今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「次回FOMCでの大幅利下げ観測広がる」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は持ち直す場面もあり、欧州時間朝方には148円台に乗せた。だが、FRBによる大幅利下げ観測もあり上値は重く、146円台後半まで売られ、147円台前半で引ける。
  • ユーロドルは反発。1.1588まで買われ堅調に推移。
  • 株式市場は3指数が大きく反発。利下げ観測が高まり株式は買い戻しが優勢に。ダウは585ドル上昇し、先週末の大幅下落分を埋める。
  • 債券は続伸。長期金利はさらに低下し、4.19%台に。
  • 金は続伸。原油は3日続落。
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6月製造業受注 → −4.8%
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ドル/円 146.86 〜 147.41
ユーロ/ドル 1.1557 〜 1.1588
ユーロ/円 169.91 〜 170.55
NYダウ +585.06 → 44,173.64
GOLD +26.60 → 3,426.40ドル
WTI −1.04 → 66.29
米10年国債 −0.024 → 4.192%

本日の注目イベント

  • 日 日銀金融政策決定会合議事録(6日16−17日分)
  • 中 7月財新サービス業PMI
  • 中 7月財新総合PMI
  • 独 独7月サービス業PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏6月卸売物価指数
  • 欧 ユーロ圏7月総合PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏7月サービス業PMI(改定値)
  • 米 7月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値)
  • 米 7月S&Pグローバル総合PMI(改定値)
  • 米 6月貿易収支
  • 米 7月ISM非製造業景況指数
  • 米 決算発表 → ファイザー、キャタピラー、アドバンテスト・マイクロ・デバイス

本日のコメント

先週末の「雇用統計ショック」は、昨日の東京市場ではそれほどの影響は見られませんでした。ドル円は147円台を割り込む場面もありましたが、概ね147円台で推移。大きな動きもなく、個人投資家も次の展開を見極めにくかった様子で、終始「Stand on the sideline」でした。欧州市場に入ると148円台を回復しましたが上値は重く、NYではFRBによる大幅利下げ観測が広がり、再び146円台後半に沈みました。クーグラーFRB理事の辞任を受け、トランプ大統領が早期に利下げを支持する人物を任命するとの見方が有力で、9月会合での大幅利下げも現実味を帯びてきました。

ロイター通信がサンフランシスコ連銀のデーリー総裁の発言を報じています。総裁は、先週のFOMCの決定について、「もう1会合見送る用意はあったが永遠に待つことはできない」と述べ、「インフレが加速・波及したり、雇用市場が持ち直したりすれば、2回未満の利下げでも十分かもしれないが、より可能性が高いのは、2回を超える利下げが必要になるかもしれないことだと考える。労働市場が弱い局面に入りつつある一方で、インフレへの波及が見られない場合、さらに措置を講じる準備も必要というのが私の見解だ」と語っていました。今回のサプライズな雇用統計を受け、年内に2回以上の利下げの可能性に言及した形でしたが、年内のFOMCの日程を見ると、今月は開催されません。11月も開催されないため、会合は残る9、10、12月の3回ということになります。2回を超える利下げということは、全ての会合で利下げが行われる可能性もあるということです。もちろん、会合ごとの利下げ幅の程度にもよりますが、今後ドル安材料にはなりそうです。そうなると、その流れを止めるのはトランプ関税によるインフレの動向ということにもなります。

トランプ大統領は4日、インドがロシア産原油を購入していると指摘し、インドに対する関税を「大幅に引き上げる」と述べました。トランプ氏は、「インドはロシア産の原油を大量に購入しているだけではなく、その多くを公開市場で売却し、大きな利益を得ている」とSNSに投稿しました。そして、「ロシアの軍事力によってウクライナでどれほど多くの人が殺されているのか、彼らは気にしていない。これを理由に、私はインドが米国に支払う関税を大幅に引き上げるつもりだ」と述べています。なるほど・・・。確かにもっともな意見で説得力はあります。しかし、ではパレスチナ・ガザ地区で一段と攻撃力を強め、罪のない子供を毎日殺戮している「イスラエルは、どう何ですか?」と言いたいです。ガザ地区の保健省は先週、2023年10月からのイスラエルの攻撃により、死者数は6万人を超え、うち子供は1万9000人近い数だと発表しました。ガザでは現在、餓死による死者も増えています。ロシアへの制裁を強化するのであれば、イスラエルに対しても同様の措置を取るべきではないかと思います。イスラエルのネタニヤフ首相がトランプ氏をノーベル平和賞候補に推薦したことを喜んでいる場合ではないでしょう。これが米国の「Double Standard」で、バイデン政権でもそうでした。スイスに対しては39%という高関税を決めたトランプ氏でしたが、スイス政府は対抗措置を講じるのではなく、声明で「スイスは米国の懸念に配慮しつつ、現在の関税状況を緩和することを目指し、より魅力的な提案を行う用意がある」と発表しました。カナダと同様に対抗措置を講じるのではと予想していましたが、かなりモデレートなもので、やや驚きです。

本日のドル円は145円80銭〜147円80銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
8/4 デーリー・SF連銀総裁 (先週のFOMCの決定について)、「もう1会合見送る用意はあったが永遠に待つことはできない」、「インフレが加速・波及したり、雇用市場が持ち直したりすれば、2回未満の利下げでも十分かもしれないが、より可能性が高いのは、2回を超える利下げが必要になるかもしれないことだと考える。労働市場が弱い局面に入りつつある一方で、インフレへの波及が見られない場合、さらに措置を講じる準備も必要というのが私の見解だ」 --------
7/30 FOMC声明文 「経済活動の伸びは緩やかになった。景気見通しに関する不確実性は依然として高い。委員会は長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指し、2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」 --------
7/30 パウエル・FRB議長 「解決すべき不確実性は非常に多い。そのプロセスの終わりが間近に迫っているという感触はない」、(利下げ次期については)、「9月については何も決定していない」 ドル円は買われ、149円54銭まで上昇。
7/24 ラガルド・ECB総裁 「現在の状況は良好だ。今は金利を据え置き、リスクが今後数か月の間にどう展開いていくかを見守ることが適切な状況にある」 --------
7/24 ECB声明文 「これまでのところ経済は全体として底堅さを示している。しかし、通商摩擦をはじめとする要因により、依然として先行きは極めて不透明だ」 --------
7/10 デーリー・SF連銀総裁 「2回の利下げというのが可能性の高いシナリオだと私はみているが、あらゆる当局の予測には不確実性が伴う」 --------
7/10 ペンス・元副大統領 「われわれは主に中国を対象に、相手の行動の変化を促すべく関税やその脅威を交渉手段として用いた。目的は本質的に貿易障壁を下げ、貿易を拡大することだった」、「トランプ氏は米産業政策の長期的な転換を進めており、恒久的かつ一方的な貿易関税が米国にとって長期的に有益だと見なしているとは、私は考えていない」、「自由市場を信奉する保守派として、私はそれには賛同できない」 --------
7/2 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「経済指標は非常に堅調だ。経済が悪い方向に進んでいるという切迫感はない。また、経済環境全体に切迫感がない限り、霧の中を運転するように、ゆっくり進むのが妥当だ」、「現時点で政策金利を引き下げる緊急性はない」 --------
7/1 パウエル・FRB議長 「(関税の行方に)われわれは注視している。夏にかけていくらかの数値が上がると予想している」と話し、その上で「ただし影響が想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのかは、今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意がある」、(月利下げについては)「検討は会合ごとに行われる。どの会合も選択肢から排除しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」 利下げの可能性を排除しなかったことで、ドル円はやや売られる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和