今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「パウエル議長、利下げは急がず」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は続落。米金利が低下し、「有事のドル買い効果」も薄れ、さらに原油価格が大きく下落したことで、ドル円は144円52銭まで売られる。
  • ドルが売られたことでユーロは続伸。ユーロドルは2021年10月以来となる1.1641まで買われる。ドイツのIFO景況指数が予想を上回ったこともユーロ高を牽引。
  • イスラエルとイランの停戦が発表されたことで株式市場では3指数が揃って大幅に続伸。ナスダックは281ポイント上昇して最高値を更新。
  • 債券は買われ、長期金利は4.29%台に低下。
  • 金は大幅に反落。原油は続落し64ドル台に。
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経常収支(1−3月) → −450.2b
4月ケース・シラ−住宅価格指数 → 3.42%
4月FHFA住宅価格指数 → −0.4%
6月コンファレンスボード消費者信頼感指数 → 93.0
6月リッチモンド連銀製造業景況指数 → −7
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ドル/円 144.52 〜 145.19
ユーロ/ドル 1.1583 〜 1.1641
ユーロ/円 167.67 〜 168.40
NYダウ +507.24 → 43,089.02
GOLD −61.10 → 3,333.90ドル
WTI −4.14 → 64.37
米10年国債 −0.053 → 4.294%

本日の注目イベント

  • 豪 豪5月消費者物価指数
  • 日 4月景気先行指数(CI)(改定値)
  • 日 日銀金融政策決定会合議事録(6月16―17日分)
  • 日 日銀田村審議委員が福島金融経済懇談会で講演
  • 米 5月新築住宅販売件数
  • 米 パウエル・FRB議長、上院銀行委員会で証言
  • 加 カナダ5月消費者物価指数

本日のコメント

昨日の日本時間朝方の、トランプ大統領の「イスラエルとイランの停戦合意」発表は、世界を驚かせましたが、根本的な停戦がこのまま維持されるのかどうかには不透明さが残っています。イスラエル政府は24日、停戦案に合意したと発表し、イラン国営メディアも24日、停戦が始まったと報じていました。ただ、イスラエル軍は停戦開始後もイランから攻撃があったと主張しています。トランプ氏は「停戦が発効した。どうか違反しないでくれ」と24日未明に呼び掛けていましたが、停戦合意の発効直後に双方より攻撃に関する報道が相次いだことを受け、怒りをあらわにしています。特にイスラエルに対しては、「爆弾を落すな。それは重大な違反だ。パイロットを今すぐ帰還させろ!」とSNSに投稿していました。それでもトランプ氏は記者団からの、「停戦は破綻しつつあるのか」との問いに、「そうは思わない」と答えています。今回の停戦に向けては、中東カタールが仲介役を果たしていたことも明らかになりましたが、もともとカタールはイランと良好な関係を維持していたこともあり、今回の停戦合意には大きな役割を果たしています。

パウエル議長は下院金融委員会で証言を行い、「当面は、政策スタンスの調整を検討する前に、経済の進路についてより多くの情報が得られるのを待つ体制が整っている」と述べ、質疑応答では、7月の利下げの可能性について問われ、「インフレ圧力が本当に抑制されたままだということになれば、早めに利下げに踏み切ることになるだろう」と発言。その上で、「特定の会合を指すことは避けたい。経済は依然として強く、急ぐ必要はないと考えている」と答えています。前日のボウマン副議長の発言とは真逆になりますが、このスタンスは現時点での多くのFRBメンバーの総意に近いものと思われます。ボウマン氏は、トランプ氏の覚えが極めていいようで、「7月利下げを支持する」との発言は「忖度色」が強いと感じます。事実、昨日はこの他のFOMCメンバーも多く発言しており、概ねパウエル議長と同じスタンスでした。

NY連銀のウイリアムズ総裁は、「政策変更が労働市場とインフレに及ぼす影響を当局者が分析する間、金利を据え置くことは完全に適切だ」との認識を示しています。アトランタ連銀のボスティック総裁も「関税やその他の政策論争がどのように進展するか見守るための、余裕と時間はある」と述べ、利下げは急がないとの姿勢を見せています。また、バーFRB理事は「経済は現在、堅調な足どりを見せている。失業率は低水準で、インフレはFRBの目標の2%に向けて低下してきている」との認識を示しながらも、「ただ今後を見据えると、関税の影響でインフレは加速すると予想する。短期のインフレ期待の高まり、サプライチェーンの調整、そして二次的影響により、インフレはやや長引く可能性がある」と指摘していました。最後にクリーブランド連銀のハマック総裁も、「現行の金利はわずかに景気抑制的な水準だが、当局の目標達成までにはまだ一定の距離がある」と述べ、「政策金利はFOMCがごく緩やかな利下げで中立的な水準に戻す前に、かなりの期間据え置かれる可能性が高い」と話していました。

148円台に乗せたドル円は、「有事のドル買い効果」が剥落し、再び144円台半ばまで下げてきました。上記イスラエルとイランの停戦合意が順守されれば、また元に戻ったことになります。「日足」の雲の上限を大きく抜けたドル円でしたが、再び雲の中まで押し戻されてきました。まだ日米通商協議は白紙状態です。またEUも、もしトランプ政権が高関税を課すのであれば、対抗措置を講じるとの構えを崩していません。まだまだボラティリティの高い日々は続くと考えます。

本日のドル円は144円〜146円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
6/24 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「現行の金利はわずかに景気抑制的な水準だが、当局の目標達成までにはまだ一定の距離がある」、「政策金利はFOMCがごく緩やかな利下げで中立的な水準に戻す前に、かなりの期間据え置かれる可能性が高い」 --------
6/24 バー・FRB理事 「経済は現在、堅調な足どりを見せている。失業率は低水準で、インフレはFRBの目標の2%に向けて低下してきている」、「ただ今後を見据えると、関税の影響でインフレは加速すると予想する。短期のインフレ期待の高まり、サプライチェーンの調整、そして二次的影響により、インフレはやや長引く可能性がある」 --------
6/24 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「関税やその他の政策論争がどのように進展するか見守るための、余裕と時間はある」 --------
6/24 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「政策変更が労働市場とインフレに及ぼす影響を当局者が分析する間、金利を据え置くことは完全に適切だ」 --------
6/24 パウエル・FRB議長 「当面は、政策スタンスの調整を検討する前に、経済の進路についてより多くの情報が得られるのを待つ体制が整っている」、(7月の利下げの可能性について問われ)、「インフレ圧力が本当に抑制されたままだということになれば、早めに利下げに踏み切ることになるだろう」、「特定の会合を指すことは避けたい。経済は依然として強く、急ぐ必要はないと考えている」 --------
6/23 ボウマン・FRB理事 「インフレ圧力が抑制されたままであれば、政策金利を中立水準に近づけ、健全な労働市場を維持するために、次回の会合で利下げを支持する」、(「トランプ関税」について)、「関税などの政策によって重大な影響が出ているという明確な兆候はデータには表れていない。多くの企業が事前に積み増していたため、関税によるインフレへの影響は当初の予想より表れるまでに時間がかかり、影響の度合いも当初予想より小さくなる可能性が高いと考えられる」 中東情勢の好転もあり、ドル円は148円前後から146円台前半まで下げる。
6/18 パウエル・FRB議長 「政策スタンスの調整を検討する前に、経済の見通しについてより多くの情報を持てる状況にある」、(経済の不確実性が高いことを踏まえ)、「誰もこうした金利の道筋に強い確信を持っていない。景気見通しに関する不確実性は低下したが、依然として高い」 ドル円は144円台半ばから145円台に。
6/18 FOMCの議事録 「最近の複数の指標は経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率は低いままで、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 --------
6/11 ベッセント・財務長官 「誠意を持って交渉している貿易相手国に対しては、発動時期をさらに延長する可能性が極めて高い、そうでない国に対しては延期をしない」・・議会証言で。 --------
6/6 トランプ・米大統領 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 --------
6/5 ラガルド・ECB総裁 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。
6/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 --------
5/22 ミラン・米大統領経済諮問委会(CEA)の委員長 「米国は強いドル政策を維持している」、(国際的なドル安協定の憶測について)「われわれが密かに進めているという事実はない。まったく根拠のない話だ」 ドル円は143円台半ばから144台前半まで買われる。
5/21 米財務省声明文 「為替レートは市場で決定されるべきで、ドル円相場は現時点ではファンダメンタルズを反映しているとの共通認識を再確認した」(日米財務相会談を終えて) ドル円は143円台半ばから144円40銭まで上昇
5/20 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「米国債市場のボラティリティにより、すでに高い不確実性がさらに高まる可能性があるが、市場の機能は現時点ではリスクになっていない」、「さらに不確実性が.加わることになれば、より正常なスタンスに戻るまでの時間が長引くと想定する必要が生じるだろう。なぜなら、状況の収束に今以上の時間がかかると考えるからだ」 --------
5/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「米中が関税の大幅引き下げで合意して、5月12日に対立激化が和らいだ後でも、関税は短期的な経済見通しに大きな影響をもたらすように思える」、「今はインフレとの闘い継続に対する国民の信頼を維持すべき時だ。当局はインフレ期待を注視すべきだ」 利下げ観測の後退により、ややドルが買われる。
5/7 パウエル・FRB議長 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 ドル円は143円台から144円まで上昇。
5/7 FOMC声明文 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和