「トランプ政権、日本に25%の関税を通知」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は東京時間に145円台を回復し、NYでは146円24銭まで買われた。トランプ大統領が貿易相手国に関税引き上げの書簡を送付したことで、米インフレ懸念が再燃。
- ユーロドルは続落し、1.1687まで下落。ドル高が進みユーロが売られたが対円では買われ、171円29銭前後までユーロ高が進行。
- インフレと財政悪化懸念が高まり、株式市場では3指数が揃って大幅安。ダウは一時600ドルを超える下げに。
- 債券は続落。長期金利は4.37%台に上昇。
- 金はほぼ横ばい。原油は反発。
ドル/円 | 145.50 〜 146.24 |
---|---|
ユーロ/ドル | 1.1687 〜 1.1745 |
ユーロ/円 | 170.48 〜 171.29 |
NYダウ | −422.17 → 44,406.36 |
GOLD | −0.10 → 3,342.80ドル |
WTI | +0.93 → 67.93 |
米10年国債 | +0.034 → 4.379% |
本日の注目イベント
- 豪 豪6月NAB企業景況感指数
- 豪 RBA、キャッシュターゲット
- 日 5月国際収支・経常収支
- 日 6月景気ウオッチャー調査
- 独 独5月貿易収支
- 米 5月消費者信用残高
- 米 6月NY連銀インフレ期待
本日のコメント
前日、トランプ大統領は貿易相手国に新たな関税率を通知するための文書に署名し、「書簡は7日に送付される」と述べ、「相手国は7日に発表する」としていましたが、その詳細が明らかになりました。日本に対する関税率は25%で、交渉期限は7日9日から8月1日まで延期されました。4月2日に公表した「相互関税」で、日本は基本関税の10%に加え、上乗せ分14%を加えた24%でしたが、それより1%多くなっていました。
トランプ氏は、日本に対して「30−35%の関税率を適用する可能性もある」と話していましたが、さすがにそこまでの高税率は適用されませんでした。しかし、日本政府が懸命に交渉を続け、ゼロ関税を目指していた「努力」は水泡と消えたことになります。厳しい日程の中7回も訪米し、ネットでは「youは何にしにアメリカへ?」と揶揄されていた赤沢経済再生相の落胆ぶりが、目に浮かぶようです。トランプ氏は書簡で、「日本の関税率や非関税障壁などによって長らく生じてきた貿易赤字を取り除くことにした」と記述し、「25%の数字では、貴国との貿易不均衡を是正するにはほど遠いことを理解してほしい」と付け加えた上で、「この書簡の内容を調整することも検討する」としていました。ただ一方で、「日本が米国に対する関税を引き上げるなら、25%の関税率を一段と引き上げる」と、警告とも脅しともとれる文言も添えられていました。
「トランプ関税」は最終局面を迎えているようです。書簡は日本を含む14カ国に送付された模様ですが、日本と同様にその行方が注目されていたEUは除外されたようです。EUのフォンデアライエン委員長は7日、トランプ氏との6日の電話会談を経て、「米EUの通商合意の枠組みがまとまりつつある」と述べています。EUの報道官は「両者のやりとりは良好だった。少なくとも、大筋合意に向けた『最終局面の始まり』にある」と発表しています。
昨日の東京時間では、「トランプ氏の書簡送付報道」を受け、日経平均株価が売られる中、ドル円は「リスク回避の円買い」の動きを全く見せず、反対にドル高が進み145円台を回復していました。「トランプ関税」が実施されれば、米国のインフレが高まるとの観測と、日本に高関税が適用されれば、日銀の追加利上げのタイミングが遅れるとの見方が、「リスク回避の円買い」を上回った形で、その流れがNYではさらに加速しました。筆者は、米国の関税引き上げがインフレに与える影響を警戒していましたが、市場はそれに対して楽観的過ぎていたようにも思えました。ドル円はレンジの上限である146円前後を上抜けし、日足チャートでは再び雲も上抜けしてきました。これまでは146円台から上方での「滞空時間」は非常に短く、直ぐに押し戻される展開でしたが、今度はどうでしょう?トランプ氏から付き付けられた25%の関税率に対して、8月1日までの3週間程の期間に日本政府がどのような対抗策を示すのかで、ドル円がさらに上値を試すのか、あるいはこれまでと同様に「元のさや」に戻るのか、正念場になります。ただ、すでに参院選が始まっており日程的には厳しい状況です。政府は今朝9時10分から米関税措置の総合対策本部を開催する模様です。
本日のドル円は145円〜147円程度を予想します。
佐藤正和の書籍紹介
![]() これだけ! FXチャート分析 三種の神器 |
![]() チャートがしっかり読めるようになるFX入門 |
What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
---|---|---|---|
7/2 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「経済指標は非常に堅調だ。経済が悪い方向に進んでいるという切迫感はない。また、経済環境全体に切迫感がない限り、霧の中を運転するように、ゆっくり進むのが妥当だ」、「現時点で政策金利を引き下げる緊急性はない」 | -------- |
7/1 | パウエル・FRB議長 | 「(関税の行方に)われわれは注視している。夏にかけていくらかの数値が上がると予想している」と話し、その上で「ただし影響が想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのかは、今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意がある」、(月利下げについては)「検討は会合ごとに行われる。どの会合も選択肢から排除しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」 | 利下げの可能性を排除しなかったことで、ドル円はやや売られる。 |
6/26 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 7月会合までに得られるデータは、あと1ヵ月分に過ぎない。それ以上のデータを確認したいと考えるだろう」 | -------- |
6/26 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレが当局の目指す2%へと明らかに減速し、経済見通しを巡る不確実性が後退すれば利下げ再開もあり得る。良好なデータが得られており、関税の影響も限定的にとどまるかもしれないと楽観しているが、確証を待ちたい」 | -------- |
6/26 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「どの方向にせよ、性急に進むことには得るものがほとんどない。現在の経済の強さを踏まえれば、われわれには情勢の展開を辛抱強く見守り、見通しが明確になるまで待つ時間がある」 | -------- |
6/26 | デーリー・SF連銀総裁 | 「私の中心的な見方としては、秋ごろから金利の調整が開始できるというものであり、その考えは特に変わっていない」、「労働市場には減速の兆しはあるものの、悪化を示す警告サインは見られない」 | -------- |
6/25 | パウエル・FRB議長 | 「関税が消費者物価に及ぼす影響を金融当局としてまだ見極めきれていない。関税のうちのどの程度がインフレとして表面化するのか、前もって予測するのは非常に困難だ」 | -------- |
6/24 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「現行の金利はわずかに景気抑制的な水準だが、当局の目標達成までにはまだ一定の距離がある」、「政策金利はFOMCがごく緩やかな利下げで中立的な水準に戻す前に、かなりの期間据え置かれる可能性が高い」 | -------- |
6/24 | バー・FRB理事 | 「経済は現在、堅調な足どりを見せている。失業率は低水準で、インフレはFRBの目標の2%に向けて低下してきている」、「ただ今後を見据えると、関税の影響でインフレは加速すると予想する。短期のインフレ期待の高まり、サプライチェーンの調整、そして二次的影響により、インフレはやや長引く可能性がある」 | -------- |
6/24 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「関税やその他の政策論争がどのように進展するか見守るための、余裕と時間はある」 | -------- |
6/24 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「政策変更が労働市場とインフレに及ぼす影響を当局者が分析する間、金利を据え置くことは完全に適切だ」 | -------- |
6/24 | パウエル・FRB議長 | 「当面は、政策スタンスの調整を検討する前に、経済の進路についてより多くの情報が得られるのを待つ体制が整っている」、(7月の利下げの可能性について問われ)、「インフレ圧力が本当に抑制されたままだということになれば、早めに利下げに踏み切ることになるだろう」、「特定の会合を指すことは避けたい。経済は依然として強く、急ぐ必要はないと考えている」 | -------- |
6/23 | ボウマン・FRB理事 | 「インフレ圧力が抑制されたままであれば、政策金利を中立水準に近づけ、健全な労働市場を維持するために、次回の会合で利下げを支持する」、(「トランプ関税」について)、「関税などの政策によって重大な影響が出ているという明確な兆候はデータには表れていない。多くの企業が事前に積み増していたため、関税によるインフレへの影響は当初の予想より表れるまでに時間がかかり、影響の度合いも当初予想より小さくなる可能性が高いと考えられる」 | 中東情勢の好転もあり、ドル円は148円前後から146円台前半まで下げる。 |
6/18 | パウエル・FRB議長 | 「政策スタンスの調整を検討する前に、経済の見通しについてより多くの情報を持てる状況にある」、(経済の不確実性が高いことを踏まえ)、「誰もこうした金利の道筋に強い確信を持っていない。景気見通しに関する不確実性は低下したが、依然として高い」 | ドル円は144円台半ばから145円台に。 |
6/18 | FOMCの議事録 | 「最近の複数の指標は経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率は低いままで、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 | -------- |
6/11 | ベッセント・財務長官 | 「誠意を持って交渉している貿易相手国に対しては、発動時期をさらに延長する可能性が極めて高い、そうでない国に対しては延期をしない」・・議会証言で。 | -------- |
6/6 | トランプ・米大統領 | 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 | -------- |
6/5 | ラガルド・ECB総裁 | 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 | ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。 |
6/3 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書