今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「トランプ大統領、イスラエルとイランの暫定停戦を発表」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 有事のドル買いが先行し、欧州時間には148円台に乗せたドル円はその後急落。イランがカタールの米軍施設を攻撃したが、事前に通告していたことや、ボウマンFRB理事の利下げ発言が材料となり146円台前半まで下げる。
  • ユーロドルは1.14台半ばまで売られたが反発し、1.15台を回復。
  • 株式市場は中東情勢が不透明の中3指数が揃って上昇。イランによる攻撃が限定的で死傷者も出ていなかったことで安心感から株価が上昇。
  • 債券は買われ、長期金利は4.34%台に低下。
  • 金は反発、昨日のアジア時間に78ドル台まで買われた原油は、イランがカタールの米軍施設攻撃後に急落。
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6月S&Pグローバル製造業PMI(速報値) → 52.0
6月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値) → 53.1
6月S&Pグローバル総合PMI(速報値) → 52.8
5月中古住宅販売件数 → 4.03百万件
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ドル/円 146.02 〜 147.63
ユーロ/ドル 1.1457 〜 1.1581
ユーロ/円 168.73 〜 169.36
NYダウ +374.96 → 42,581.78
GOLD +9.30 → 3,395.00ドル
WTI −5.33 → 68.51
米10年国債 −0.028 → 4.348%

本日の注目イベント

  • 日 石破首相NATO首脳会議出席のためオランダへ出発
  • 中 夏季ダボス会議(中国・天津、26日まで)
  • 独 独6月ifo景況感指数
  • 英 ベイリー・BOE総裁、上院で証言
  • 米 経常収支(1−3月)
  • 米 4月ケース・シラ−住宅価格指数
  • 米 4月FHFA住宅価格指数
  • 米 6月コンファレンスボード消費者信頼感指数
  • 米 6月リッチモンド連銀製造業景況指数
  • 米 パウエル・FRB議長、下院金融委員会で証言
  • 米 メスター・クリーブランド連銀総裁講演
  • 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演
  • 米 コリンズ・ボストン連銀総裁、イベントでスピーチ
  • 加 カナダ5月消費者物価指数

本日のコメント

米国を巻き込んだ中東情勢が目まぐるしく動いています。最新の情報では、今朝7時頃、「トランプ大統領、イスラエルとイランの暫定的停戦を発表」との一報がブルームバーグから流れました。イランが報復的攻撃を行いましたが、それを契機に状況が一変しています。

イランは、カタールの米軍基地に向けてミサイル6発を発射しましたが、そのほとんどが迎撃され被害はなかった模様です。さらにこの攻撃は事前に米国側にも通知されていました。トランプ氏の、このイランによる攻撃に対するコメントを読み、筆者は直ぐにこれまでとは異なる違和感を感じました。多くの人が同様だったと思います。トランプ氏はSNSで、「イランが事前に通知してくれたおかげで、死傷者は出なかった」とコメントしました。随分ソフトで、トランプ氏らしくない言い回しでした。さらに、「イランは恐らく、この地域における平和と協調に向けて前進できるだろう。私はイスラエルにも同じことを強く促したい」あれ?この時点で、すでに両国とは停戦に向けた話し合いが進んでいたと思われます。そして、「最も重要なのは、彼らがシステムから全てを吐き出したことだ。これ以上の憎悪がないことを望む」・・・。システム??トランプ氏はさらに続け、「世界よ、おめでとう。今こそ平和の時だ」と投稿していました。

この投稿が何時になされたのかは分かりませんが、今朝7時頃には上記一報が流れてきました。この一報に、これまでのオペレーションの巻き戻しが加速し、ドル円は145円75銭近辺まで売られ、昨日は78ドル台まで急騰したWTI原油価格は65ドル台まで売られています。さらに「暫定的停戦」を好感し、日経先物は500円ほど上昇しており、ダウ先物も買われています。

ドル円は欧州時間に一時148円台まで買われ、「有事のドル買い」が先行しましたが、イランが米軍基地を攻撃してから流れが変わってきました。攻撃が限定的で死傷者も出ていなかったことに加え、ボウマンFRB理事が利下げを支持する発言を行いました。ボウマン氏はプラハで行われた講演で、銀行の資本規制などに言及すると共に金融政策にも触れ、「インフレ圧力が抑制されたままであれば、政策金利を中立水準に近づけ、健全な労働市場を維持するために、次回の会合で利下げを支持する」と述べ、7月会合での利下げについて述べました。また「トランプ関税」についても、「関税などの政策によって重大な影響が出ているという明確な兆候はデータには表れていない。多くの企業が事前に積み増していたため、関税によるインフレへの影響は当初の予想より表れるまでに時間がかかり、影響の度合いも当初予想より小さくなる可能性が高いと考えられる」と語っていました。トランプ氏が喜びそうなコメントでした。

急転直下「停戦」が進みそうな気配が濃厚になってきました。イスラエルとイランが正式に停戦合意すれば、その先にイスラエルとパレスチナ・ガザ地区との戦争も終わる期待が膨らみ、さらにはロシア・ウクライナへの希望も出てきます。専門家の中には「第三次世界大戦」の可能性を指摘する向きもいます。世界を見渡せば、確かにその可能性を感じ得る状況です。これを機に、平和が訪れれば、多くの中東、欧州の一部の民間人の命が救われるといったら大げさでしょうか。

本日のドル円は144円80銭〜146円80銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
6/23 ボウマン・FRB理事 「インフレ圧力が抑制されたままであれば、政策金利を中立水準に近づけ、健全な労働市場を維持するために、次回の会合で利下げを支持する」、(「トランプ関税」について)、「関税などの政策によって重大な影響が出ているという明確な兆候はデータには表れていない。多くの企業が事前に積み増していたため、関税によるインフレへの影響は当初の予想より表れるまでに時間がかかり、影響の度合いも当初予想より小さくなる可能性が高いと考えられる」 中東情勢の好転もあり、ドル円は148円前後から146円台前半まで下げる。
6/18 パウエル・FRB議長 「政策スタンスの調整を検討する前に、経済の見通しについてより多くの情報を持てる状況にある」、(経済の不確実性が高いことを踏まえ)、「誰もこうした金利の道筋に強い確信を持っていない。景気見通しに関する不確実性は低下したが、依然として高い」 ドル円は144円台半ばから145円台に。
6/18 FOMCの議事録 「最近の複数の指標は経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率は低いままで、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 --------
6/11 ベッセント・財務長官 「誠意を持って交渉している貿易相手国に対しては、発動時期をさらに延長する可能性が極めて高い、そうでない国に対しては延期をしない」・・議会証言で。 --------
6/6 トランプ・米大統領 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 --------
6/5 ラガルド・ECB総裁 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。
6/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 --------
5/22 ミラン・米大統領経済諮問委会(CEA)の委員長 「米国は強いドル政策を維持している」、(国際的なドル安協定の憶測について)「われわれが密かに進めているという事実はない。まったく根拠のない話だ」 ドル円は143円台半ばから144台前半まで買われる。
5/21 米財務省声明文 「為替レートは市場で決定されるべきで、ドル円相場は現時点ではファンダメンタルズを反映しているとの共通認識を再確認した」(日米財務相会談を終えて) ドル円は143円台半ばから144円40銭まで上昇
5/20 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「米国債市場のボラティリティにより、すでに高い不確実性がさらに高まる可能性があるが、市場の機能は現時点ではリスクになっていない」、「さらに不確実性が.加わることになれば、より正常なスタンスに戻るまでの時間が長引くと想定する必要が生じるだろう。なぜなら、状況の収束に今以上の時間がかかると考えるからだ」 --------
5/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「米中が関税の大幅引き下げで合意して、5月12日に対立激化が和らいだ後でも、関税は短期的な経済見通しに大きな影響をもたらすように思える」、「今はインフレとの闘い継続に対する国民の信頼を維持すべき時だ。当局はインフレ期待を注視すべきだ」 利下げ観測の後退により、ややドルが買われる。
5/7 パウエル・FRB議長 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 ドル円は143円台から144円まで上昇。
5/7 FOMC声明文 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和