「米中協議は3日目に突入」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- 東京時間では依然として上値の重いドル円は144円台半ばまで売られたが、NYでは再び買われ145円台に乗せる。米中通商協議が好転しているとの観測が支えに。
- ユーロドルは堅調に推移し、1.14台前半から半ばで推移。ユーロは対円でも上昇し、昨年11月以来となる165円63銭を記録。
- 米中通商協議の進展観測を好感し、株式市場では3指数が揃って上昇。前日に続きハイテク株が買われる。
- 債券は小動きの中やや上昇。長期金利は4.47%台に低下。
- 金と原油は売られる。
ドル/円 | 144.44 〜 145.03 |
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ユーロ/ドル | 1.1416 〜 1.1447 |
ユーロ/円 | 165.16 〜 165.63 |
NYダウ | +105.11 → 42,866.87 |
GOLD | −11.50 → 3,343.40ドル |
WTI | −0.31 → 64.98ドル |
米10年国債 | −0.004 → 4.470% |
本日の注目イベント
- 米 5月消費者物価指数
- 米 5月財政収支
本日のコメント
ドル円は昨日の東京時間午前中、植田日銀総裁の発言で144円台半ばから一時は145円29銭前後まで買われる場面がありました。総裁は参院財政金融委員会で、「基調的な物価上昇率はまだ2%に少し距離がある」と発言。「2%になるよう実質金利をマイナスで推移させて緩和的な金融環境を維持している」と説明していました。その上で、「どんどん2%に近づいていくとか、2%の周りで動くようになる見通しの確度が高まっていけば、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく方針だ」と、これまでの「定型文」を繰り返していましたが、市場は前半の部分に反応し、「政策金利引き上げまでには距離がある」との印象からドルが買われたものです。
ドル円は前日のNY市場での高値を抜きはしましたが、やはり上値は重く、午後には再び144円台半ばまで押し戻されています。ただ、その後のNYでは再度145円台に乗せました。2日目の協議が行われている米中通商協議に関して、ラトニック商務長官が「協議は非常にうまくいっている」と発言したことが好感されてドルが買われ、NY株式市場でも株価を押し上げました。ただ協議がどの程度進展しているのかはわかっていません。2日目の協議はロンドン時間10時40分過ぎに始まり、両国は主要なハイテク製品や工業製品の輸出で合意を目指し、貿易戦争の激化を回避したい意向ですが最終的な合意には至っておらず、本日も協議が続けられる予定です。本日の協議にはグリアUSTR代表とラトニック商務長官が出席し、ベッセント財務長官は予定されている議会証言のためワシントンに戻るとされています。ラトニック氏はこれに先立ち、「われわれはこの交渉を終わらせるつもりで、それが目標だ。あらゆる貿易問題について協議を進めており、交渉は実に順調に進んでいる」(The talks were going really ,really well) と話していました。
トランプ大統領の移民政策に反対するデモを鎮圧するために派遣された海兵隊700人がロサンゼルスに到着しました。ロサンゼルス市警の本部長は、地元当局との事前調整を欠いたままの軍部隊の展開は、治安維持に重大な支障をきたす恐れがあると警告しています。トランプ氏に指示された海兵隊700人は、先に派遣されている州兵およそ2100人と合流する予定ですが、海兵隊の派遣は事前にロサンゼルス市警には通知がなされておらず、「トランプ氏による越権行為で、違法だ」とニューサム州知事は話しています。「連邦政府が知事の要請なしに州兵を動員するのは、1965年以来で、ジョンソン大統領(当時)がアラバマ州の公民権デモ参加者を守るために投入したのが最後だ」と、ブルームバーグは報じています。
日本の金利、とりわけ30年、40年といった「超長期金利」が上昇傾向を強めています。「長期金利」も現在1.5%前後で推移しており、上昇傾向です。日銀による国債の買い入れ額の段階的縮小が需給関係を崩し、いわば「買い手不在」の状況が金利を押し上げています。日銀は「異次元緩和」からの政策変更を決め、月間の購入予定額を昨年7月の5.7兆円程度から毎四半期に4000億円程度ずつ減らし、来年1−3月には2.9兆円程度とする計画です。来週16−17日の決定会合では、現行計画の中間評価と来年4月以降の買い入れ方針を議論する予定で、市場は新計画における減額ペースに注目しています。
米中通商協議は、さすがに今日あたりで決着すると予想しています。米国側だけではなく、中国側からも「進展」を評価する声が聞かれます。両国が合意に達することを織り込んでNY株式市場は堅調に推移しており、恐怖指数である「VIX指数」は足元では16.95まで低下してきました。ドルの上値は依然として重いのも事実ですが、円を取り巻く環境はやや円売りに傾いているように感じます。ブルームバーグが調査した日銀による追加利上げの可能性は、大きく後退しています。これについては、また後日触れてみたいと思います。本日のドル円は144円〜145円80銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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6/6 | トランプ・米大統領 | 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 | -------- |
6/5 | ラガルド・ECB総裁 | 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 | ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。 |
6/3 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 | -------- |
5/22 | ミラン・米大統領経済諮問委会(CEA)の委員長 | 「米国は強いドル政策を維持している」、(国際的なドル安協定の憶測について)「われわれが密かに進めているという事実はない。まったく根拠のない話だ」 | ドル円は143円台半ばから144台前半まで買われる。 |
5/21 | 米財務省声明文 | 「為替レートは市場で決定されるべきで、ドル円相場は現時点ではファンダメンタルズを反映しているとの共通認識を再確認した」(日米財務相会談を終えて) | ドル円は143円台半ばから144円40銭まで上昇 |
5/20 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「米国債市場のボラティリティにより、すでに高い不確実性がさらに高まる可能性があるが、市場の機能は現時点ではリスクになっていない」、「さらに不確実性が.加わることになれば、より正常なスタンスに戻るまでの時間が長引くと想定する必要が生じるだろう。なぜなら、状況の収束に今以上の時間がかかると考えるからだ」 | -------- |
5/20 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「米中が関税の大幅引き下げで合意して、5月12日に対立激化が和らいだ後でも、関税は短期的な経済見通しに大きな影響をもたらすように思える」、「今はインフレとの闘い継続に対する国民の信頼を維持すべき時だ。当局はインフレ期待を注視すべきだ」 | 利下げ観測の後退により、ややドルが買われる。 |
5/7 | パウエル・FRB議長 | 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 | ドル円は143円台から144円まで上昇。 |
5/7 | FOMC声明文 | 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書