「トランプ関税延期可能か?」
ひと目で分かる昨晩の動き
欧州市場- NY市場が休場のためドル円は小動き。値幅は30銭程度で144円台前半から半ばで推移。
- ユーロドルも1.17台半ばから上方での取引で小動き。
ドル/円 | 144.27 〜 144.57 |
---|---|
ユーロ/ドル | 1.1764 〜 1.1788 |
ユーロ/円 | 169.87 〜 170.33 |
NYダウ | ------ → 44,828.53 |
GOLD | ------ → 3,342.90ドル |
WTI | ------ → 67.00 |
米10年国債 | ------ → 4.346% |
本日の注目イベント
- 日 5月景気先行指数(CI)(速報値)
- 日 5月景気一致指数(CI)(速報値)
- 中 中国6月外貨準備高
- 独 独5月鉱工業生産
- 独 独5月小売売上高
- 欧 ユーロ圏5月小売売上高
- 米 イスラエル首相、トランプ大統領と会談(ホワイトハウス)
本日のコメント
トランプ大統領は4日、貿易相手国に新たな関税率を通知するための文書に署名したことを発表しました。12カ国分で、書簡は7日に送付される見込みです。トランプ氏は具体的な相手を問われると、「その発表は7日に行う」と答えていました。新たな税率については、「60〜70%程度から10〜20%程度まで幅広くなるだろう」と話していました。今週9日(水)の関税発動期限についてトランプ氏は当初、「期限の延期はない」と述べていましたが、今朝の報道ではベッセント財務長官が「期限までに合意がまとまらない一部の国について、3週間の交渉期間延期の選択肢が与えられる可能性」を、6日のテレビ出演で示唆しています。
ベッセント氏はCNNの番組で「今後72時間、非常に忙しくなるだろう」と述べ、「書簡を受け取った国・地域にとって、そこに書かれている税率が直ちに最終決定になるわけではない。関税率の適用は8月1日からなので、合意に近付いていない国が譲歩案を提示する時間はなおある」と語っていました。ベッセント氏はまた、「主要な貿易相手18国・地域に重点を置いている」と述べ、複数大型合意がまとまるのは近いとしながらも、「相手側で腰の重い対応が多く見られる。貿易相手国に米政権として最大限の圧力をかけている」とも述べ、「EUとの交渉で非常に良い進展が見られる」と説明していました。現時点では、英国、中国とは枠組みで合意しており、ベトナムともディールを取りまとめています。上記、「腰の重い対応が多く見られる」国・地域には、日本も含まれている可能性が高いと思われます。
石破首相は昨日、日米通商協議に関してNHKの「日曜討論」の番組で、「国益をかけて、ものすごくギリギリの交渉を精力的にやっている。安易な妥協はしない。だから時間もかかる。厳しいものになる」と、現在の状況を説明していました。また、書簡が日本に届いた際の対応について、「あらゆる場合に備えている」と答え、さらに、25%の税率が適用される自動車について、引き続き関税ゼロを求めていくのか問われ「そうしなければならない」と話していました。米国と未だ合意に達していない日本に、新たな税率を示す書簡が来ることはほぼ間違いないと思われ、ベッセント氏が述べたように、8月1日の適用開始までに粘り強く交渉を続けることになると予想しています。
トランプ氏と袂を分けたイーロンマスク氏は5日、新しい政党「アメリカ党」を設立することを発表しました。マスク氏はSNSで、「あなたたちの自由を取り戻す活動を始めるため、アメリカ党が結成された」と投稿しました。マスク氏はそれに先立ち、「アメリカ党」結成の賛否を尋ねるアンケートをネットで実施しており、125万近い回答の65%が賛成だったことも明らかにしています。2大政党制が定着している米国で、新党「アメリカ党」がどの程度存在感を示すのかは未知数ですが、予想外に支持を集めるようだと「トランプ共和党」にも脅威かもしれません。もっとも、マスク氏の新党結成の意図には、トランプ氏が実施する予定の「EV購入者への補助金廃止」に対する「うらみ」もあるようです。
本日のドル円は143円〜145円程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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7/2 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「経済指標は非常に堅調だ。経済が悪い方向に進んでいるという切迫感はない。また、経済環境全体に切迫感がない限り、霧の中を運転するように、ゆっくり進むのが妥当だ」、「現時点で政策金利を引き下げる緊急性はない」 | -------- |
7/1 | パウエル・FRB議長 | 「(関税の行方に)われわれは注視している。夏にかけていくらかの数値が上がると予想している」と話し、その上で「ただし影響が想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのかは、今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意がある」、(月利下げについては)「検討は会合ごとに行われる。どの会合も選択肢から排除しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」 | 利下げの可能性を排除しなかったことで、ドル円はやや売られる。 |
6/26 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 7月会合までに得られるデータは、あと1ヵ月分に過ぎない。それ以上のデータを確認したいと考えるだろう」 | -------- |
6/26 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレが当局の目指す2%へと明らかに減速し、経済見通しを巡る不確実性が後退すれば利下げ再開もあり得る。良好なデータが得られており、関税の影響も限定的にとどまるかもしれないと楽観しているが、確証を待ちたい」 | -------- |
6/26 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「どの方向にせよ、性急に進むことには得るものがほとんどない。現在の経済の強さを踏まえれば、われわれには情勢の展開を辛抱強く見守り、見通しが明確になるまで待つ時間がある」 | -------- |
6/26 | デーリー・SF連銀総裁 | 「私の中心的な見方としては、秋ごろから金利の調整が開始できるというものであり、その考えは特に変わっていない」、「労働市場には減速の兆しはあるものの、悪化を示す警告サインは見られない」 | -------- |
6/25 | パウエル・FRB議長 | 「関税が消費者物価に及ぼす影響を金融当局としてまだ見極めきれていない。関税のうちのどの程度がインフレとして表面化するのか、前もって予測するのは非常に困難だ」 | -------- |
6/24 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「現行の金利はわずかに景気抑制的な水準だが、当局の目標達成までにはまだ一定の距離がある」、「政策金利はFOMCがごく緩やかな利下げで中立的な水準に戻す前に、かなりの期間据え置かれる可能性が高い」 | -------- |
6/24 | バー・FRB理事 | 「経済は現在、堅調な足どりを見せている。失業率は低水準で、インフレはFRBの目標の2%に向けて低下してきている」、「ただ今後を見据えると、関税の影響でインフレは加速すると予想する。短期のインフレ期待の高まり、サプライチェーンの調整、そして二次的影響により、インフレはやや長引く可能性がある」 | -------- |
6/24 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「関税やその他の政策論争がどのように進展するか見守るための、余裕と時間はある」 | -------- |
6/24 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「政策変更が労働市場とインフレに及ぼす影響を当局者が分析する間、金利を据え置くことは完全に適切だ」 | -------- |
6/24 | パウエル・FRB議長 | 「当面は、政策スタンスの調整を検討する前に、経済の進路についてより多くの情報が得られるのを待つ体制が整っている」、(7月の利下げの可能性について問われ)、「インフレ圧力が本当に抑制されたままだということになれば、早めに利下げに踏み切ることになるだろう」、「特定の会合を指すことは避けたい。経済は依然として強く、急ぐ必要はないと考えている」 | -------- |
6/23 | ボウマン・FRB理事 | 「インフレ圧力が抑制されたままであれば、政策金利を中立水準に近づけ、健全な労働市場を維持するために、次回の会合で利下げを支持する」、(「トランプ関税」について)、「関税などの政策によって重大な影響が出ているという明確な兆候はデータには表れていない。多くの企業が事前に積み増していたため、関税によるインフレへの影響は当初の予想より表れるまでに時間がかかり、影響の度合いも当初予想より小さくなる可能性が高いと考えられる」 | 中東情勢の好転もあり、ドル円は148円前後から146円台前半まで下げる。 |
6/18 | パウエル・FRB議長 | 「政策スタンスの調整を検討する前に、経済の見通しについてより多くの情報を持てる状況にある」、(経済の不確実性が高いことを踏まえ)、「誰もこうした金利の道筋に強い確信を持っていない。景気見通しに関する不確実性は低下したが、依然として高い」 | ドル円は144円台半ばから145円台に。 |
6/18 | FOMCの議事録 | 「最近の複数の指標は経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率は低いままで、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 | -------- |
6/11 | ベッセント・財務長官 | 「誠意を持って交渉している貿易相手国に対しては、発動時期をさらに延長する可能性が極めて高い、そうでない国に対しては延期をしない」・・議会証言で。 | -------- |
6/6 | トランプ・米大統領 | 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 | -------- |
6/5 | ラガルド・ECB総裁 | 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 | ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。 |
6/3 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書