今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「『ミッドナイト・ハンマー』米、イランの核施設攻撃」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円はNYで続伸。米国がイランへの軍事介入の可能性を高めたことで、「有事のドル買い」との連想から、ドル円は146円22銭まで上昇。
  • ユーロドルはほぼ変わらず。円が大きく売られたため、ユーロ円は168円40銭近辺まで買われる。
  • 株式市場ではまちまちの展開。ダウは小幅高ながら他の指数は小幅安。
  • 債券は小幅に上昇。長期金利は4.37%台に低下。
  • 金は反落し、原油も小幅安。
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6月フィラデルフィア連銀景況指数 → −4.0
5月景気先行指標総合指数 → −0.1%
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ドル/円 145.47 〜 146.22
ユーロ/ドル 1.1496 〜 1.1544
ユーロ/円 167.54 〜 168.40
NYダウ +35.16 → 42,206.82
GOLD −22.40 → 3,385.70ドル
WTI −0.21 → 74.73
米10年国債 −0.016 → 4.375%

本日の注目イベント

  • 中 中国5月消費者物価指数
  • 中 中国5月生産者物価指数
  • 独 独6月製造業PMI(速報値)
  • 独 独6月サービス業PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏6月製造業PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏6月サービス業PMI(速報値)
  • 英 英6月製造業PMI(速報値)
  • 英 英6月サービス業PMI(速報値)
  • 米 6月S&Pグローバル製造業PMI(速報値)
  • 米 6月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値)
  • 米 6月S&Pグローバル総合PMI(速報値)
  • 米 5月中古住宅販売件数
  • 米 グールズビー・シカゴ連銀総裁、討論会に参加
  • 米 NY連銀総裁とクーグラーFRB理事がイベント主催

本日のコメント

米国がイランに対して軍事介入を行うかどうか、「2週間以内に決断する」と述べていたトランプ大統領でしたが、そのわずか2日後にイランの核施設3か所を空爆しました。何がトランプ氏をしてイランへの攻撃を早まらせたのか定かではありませんが、米軍は潜水艦からの巡行ミサイル「トマホーク」による攻撃に加え、この欄でも紹介したように、地下にある核施設を破壊できる「バンカーバスター」を使用しました。一部には9発とありますが、ブルームバーグでは14発を投下したとあります。トランプ氏も、「搭載していた爆弾を全て投下した」と述べていました。今回の作戦は「ミッドナイト・ハンマー」と名付けられ、ミズーリ州のホワイトマン空軍基地からB2爆撃機が出撃し、陽動作戦として一部のB2爆撃機編隊が西方へ飛行し、戦術的な奇襲効果を維持するため「おとり作戦」も行ったようです。トランプ氏は「3つの核施設への攻撃を成功裏に完了した」と述べていましたが、イランの最高指導者の主席顧問は、「濃縮物質はまだ残っている」と話しています。

トランプ氏は「今こそ平和を築くべきだ。そうしなければ今後の攻撃ははるかに大規模なものになる」と、今後イランの出方次第ではさらなる攻撃も辞さない構えです。一方で今回米国がイランに対して直接軍事行動に出たことを「中東に米国を巻き込みたいイスラエルによって、巧みに引きずり込まれた」(日経新聞)と見る向きもあります。事実、この攻撃に関してイスラエルのネタニヤフ首相は称賛しています。一方、中国は「IAEAの監督下にある核施設への攻撃であり、強く非難する」との声明を発表しました。国連のグテーレス事務総長も非難しており、欧州の英、独、仏の三カ国も中東地域の安定を図るよう呼びかけていました。「寝耳に水」の今回の米国の行動でしたが、その後最初に開くアジア・オセアニア市場では「有事のドル買い」が先行し、ドル円は早朝に146円79銭あたりまで買われています。リスク回避が強まることから、東京株式市場では売りが先行すると見られます。日経平均先物はすでに400円ほど下げており、NYダウの先物も132ドルほど下げています。一方で株安が進むと、「ドル売り円買い」で反応する傾向があります。「有事のドル買い」と「リスク回避の円買い」のどちらにより傾くのか、今後のイランの出方に注目です。ただ幸いにも土日を挟んでいたことで、市場は比較的冷静に反応しているように見えます。

本レポートでも何度も触れてきましたが、先週末のNYでドル円は一目均衡表の「雲抜け」を見せており、さらに上記米国のイランへの空爆で上値を伸ばしています。ただ、「MACD」ではまだ微妙な位置にいます。ここでは完全に上抜けが完成したとは言えないことから注意は必要で反落するリスクはありますが、基本的にはレンジを抜けたことでドル円は上昇すると見ています。

本日のドル円は145円〜147円50銭程度予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
6/18 パウエル・FRB議長 「政策スタンスの調整を検討する前に、経済の見通しについてより多くの情報を持てる状況にある」、(経済の不確実性が高いことを踏まえ)、「誰もこうした金利の道筋に強い確信を持っていない。景気見通しに関する不確実性は低下したが、依然として高い」 ドル円は144円台半ばから145円台に。
6/18 FOMCの議事録 「最近の複数の指標は経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率は低いままで、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 --------
6/11 ベッセント・財務長官 「誠意を持って交渉している貿易相手国に対しては、発動時期をさらに延長する可能性が極めて高い、そうでない国に対しては延期をしない」・・議会証言で。 --------
6/6 トランプ・米大統領 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 --------
6/5 ラガルド・ECB総裁 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。
6/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 --------
5/22 ミラン・米大統領経済諮問委会(CEA)の委員長 「米国は強いドル政策を維持している」、(国際的なドル安協定の憶測について)「われわれが密かに進めているという事実はない。まったく根拠のない話だ」 ドル円は143円台半ばから144台前半まで買われる。
5/21 米財務省声明文 「為替レートは市場で決定されるべきで、ドル円相場は現時点ではファンダメンタルズを反映しているとの共通認識を再確認した」(日米財務相会談を終えて) ドル円は143円台半ばから144円40銭まで上昇
5/20 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「米国債市場のボラティリティにより、すでに高い不確実性がさらに高まる可能性があるが、市場の機能は現時点ではリスクになっていない」、「さらに不確実性が.加わることになれば、より正常なスタンスに戻るまでの時間が長引くと想定する必要が生じるだろう。なぜなら、状況の収束に今以上の時間がかかると考えるからだ」 --------
5/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「米中が関税の大幅引き下げで合意して、5月12日に対立激化が和らいだ後でも、関税は短期的な経済見通しに大きな影響をもたらすように思える」、「今はインフレとの闘い継続に対する国民の信頼を維持すべき時だ。当局はインフレ期待を注視すべきだ」 利下げ観測の後退により、ややドルが買われる。
5/7 パウエル・FRB議長 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 ドル円は143円台から144円まで上昇。
5/7 FOMC声明文 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和