「トランプ大統領、新たに8カ国に関税通知」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は147円台から反落。米金利が低下し、持ち高調整によるドル売りも入り、146円25銭まで下落。
- ユーロドルはほぼ変わらず、1.17を挟んでもみ合う。
- 株式市場は金利低下を好感し3指数が上昇。ナスダックはエヌビディアが牽引し最高値を更新。同株は時価総額が4兆ドル(約584兆円)を突破。
- 債券は反発。長期金利は4.32%台に低下。
- 金は4日ぶりに反発。原油は小幅に続伸。
ドル/円 | 146.25 〜 146.77 |
---|---|
ユーロ/ドル | 1.1693 〜 1.1724 |
ユーロ/円 | 171.25 〜 171.73 |
NYダウ | +217.54 → 44,458.30 |
GOLD | +4.10 → 3,321.00ドル |
WTI | +0.05 → 68.38 |
米10年国債 | −0.067 → 4.332% |
本日の注目イベント
- 英 英6月消費者物価指数
- 米 新規失業保険申請件
- 米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁講演
- 米 ムサレム・セントルイス連銀総裁講演
本日のコメント
ドル円は昨日の東京時間に147円18銭近辺まで買われ、前日のNYでの高値を抜きましたが、昨日のNYでは米長期金利の低下もあり、終始146円台での動きでした。一方で連日堅調な動きを見せているユーロドルは、ドルが買われた割にはユーロ高が進まず、結局ドル円が円高に振れた分だけユーロ円も円高方向に下げています。ユーロが今後も利下げを続けるのかどうか、メンバーの中でも意見が分かれているようで、来週17日に発表される「6月の消費者物価指数」の結果が鍵を握っていると見られます。
ベッセント財務長官が19日前後に来日する見込みです。ブルームバーグは、同長官は万博の米国代表団長として来日する予定だと報じており、8月1日まで延期された日本への関税率の適用に関して協議を行う目的ではないようです。この件に関して今朝の報道では、「日本を特別扱いするのでは?」といった、日本側の淡い期待も後退したと伝えられていますが、そもそも4月2日の相互関税発表前からトランプ大統領は「同盟国でも特別扱いはしない」と明言していました。最後には自身で全てを決めてしまうトランプ氏が、日本の自動車のさらなる販売拡大を受け入れられない以上、ベッセント氏といえども従うしかありません。赤沢経済再生相が7回も訪米しながら、結局何の成果も得られなかったのは、そもそも交渉する相手が間違っていたことを表しています。
そのトランプ氏は、新たに8カ国に対して関税通知の書簡を公表しました。これまでの送付分と同じく、米国と通商合意が成立しない場合、8月から新税率が適用されることになります。8カ国の中でも特にブラジルに対する決定が厳しく、当初、上乗せ関税がゼロとされていたものが50%の関税が通知され、これは7日以降に通知された関税率の中でも最も高い税率になります。トランプ氏はブラジルについて、「われわれに対して全く良い対応をしていない」と述べていました。この他にも、アルジェリア、イラク、スリランカに対する税率は30%などとなっており、今後もさらに関税通知の書簡を送る予定だとしています。トランプ氏は、先日の会見で「8月からお金が入ってくる。大金だ」と述べていました。
先月17−18日に開催されたFOMC議事録が公開されました。議事要旨では、「数人の参加者は関税が一時的な物価上昇を引き起こすものの、より長期のインフレ期待には影響しないと指摘した。しかし大部分の参加者は、関税がより持続的な影響をインフレに与えるリスクがあると主張した」と記されていました。メンバーの中ではトランプ関税に対する見方が分かれており、上記楽観的な見方は、ボウマン副議長とウォラー理事であることは分かっています。トランプ氏は「金利を引き下げる人物を議長に指名する」と、繰り返し述べており、上記2人も候補者に入りそうです。トランプ氏はこの日もSNSで、パウエル議長に金利引き下げを要求しながら、「少なくとも3ポイント高すぎる。パウエル氏は米国に1ポイント当たり年間3600億ドル(約52兆7000億円)の借り換えコストをもたらしている。金利を引き下げるべきだ」と批判していました。米議会では、トランプ氏が最も心血を注いできた「大型減税・歳出法案」が可決しています。これにより連邦債務は今後10年間で3兆4000億ドル(約500兆円)増えるとの試算もあります。トランプ氏は、この大規模な歳出超過分を「関税と金利の引き下げ」で補完したい意向のようです。8月から米国に大金が入ってきます。
本日のドル円は145円20銭〜147円程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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7/2 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「経済指標は非常に堅調だ。経済が悪い方向に進んでいるという切迫感はない。また、経済環境全体に切迫感がない限り、霧の中を運転するように、ゆっくり進むのが妥当だ」、「現時点で政策金利を引き下げる緊急性はない」 | -------- |
7/1 | パウエル・FRB議長 | 「(関税の行方に)われわれは注視している。夏にかけていくらかの数値が上がると予想している」と話し、その上で「ただし影響が想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのかは、今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意がある」、(月利下げについては)「検討は会合ごとに行われる。どの会合も選択肢から排除しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」 | 利下げの可能性を排除しなかったことで、ドル円はやや売られる。 |
6/26 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 7月会合までに得られるデータは、あと1ヵ月分に過ぎない。それ以上のデータを確認したいと考えるだろう」 | -------- |
6/26 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレが当局の目指す2%へと明らかに減速し、経済見通しを巡る不確実性が後退すれば利下げ再開もあり得る。良好なデータが得られており、関税の影響も限定的にとどまるかもしれないと楽観しているが、確証を待ちたい」 | -------- |
6/26 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「どの方向にせよ、性急に進むことには得るものがほとんどない。現在の経済の強さを踏まえれば、われわれには情勢の展開を辛抱強く見守り、見通しが明確になるまで待つ時間がある」 | -------- |
6/26 | デーリー・SF連銀総裁 | 「私の中心的な見方としては、秋ごろから金利の調整が開始できるというものであり、その考えは特に変わっていない」、「労働市場には減速の兆しはあるものの、悪化を示す警告サインは見られない」 | -------- |
6/25 | パウエル・FRB議長 | 「関税が消費者物価に及ぼす影響を金融当局としてまだ見極めきれていない。関税のうちのどの程度がインフレとして表面化するのか、前もって予測するのは非常に困難だ」 | -------- |
6/24 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「現行の金利はわずかに景気抑制的な水準だが、当局の目標達成までにはまだ一定の距離がある」、「政策金利はFOMCがごく緩やかな利下げで中立的な水準に戻す前に、かなりの期間据え置かれる可能性が高い」 | -------- |
6/24 | バー・FRB理事 | 「経済は現在、堅調な足どりを見せている。失業率は低水準で、インフレはFRBの目標の2%に向けて低下してきている」、「ただ今後を見据えると、関税の影響でインフレは加速すると予想する。短期のインフレ期待の高まり、サプライチェーンの調整、そして二次的影響により、インフレはやや長引く可能性がある」 | -------- |
6/24 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「関税やその他の政策論争がどのように進展するか見守るための、余裕と時間はある」 | -------- |
6/24 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「政策変更が労働市場とインフレに及ぼす影響を当局者が分析する間、金利を据え置くことは完全に適切だ」 | -------- |
6/24 | パウエル・FRB議長 | 「当面は、政策スタンスの調整を検討する前に、経済の進路についてより多くの情報が得られるのを待つ体制が整っている」、(7月の利下げの可能性について問われ)、「インフレ圧力が本当に抑制されたままだということになれば、早めに利下げに踏み切ることになるだろう」、「特定の会合を指すことは避けたい。経済は依然として強く、急ぐ必要はないと考えている」 | -------- |
6/23 | ボウマン・FRB理事 | 「インフレ圧力が抑制されたままであれば、政策金利を中立水準に近づけ、健全な労働市場を維持するために、次回の会合で利下げを支持する」、(「トランプ関税」について)、「関税などの政策によって重大な影響が出ているという明確な兆候はデータには表れていない。多くの企業が事前に積み増していたため、関税によるインフレへの影響は当初の予想より表れるまでに時間がかかり、影響の度合いも当初予想より小さくなる可能性が高いと考えられる」 | 中東情勢の好転もあり、ドル円は148円前後から146円台前半まで下げる。 |
6/18 | パウエル・FRB議長 | 「政策スタンスの調整を検討する前に、経済の見通しについてより多くの情報を持てる状況にある」、(経済の不確実性が高いことを踏まえ)、「誰もこうした金利の道筋に強い確信を持っていない。景気見通しに関する不確実性は低下したが、依然として高い」 | ドル円は144円台半ばから145円台に。 |
6/18 | FOMCの議事録 | 「最近の複数の指標は経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率は低いままで、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 | -------- |
6/11 | ベッセント・財務長官 | 「誠意を持って交渉している貿易相手国に対しては、発動時期をさらに延長する可能性が極めて高い、そうでない国に対しては延期をしない」・・議会証言で。 | -------- |
6/6 | トランプ・米大統領 | 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 | -------- |
6/5 | ラガルド・ECB総裁 | 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 | ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。 |
6/3 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書