今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米5月のコアCPI予想を下回る」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は米中協議の合意を好感し、NYの朝方には145円47銭まで買われたが、CPI発表から相場は一変。コア指数が予想を下回ったことで米金利が低下。ドル円は144円33銭まで売られた。
  • ユーロドルは依然として堅調で、一時は1.1499まで買われる。ユーロは対円でも166円42銭前後まで上昇。
  • 株式市場では3指数が揃って小幅に反落。ハイテク株も売られ、ナスダックは99ポイント下落。
  • 債券は買われ、長期金利は4.42%台に低下。
  • 金はほぼ横ばい。原油は米中通商協議の合意を背景に3ドルを超える大幅高。
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5月消費者物価指数 → 0.1%
5月財政収支 → −316.0b
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ドル/円 144.33 〜 145.47
ユーロ/ドル 1.1426 〜 1.1499
ユーロ/円 165.60 〜 166.42
NYダウ −1.10 → 42,865.77
GOLD +0.30 → 3,343.70ドル
WTI +3.17 → 68.15
米10年国債 −0.050 → 4.420%

本日の注目イベント

  • 英 英4月鉱工業生産
  • 英 英4月貿易収支
  • 米 5月生産者物価指数
  • 米 新規失業保険申請件数

本日のコメント

3日目に突入する気配だった米中通商協議はあっけなく合意に達し、双方は進展したと話していましたが、結局はジュネーブで合意した内容の履行を確認しただけではないかとの印象です。これで一応、中国側はレアアースの輸出規制を緩和し、米国は半導体などの輸出規制を解除するのではないかと見られています。トランプ大統領はSNSで「中国との合意は成立した。あとは習近平国家主席と私の最終承認を残すのみだ」と投稿し、「われわれは合計で55%の関税を得る。一方、中国は10%だ」と述べていました。

ドル円は東京時間から欧州時間にかけては堅調に推移し、NY時間早朝には145円47銭まで買われました。上記米中協議の合意がリスク選好を促し、円が売られた格好でした。ただその後、21時30分に発表された「5月の消費者物価指数(CPI)」が相場を一変させました。総合CPIでは前年同月比が「2.4%」と予想通りの結果でしたが、コア指数では前月比が「0.1%」、前年同月比では「2.8%」と、いずれも市場予想を下回り、コア指数はこれで、4か月連続で市場予想を下回ったことになります。米金利が低下し、市場の利下げ観測が再び高まったことでドル円は144円33銭まで売られました。このところの短期的な動き見る限り、ドル円はどちらかと言えば上に行きたがっているとの印象を持っていましたが、今回も結局145円台定着には失敗しています。依然として142―145円前後のレンジ相場が続いているのでしょうか。因みに、日足の一目均衡表では雲の上限(先行スパン2)は145円60銭近辺にあり、それほど遠い距離ではありません。

ロンドンから一足早く帰国したベッセント財務長官が11日の議会証言に臨み、インフレ率の低下はトランプ大統領の政策によるものだと、トランプ氏の成果を強調する証言を行っていました。ベッセント氏は公聴会で、「4年間にわたる物価高が米国の生活水準を押し下げてきたが、政権の政策によりインフレは著しく改善しつつある」と発言しています。また、トランプ氏が「解放の日」と呼んで4月2日に発表した関税について、90日間の猶予期間終了後に発効するのかとの議員からの質問に対して、「誠意を持って交渉している貿易相手国に対しては、発動時期をさらに延長する可能性が極めて高い」と答え、「そうでない国に対しては延期をしない」とする考えを述べています。「誠意を持って交渉している貿易相手国」がどこなのかについては述べていませんが、その中には少なくとも、日本とEUは含まれると個人的には考えます。すでに5回も協議を行い、今週末にも6回目の協議のため訪米することになっている赤沢経済再生相ですが、状況次第では協議がカナダで行われる「G7」でのトップ会談に流れる可能性もあります。再び猶予期間を延ばす可能性に言及したベッセント発言は、日本にとってはポジティブな材料と受け取れますが、それは裏を返せば、日本との協議は続けているが溝は全く埋まっていないことなのかもしれません。市場がこの「猶予期間延長発言」をどのように捉えるかにも注目したいと思います。上でも述べましたが、結局日米通商協議の行方が依然として不透明なことが、ドルの上値を抑えている大きな要因であることは明白です。

本日のドル円は143円50銭〜145円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
6/11 ベッセント・財務長官 「誠意を持って交渉している貿易相手国に対しては、発動時期をさらに延長する可能性が極めて高い、そうでない国に対しては延期をしない」・・議会証言で。 --------
6/6 トランプ・米大統領 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 --------
6/5 ラガルド・ECB総裁 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。
6/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 --------
5/22 ミラン・米大統領経済諮問委会(CEA)の委員長 「米国は強いドル政策を維持している」、(国際的なドル安協定の憶測について)「われわれが密かに進めているという事実はない。まったく根拠のない話だ」 ドル円は143円台半ばから144台前半まで買われる。
5/21 米財務省声明文 「為替レートは市場で決定されるべきで、ドル円相場は現時点ではファンダメンタルズを反映しているとの共通認識を再確認した」(日米財務相会談を終えて) ドル円は143円台半ばから144円40銭まで上昇
5/20 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「米国債市場のボラティリティにより、すでに高い不確実性がさらに高まる可能性があるが、市場の機能は現時点ではリスクになっていない」、「さらに不確実性が.加わることになれば、より正常なスタンスに戻るまでの時間が長引くと想定する必要が生じるだろう。なぜなら、状況の収束に今以上の時間がかかると考えるからだ」 --------
5/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「米中が関税の大幅引き下げで合意して、5月12日に対立激化が和らいだ後でも、関税は短期的な経済見通しに大きな影響をもたらすように思える」、「今はインフレとの闘い継続に対する国民の信頼を維持すべき時だ。当局はインフレ期待を注視すべきだ」 利下げ観測の後退により、ややドルが買われる。
5/7 パウエル・FRB議長 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 ドル円は143円台から144円まで上昇。
5/7 FOMC声明文 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和