今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「日米関税協議、急転直下合意」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 東京時間朝方、日米が関税協議で合意したことや石破首相の退陣報道でドル円は乱高下。NYではドルが売られたが146円台前半で下げ止まる。
  • ユーロドルは買いが先行したが、1.17台で推移。
  • 株式市場は日米関税協議の合意を好感し3指数が大きく買われる。ナスダックとS&P500は再び最高値を更新。
  • 債券は反落し、長期金利は4.38%台に上昇。
  • 金は反落し、原油は小幅に続落。
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6月中古住宅販売件数 → 393万件
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ドル/円 146.16 〜 146.71
ユーロ/ドル 1.1711 〜 1.1775
ユーロ/円 171.39 〜 172.55
NYダウ +507.85 → 45,010.29
GOLD −46.10 → 3,397.60ドル
WTI −0.06 → 65.25
米10年国債 +0.036 → 4.380%

本日の注目イベント

  • 独 独7月GFK消費者信頼調査
  • 独 独7月製造業PMI(速報値)
  • 独 独7月サービス業PMI(速報値)
  • 欧 ECB政策金利発表
  • 欧 ラガルド・ECB総裁記者会見
  • 欧 ユーロ圏7月製造業PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏7月サービス業PMI(速報値)
  • 英 英7月製造業PMI(速報値)
  • 英 英7月サービス業PMI(速報値)
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 6月新築住宅販売件数
  • 米 7月S&Pグローバル製造業PMI(速報値)
  • 米 7月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値))
  • 米 7月S&Pグローバル総合PMI(速報値)
  • 米 決算発表 → インテル

本日のコメント

昨日の朝方の「日米、関税協議で合意」との一報、ややサプライズでした・・・。

筆者は昨日のコメントの最後に、ベッセント財務長官の発言などを考慮し、「関税発動までほぼ1週間に迫る中、赤沢経済再生相はそれなりの決意と対案を持って8回目の協議に向かったと思われます。合意が近いのかもしれません」と書きました。コメントを書き終えた直後、「トランプ大統領、日本への関税15%で合意」との一報が入りました。8月1日までには合意の可能性があるかとは思っていましたが、正直驚きました。日経平均株価は自動車株が牽引する形でぐんぐん上昇し、午後には一時前日比1500円を超えるほど上昇しました。トヨタ株など自動車株は軒並み10%を超える上昇でした。為替はやや円高方向に振れましたが、石破首相が月内にも退陣を発表するとのニュースで147円台までドルが買われる場面もありましたが、上値の重い展開でした。15%という関税率は微妙な数字ですが、一時は30%という数字も飛び交っていたことを考えると、15%の関税率では日本からの自動車輸出はそう減少しないとの見立てから円が買われたものと思われます。日本の債券市場では、日米合意を受けて日銀が追加利上げに動きやすくなるとの見立てから債券が売られ、長期金利は17年ぶりとなる1.60%台まで上昇。これもドル円の押し下げ要因になりました。

ホワイトハウスのレビット報道官は、日本は米国に5500億ドル(約81兆円)の投資をすることで合意したと発表しています。また、この5500億ドルの投資による利益の90%は米国が保持することになるとも説明していました。今回の合意の背景には、トランプ大統領側も譲歩した可能性はありますが、日本からも様々な提案がなされたと思われます。上記5500億ドルの投資もその一つですが、「数十億ドルの防衛装備品などを購入することで合意した」とトランプ氏自身がSNSで投稿しています。さらにコメを含む農産物の輸入拡大もありそうです。また、ボーイング社の航空機100機を購入することも含まれています。石破首相は選挙期間中に、「なめられてたまるか」と厳しい発言をしましたが、この言葉とは裏腹に日本側の弱腰とも思える提案に、トランプ氏は「してやったり」と頷いたということでしょう。

その石破首相ですが、複数のメディアが「首相、月内の退陣を検討」と報じていました。ただ夜のNHKの報道では、首相は岸田氏など首相経験者との会談を終え「私の出処進退については一切出ていない。一部にそのような報道があるが、そのような発言をしたことは一度もない。報道されているような事実は全くない」と答えていました。しかしこの強気の発言とは異なり、自民党内では先の総裁選で争った高市氏や、小林、小泉、加藤、林氏などがすでに動き出しています。また、党内の若手議員からも責任を問う声が上がっており、このまま続投というシナリオはなさそうです。ただ、今回の参院選での大敗は石破氏一人の責任ではありません。旧統一教会問題やパーティー券売上金の不記載問題など、旧安倍派の重鎮が起こした「カネの問題」に端を発し、若い有権者を中心に支持を失ったことが大きな敗因です。石破氏は「沈みかけた船」に乗せられ、操縦を任されたにすぎないと思います。石破氏以外の誰が操縦しようが、「時すでに遅し」ということでした。

EUとの関税合意も近いとされており、トランプ関税もいよいよ幕を閉じそうです。米国では、その影響によりインフレがどこまで進行して来るのかという点と、パウエル議長の去就が今後の材料になりそうです。また日本では、長期金利の上昇が続き、このままでは日米金利差縮小からドルが売られそうな気配も感じられますが、冷静に考えてみれば、このまま日本の長期金利が一段と上昇すれば、国債の利払いが急激に増えさらに財政状況が悪化することが考えられます。財政悪化がさらに進めば「格付けのさらなる引き下げ→日本売り→円安の進行」といったシナリオも想定されます。石破首相が退陣し、仮に高市氏などが次期首相の最右翼になれば、さらにこの傾向に拍車がかかりそうです。

本日のドル円は145円50銭〜147円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
7/10 デーリー・SF連銀総裁 「2回の利下げというのが可能性の高いシナリオだと私はみているが、あらゆる当局の予測には不確実性が伴う」 --------
7/10 ペンス・元副大統領 「われわれは主に中国を対象に、相手の行動の変化を促すべく関税やその脅威を交渉手段として用いた。目的は本質的に貿易障壁を下げ、貿易を拡大することだった」、「トランプ氏は米産業政策の長期的な転換を進めており、恒久的かつ一方的な貿易関税が米国にとって長期的に有益だと見なしているとは、私は考えていない」、「自由市場を信奉する保守派として、私はそれには賛同できない」 --------
7/2 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「経済指標は非常に堅調だ。経済が悪い方向に進んでいるという切迫感はない。また、経済環境全体に切迫感がない限り、霧の中を運転するように、ゆっくり進むのが妥当だ」、「現時点で政策金利を引き下げる緊急性はない」 --------
7/1 パウエル・FRB議長 「(関税の行方に)われわれは注視している。夏にかけていくらかの数値が上がると予想している」と話し、その上で「ただし影響が想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのかは、今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意がある」、(月利下げについては)「検討は会合ごとに行われる。どの会合も選択肢から排除しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」 利下げの可能性を排除しなかったことで、ドル円はやや売られる。
6/26 コリンズ・ボストン連銀総裁 7月会合までに得られるデータは、あと1ヵ月分に過ぎない。それ以上のデータを確認したいと考えるだろう」 --------
6/26 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレが当局の目指す2%へと明らかに減速し、経済見通しを巡る不確実性が後退すれば利下げ再開もあり得る。良好なデータが得られており、関税の影響も限定的にとどまるかもしれないと楽観しているが、確証を待ちたい」 --------
6/26 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「どの方向にせよ、性急に進むことには得るものがほとんどない。現在の経済の強さを踏まえれば、われわれには情勢の展開を辛抱強く見守り、見通しが明確になるまで待つ時間がある」 --------
6/26 デーリー・SF連銀総裁 「私の中心的な見方としては、秋ごろから金利の調整が開始できるというものであり、その考えは特に変わっていない」、「労働市場には減速の兆しはあるものの、悪化を示す警告サインは見られない」 --------
6/25 パウエル・FRB議長 「関税が消費者物価に及ぼす影響を金融当局としてまだ見極めきれていない。関税のうちのどの程度がインフレとして表面化するのか、前もって予測するのは非常に困難だ」 --------
6/24 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「現行の金利はわずかに景気抑制的な水準だが、当局の目標達成までにはまだ一定の距離がある」、「政策金利はFOMCがごく緩やかな利下げで中立的な水準に戻す前に、かなりの期間据え置かれる可能性が高い」 --------
6/24 バー・FRB理事 「経済は現在、堅調な足どりを見せている。失業率は低水準で、インフレはFRBの目標の2%に向けて低下してきている」、「ただ今後を見据えると、関税の影響でインフレは加速すると予想する。短期のインフレ期待の高まり、サプライチェーンの調整、そして二次的影響により、インフレはやや長引く可能性がある」 --------
6/24 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「関税やその他の政策論争がどのように進展するか見守るための、余裕と時間はある」 --------
6/24 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「政策変更が労働市場とインフレに及ぼす影響を当局者が分析する間、金利を据え置くことは完全に適切だ」 --------
6/24 パウエル・FRB議長 「当面は、政策スタンスの調整を検討する前に、経済の進路についてより多くの情報が得られるのを待つ体制が整っている」、(7月の利下げの可能性について問われ)、「インフレ圧力が本当に抑制されたままだということになれば、早めに利下げに踏み切ることになるだろう」、「特定の会合を指すことは避けたい。経済は依然として強く、急ぐ必要はないと考えている」 --------
6/23 ボウマン・FRB理事 「インフレ圧力が抑制されたままであれば、政策金利を中立水準に近づけ、健全な労働市場を維持するために、次回の会合で利下げを支持する」、(「トランプ関税」について)、「関税などの政策によって重大な影響が出ているという明確な兆候はデータには表れていない。多くの企業が事前に積み増していたため、関税によるインフレへの影響は当初の予想より表れるまでに時間がかかり、影響の度合いも当初予想より小さくなる可能性が高いと考えられる」 中東情勢の好転もあり、ドル円は148円前後から146円台前半まで下げる。
6/18 パウエル・FRB議長 「政策スタンスの調整を検討する前に、経済の見通しについてより多くの情報を持てる状況にある」、(経済の不確実性が高いことを踏まえ)、「誰もこうした金利の道筋に強い確信を持っていない。景気見通しに関する不確実性は低下したが、依然として高い」 ドル円は144円台半ばから145円台に。
6/18 FOMCの議事録 「最近の複数の指標は経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率は低いままで、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 --------
6/11 ベッセント・財務長官 「誠意を持って交渉している貿易相手国に対しては、発動時期をさらに延長する可能性が極めて高い、そうでない国に対しては延期をしない」・・議会証言で。 --------
6/6 トランプ・米大統領 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 --------
6/5 ラガルド・ECB総裁 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。
6/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和