今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「FOMC会合、政策金利据え置き」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • FOMC会合は予想通り政策金利据え置きを決め、この日発表されたGDP速報値、ADP雇用数が市場予想を上回ったことでドルが上昇。ドル円は、4月2日以来となる149円54銭までドル高に。
  • ユーロドルは続落。ユーロ圏の実質GDPが減速していこともあり、1.140近辺まで下落。
  • 株式市場ではダウとS&P500は売られたが、ナスダックは31ポイント高。
  • 債券は売られ、長期金利は4.37%台に上昇。
  • 金は続落し、原油は続伸。
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10月ADP雇用者数 → 10.4万人
4−6月GDP(速報値) → 3.0%
6月中古住宅販売成約件数 → −0.8%
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ドル/円 148.28 〜 149.54
ユーロ/ドル 1.1401 〜 1.1535
ユーロ/円 170.34 〜 171.06
NYダウ −171.71 → 44,461.28
GOLD −28.40 → 3,352.80ドル
WTI +0.79 → 70.00
米10年国債 +0.050 → 4.370%

本日の注目イベント

  • 豪 豪4−6月四半期輸入物価指数
  • 豪 豪6月住宅建設許可件数
  • 豪 豪6月小売売上高
  • 日 日銀金融政策決定会合
  • 日 植田日銀総裁記者会見
  • 日 6月鉱工業生産
  • 中 7月中国製造業PMI
  • 中 7月中国サービス業PMI
  • 独 独3月失業率
  • 独 独7月消費者物価指数(速報値)
  • 欧 ユーロ圏7月失業率
  • 米 4−6月雇用コスト指数
  • 米 6月個人所得
  • 米 6月個人支出
  • 米 6月PCEデフレータ(前月比)
  • 米 6月PCEデフレータ(前年比)
  • 米 6月PCEコアデフレータ(前月比)
  • 米 6月PCEコアデフレータ(前年比)
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 7月シカゴ購買部協会景気指数

本日のコメント

注目のFOMC会合では、市場予想通りフェデラルファンド(FF)金利誘導目標を4.25―4.5%で据え置くことを決めました。ただ今回の会合では、これも予想していましたが、ボウマン副議長とウォラー理事の2名が反対票を投じましたが、据え置きを支持するメンバーが多く、「全会一致」とはなりませんでした。正副議長を含む7名の理事のうち2名が反対したのは32年ぶりとのことです。ボウマン氏、ウォラー氏は、いずれもトランプ大統領が指名しており、今回の会合では利下げを主張すると予想していましたが、これでトランプ氏からの利下げ圧力はますます高まるとみられます。また、次期FRB議長指名を早める可能性も高まったと思われます。依然として利下げに慎重で、トランプ氏の圧力にも屈しないパウエル氏は、トランプ氏にとって「目の上のたんこぶ」的存在でしょう。

FOMC声明文は、「経済活動の伸びは緩やかになった。景気見通しに関する不確実性は依然として高い。委員会は長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指し、2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」とありました。また、会合後の会見でパウエル氏は、「解決すべき不確実性は非常に多い。そのプロセスの終わりが間近に迫っているという感触はない」と述べ、さらに利下げの時期については、「9月については何も決定していない」と述べていました。この発言で債券はさらに売られ、9月会合での利下げ確率は低下しました。

パウエル氏の会見が全体的には「タカ派的」な内容であったため、ドル円は149円台半ばまで買われました。さらに、この日発表された経済指標もドルを押し上げています。「7月のADP雇用者数」は市場予想を上回る「10.4万人」で、先月からの反動だという見方もありますが、先月からは急拡大していました。また、第2四半期GDP速報値は「3.0%」と、こちらも市場予想を上回っています。市場は、トランプ関税の影響に対して楽観的すぎると思われ、インフレの再燃から今後は緩やかにドル高が進むと予想している筆者は、「いよいよ150円台テスト」との感触を強めています。テクニカルではドル上昇を示唆しています。ただ、注意したいのは前記トランプ氏の次期FRB議長の早期発表や、ドル高をけん制する発言です。これらはいつあってもおかしくはありません。

トランプ大統領はインドからの輸入品に対し、8月1日から25%の関税を賦課すると発表しました。インドがロシアから軍装備品やエネルギーを購入していることを問題視し、追加のペナルティを課すことも検討する模様です。トランプ氏は、「世界中がロシアにウクライナでの殺りくをやめさせたいと考えている時に、インドは大半の軍備品をロシアから購入し、中国と並んでロシア産エネルギーの最大の買い手となっている」と指摘しています。インドのモディ首相は早い段階から米国との協議に乗り出し、米国からの高関税賦課回避を狙ってきましたが、モディ氏の「中立外交」にも限界が見えてきたようです。

今日は日銀の金融政策決定会合があり、追加利上げは見送られると予想しています。理由は上記パウエル議長の発言そのものです。145−150円のレンジの上限をテストする状況ですが、150円を一気に超えるのは簡単ではありません。日銀の政策金利据え置きがドルをサポートすると考えますが、150円前後では多くのドル売り注文が控えているはずです。

本日のドル円は148円50銭〜150円30銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
7/30 FOMC声明文 「経済活動の伸びは緩やかになった。景気見通しに関する不確実性は依然として高い。委員会は長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指し、2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」 --------
7/30 パウエル・FRB議長 「解決すべき不確実性は非常に多い。そのプロセスの終わりが間近に迫っているという感触はない」、(利下げ次期については)、「9月については何も決定していない」 ドル円は買われ、149円54銭まで上昇。
7/24 ラガルド・ECB総裁 「現在の状況は良好だ。今は金利を据え置き、リスクが今後数か月の間にどう展開いていくかを見守ることが適切な状況にある」 --------
7/24 ECB声明文 「これまでのところ経済は全体として底堅さを示している。しかし、通商摩擦をはじめとする要因により、依然として先行きは極めて不透明だ」 --------
7/10 デーリー・SF連銀総裁 「2回の利下げというのが可能性の高いシナリオだと私はみているが、あらゆる当局の予測には不確実性が伴う」 --------
7/10 ペンス・元副大統領 「われわれは主に中国を対象に、相手の行動の変化を促すべく関税やその脅威を交渉手段として用いた。目的は本質的に貿易障壁を下げ、貿易を拡大することだった」、「トランプ氏は米産業政策の長期的な転換を進めており、恒久的かつ一方的な貿易関税が米国にとって長期的に有益だと見なしているとは、私は考えていない」、「自由市場を信奉する保守派として、私はそれには賛同できない」 --------
7/2 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「経済指標は非常に堅調だ。経済が悪い方向に進んでいるという切迫感はない。また、経済環境全体に切迫感がない限り、霧の中を運転するように、ゆっくり進むのが妥当だ」、「現時点で政策金利を引き下げる緊急性はない」 --------
7/1 パウエル・FRB議長 「(関税の行方に)われわれは注視している。夏にかけていくらかの数値が上がると予想している」と話し、その上で「ただし影響が想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのかは、今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意がある」、(月利下げについては)「検討は会合ごとに行われる。どの会合も選択肢から排除しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」 利下げの可能性を排除しなかったことで、ドル円はやや売られる。
6/26 コリンズ・ボストン連銀総裁 7月会合までに得られるデータは、あと1ヵ月分に過ぎない。それ以上のデータを確認したいと考えるだろう」 --------
6/26 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレが当局の目指す2%へと明らかに減速し、経済見通しを巡る不確実性が後退すれば利下げ再開もあり得る。良好なデータが得られており、関税の影響も限定的にとどまるかもしれないと楽観しているが、確証を待ちたい」 --------
6/26 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「どの方向にせよ、性急に進むことには得るものがほとんどない。現在の経済の強さを踏まえれば、われわれには情勢の展開を辛抱強く見守り、見通しが明確になるまで待つ時間がある」 --------
6/26 デーリー・SF連銀総裁 「私の中心的な見方としては、秋ごろから金利の調整が開始できるというものであり、その考えは特に変わっていない」、「労働市場には減速の兆しはあるものの、悪化を示す警告サインは見られない」 --------
6/25 パウエル・FRB議長 「関税が消費者物価に及ぼす影響を金融当局としてまだ見極めきれていない。関税のうちのどの程度がインフレとして表面化するのか、前もって予測するのは非常に困難だ」 --------
6/24 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「現行の金利はわずかに景気抑制的な水準だが、当局の目標達成までにはまだ一定の距離がある」、「政策金利はFOMCがごく緩やかな利下げで中立的な水準に戻す前に、かなりの期間据え置かれる可能性が高い」 --------
6/24 バー・FRB理事 「経済は現在、堅調な足どりを見せている。失業率は低水準で、インフレはFRBの目標の2%に向けて低下してきている」、「ただ今後を見据えると、関税の影響でインフレは加速すると予想する。短期のインフレ期待の高まり、サプライチェーンの調整、そして二次的影響により、インフレはやや長引く可能性がある」 --------
6/24 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「関税やその他の政策論争がどのように進展するか見守るための、余裕と時間はある」 --------
6/24 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「政策変更が労働市場とインフレに及ぼす影響を当局者が分析する間、金利を据え置くことは完全に適切だ」 --------
6/24 パウエル・FRB議長 「当面は、政策スタンスの調整を検討する前に、経済の進路についてより多くの情報が得られるのを待つ体制が整っている」、(7月の利下げの可能性について問われ)、「インフレ圧力が本当に抑制されたままだということになれば、早めに利下げに踏み切ることになるだろう」、「特定の会合を指すことは避けたい。経済は依然として強く、急ぐ必要はないと考えている」 --------
6/23 ボウマン・FRB理事 「インフレ圧力が抑制されたままであれば、政策金利を中立水準に近づけ、健全な労働市場を維持するために、次回の会合で利下げを支持する」、(「トランプ関税」について)、「関税などの政策によって重大な影響が出ているという明確な兆候はデータには表れていない。多くの企業が事前に積み増していたため、関税によるインフレへの影響は当初の予想より表れるまでに時間がかかり、影響の度合いも当初予想より小さくなる可能性が高いと考えられる」 中東情勢の好転もあり、ドル円は148円前後から146円台前半まで下げる。
6/18 パウエル・FRB議長 「政策スタンスの調整を検討する前に、経済の見通しについてより多くの情報を持てる状況にある」、(経済の不確実性が高いことを踏まえ)、「誰もこうした金利の道筋に強い確信を持っていない。景気見通しに関する不確実性は低下したが、依然として高い」 ドル円は144円台半ばから145円台に。
6/18 FOMCの議事録 「最近の複数の指標は経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率は低いままで、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 --------
6/11 ベッセント・財務長官 「誠意を持って交渉している貿易相手国に対しては、発動時期をさらに延長する可能性が極めて高い、そうでない国に対しては延期をしない」・・議会証言で。 --------
6/6 トランプ・米大統領 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 --------
6/5 ラガルド・ECB総裁 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。
6/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和