今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円一気に150円台後半に」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は大幅に続伸。日銀が政策金利の据え置きを決めたことと、植田総裁が会見で、利上げに対してややハト派的な姿勢が円売りを強めた。ドル円はNYで、およそ4か月ぶりとなる150円84銭まで上昇。
  • ユーロドルは1.14台でもみ合い。
  • 株式市場では3指数が揃って下落。前日のパウエル議長の発言で利下げ観測が後退したことで売りが先行。
  • 債券は小幅に下落。長期金利は4.37%台で小動き。
  • 金は3日続落。原油は反落。
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4−6月雇用コスト指数 → 0.9%
6月個人所得 → 0.3%
6月個人支出 → 0.3%
6月PCEデフレータ(前月比) → 0.3%
6月PCEデフレータ(前年比) → 2.6%
6月PCEコアデフレータ(前月比) → 0.3%
6月PCEコアデフレータ(前年比) → 2.8%
新規失業保険申請件数 → 21.8万件
7月シカゴ購買部協会景気指数 → 47.1
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ドル/円 149.82 〜 150.84
ユーロ/ドル 1.1406 〜 1.1451
ユーロ/円 171.42 〜 172.34
NYダウ −330.30 → 44,130.98
GOLD −4.20 → 3,348.60ドル
WTI −0.74 → 69.26
米10年国債 +0.004 → 4.374%

本日の注目イベント

  • 豪 豪第2四半期卸売物価指数
  • 日 6月失業率
  • 中 7月財新製造業PMI
  • 独 独7月製造業PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏7月消費者物価指数(速報値)
  • 欧 ユーロ圏7月製造業PMI(改定値)
  • 英 英7月製造業PMI(改定値)
  • 米 7月自動車販売台数
  • 米 7月S&Pグローバル製造業PMI(改定値)
  • 米 7月雇用統計
  • 米 7月ISM製造業景況指数
  • 米 7月ミシガン大学消費者マインド(確定値)

本日のコメント

日米金融当局がいずれも動かなかったことで、ドル円はおよそ4ヵ月ぶりに150円台後半までドル高が進みました。やはり政策金利の上げ下げを決める金融政策の影響は大きく、FOMC前には148円台半ばだったドル円は、FOMCで「利下げがなかった」ことで1円ほど円安に振れ、そして昨日は日銀が「利上げを見送った」ことでさらに1円ほど円安に。ここ2日で都合2円ほどドルが上昇しました。

日銀は31日の金融政策決定会合で政策金利の現状維持を決め、最新の経済・物価見通しでは、2025年度から27年度までの全期間の消費者物価予想を引き上げました。おおむね市場予想に沿った内容でした。新たな経済・物価情勢の展望では、25年度のコアCPI見通しを前年比で「2.7%上昇」とし、5月に公表した展望リポートの「2.2%上昇」から大幅に引き上げ、また26年度、27年度もそれぞれ「0.1ポイント」引き上げています。午後3時半から始まった植田総裁の会見でも、積極的に利上げする姿勢は伺えず、ややハト派的でした。FRBが利下げに踏み切れないのは、パウエル議長が会見で、「解決すべき不確実性は非常に多い。そのプロセスの終わりが間近に迫っているという感触はない」と述べたように、結局トランプ関税の影響であり、言い換えると「政治的要因」でした。一方、日銀が利上げに踏み切れないのは、植田総裁が「不確実性はなお高い」という文言を使ったように、米国の日本に対する関税が15%に決まったものの、それでもなおその影響を読み切れないということと、石破政権が危機に直面しており政権が不安定であることが背景です。こちらも「政治的要因」が影響しています。

8月は両中銀とも政策会合はなく、筆者は9月の会合では両中銀が動く確率はかなり高いと予想しています。FRBが利下げを行い、日銀が利上げを行えば、日米金利差がかなり縮小し、ドル売り要因になります。もちろん、それまでにも様々な経済指標が発表されデータも揃います。特に米国では、今後のインフレ率の動向が極めて重要な決め手となり、数字次第ではさらに利下げが見送られる可能性がないとも言えません。30日に利下げを見送ったFOMCでの決定を受け、トランプ大統領は31日にSNSで、「ジェローム『遅すぎ』パウエルがまたやった!!彼はFRB議長であるには遅すぎるし、実のところ怒り過ぎで、愚か過ぎで、さらに政治的過ぎる」と、FRBの金利据え置きを厳しく批難していました。今回の会合では、FRBの執行部内にも、副議長と理事が利下げを主張し、いわばトランプ氏の触手が身近に迫っている中での決定でした。トランプ氏の圧力にも屈せず、総合的に考えて利下げを見送ったパウエル氏の英断は称賛されるべきでしょう。

このレポートでも何度も述べているように、ドル円は「日足」では全てのテクニカルがドルの上昇を示唆しています。「週足」を見ると、雲の入り口が150円80銭前後にあり、昨日の急激なドルの上昇も、ここで一旦止められた格好になっています。150円を一気に抜け切ったことは想定外でしたが、現時点から上の水準では上昇スピードが速すぎることもあり、一旦は調整すると見ています。もっとも、今夜の雇用統計の数字が上振れすれば、週足の雲の上抜けをテストする可能性もあるかもしれません。

本日のドル円は149円50銭〜151円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
7/30 FOMC声明文 「経済活動の伸びは緩やかになった。景気見通しに関する不確実性は依然として高い。委員会は長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指し、2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」 --------
7/30 パウエル・FRB議長 「解決すべき不確実性は非常に多い。そのプロセスの終わりが間近に迫っているという感触はない」、(利下げ次期については)、「9月については何も決定していない」 ドル円は買われ、149円54銭まで上昇。
7/24 ラガルド・ECB総裁 「現在の状況は良好だ。今は金利を据え置き、リスクが今後数か月の間にどう展開いていくかを見守ることが適切な状況にある」 --------
7/24 ECB声明文 「これまでのところ経済は全体として底堅さを示している。しかし、通商摩擦をはじめとする要因により、依然として先行きは極めて不透明だ」 --------
7/10 デーリー・SF連銀総裁 「2回の利下げというのが可能性の高いシナリオだと私はみているが、あらゆる当局の予測には不確実性が伴う」 --------
7/10 ペンス・元副大統領 「われわれは主に中国を対象に、相手の行動の変化を促すべく関税やその脅威を交渉手段として用いた。目的は本質的に貿易障壁を下げ、貿易を拡大することだった」、「トランプ氏は米産業政策の長期的な転換を進めており、恒久的かつ一方的な貿易関税が米国にとって長期的に有益だと見なしているとは、私は考えていない」、「自由市場を信奉する保守派として、私はそれには賛同できない」 --------
7/2 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「経済指標は非常に堅調だ。経済が悪い方向に進んでいるという切迫感はない。また、経済環境全体に切迫感がない限り、霧の中を運転するように、ゆっくり進むのが妥当だ」、「現時点で政策金利を引き下げる緊急性はない」 --------
7/1 パウエル・FRB議長 「(関税の行方に)われわれは注視している。夏にかけていくらかの数値が上がると予想している」と話し、その上で「ただし影響が想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのかは、今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意がある」、(月利下げについては)「検討は会合ごとに行われる。どの会合も選択肢から排除しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」 利下げの可能性を排除しなかったことで、ドル円はやや売られる。
6/26 コリンズ・ボストン連銀総裁 7月会合までに得られるデータは、あと1ヵ月分に過ぎない。それ以上のデータを確認したいと考えるだろう」 --------
6/26 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレが当局の目指す2%へと明らかに減速し、経済見通しを巡る不確実性が後退すれば利下げ再開もあり得る。良好なデータが得られており、関税の影響も限定的にとどまるかもしれないと楽観しているが、確証を待ちたい」 --------
6/26 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「どの方向にせよ、性急に進むことには得るものがほとんどない。現在の経済の強さを踏まえれば、われわれには情勢の展開を辛抱強く見守り、見通しが明確になるまで待つ時間がある」 --------
6/26 デーリー・SF連銀総裁 「私の中心的な見方としては、秋ごろから金利の調整が開始できるというものであり、その考えは特に変わっていない」、「労働市場には減速の兆しはあるものの、悪化を示す警告サインは見られない」 --------
6/25 パウエル・FRB議長 「関税が消費者物価に及ぼす影響を金融当局としてまだ見極めきれていない。関税のうちのどの程度がインフレとして表面化するのか、前もって予測するのは非常に困難だ」 --------
6/24 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「現行の金利はわずかに景気抑制的な水準だが、当局の目標達成までにはまだ一定の距離がある」、「政策金利はFOMCがごく緩やかな利下げで中立的な水準に戻す前に、かなりの期間据え置かれる可能性が高い」 --------
6/24 バー・FRB理事 「経済は現在、堅調な足どりを見せている。失業率は低水準で、インフレはFRBの目標の2%に向けて低下してきている」、「ただ今後を見据えると、関税の影響でインフレは加速すると予想する。短期のインフレ期待の高まり、サプライチェーンの調整、そして二次的影響により、インフレはやや長引く可能性がある」 --------
6/24 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「関税やその他の政策論争がどのように進展するか見守るための、余裕と時間はある」 --------
6/24 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「政策変更が労働市場とインフレに及ぼす影響を当局者が分析する間、金利を据え置くことは完全に適切だ」 --------
6/24 パウエル・FRB議長 「当面は、政策スタンスの調整を検討する前に、経済の進路についてより多くの情報が得られるのを待つ体制が整っている」、(7月の利下げの可能性について問われ)、「インフレ圧力が本当に抑制されたままだということになれば、早めに利下げに踏み切ることになるだろう」、「特定の会合を指すことは避けたい。経済は依然として強く、急ぐ必要はないと考えている」 --------
6/23 ボウマン・FRB理事 「インフレ圧力が抑制されたままであれば、政策金利を中立水準に近づけ、健全な労働市場を維持するために、次回の会合で利下げを支持する」、(「トランプ関税」について)、「関税などの政策によって重大な影響が出ているという明確な兆候はデータには表れていない。多くの企業が事前に積み増していたため、関税によるインフレへの影響は当初の予想より表れるまでに時間がかかり、影響の度合いも当初予想より小さくなる可能性が高いと考えられる」 中東情勢の好転もあり、ドル円は148円前後から146円台前半まで下げる。
6/18 パウエル・FRB議長 「政策スタンスの調整を検討する前に、経済の見通しについてより多くの情報を持てる状況にある」、(経済の不確実性が高いことを踏まえ)、「誰もこうした金利の道筋に強い確信を持っていない。景気見通しに関する不確実性は低下したが、依然として高い」 ドル円は144円台半ばから145円台に。
6/18 FOMCの議事録 「最近の複数の指標は経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率は低いままで、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 --------
6/11 ベッセント・財務長官 「誠意を持って交渉している貿易相手国に対しては、発動時期をさらに延長する可能性が極めて高い、そうでない国に対しては延期をしない」・・議会証言で。 --------
6/6 トランプ・米大統領 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 --------
6/5 ラガルド・ECB総裁 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。
6/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和