今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ベッセント発言で、ドル安株高が進む」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 米金利が低下したことでドル円は147円08銭まで下落。市場はベッセント財務長官の発言に反応したが、値幅は限定的だった。
  • ユーロドルは小幅に反発し、1.1724まで買われる。
  • 株式市場ではベッセント発言を好感し、3指数が揃って続伸。ナスダックとS&P500は連日で最高値更新。
  • 債券は買われ、長期金利は4.23%台へと低下。
  • 金は反発。原油は続落し62ドル台に。
ドル/円 147.08 〜 147.50
ユーロ/ドル 1.1693 〜 1.1724
ユーロ/円 172.22 〜 172.62
NYダウ +463.66 → 44,922.27
GOLD +9.30 → 3,408.30ドル
WTI −0.52 → 62.65
米10年国債 −0.056 → 4.233%

本日の注目イベント

  • 豪 豪7月雇用統計
  • 欧 ユーロ圏4−6月期GDP(改定値)
  • 英 英4−6月期GDP(速報値)
  • 欧 ユーロ圏6月鉱工業生産
  • 英 英6月鉱工業生産
  • 英 英6月貿易収支
  • 米 7月生産者物価指数
  • 米 新規失業保険申請件数

本日のコメント

米関税交渉の責任者である赤沢経済再生相は13日テレビ朝日の番組で、自動車関税などの税率を引き下げる米大統領令について、「9月半ばぐらい」までに出来れば悪くないと話していました。前回の訪米で、日米の関税に関する認識では合意できたものの、大統領令の発出には時間がかかることを踏まえて、上記発言をおこなったようです。仮にそのようなタイミングで実施されれば、「英国と比べても悪い感じではない」とも、赤沢氏は述べていました。「朝令暮改」を繰り返すトランプ大統領が再び方針を変更することはないと思いますが、署名が完了するまでのリスクはあります。

昨日の本欄でも触れましたが、ベッセント財務長官はFF金利の早期利下げを主張していました。昨日はさらにブルームバーグとのインタビューで、「9月の0.5ポイント利下げを皮切りに、そこから一連の利下げを実施できるだろうと考えている。どのモデルを見ても、金利は恐らく150、175ベーシス・ポイント低い水準にあるべきだろう」と語っていました。また「トランプ大統領も望んでいる」とも述べていました。さらにベッセント氏は日本の金融政策にも触れ、「日本はインフレ問題を抱えており、確実に日本からの波及がある」と発言。日銀の植田総裁と話したことを明らかにした上で、「これは総裁の見解ではなく、私見だが、日銀は後手に回っており、利上げするだろう」と語っていました。基本的には政策金利はFRBの専管事項であり、財務長官といえどもその水準については言及しないことから異例ではありましたが、その下げ幅に市場は敏感に反応しました。NY株式市場ではダウが一時500ドルを超える上昇を見せ、ナスダックとS&P500は連日で最高値を更新しました。ドル円ではドル安が進みましたが、下げ幅は限定的でした。日米で株価が連日高騰しており、この部分での「リスク選好の円売り」が作用しているものと思われます。日経平均株価も連日で最高値を更新していますが、驚きはなく、「やっと動いたか」という印象です。日米株式市場の動きは、関税の影響を無視しているようにも思われますが、「カネ余り」ということでしょうか。

ベッセント財務長官は上記インタビューで、次期FRB議長候補には11人程度の候補者がいると述べていましたが、トランプ大統領はワシントンで開かれたイベントで、「次期議長を近く指名する。少し早く指名することになるだろう。候補は3、4人に絞った。いずれも素晴らしい人物だ」と述べ、次期議長名を早期に発表する可能性を示唆しました。具体的な名前が出れば、市場はその人物の発言により反応する可能性があり、現議長の形骸化につながります。もちろん、その人物が早期の大幅利下げには前向きであることは言うまでもありません。

「FRBへの大幅利下げ圧力」と「早期の次期議長指名」・・・。これまで述べてきたように、いずれも「ドル安材料」になります。

本日のドル円は146円〜148円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
8/13 ベッセント・財務長官 「9月の0.5ポイント利上げを皮切りに、そこから一連の利下げを実施できるだろうと考えている。どのモデルを見ても、金利は恐らく150、175ベーシス・ポイント低い水準にあるできだろう」、「トランプ大統領も望んでいる」、「日本はインフレ問題を抱えており、確実に日本からの波及がある」、(日銀の植田総裁と話したこと明らかにしたうえで)、「これは総裁の見解ではなく、私見だが、日銀は後手に回っており、利上げするだろう」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は147円08銭まで下落。
8/12 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「米経済の先行きに対する不透明感は薄れつつあるものの、FRBがインフレ抑制と雇用の下支えのどちらに重点を置くべきかは、依然として明確ではない」 --------
8/12 シュミッド・カンザスシティ連銀総裁 「経済が勢いをなお維持し、企業の楽観的な見方が強まり、インフレが当局の目標を上回る水準にとどまる中では、緩やかな引き締め状態にある金融政策スタンスを当面維持するのが適切だ」 --------
8/7 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「年内に1回の利下げが実施される可能性が高いとの見通しは変わらない」、「関税の影響が一時的なものなのか、あるいはもっと持続的なものなのかという点が、現時点では恐らく最も重要な問題だ」、「この日発動された関税の影響が、一時的な物価上昇にとどまるという教科書的な関税の例に当てはまるには、いくらか会懐疑的な理由がある」、「これは一度きりで、ある朝目が覚めたら全ての関税が明らかになっているという話ではない。むしろ、関税が頻繁に変化することで、消費者の意識の中に関税や物価上昇見通しが浮かぶ期間が長くなり、インフレ期待が高まるリスクがある」 --------
8/6 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「景気は減速している。短期的にFF金利の調整を開始することが適切になる可能性がある」、「関税の影響が明確になるまで、どれくらい待てるのか、それが現在、私を悩ませている。最良の選択肢が、多少の調整を行い、その後に一時停止や方向転換を迫られる展開であっても、関税の影響が明確になるまで何もしないで待つより望ましい可能性がある」 --------
8/6 クック・FRB理事 「7月の雇用統計は懸念すべき内容だった。こうしたデータの修正は転換点でよく見られる傾向だ」 --------
8/4 デーリー・SF連銀総裁 (先週のFOMCの決定について)、「もう1会合見送る用意はあったが永遠に待つことはできない」、「インフレが加速・波及したり、雇用市場が持ち直したりすれば、2回未満の利下げでも十分かもしれないが、より可能性が高いのは、2回を超える利下げが必要になるかもしれないことだと考える。労働市場が弱い局面に入りつつある一方で、インフレへの波及が見られない場合、さらに措置を講じる準備も必要というのが私の見解だ」 --------
7/30 FOMC声明文 「経済活動の伸びは緩やかになった。景気見通しに関する不確実性は依然として高い。委員会は長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指し、2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」 --------
7/30 パウエル・FRB議長 「解決すべき不確実性は非常に多い。そのプロセスの終わりが間近に迫っているという感触はない」、(利下げ次期については)、「9月については何も決定していない」 ドル円は買われ、149円54銭まで上昇。
7/24 ラガルド・ECB総裁 「現在の状況は良好だ。今は金利を据え置き、リスクが今後数か月の間にどう展開いていくかを見守ることが適切な状況にある」 --------
7/24 ECB声明文 「これまでのところ経済は全体として底堅さを示している。しかし、通商摩擦をはじめとする要因により、依然として先行きは極めて不透明だ」 --------
7/10 デーリー・SF連銀総裁 「2回の利下げというのが可能性の高いシナリオだと私はみているが、あらゆる当局の予測には不確実性が伴う」 --------
7/10 ペンス・元副大統領 「われわれは主に中国を対象に、相手の行動の変化を促すべく関税やその脅威を交渉手段として用いた。目的は本質的に貿易障壁を下げ、貿易を拡大することだった」、「トランプ氏は米産業政策の長期的な転換を進めており、恒久的かつ一方的な貿易関税が米国にとって長期的に有益だと見なしているとは、私は考えていない」、「自由市場を信奉する保守派として、私はそれには賛同できない」 --------
7/2 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「経済指標は非常に堅調だ。経済が悪い方向に進んでいるという切迫感はない。また、経済環境全体に切迫感がない限り、霧の中を運転するように、ゆっくり進むのが妥当だ」、「現時点で政策金利を引き下げる緊急性はない」 --------
7/1 パウエル・FRB議長 「(関税の行方に)われわれは注視している。夏にかけていくらかの数値が上がると予想している」と話し、その上で「ただし影響が想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのかは、今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意がある」、(月利下げについては)「検討は会合ごとに行われる。どの会合も選択肢から排除しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」 利下げの可能性を排除しなかったことで、ドル円はやや売られる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和