今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「トランプ大統領FRB本部を訪問」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 東京時間に145円86銭前後まで売られたドル円は反発。NYでは失業保険申請件数が6週間連続で減少したことを受け、労働市場の堅調さが再確認された。ドル円は147円03銭まで買われる。
  • ユーロドルはECBが政策金利据え置き決めたことで、1.17台で堅調に推移。
  • 株式市場ではナスダックとS&P500が小幅ながら連日で最高値を更新。
  • 債券は続落。長期金利は4.39%台に上昇。
  • 金は続落し、原油は反発。
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新規失業保険申請件数 → 21.7万件
6月新築住宅販売件数 → 62.7万件
7月S&Pグローバル製造業PMI(速報値) → 49.5
7月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値) → 55.2
7月S&Pグローバル総合PMI(速報値) → 54.6
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ドル/円 146.36 〜 147.03
ユーロ/ドル 1.1732 〜 1.1789
ユーロ/円 171.93 〜 172.92
NYダウ −316.38 → 44,693.91
GOLD −24.10 → 3,373.50ドル
WTI +0.78 → 66.03
米10年国債 +0.016 → 4.396%

本日の注目イベント

  • 日 7月東京都区部消費者物価指数
  • 日 5月景気先行指数(CI)(改定値)
  • 独 独7月ifo景況感指数
  • 英 英6月小売売上高
  • 米 6月耐久財受注

本日のコメント

トランプ大統領が、FRBの本部を異例なことに訪問しました。「パウエル議長との和解か?」と思いきや、議長と会談を行う目的ではなく、改修工事が行われている本部の建物視察でした。FRB本部改修工事を巡っては、トランプ氏や側近、一部の共和党議員が予算超過を非難し、さらにパウエル氏率いる金融当局が今年に入り政策金利の据え置きを続けていることに腹をたてており、パウエル氏解任の可能性が完全に消えていない中でのトランプ氏の訪問でした。両氏は工事用のヘルメットを着用し、建設現場の一部を歩いて回ったようです。トランプ氏はこの中で、パウエル氏の解任は不要との認識を示しながらも、「パウエル議長は金利について正しいことを行う」との認識も示していました。記者団から自身の建設プロジェクトで管理責任者が予算を超過したらどうするとの質問に対して、「一般的に言って、クビにするだろう」と答えていました。来週30日には夏休み前最後のFOMCが開催されます。この機会に利下げがないとすると9月会合まで待たなければならず、トランプ氏は会合を前に忙しい日程をやりくりし、あえてFRB本部を訪問することで「パウエル氏にプレッシャーをかけた」とみるのが順当のようです。

ECBは昨日の理事会で、政策金利である中銀預金金利を2%に据え置くことを決めました。これまでECBは7会合連続で利下げを断行してきた経緯があります。今回の会合では、据え置きか利下げか見方が分かれていましたが、インフレ率が順調に低下し、ECBの目標である2%に達していることから今回は見送りを決めたようです。ECBは声明で「これまでのところ経済は全体として底堅さを示している。しかし、通商摩擦をはじめとする要因により、依然として先行きは極めて不透明だ」と述べています。ユーロ圏の消費者物価指数(CPI)は6月が「2.0%」でしたが、5月には目標を下回る「1.9%」まで低下していました。また足元では、米ドルの代替としてユーロが買われている側面もあり、今後もユーロ高が続くと域内の物価がさらに低下する懸念もあります。「通貨ユーロの水準」の問題からも、政策金利の動向が注目されます。ラガルド総裁は会見で、2%の物価目標が達成されていることを指摘し、「現在の状況は良好だ。今は金利を据え置き、リスクが今後数か月の間にどう展開していくかを見守ることが適切な状況にある」と説明しています。

トランプ政権は昨日、AIの競争力強化に向けた包括的な戦略を発表しました。トランプ氏は「人類史上最も重要な技術革新の初期段階にあり、いかなる外国にも負けることは許されない。AIで世界をリードするために必要なあらゆることをやる」と宣言していました。中国を念頭に置いた発言とみられますが、日本のソフトバンクが米オープンAIと共同で提唱した1000億ドル(約147兆円)規模の「スターゲート」プロジェクトなどが注目されます。

ドル円は145円台後半まで売られましたが、再び147円台を回復しています。145−150円のレンジが形成されていると見ていますが、執拗に利下げを求めるトランプ氏の次の一手と、日本の政局の行方次第ではまだ円高方向に振れるリスクは排除できません。本日のドル円は146円〜148円程度を予想します。

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7月28日〜30日の「アナリストレポート」は都合によりお休みとさせていただきます。ご愛読者の皆様にはご不便をおかけいたしますが、ご理解の程宜しくお願い申し上げます。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
7/24 ラガルド・ECB総裁 「現在の状況は良好だ。今は金利を据え置き、リスクが今後数か月の間にどう展開いていくかを見守ることが適切な状況にある」 --------
7/24 ECB声明文 「これまでのところ経済は全体として底堅さを示している。しかし、通商摩擦をはじめとする要因により、依然として先行きは極めて不透明だ」 --------
7/10 デーリー・SF連銀総裁 「2回の利下げというのが可能性の高いシナリオだと私はみているが、あらゆる当局の予測には不確実性が伴う」 --------
7/10 ペンス・元副大統領 「われわれは主に中国を対象に、相手の行動の変化を促すべく関税やその脅威を交渉手段として用いた。目的は本質的に貿易障壁を下げ、貿易を拡大することだった」、「トランプ氏は米産業政策の長期的な転換を進めており、恒久的かつ一方的な貿易関税が米国にとって長期的に有益だと見なしているとは、私は考えていない」、「自由市場を信奉する保守派として、私はそれには賛同できない」 --------
7/2 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「経済指標は非常に堅調だ。経済が悪い方向に進んでいるという切迫感はない。また、経済環境全体に切迫感がない限り、霧の中を運転するように、ゆっくり進むのが妥当だ」、「現時点で政策金利を引き下げる緊急性はない」 --------
7/1 パウエル・FRB議長 「(関税の行方に)われわれは注視している。夏にかけていくらかの数値が上がると予想している」と話し、その上で「ただし影響が想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのかは、今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意がある」、(月利下げについては)「検討は会合ごとに行われる。どの会合も選択肢から排除しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」 利下げの可能性を排除しなかったことで、ドル円はやや売られる。
6/26 コリンズ・ボストン連銀総裁 7月会合までに得られるデータは、あと1ヵ月分に過ぎない。それ以上のデータを確認したいと考えるだろう」 --------
6/26 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレが当局の目指す2%へと明らかに減速し、経済見通しを巡る不確実性が後退すれば利下げ再開もあり得る。良好なデータが得られており、関税の影響も限定的にとどまるかもしれないと楽観しているが、確証を待ちたい」 --------
6/26 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「どの方向にせよ、性急に進むことには得るものがほとんどない。現在の経済の強さを踏まえれば、われわれには情勢の展開を辛抱強く見守り、見通しが明確になるまで待つ時間がある」 --------
6/26 デーリー・SF連銀総裁 「私の中心的な見方としては、秋ごろから金利の調整が開始できるというものであり、その考えは特に変わっていない」、「労働市場には減速の兆しはあるものの、悪化を示す警告サインは見られない」 --------
6/25 パウエル・FRB議長 「関税が消費者物価に及ぼす影響を金融当局としてまだ見極めきれていない。関税のうちのどの程度がインフレとして表面化するのか、前もって予測するのは非常に困難だ」 --------
6/24 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「現行の金利はわずかに景気抑制的な水準だが、当局の目標達成までにはまだ一定の距離がある」、「政策金利はFOMCがごく緩やかな利下げで中立的な水準に戻す前に、かなりの期間据え置かれる可能性が高い」 --------
6/24 バー・FRB理事 「経済は現在、堅調な足どりを見せている。失業率は低水準で、インフレはFRBの目標の2%に向けて低下してきている」、「ただ今後を見据えると、関税の影響でインフレは加速すると予想する。短期のインフレ期待の高まり、サプライチェーンの調整、そして二次的影響により、インフレはやや長引く可能性がある」 --------
6/24 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「関税やその他の政策論争がどのように進展するか見守るための、余裕と時間はある」 --------
6/24 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「政策変更が労働市場とインフレに及ぼす影響を当局者が分析する間、金利を据え置くことは完全に適切だ」 --------
6/24 パウエル・FRB議長 「当面は、政策スタンスの調整を検討する前に、経済の進路についてより多くの情報が得られるのを待つ体制が整っている」、(7月の利下げの可能性について問われ)、「インフレ圧力が本当に抑制されたままだということになれば、早めに利下げに踏み切ることになるだろう」、「特定の会合を指すことは避けたい。経済は依然として強く、急ぐ必要はないと考えている」 --------
6/23 ボウマン・FRB理事 「インフレ圧力が抑制されたままであれば、政策金利を中立水準に近づけ、健全な労働市場を維持するために、次回の会合で利下げを支持する」、(「トランプ関税」について)、「関税などの政策によって重大な影響が出ているという明確な兆候はデータには表れていない。多くの企業が事前に積み増していたため、関税によるインフレへの影響は当初の予想より表れるまでに時間がかかり、影響の度合いも当初予想より小さくなる可能性が高いと考えられる」 中東情勢の好転もあり、ドル円は148円前後から146円台前半まで下げる。
6/18 パウエル・FRB議長 「政策スタンスの調整を検討する前に、経済の見通しについてより多くの情報を持てる状況にある」、(経済の不確実性が高いことを踏まえ)、「誰もこうした金利の道筋に強い確信を持っていない。景気見通しに関する不確実性は低下したが、依然として高い」 ドル円は144円台半ばから145円台に。
6/18 FOMCの議事録 「最近の複数の指標は経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率は低いままで、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 --------
6/11 ベッセント・財務長官 「誠意を持って交渉している貿易相手国に対しては、発動時期をさらに延長する可能性が極めて高い、そうでない国に対しては延期をしない」・・議会証言で。 --------
6/6 トランプ・米大統領 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 --------
6/5 ラガルド・ECB総裁 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。
6/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和