれに対して、「脅しをやめて行動に移せばいい。私を逮捕するというならやってみるがいい」と応じています。トランプ氏も「私がトムだったらそうする。素晴らしいことだと思う。私はギャビン・ニューサムが好きだし、彼は良い人間だと思うが、極めて無能だというのは誰も知っていることだ」と、火に油を注ぐような発言を行っています。ニューサム・カリフォルニア州知事は、民主党の次期大統領選での有力候補ですが、ここでも「米国の分断」は明らかです。
ドル円は日米通商協議が進展していないこともあり、動きがとれない状況です。本日も米中協議の行方を見守るしかありません。本日のドル円は143円50銭〜145円50銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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6/6 | トランプ・米大統領 | 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 | -------- |
6/5 | ラガルド・ECB総裁 | 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 | ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。 |
6/3 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 | -------- |
5/22 | ミラン・米大統領経済諮問委会(CEA)の委員長 | 「米国は強いドル政策を維持している」、(国際的なドル安協定の憶測について)「われわれが密かに進めているという事実はない。まったく根拠のない話だ」 | ドル円は143円台半ばから144台前半まで買われる。 |
5/21 | 米財務省声明文 | 「為替レートは市場で決定されるべきで、ドル円相場は現時点ではファンダメンタルズを反映しているとの共通認識を再確認した」(日米財務相会談を終えて) | ドル円は143円台半ばから144円40銭まで上昇 |
5/20 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「米国債市場のボラティリティにより、すでに高い不確実性がさらに高まる可能性があるが、市場の機能は現時点ではリスクになっていない」、「さらに不確実性が.加わることになれば、より正常なスタンスに戻るまでの時間が長引くと想定する必要が生じるだろう。なぜなら、状況の収束に今以上の時間がかかると考えるからだ」 | -------- |
5/20 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「米中が関税の大幅引き下げで合意して、5月12日に対立激化が和らいだ後でも、関税は短期的な経済見通しに大きな影響をもたらすように思える」、「今はインフレとの闘い継続に対する国民の信頼を維持すべき時だ。当局はインフレ期待を注視すべきだ」 | 利下げ観測の後退により、ややドルが買われる。 |
5/7 | パウエル・FRB議長 | 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 | ドル円は143円台から144円まで上昇。 |
5/7 | FOMC声明文 | 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書