今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「トランプ政権、イランへの軍事行動を検討」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • FOMCでは年内2回の利下げ見通しが維持されたことで、ドル円は売られ144円34銭まで下げる。その後パウエル議長の会見では、利下げは急がないとの見方から再び145円台を回復。
  • ユーロドルは1.15を挟みもみ合い。
  • 株式市場はまちまちの展開で大きな動きはなし。ダウは小幅に下げ、S&P500はほぼ横ばい。
  • 債券も小動きで長期金利はほぼ変わらず。
  • 金は小幅に反発し、原油も小幅に続伸。
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5月住宅着工件数 → 125.6万件
5月建設許可件数 → 139.3万件
新規失業保険申請件数 → 24.5万件
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ドル/円 144.34 〜 145.22
ユーロ/ドル 1.1461 〜 1.1530
ユーロ/円 166.17 〜 166.83
NYダウ −44.14 → 42,171.60
GOLD +1.20 → 3,408.10ドル
WTI +0.30 → 75.14
米10年国債 +0.002 → 4.391%

本日の注目イベント

  • 豪 豪5月雇用統計
  • 英 BOE金融政策発表
  • 英 BOE金融政策委員会(MPC)議事録
  • 米 株式、債券市場休場(ジューンティーンスの祝日)

本日のコメント

イランへの対応を検討しているトランプ大統領は、政権の外交政策では最も重要な判断の一つに直面しています。イランに直接軍事的行動に出るかどうかです。多くのメディアが報じているようにその場合、同国中部のフォルドゥ地区の地下60−90メートルに設置されているウラン濃縮施設を攻撃し、甚大な損害を及ぼすことができる唯一の兵器「バンカーバスター」を使用する可能性があるようです。報道によると同兵器は重量3万ポンド(15トン)もあり、地下60メートルでも爆破できる最新の兵器だそうで、米国のみが保有しています。またこの兵器を運ぶことができるのは米空軍が所有する「B2ステルス戦闘機」だけです。同戦闘機は「マンタ」のような形をしており、「バンカーバスター」を2本格納できる攻撃力を持っています。これ以外にも、米国とは軍事力では圧倒的に劣勢なイランが、どこまで米国の要求に応じるのかが焦点です。トランプ大統領はホワイトハウスで、イランの核施設を攻撃する方針に傾いているのか聞かれ「やるかもしれないし、やらないかもしれない。誰も私が何をするのかわからない」と話していました。一方前日、無条件降伏するようトランプ氏から呼びかけられていたイランの最高指導者ハメネイ師は「イランは降伏するような国ではないと米国民は理解するべきだ」とし、「米国による軍事侵略があれば、いかなるものであろうと間違いなく回復不能な損出を負うことになる」と、一歩も引かない強気の姿勢を見せています。イランでの政治、軍事、思想などで、最高権力を持っているハメネイ師としては、立場上そう簡単に降伏するわけにはいかないのは分かりますが、もし米国が上記最新兵器を使って軍事行動に出ればイランだけではなく、中東情勢が一段と混迷することにもなりそうです。

中東情勢に隠れてやや注目度が薄れていたFOMCでしたが、市場予想通り会合では政策金利の据え置きを全会一致で決めました。これで4会合連続の据え置きとなります。声明文では、「最近の複数の指標は経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率は低いままで、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」としていました。同時に示された「ドットチャート」では、年内に2回の利下げを見込む予想中央値に変化はなかったものの、年内の利下げ回数を「ゼロ」と予想したメンバーが7人と、前回の3月会合から3人増加していました。また、1回だけの利下げを予想するメンバーも3月の1人から2人に増えていました。「トランプ関税」による影響を見込んでの予想かと思います。パウエル議長は会見で、「政策スタンスの調整を検討する前に、経済の見通しについてより多くの情報を持てる状況にある」と、これまでと同様な見解を示し、さらに経済の不確実性が高いことを踏まえ、「誰もこうした金利の道筋に強い確信を持っていない。景気見通しに関する不確実性は低下したが、依然として高い」と話していました。市場が議長の発言から「利下げを急いではいない」と受け止めたことでドルが上昇。再び145円台までドル高が進みました。

本日はNY市場が休場です。基本的には動かないと思いますが、イラン問題がいつさらに緊張を高めるかわかりません。ブルームバーグは、「イランが降伏しなければ米国が攻撃に加わる。行動は18日夜にも、24時間以内に実行される可能性がある」と、関係者の話として伝えています。

本日のドル円は144円〜146円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
6/18 パウエル・FRB議長 「政策スタンスの調整を検討する前に、経済の見通しについてより多くの情報を持てる状況にある」、(経済の不確実性が高いことを踏まえ)、「誰もこうした金利の道筋に強い確信を持っていない。景気見通しに関する不確実性は低下したが、依然として高い」 ドル円は144円台半ばから145円台に。
6/18 FOMCの議事録 「最近の複数の指標は経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率は低いままで、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 --------
6/11 ベッセント・財務長官 「誠意を持って交渉している貿易相手国に対しては、発動時期をさらに延長する可能性が極めて高い、そうでない国に対しては延期をしない」・・議会証言で。 --------
6/6 トランプ・米大統領 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 --------
6/5 ラガルド・ECB総裁 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。
6/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 --------
5/22 ミラン・米大統領経済諮問委会(CEA)の委員長 「米国は強いドル政策を維持している」、(国際的なドル安協定の憶測について)「われわれが密かに進めているという事実はない。まったく根拠のない話だ」 ドル円は143円台半ばから144台前半まで買われる。
5/21 米財務省声明文 「為替レートは市場で決定されるべきで、ドル円相場は現時点ではファンダメンタルズを反映しているとの共通認識を再確認した」(日米財務相会談を終えて) ドル円は143円台半ばから144円40銭まで上昇
5/20 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「米国債市場のボラティリティにより、すでに高い不確実性がさらに高まる可能性があるが、市場の機能は現時点ではリスクになっていない」、「さらに不確実性が.加わることになれば、より正常なスタンスに戻るまでの時間が長引くと想定する必要が生じるだろう。なぜなら、状況の収束に今以上の時間がかかると考えるからだ」 --------
5/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「米中が関税の大幅引き下げで合意して、5月12日に対立激化が和らいだ後でも、関税は短期的な経済見通しに大きな影響をもたらすように思える」、「今はインフレとの闘い継続に対する国民の信頼を維持すべき時だ。当局はインフレ期待を注視すべきだ」 利下げ観測の後退により、ややドルが買われる。
5/7 パウエル・FRB議長 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 ドル円は143円台から144円まで上昇。
5/7 FOMC声明文 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和