今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「日米通商協議進展せず」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は小動き。トランプ大統領がカナダとの貿易協議を停止することを決めたものの、ドル円は終始144円台で推移。
  • ユーロドルは小幅に続伸し、一時は1.1754まで上昇。
  • 株式市場は3指数が大幅に続伸。ナスダックとS&P500は最高値を更新。
  • 債券は反落。長期金利は4.27%台に上昇。
  • 金は大幅反落。原油は3日続伸。
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米 5月個人所得 → −0.4%
米 5月個人支出 → −0.1%
米 5月PCEデフレータ(前月比) → 0.1%
米 5月PCEデフレータ(前年比) → 2.3%
米 5月PCEコアデフレータ(前月比) → 0.2%
米 5月PCEコアデフレータ(前年比) → 2.7%
米 6月ミシガン大学消費者マインド(確定値) → 60.7
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ドル/円 144.38 〜 144.94
ユーロ/ドル 1.1688 〜 1.1754
ユーロ/円 169.20 〜 169.81
NYダウ +432.43 → 43,819.27
GOLD −60.40 → 3,287.60ドル
WTI +0.28 → 65.52
米10年国債 0.035 → 4.277%

本日の注目イベント

  • 日 5月鉱工業生産
  • 中 6月中国製造業PMI
  • 中 6月中国サービス業PMI
  • 独 独5月小売売上高
  • 独 独5月輸入物価指数
  • 独 独6月雇用統計
  • 独 独6月消費者物価指数(速報値)
  • 欧 ラガルド・ECB総裁講演
  • 英 英1−3月期GDP(確定値)
  • 米 6月シカゴ購買部協会景気指数
  • 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁講演
  • 米 グールズビー・シカゴ連銀総裁講演

本日のコメント

日米ともに株価が上昇し、日経平均株価は4万円の大台を回復。米国ではナスダックとS&P500が最高値を更新しています。株高は「リスクオン」の高まりから、本来であれば低金利の円は売られ、「ドル高円安」が進む傾向がありますが、ドル円は144円台で推移し、上値の重い展開が続いています。ドルの上値を抑えているのは以下の理由によるものと考えます。

先ずは、依然として日米通商協議が進展していないことです。先週26日、赤沢経済再生相は7回目の協議を行うためワシントンに向かい、ラトニック商務長官と2度にわたり会談を重ねましたが合意には至っていません。内閣官房は、「両国の立場を再確認し、貿易の拡大、非関税措置、経済安全保障面での協力について協議した」と発表していますが、目立った進展はなかった模様です。赤沢氏は、さらなる交渉のために滞在期間を延長する予定だと報じられています。「トランプ関税」の発効は来週9日に迫っています。先週26日には、ホワイトハウスのレビット報道官が、「上乗せ関税の一時停止措置が終了する7月9日の期限は重要ではない」と述べ、各国が合意案を提示しない場合、トランプ大統領が自ら税率を設定できるからだと説明していました。しかし、そのトランプ氏は27日のFOXニュースとのインタビューでは、「その必要はない」と述べ、「私としては短縮したい。全員に書簡を送って『おめでとう、あなたは25%の関税を払うことになる』と通知したいくらいだ」と話しており、どうやら7月9日期限までに合意しないと「トランプ関税」は発効しそうです。

強気のトランプ氏は27日、カナダとの「全ての通商交渉」を即時に停止することを発表しました。カナダが2024年に導入した米国のハイテク企業に課す「デジタルサービス税」の納付期限が6月30日に迫っており、その額が最大で30億ドル(4300億円)になることをトランプ氏が問題視したためと見られています。一方米国と協議を続けているEUは、フォンデアライエン欧州委員長が「7月9日の期限までに何らかの形で貿易協議にこぎ着けられると考えている」と述べています。また、ラトニック商務長官も、「私は楽観的だ。今なら合意に達することができる」と話していました。EUは、「米国と決裂した場合、全ての選択肢を検討する」と述べていましたが、こちらは合意が近そうです。

2つ目の理由は、トランプ氏がFRB議長を解任し、自身の考え方に近い人物を後任に指名しそうなことです。仮にパウエル議長が任期満了前に解任されるか、あるいは後任者が早期に決められれば、ドルが売られる可能性があると思われます。トランプ氏は「金利を今の水準に維持しようとか、そういう考えの人間は選ばない。利下げを望む人物を指名する。そういう人間はたくさんいる」と述べ、「彼(パウエル議長)が辞任したいと思っているなら、大歓迎だ」と、相変わらずパウエル氏を批判しています。

そして3つ目がFRBによる追加利下げの可能性と、ユーロドルで「ドル安・ユーロ高」が進んでいることが挙げられます。ユーロドルは先週末のNYで一時1.1754まで買われ、2021年9月以来の高値を記録しています。ドルが対ユーロで売られていることで、円でもドルが売られやすく、ユーロ高に引っ張られる傾向があります。世界の一部の資金がドルからユーロに流れているとのデータも報告されています。

本日のドル円は143円50銭〜145円30銭程度を予想します。

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明日の「アナリストレポート」は都合によりお休みとさせていただきます。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
6/26 コリンズ・ボストン連銀総裁 7月会合までに得られるデータは、あと1ヵ月分に過ぎない。それ以上のデータを確認したいと考えるだろう」 --------
6/26 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレが当局の目指す2%へと明らかに減速し、経済見通しを巡る不確実性が後退すれば利下げ再開もあり得る。良好なデータが得られており、関税の影響も限定的にとどまるかもしれないと楽観しているが、確証を待ちたい」 --------
6/26 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「どの方向にせよ、性急に進むことには得るものがほとんどない。現在の経済の強さを踏まえれば、われわれには情勢の展開を辛抱強く見守り、見通しが明確になるまで待つ時間がある」 --------
6/26 デーリー・SF連銀総裁 「私の中心的な見方としては、秋ごろから金利の調整が開始できるというものであり、その考えは特に変わっていない」、「労働市場には減速の兆しはあるものの、悪化を示す警告サインは見られない」 --------
6/25 パウエル・FRB議長 「関税が消費者物価に及ぼす影響を金融当局としてまだ見極めきれていない。関税のうちのどの程度がインフレとして表面化するのか、前もって予測するのは非常に困難だ」 --------
6/24 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「現行の金利はわずかに景気抑制的な水準だが、当局の目標達成までにはまだ一定の距離がある」、「政策金利はFOMCがごく緩やかな利下げで中立的な水準に戻す前に、かなりの期間据え置かれる可能性が高い」 --------
6/24 バー・FRB理事 「経済は現在、堅調な足どりを見せている。失業率は低水準で、インフレはFRBの目標の2%に向けて低下してきている」、「ただ今後を見据えると、関税の影響でインフレは加速すると予想する。短期のインフレ期待の高まり、サプライチェーンの調整、そして二次的影響により、インフレはやや長引く可能性がある」 --------
6/24 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「関税やその他の政策論争がどのように進展するか見守るための、余裕と時間はある」 --------
6/24 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「政策変更が労働市場とインフレに及ぼす影響を当局者が分析する間、金利を据え置くことは完全に適切だ」 --------
6/24 パウエル・FRB議長 「当面は、政策スタンスの調整を検討する前に、経済の進路についてより多くの情報が得られるのを待つ体制が整っている」、(7月の利下げの可能性について問われ)、「インフレ圧力が本当に抑制されたままだということになれば、早めに利下げに踏み切ることになるだろう」、「特定の会合を指すことは避けたい。経済は依然として強く、急ぐ必要はないと考えている」 --------
6/23 ボウマン・FRB理事 「インフレ圧力が抑制されたままであれば、政策金利を中立水準に近づけ、健全な労働市場を維持するために、次回の会合で利下げを支持する」、(「トランプ関税」について)、「関税などの政策によって重大な影響が出ているという明確な兆候はデータには表れていない。多くの企業が事前に積み増していたため、関税によるインフレへの影響は当初の予想より表れるまでに時間がかかり、影響の度合いも当初予想より小さくなる可能性が高いと考えられる」 中東情勢の好転もあり、ドル円は148円前後から146円台前半まで下げる。
6/18 パウエル・FRB議長 「政策スタンスの調整を検討する前に、経済の見通しについてより多くの情報を持てる状況にある」、(経済の不確実性が高いことを踏まえ)、「誰もこうした金利の道筋に強い確信を持っていない。景気見通しに関する不確実性は低下したが、依然として高い」 ドル円は144円台半ばから145円台に。
6/18 FOMCの議事録 「最近の複数の指標は経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率は低いままで、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 --------
6/11 ベッセント・財務長官 「誠意を持って交渉している貿易相手国に対しては、発動時期をさらに延長する可能性が極めて高い、そうでない国に対しては延期をしない」・・議会証言で。 --------
6/6 トランプ・米大統領 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 --------
6/5 ラガルド・ECB総裁 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。
6/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 --------
5/22 ミラン・米大統領経済諮問委会(CEA)の委員長 「米国は強いドル政策を維持している」、(国際的なドル安協定の憶測について)「われわれが密かに進めているという事実はない。まったく根拠のない話だ」 ドル円は143円台半ばから144台前半まで買われる。
5/21 米財務省声明文 「為替レートは市場で決定されるべきで、ドル円相場は現時点ではファンダメンタルズを反映しているとの共通認識を再確認した」(日米財務相会談を終えて) ドル円は143円台半ばから144円40銭まで上昇
5/20 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「米国債市場のボラティリティにより、すでに高い不確実性がさらに高まる可能性があるが、市場の機能は現時点ではリスクになっていない」、「さらに不確実性が.加わることになれば、より正常なスタンスに戻るまでの時間が長引くと想定する必要が生じるだろう。なぜなら、状況の収束に今以上の時間がかかると考えるからだ」 --------
5/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「米中が関税の大幅引き下げで合意して、5月12日に対立激化が和らいだ後でも、関税は短期的な経済見通しに大きな影響をもたらすように思える」、「今はインフレとの闘い継続に対する国民の信頼を維持すべき時だ。当局はインフレ期待を注視すべきだ」 利下げ観測の後退により、ややドルが買われる。
5/7 パウエル・FRB議長 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 ドル円は143円台から144円まで上昇。
5/7 FOMC声明文 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和