今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「イスラエルのイラン攻撃でWTIは急騰」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 日本時間金曜日の早朝にイスラエルがイランを空爆したとの報道にドル円は急落し、142円78銭近辺まで売られた。ただその後はドルが反発。NYでは有事のドル買いから、ドル円は144円48銭まで上昇。
  • ユーロドルは小幅に反落し、1.15近辺まで下落。
  • 株式市場では3指数が大きく下落。リスク回避の流れから株が売られ、ダウは769ドル安と大幅下落。
  • 債券も売られ、長期金利は4.39%台に上昇。
  • 金は50ドルを超える上昇。イランの石油施設などが攻撃されたことで、供給懸念から原油価格は5ドルに迫る上昇。
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6月ミシガン大学消費者マインド(速報値) → 60.5
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ドル/円 143.86 〜 144.48
ユーロ/ドル 1.1502 〜 1.1569
ユーロ/円 165.85 〜 166.59
NYダウ −769.83 → 42,197.79
GOLD +50.40 → 3,452.80ドル
WTI +4.94 → 72.98
米10年国債 +0.039 → 4.399%

本日の注目イベント

  • 中  中国5月小売売上高
  • 中  中国5月鉱工業生産
  • 中東 OPEC月報
  • 米  6月NY連銀製造業景況指数
  • 加  カナダ5月住宅着工件数
  • 加  G7首脳会議(カナダアルバータ州カナナスキスで17日まで)

本日のコメント

予想されてはいましたが、先週金曜日の早朝、イスラエルがイランの核施設などを空爆したとの報道にドル円は売られ、一時142円78銭前後まで円が急騰しました。「リスク回避の円買い」との発想だったとは思いますが、ドル円はその後徐々に反発し、欧州時間には144円台を回復。NYでは144円48銭までドル高が進みました。今度は「有事のドル買い」ということなのでしょう。また、今回のイスラエルによる攻撃には米国は関与していなかったこともドルが堅調だった理由かもしれません。NY株式市場では株価が大きく下げ、安全資産の債券も売られ金利が上昇。金利高もドルを支えたようです。金は連日の大幅高で、WTI原油価格は一時14%高まで急騰しました。イランもすぐさま反撃に出ており、このまま両国の攻撃が激化すれば、中東情勢へのさらなる緊迫化につながる恐れがあります。

交戦は15日にも続き、イスラエルでは少なくとも14人が死亡し、約400人が負傷。イラン側でも80人以上が死亡した模様です。「米国は関与していない」と述べていたトランプ大統領は15日のABCニュースとのインタビューでは、「われわれが関与する可能性がある」と話していました。イランの攻撃によって米国の利益が損なわれれば、介入が正当化され得るとの見方もあります。今回のイスラエルの攻撃の意図は、このままではイランの核開発が進み、イスラエルにとっては極めて大きな脅威になることから先制攻撃に出たとの見方が有力です。ネタニヤフ首相は「われわれは国家の存亡をかけた戦いにある」とし、「国民は団結して立ち上がる時だ」と述べています。一方、イランの最高指導者ハメネイ師も「イスラエルは甚大な報復を受ける」と話していました。

先週末、6度目の交渉のためワシントンを訪れた赤沢経済再生相は、ベッセント財務長官と約45分、ラトニック商務長官とは約70分対面で話し合ったようですが、依然として合意には至らず、その道筋が付いたのかどうかという質問にも答えていません。赤沢氏は「非常に突っ込んだやりとりを行い、合意の可能性を探った」と話していましたが、これまでと同様に厳しい交渉が続いていると見られます。カナダで開催される「G7首脳会議」に出席するため昨日羽田を発った石破首相は、今回の会議でトランプ氏と「日米首脳会談」を行うとみられていますが、現時点ではその詳細は分かっていません。米国との6度の協議を誠意を持って行った赤沢氏でしたが、結局らちがあかず、米国の姿勢も変わっていないことがうかがえます。石破・トランプ会談でどのような決着がつくのか、「G7首脳会議」そのものよりも注目です。「G7」についても、今回は開催国がカナダということもあり、共同声明は出さない予定のようです。「G7」首脳のメンバーも大きく代わり、トランプ氏は第一次政権時に何度も出席していますが、それ以外では、フランスのマクロン大統領以外すべて顔が代わっていると思われます。特に、トランプ氏にとっては「天敵」のメルケル女史がいないことで発言力が増す可能性もありそうです。

本日のドル円は143円〜145円30銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
6/11 ベッセント・財務長官 「誠意を持って交渉している貿易相手国に対しては、発動時期をさらに延長する可能性が極めて高い、そうでない国に対しては延期をしない」・・議会証言で。 --------
6/6 トランプ・米大統領 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 --------
6/5 ラガルド・ECB総裁 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。
6/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 --------
5/22 ミラン・米大統領経済諮問委会(CEA)の委員長 「米国は強いドル政策を維持している」、(国際的なドル安協定の憶測について)「われわれが密かに進めているという事実はない。まったく根拠のない話だ」 ドル円は143円台半ばから144台前半まで買われる。
5/21 米財務省声明文 「為替レートは市場で決定されるべきで、ドル円相場は現時点ではファンダメンタルズを反映しているとの共通認識を再確認した」(日米財務相会談を終えて) ドル円は143円台半ばから144円40銭まで上昇
5/20 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「米国債市場のボラティリティにより、すでに高い不確実性がさらに高まる可能性があるが、市場の機能は現時点ではリスクになっていない」、「さらに不確実性が.加わることになれば、より正常なスタンスに戻るまでの時間が長引くと想定する必要が生じるだろう。なぜなら、状況の収束に今以上の時間がかかると考えるからだ」 --------
5/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「米中が関税の大幅引き下げで合意して、5月12日に対立激化が和らいだ後でも、関税は短期的な経済見通しに大きな影響をもたらすように思える」、「今はインフレとの闘い継続に対する国民の信頼を維持すべき時だ。当局はインフレ期待を注視すべきだ」 利下げ観測の後退により、ややドルが買われる。
5/7 パウエル・FRB議長 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 ドル円は143円台から144円まで上昇。
5/7 FOMC声明文 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和