「ドル円10日ぶりに146円台前半まで下落」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円はさらに下落。米金利が低下したことや日本の参院選の結果が改めて意識され、ドル円は146円31銭まで売られる。
- ユーロドルは小幅に買われ、1.1760まで上昇。
- 株式市場ではまちまちの展開の中、S&P500は小幅に買われ最高値を更新。
- 債券は買われ、長期金利は4.34%台に低下。
- 金は大幅に続伸。原油は3日続落。
7月リッチモンド連銀製造業景況指数 → −20
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ドル/円 | 146.31 〜 147.25 |
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ユーロ/ドル | 1.1678 〜 1.1760 |
ユーロ/円 | 171.36 〜 172.41 |
NYダウ | +179.37 → 44,502.44 |
GOLD | +37.30 → 3,443.70ドル |
WTI | −0.99 → 66.21 |
米10年国債 | −0.034 → 4.344% |
本日の注目イベント
- 日 内田日銀副総裁、高知県金融経済懇談会で講演
- 欧 ユーロ圏7月消費者信頼感指数(速報値)
- 米 6月中古住宅販売件数
- 米 トランプ大統領、AI政策を巡り演説
- 米 決算発表 → AT&T、テスラ、アルファベット、IBM
本日のコメント
昨日の「今週のレンジ予想」でも触れましたが、パウエルFRB議長の解任を巡る波紋が広がってきました。
ベッセント財務長官はFOXビジネスの番組で、改めてパウエル氏の辞任は必要ないとの認識を示しました。ベッセント氏は、「パウエル氏が今辞任すべきだと思われる要素は何もない」と述べ、「5月の任期まで務めたいのであれば、そうすべきだし、任期前の退任を望むのであれば、そうすべきだ」と話し、トランプ政権関係者の批判の標的になっているパウエル氏に対して支持を示した格好になりました。ベッセント氏は、すでに内々にパウエル氏を続投させるべきだとトランプ大統領には話しており、解任した際の市場への影響についても説明していると報じられています。
反対に、パウエル氏は辞任すべきだとの意見が、トランプ政権外から出てきたことが注目されています。かつてピムコのCEOを務め「債券の帝王」と称されたモハメド・エラリアン氏は、「FRBの運営上の独立性を守ることがパウエル氏の目標であるならば、辞任すべきだ」とSNSに投稿しました。エラリアン氏は「これがコンセンサスでないことは承知している。5月までの任期を全うすべきとの意見が主流だ」と述べています。これに対して、サマーズ元財務長官は大きな誤りだとして反論しています。サマーズ氏は、「パウエル氏が圧力に屈して辞任することが、FRBの独立性に資することの考えは非常に間違っている。仮にFRB議長が大統領のいいなりの存在になれば、金融政策におけるFRBの独立性は失われる」と厳しく批判していました。筆者も個人的にはサマーズ氏の考えを支持したいと思います。パウエル氏が任期前に辞任する可能性は非常に低いと考えていますが、仮に辞任した場合、今後も大統領が金融政策にも口を挟み、金融政策そのものを大統領の政治的思惑で操作するといった「悪しき慣習」が出来てしまいます。その結果、大統領の権限がさらに強大になることにつながる懸念もあります。
20日の参院選で大敗しながらも続投を表明した石破首相に対して、党内、とりわけ若手から「退陣すべし」との声が上がっているようです。選挙対策の責任者でもある木原選対委員長は昨日、「下野もありえる。選択肢の一つだ」とは発言しています。党内若手議員からは「(続投は)国民の審判を軽視している」といった声や、「責任を取るのはリーダーの当然の帰結だ」といった声が上がっています。石破氏は今日にも、麻生氏や岸田氏といった首相経験者と会談する可能性もあるようですが、会談の内容次第では退陣に向け一気に流れが加速する可能性もあります。もし自民党内で総裁選が行われるようになれば、高市氏などが再び候補者となり、その時点で円が売られるとことも考えられます。また政治的混迷も円売り材料になります。今後の焦点は、日米関税協議の行方と、日本の政局ということでしょうか。日米関税協議に関してベッセント氏は上記FOXビジネスの番組で、「日本側は本格的に交渉のテーブルに着いて来た。近い内に日本との間で何らかの合意がまとまっても驚かない」と、やや楽観的に話していました。
トランプ氏は22日、米国とフィリピンが貿易協定で合意したとホワイトハウスで発表しました。同国からの輸入品にかける関税率を19%とし、これまでの20%からわずか1ポイント引き下げた水準で合意しました。一方で米国からの輸入品に対する関税はゼロです。フィリピンがこの条件で納得したのには驚きですが、トランプ氏は「われわれは、軍事面でも協力していく」と述べており、この辺りに関税率を上回る何かがありそうです。ブルームバーグはこれに関して、「関税率のわずかな引き下げは、各国・地域首脳が関税措置の緩和を目指す中、米側の譲歩を引き出すことの難しさを浮き彫りにするものだ」と論じています。関税発動までほぼ1週間に迫る中、赤沢経済再生相はそれなりの決意と対案を持って8回目の協議に向かったと思われます。合意が近いのかもしれません。
本日のドル円は146円〜148円程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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7/10 | デーリー・SF連銀総裁 | 「2回の利下げというのが可能性の高いシナリオだと私はみているが、あらゆる当局の予測には不確実性が伴う」 | -------- |
7/10 | ペンス・元副大統領 | 「われわれは主に中国を対象に、相手の行動の変化を促すべく関税やその脅威を交渉手段として用いた。目的は本質的に貿易障壁を下げ、貿易を拡大することだった」、「トランプ氏は米産業政策の長期的な転換を進めており、恒久的かつ一方的な貿易関税が米国にとって長期的に有益だと見なしているとは、私は考えていない」、「自由市場を信奉する保守派として、私はそれには賛同できない」 | -------- |
7/2 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「経済指標は非常に堅調だ。経済が悪い方向に進んでいるという切迫感はない。また、経済環境全体に切迫感がない限り、霧の中を運転するように、ゆっくり進むのが妥当だ」、「現時点で政策金利を引き下げる緊急性はない」 | -------- |
7/1 | パウエル・FRB議長 | 「(関税の行方に)われわれは注視している。夏にかけていくらかの数値が上がると予想している」と話し、その上で「ただし影響が想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのかは、今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意がある」、(月利下げについては)「検討は会合ごとに行われる。どの会合も選択肢から排除しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」 | 利下げの可能性を排除しなかったことで、ドル円はやや売られる。 |
6/26 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 7月会合までに得られるデータは、あと1ヵ月分に過ぎない。それ以上のデータを確認したいと考えるだろう」 | -------- |
6/26 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレが当局の目指す2%へと明らかに減速し、経済見通しを巡る不確実性が後退すれば利下げ再開もあり得る。良好なデータが得られており、関税の影響も限定的にとどまるかもしれないと楽観しているが、確証を待ちたい」 | -------- |
6/26 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「どの方向にせよ、性急に進むことには得るものがほとんどない。現在の経済の強さを踏まえれば、われわれには情勢の展開を辛抱強く見守り、見通しが明確になるまで待つ時間がある」 | -------- |
6/26 | デーリー・SF連銀総裁 | 「私の中心的な見方としては、秋ごろから金利の調整が開始できるというものであり、その考えは特に変わっていない」、「労働市場には減速の兆しはあるものの、悪化を示す警告サインは見られない」 | -------- |
6/25 | パウエル・FRB議長 | 「関税が消費者物価に及ぼす影響を金融当局としてまだ見極めきれていない。関税のうちのどの程度がインフレとして表面化するのか、前もって予測するのは非常に困難だ」 | -------- |
6/24 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「現行の金利はわずかに景気抑制的な水準だが、当局の目標達成までにはまだ一定の距離がある」、「政策金利はFOMCがごく緩やかな利下げで中立的な水準に戻す前に、かなりの期間据え置かれる可能性が高い」 | -------- |
6/24 | バー・FRB理事 | 「経済は現在、堅調な足どりを見せている。失業率は低水準で、インフレはFRBの目標の2%に向けて低下してきている」、「ただ今後を見据えると、関税の影響でインフレは加速すると予想する。短期のインフレ期待の高まり、サプライチェーンの調整、そして二次的影響により、インフレはやや長引く可能性がある」 | -------- |
6/24 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「関税やその他の政策論争がどのように進展するか見守るための、余裕と時間はある」 | -------- |
6/24 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「政策変更が労働市場とインフレに及ぼす影響を当局者が分析する間、金利を据え置くことは完全に適切だ」 | -------- |
6/24 | パウエル・FRB議長 | 「当面は、政策スタンスの調整を検討する前に、経済の進路についてより多くの情報が得られるのを待つ体制が整っている」、(7月の利下げの可能性について問われ)、「インフレ圧力が本当に抑制されたままだということになれば、早めに利下げに踏み切ることになるだろう」、「特定の会合を指すことは避けたい。経済は依然として強く、急ぐ必要はないと考えている」 | -------- |
6/23 | ボウマン・FRB理事 | 「インフレ圧力が抑制されたままであれば、政策金利を中立水準に近づけ、健全な労働市場を維持するために、次回の会合で利下げを支持する」、(「トランプ関税」について)、「関税などの政策によって重大な影響が出ているという明確な兆候はデータには表れていない。多くの企業が事前に積み増していたため、関税によるインフレへの影響は当初の予想より表れるまでに時間がかかり、影響の度合いも当初予想より小さくなる可能性が高いと考えられる」 | 中東情勢の好転もあり、ドル円は148円前後から146円台前半まで下げる。 |
6/18 | パウエル・FRB議長 | 「政策スタンスの調整を検討する前に、経済の見通しについてより多くの情報を持てる状況にある」、(経済の不確実性が高いことを踏まえ)、「誰もこうした金利の道筋に強い確信を持っていない。景気見通しに関する不確実性は低下したが、依然として高い」 | ドル円は144円台半ばから145円台に。 |
6/18 | FOMCの議事録 | 「最近の複数の指標は経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率は低いままで、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 | -------- |
6/11 | ベッセント・財務長官 | 「誠意を持って交渉している貿易相手国に対しては、発動時期をさらに延長する可能性が極めて高い、そうでない国に対しては延期をしない」・・議会証言で。 | -------- |
6/6 | トランプ・米大統領 | 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 | -------- |
6/5 | ラガルド・ECB総裁 | 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 | ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。 |
6/3 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書