今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「パウエル議長、関税の影響は読み切れない」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 144円台半ばまで売られたドル円は反発。NYでは145円95銭まで買われたが、パウエル議長の議会証言を境に反落。
  • ユーロドルは小幅に続伸し一時は、1.1665まで上昇。
  • 株式市場では3指数がまちまちの展開。ダウは売られ、前日最高値を更新したナスダックはエヌビディアが牽引し、連日で最高値を更新。
  • 債券はほぼ横ばい。長期金利は4.39%台で推移。
  • 金と原油は揃って反発。
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5月新築住宅販売件数 → 62万3千件
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ドル/円 145.10 〜 145.95
ユーロ/ドル 1.1590 〜 1.1665
ユーロ/円 168.92 〜 169.38
NYダウ −106.59 → 42,982.43
GOLD +9.20 → 3,343.10ドル
WTI +0.55 → 64.92
米10年国債 −0.004 → 4.291%

本日の注目イベント

  • 独 独7月GFK消費者信頼調査
  • 英 ベイリー・BOE総裁、基調講演
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 1−3月GDP(確定値)
  • 米 5月耐久財受注
  • 米 5月中古住宅販売成約件数
  • 米 バーキン・リッチモンド連銀総裁、イベントでスピーチ
  • 米 メスター・クリーブランド連銀総裁、開会挨拶
  • 米 バー・FRB理事講演

本日のコメント

昨日の午前中、日銀の田村審議員が福島県金融経済懇談会で講演を行い、やや円高方向に振れる場面がありました。田村氏は、「物価安定目標実現の確度が高まり、あるいは物価上振れリスクが高まる場合には、たとえ不確実性が高い状況であっても果断に対応すべき場面もあり得る」との認識を示し、「確実に正常化を進める必要がある」と述べました。また、現在0.5%の政策金利について「政策金利、0.5%に壁があるとは感じていない」と述べていました。同委員は、政策委員9人の中でも「最もタカ派」と見られており、講演内容に違和感はありませんでした。

米軍の空爆で完全に破壊されたとするイランの核施設を巡り、NYタイムズやCNNは、米軍の攻撃は「核開発を数ヵ月遅らせた」だけとする、米国防総省の国防情報局(DIA)の機密情報を報じました。これに対してNATO首脳会議に出席しているトランプ大統領は「施設は完全に破壊された」と再度主張し、同情報機関の分析を否定していました。また首脳会議で、国防支出をGDP比5%に引き上げることを拒んだスペインを激しく非難しています。さらに、2026年6月に任期が満了するパウエルFRB議長の後任候補として、「3−4人が頭の中にある」と発言し、パウエル議長について、「彼は近く退任する、幸いなことに。というのも、私は彼のことをひどいと思っているので」と話しています。また同会議に合わせて、ウクライナのゼレンスキー大統領とも45分間の会談を行い、同国への地対空ミサイル「パトリオット」の追加供給を検討するとも述べ、ゼレンスキー氏は、「長時間におよび、中味のあるものだった」と評価していました。

トランプ氏はNATO首脳会議でも相変わらず存在感を誇示していました。NATOのルッテ事務総長がトランプ氏を持ち上げ、NATOが国防費の追加拠出を決めたことについて「大統領閣下、親愛なるドナルド、それはあなたがわれわれを後押ししてくれたからだ」と、トランプ氏を称賛する美辞麗句が印象的でした。トランプ氏は、この日ホテルではなくオランダ国王宮殿に宿泊し、異例の歓待を受けています。ブルームバーグは「ルッテ事務総長は、晩餐会の席順にも細心の注意を払った。トランプ氏のお気に入りのイタリアのメローニ首相は同氏の隣に配置され、炭火焼のマグロや子牛のフィレとともに、『国賓への称賛も振舞われた』」と、やや皮肉を込めて報じていました。これがルッテ事務総長の「綿密な作戦」だったのか、あるいは「単なる忖度」だったのかは、わかりません。ブルームバーグは最後に、「NATO会合におけるルッテ氏のへつらいぶりは、時には目を背けたくなるほどだった」と結んでいました。因みに、ルッテ氏はオランダの元首相です。

パウエル議長は前日の下院での証言に続き、この日は上院銀行委員会で証言を行いました。「関税が消費者物価に及ぼす影響を金融当局としてまだ見極めきれていない。関税のうちのどの程度がインフレとして表面化するのか、前もって予測するのは非常に困難だ」と語っていました。FOMCの多くのメンバーが「利下げは急がない」との姿勢を見せていることは昨日の本欄でも紹介しましたが、現時点では7月の会合でも利下げは見送られる公算が高いと思われます。「利下げが年内1回になるのか2回になるのかが焦点」で、それは今後のデータ次第で、換言すれば、労働市場の動向とインフレの行方ということになります。

ドル円は148円まで買われた後、昨日は144円台半ばまで売られましたが、この水準では下げ止まっています。前日のNYでも同水準で下げ止まったことから、目先短期的な下値のメドはこの辺りになろうかと思います。本日のドル円は144円50銭〜146円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
6/25 パウエル・FRB議長 「関税が消費者物価に及ぼす影響を金融当局としてまだ見極めきれていない。関税のうちのどの程度がインフレとして表面化するのか、前もって予測するのは非常に困難だ」 --------
6/24 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「現行の金利はわずかに景気抑制的な水準だが、当局の目標達成までにはまだ一定の距離がある」、「政策金利はFOMCがごく緩やかな利下げで中立的な水準に戻す前に、かなりの期間据え置かれる可能性が高い」 --------
6/24 バー・FRB理事 「経済は現在、堅調な足どりを見せている。失業率は低水準で、インフレはFRBの目標の2%に向けて低下してきている」、「ただ今後を見据えると、関税の影響でインフレは加速すると予想する。短期のインフレ期待の高まり、サプライチェーンの調整、そして二次的影響により、インフレはやや長引く可能性がある」 --------
6/24 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「関税やその他の政策論争がどのように進展するか見守るための、余裕と時間はある」 --------
6/24 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「政策変更が労働市場とインフレに及ぼす影響を当局者が分析する間、金利を据え置くことは完全に適切だ」 --------
6/24 パウエル・FRB議長 「当面は、政策スタンスの調整を検討する前に、経済の進路についてより多くの情報が得られるのを待つ体制が整っている」、(7月の利下げの可能性について問われ)、「インフレ圧力が本当に抑制されたままだということになれば、早めに利下げに踏み切ることになるだろう」、「特定の会合を指すことは避けたい。経済は依然として強く、急ぐ必要はないと考えている」 --------
6/23 ボウマン・FRB理事 「インフレ圧力が抑制されたままであれば、政策金利を中立水準に近づけ、健全な労働市場を維持するために、次回の会合で利下げを支持する」、(「トランプ関税」について)、「関税などの政策によって重大な影響が出ているという明確な兆候はデータには表れていない。多くの企業が事前に積み増していたため、関税によるインフレへの影響は当初の予想より表れるまでに時間がかかり、影響の度合いも当初予想より小さくなる可能性が高いと考えられる」 中東情勢の好転もあり、ドル円は148円前後から146円台前半まで下げる。
6/18 パウエル・FRB議長 「政策スタンスの調整を検討する前に、経済の見通しについてより多くの情報を持てる状況にある」、(経済の不確実性が高いことを踏まえ)、「誰もこうした金利の道筋に強い確信を持っていない。景気見通しに関する不確実性は低下したが、依然として高い」 ドル円は144円台半ばから145円台に。
6/18 FOMCの議事録 「最近の複数の指標は経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率は低いままで、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 --------
6/11 ベッセント・財務長官 「誠意を持って交渉している貿易相手国に対しては、発動時期をさらに延長する可能性が極めて高い、そうでない国に対しては延期をしない」・・議会証言で。 --------
6/6 トランプ・米大統領 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 --------
6/5 ラガルド・ECB総裁 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。
6/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 --------
5/22 ミラン・米大統領経済諮問委会(CEA)の委員長 「米国は強いドル政策を維持している」、(国際的なドル安協定の憶測について)「われわれが密かに進めているという事実はない。まったく根拠のない話だ」 ドル円は143円台半ばから144台前半まで買われる。
5/21 米財務省声明文 「為替レートは市場で決定されるべきで、ドル円相場は現時点ではファンダメンタルズを反映しているとの共通認識を再確認した」(日米財務相会談を終えて) ドル円は143円台半ばから144円40銭まで上昇
5/20 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「米国債市場のボラティリティにより、すでに高い不確実性がさらに高まる可能性があるが、市場の機能は現時点ではリスクになっていない」、「さらに不確実性が.加わることになれば、より正常なスタンスに戻るまでの時間が長引くと想定する必要が生じるだろう。なぜなら、状況の収束に今以上の時間がかかると考えるからだ」 --------
5/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「米中が関税の大幅引き下げで合意して、5月12日に対立激化が和らいだ後でも、関税は短期的な経済見通しに大きな影響をもたらすように思える」、「今はインフレとの闘い継続に対する国民の信頼を維持すべき時だ。当局はインフレ期待を注視すべきだ」 利下げ観測の後退により、ややドルが買われる。
5/7 パウエル・FRB議長 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 ドル円は143円台から144円まで上昇。
5/7 FOMC声明文 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和