今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「トランプ大統領パウエル議長に対する訴訟を検討」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は148円台半ばから反落。7月のCPIがほぼ予想通りだったことで9月利下げ観測が強まる。
  • ユーロドルは概ね1.16台で推移。
  • 株式市場はCPIの安定を好感し、3指数が大幅高。S&P500は72ポイント上昇し、最高値を更新。
  • 債券は小幅に下落。長期金利は4.29%前後で推移。
  • 金は続落し、原油は反落。
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7月消費者物価指数 → 0.2%(前月比)
7月財政収支 → 291.2b
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ドル/円 147.59 〜 148.52
ユーロ/ドル 1.1599 〜 1.1697
ユーロ/円 172.02 〜 172.86
NYダウ +483.52 → 44,458.61
GOLD −5.70 → 3,399.00ドル
WTI −0.79 → 63.17
米10年国債 +0.004 → 4.289%

本日の注目イベント

  • 豪 豪第2四半期賃金指数
  • 独 独7月消費者物価指数(改定値)
  • 米 グールズビー・シカゴ連銀総裁講演
  • 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁講演

本日のコメント

トランプ大統領は余程パウエル議長を出来るだけ早く辞任させたいのか、議長を相手取った訴訟を検討していることを明らかにしました。トランプ氏は12日SNSに、「パウエル氏が常に遅すぎることでもたらしたダメージは計り知れない。幸い、経済が好調なため、われわれはパウエル氏や慢心したFRBをものともせずに突き進んできた。ただし、私はパウエル氏を相手取った大規模な訴訟を認めることを検討している。パウエル氏がFRB本部改修の管理において、ひど過ぎる、かつ著しく無能な仕事をしてきたからだ」と投稿しました。ホワイトハウスのレビット報道官も、大統領が訴訟を検討していることを認めていました。先月24日には、工事用ヘルメットをかぶりパウエル氏とともに工事現場を視察した際には、「議長の解任は必要ない」とはっきりと述べていたトランプ氏でしたが、ここでも「朝令暮改」が見られます。これでは側近といえども、どこまでトランプ氏の言葉を信じていいのか戸惑うことでしょう。

ウクライナのゼレンスキー大統領と欧州各国首脳が13日、ロシアとの停戦を巡ってトランプ氏と協議をする予定です。ウクライナ支援を継続する欧州が、ウクライナ抜きで15日に米ロ首脳会談が行われることに危機感を示しています。停戦条件に「領土交換」が取りざたされる中、ゼレンスキー大統領は12日首都キーウで会見を行い、プーチン氏がドンバス地方を構成するドネツク州とルハンスク州の割譲をウクライナに要求していることについて「ロシアにとってドンバスは、将来の新たな攻勢に向けた足掛かりだ」と述べ、「領土問題と安全保障の確約は切り離すことができない」と続け、「停戦条件でドンバス地方をロシアに譲渡することはない」とあらためて強調していました。

ドル円は148円台半ばまで上昇しましたが、米7月の「消費者物価指数(CPI)」の結果を受け147円台半ばまで押し戻されました。7月のCPIは前月比で「0.2%」(6月は0.2%)、前年同月比では「2.7%」(6月は2.7%)と、変わらずで、前年同月比では市場予想の「2.8%」を下回っていました。トランプ関税の影響が思ったほどではなかったことで、ドルが売られ、株が大きく買われました。発表後、9月のFOMC会合での利下げ確率も90%程度まで上昇しましたが、筆者の中では「想定内」です。ベッセント財務長官は12日、「9月のFOMCではフェデラルファンド(FF)金利を通常より大幅な0.5ポイント引き下げる選択肢にオープンであるべきだ」との見解を示しました。筆者も9月会合では、50bpの利下げの可能性もあり得ると予想していますが、昨日は二人のFOMCメンバーのコメントも伝えられています。

カンザスシティ連銀のシュミッド総裁は12日、「経済が勢いをなお維持し、企業の楽観的な見方が強まり、インフレが当局の目標を上回る水準にとどまる中では、緩やかな引き締め状態にある金融政策スタンスを当面維持するのが適切だ」と述べ、タカ派寄りの姿勢を見せています。筆者の記憶では、政策金利据え置きを支持しているのはアトランタ連銀のボスティック総裁に次いで二人目であると思います。一方、リッチモンド連銀のバーキン総裁は市場の多くが感じている思いを代弁していました。総裁は、「米経済の先行きに対する不透明感は薄れつつあるものの、FRBがインフレ抑制と雇用の下支えのどちらに重点を置くべきかは、依然として明確ではない」と述べ、利下げには中立的な立場を示していました。来週21−23日には恒例の「ジャクソンホール」でのシンポジュウムが予定されています。パウエル議長が登壇する機会があれば、利下げがより確実になると予想しています。

本日のドル円は146円80銭〜148円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
8/12 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「米経済の先行きに対する不透明感は薄れつつあるものの、FRBがインフレ抑制と雇用の下支えのどちらに重点を置くべきかは、依然として明確ではない」 --------
8/12 シュミッド・カンザスシティ連銀総裁 「経済が勢いをなお維持し、企業の楽観的な見方が強まり、インフレが当局の目標を上回る水準にとどまる中では、緩やかな引き締め状態にある金融政策スタンスを当面維持するのが適切だ」 --------
8/7 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「年内に1回の利下げが実施される可能性が高いとの見通しは変わらない」、「関税の影響が一時的なものなのか、あるいはもっと持続的なものなのかという点が、現時点では恐らく最も重要な問題だ」、「この日発動された関税の影響が、一時的な物価上昇にとどまるという教科書的な関税の例に当てはまるには、いくらか会懐疑的な理由がある」、「これは一度きりで、ある朝目が覚めたら全ての関税が明らかになっているという話ではない。むしろ、関税が頻繁に変化することで、消費者の意識の中に関税や物価上昇見通しが浮かぶ期間が長くなり、インフレ期待が高まるリスクがある」 --------
8/6 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「景気は減速している。短期的にFF金利の調整を開始することが適切になる可能性がある」、「関税の影響が明確になるまで、どれくらい待てるのか、それが現在、私を悩ませている。最良の選択肢が、多少の調整を行い、その後に一時停止や方向転換を迫られる展開であっても、関税の影響が明確になるまで何もしないで待つより望ましい可能性がある」 --------
8/6 クック・FRB理事 「7月の雇用統計は懸念すべき内容だった。こうしたデータの修正は転換点でよく見られる傾向だ」 --------
8/4 デーリー・SF連銀総裁 (先週のFOMCの決定について)、「もう1会合見送る用意はあったが永遠に待つことはできない」、「インフレが加速・波及したり、雇用市場が持ち直したりすれば、2回未満の利下げでも十分かもしれないが、より可能性が高いのは、2回を超える利下げが必要になるかもしれないことだと考える。労働市場が弱い局面に入りつつある一方で、インフレへの波及が見られない場合、さらに措置を講じる準備も必要というのが私の見解だ」 --------
7/30 FOMC声明文 「経済活動の伸びは緩やかになった。景気見通しに関する不確実性は依然として高い。委員会は長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指し、2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」 --------
7/30 パウエル・FRB議長 「解決すべき不確実性は非常に多い。そのプロセスの終わりが間近に迫っているという感触はない」、(利下げ次期については)、「9月については何も決定していない」 ドル円は買われ、149円54銭まで上昇。
7/24 ラガルド・ECB総裁 「現在の状況は良好だ。今は金利を据え置き、リスクが今後数か月の間にどう展開いていくかを見守ることが適切な状況にある」 --------
7/24 ECB声明文 「これまでのところ経済は全体として底堅さを示している。しかし、通商摩擦をはじめとする要因により、依然として先行きは極めて不透明だ」 --------
7/10 デーリー・SF連銀総裁 「2回の利下げというのが可能性の高いシナリオだと私はみているが、あらゆる当局の予測には不確実性が伴う」 --------
7/10 ペンス・元副大統領 「われわれは主に中国を対象に、相手の行動の変化を促すべく関税やその脅威を交渉手段として用いた。目的は本質的に貿易障壁を下げ、貿易を拡大することだった」、「トランプ氏は米産業政策の長期的な転換を進めており、恒久的かつ一方的な貿易関税が米国にとって長期的に有益だと見なしているとは、私は考えていない」、「自由市場を信奉する保守派として、私はそれには賛同できない」 --------
7/2 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「経済指標は非常に堅調だ。経済が悪い方向に進んでいるという切迫感はない。また、経済環境全体に切迫感がない限り、霧の中を運転するように、ゆっくり進むのが妥当だ」、「現時点で政策金利を引き下げる緊急性はない」 --------
7/1 パウエル・FRB議長 「(関税の行方に)われわれは注視している。夏にかけていくらかの数値が上がると予想している」と話し、その上で「ただし影響が想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのかは、今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意がある」、(月利下げについては)「検討は会合ごとに行われる。どの会合も選択肢から排除しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」 利下げの可能性を排除しなかったことで、ドル円はやや売られる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和