今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「トランプ大統領2週間以内に決断」

ひと目で分かる昨晩の動き

欧州市場
  • NYが休場の中、ドル円は堅調に推移し一時145円77銭まで買われる。有事のドル買いが緩やかに進行か。
  • ユーロドルは欧州時間に買いが続き、1.1500近辺まで上昇。
ドル/円 145.25 〜 145.77
ユーロ/ドル 1.1454 〜 1.1500
ユーロ/円 166.53 〜 167.32
NYダウ ------ → 42,171.60
GOLD ------ → 3,408.10ドル
WTI ------ → 75.14
米10年国債 ------ → 4.391%

本日の注目イベント

  • 日 5月消費者物価指数
  • 日 日銀金融政策決定会合議事録(4月30日―5月1日分)
  • 独 独5月生産者物価指数
  • 欧 ユーロ圏6月消費者信頼感指数(速報値)
  • 英 英5月小売売上高
  • 米 6月フィラデルフィア連銀景況指数
  • 米 5月景気先行指標総合指数
  • 加 カナダ4月小売売上高

本日のコメント

イスラエルとイランがお互いに攻撃を繰り返しています。19日には、イスラエルがイランの核関連施設への攻撃をさらに拡大し、イランが発射したミサイルがイスラエル南部の病院に着弾し民間人にも被害が出ています。そんな中、トランプ大統領はイランを攻撃するかどうかを2週間以内に決定を下すと、ホワイトハウスのレビット報道官が会見で述べました。トランプ氏は、「近い将来、イランとの交渉が行われる可能性がかなりあることを踏まえて、今後2週間以内に実行するかどうかを判断する」と語っています。一方欧州では、英国とフランス、ドイツの外相が20日、イランのアラグチ外相とスイスのジュネーブで核問題を巡る協議を行う予定で、米国がイランを直接攻撃する可能性の回避を探っています。

米国がイランへ直接関与するのかどうかが問われていましたが、イランの出方次第という状況になっています。ただ、今後本当に米国が軍事行動に踏み切るのかどうかに関してブルームバーグは、「トランプ氏はこれまでも2週間の期限を設けることが多く、実際に行動に移すこともあれば、そのまま立ち消えになることもあり、『2週間以内』というフレーズは政権1期目から判断保留を示す『常とう句』になっている」と、冷静な分析をしています。筆者もこれまで触れてきたように、米国が軍事行動に出れば、イランの核施設は甚大な損害を被ることは明らかで、加えて民間人への被害拡大も予想されます。イランの最高指導者ハメネイ師は口では強気な言葉を発し続けていますが、イラン国民のことを考えると、ここは米国との核協議を受け入れる可能性が高いと、個人的には考えています。

18日のFOMC会合では4会合連続となる「据え置き」を決めましたが、この時もトランプ氏はSNSで、「遅すぎる。ジェローム・パウエルはわが国に巨額のコストを強いており、FRBはそれに加担している。欧州は10回利下げをしたが、われわれは一度もしていない。2.5ポイント利下げすべきだ」と改めて不満を示していました。要求した利下げ幅も1%から2.5%に拡大させていました。業を煮やしたトランプ氏が任期満了前にパウエル議長を解任する可能性はくすぶっており、仮にそうなれば、株安、債券安、ドル安が一気に進むと以前コメントしました。この件に関してサマーズ元財務長官は、「公平なオブザーバー役として妥当な候補者を選ばなければ、私はかなり驚くだろう」と述べ、「トランプ氏がそのような決定を下すことを、私は他の人よりも強く確信している」とし、「個人的な推測では、市場を無用に動揺させたくないという思いと、上院共和党には依然として健全な意見も一定度存在することを踏まえ、トランプ大統領は尊敬される人物を次期FRB議長に指名するだろう」とブルームバーグTVにコメントを寄せています。現在市場では、ウォラーFRB理事と、ベッセント財務長官を有力候補の名前として挙げています。FRB議長という役職は極めて重要ですが、かつて筆者の米国の知人は「FRB議長は、大統領に次ぐ重要なポストだ」と話していたことを思い出しました。

今朝の時点では、日足の雲の上限(先行スパン2)は145円55銭近辺にあります。昨日欧州では一時この水準を上回りましたが、まだ「雲抜け」とは言えません。本日のドル円は144円30銭〜146円30銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
6/18 パウエル・FRB議長 「政策スタンスの調整を検討する前に、経済の見通しについてより多くの情報を持てる状況にある」、(経済の不確実性が高いことを踏まえ)、「誰もこうした金利の道筋に強い確信を持っていない。景気見通しに関する不確実性は低下したが、依然として高い」 ドル円は144円台半ばから145円台に。
6/18 FOMCの議事録 「最近の複数の指標は経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率は低いままで、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 --------
6/11 ベッセント・財務長官 「誠意を持って交渉している貿易相手国に対しては、発動時期をさらに延長する可能性が極めて高い、そうでない国に対しては延期をしない」・・議会証言で。 --------
6/6 トランプ・米大統領 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 --------
6/5 ラガルド・ECB総裁 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。
6/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 --------
5/22 ミラン・米大統領経済諮問委会(CEA)の委員長 「米国は強いドル政策を維持している」、(国際的なドル安協定の憶測について)「われわれが密かに進めているという事実はない。まったく根拠のない話だ」 ドル円は143円台半ばから144台前半まで買われる。
5/21 米財務省声明文 「為替レートは市場で決定されるべきで、ドル円相場は現時点ではファンダメンタルズを反映しているとの共通認識を再確認した」(日米財務相会談を終えて) ドル円は143円台半ばから144円40銭まで上昇
5/20 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「米国債市場のボラティリティにより、すでに高い不確実性がさらに高まる可能性があるが、市場の機能は現時点ではリスクになっていない」、「さらに不確実性が.加わることになれば、より正常なスタンスに戻るまでの時間が長引くと想定する必要が生じるだろう。なぜなら、状況の収束に今以上の時間がかかると考えるからだ」 --------
5/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「米中が関税の大幅引き下げで合意して、5月12日に対立激化が和らいだ後でも、関税は短期的な経済見通しに大きな影響をもたらすように思える」、「今はインフレとの闘い継続に対する国民の信頼を維持すべき時だ。当局はインフレ期待を注視すべきだ」 利下げ観測の後退により、ややドルが買われる。
5/7 パウエル・FRB議長 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 ドル円は143円台から144円まで上昇。
5/7 FOMC声明文 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和