「欧米首脳、停戦の可能性を探る」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- 方向感が定まらない中、ドル円は反落。米金利が低下したこともあり、147円45銭まで売られる。
- ユーロドルも動意が見られず、ほぼ前日の水準で推移。
- 株式市場ではナスダックが大幅安。エヌビディアが大きく売られ、同指数は314ポイント下落。
- 債券は反発。長期金利は4.30%台に低下。
- 金は続落。原油も1ドルを超える下落。
7月住宅着工件数 → 1428千件
7月建設許可件数 → 1354千件
*****************
ドル/円 | 147.45 〜 147.90 |
---|---|
ユーロ/ドル | 1.1643 〜 1.1687 |
ユーロ/円 | 171.69 〜 172.69 |
NYダウ | +10.45 → 44,922.27 |
GOLD | −19.30 → 3,358.70ドル |
WTI | −1.07 → 62.35 |
米10年国債 | −0.027 → 4.306% |
本日の注目イベント
- 日 7月貿易統計
- 独 独7月生産者物価指数
- 欧 ユーロ圏7月消費者物価指数(改定値)
- 英 小売物価指数
- 英 英7月消費者物価指数
- 米 FOMC議事録(7月29−30日分)
- 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会に参加
- 米 ウォラー・FRB理事講演
本日のコメント
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ホワイトハウスでトランプ大統領や欧州首脳と会談した後、ワシントン市内で記者団の質問に答えていました。CNNなどによると、ゼレンスキー氏はプーチン氏と「無条件で会談し、戦争の終結に向けた道のりのさらなる進展について考えるべきだ」と述べています。トランプ氏はFOXテレビのインタビューで、ゼレンスキー氏とプ―チン氏が2週間以内に直接会うことになると話し、その候補地にハンガリーのブダペストが上がっています。トランプ氏は、「プーチン氏が良い方向に動いてくれることを願っている。もしそうでなければ、厳しい状況になるだろう。ゼレンスキー大統領にも、なすべきことをしてほしい。彼は柔軟性を示す必要がある」と述べていました。ただ、ゼレンスキー氏はトランプ氏との会談では、ロシアが求めるウクライナ東部2州の割譲を改めて拒否しており、和平合意による恒久停戦の可能性は依然不透明のようです。
S&Pグローバル・レーティングは18日、米国の長期ソブリン信用格付けを「AA+」(ダブルAプラス)に据え置くと発表しました。米経済の回復力が今後も続くとの見込みを反映し、格付け見通しは「安定的」としています。米国ではトランプ政権1期目で導入された大型所得減税の恒久化を柱とする税制・歳出法が7月に成立し、債務上限も5兆ドル(約739兆円)引き上げられました。これにより、財政赤字の増大が予想されますが、「主要貿易相手国・地域に課す関税の収入が痛みを部分的に緩和し、米国は信用力を維持できるとS&Pは分析した」とブルームバーグは伝えています。またS&Pは、米経済の現状と見通しについて比較的楽観的な姿勢を示しており、2025年は1.6%、26年は1.7%と予測。さらに関税収入がトランプ大統領による歳出拡大と減税からの影響を相殺する見通しだとし、「財政赤字がこれ以上大きく拡大することも、顕著に縮小することもない」との見方を示しました。これが米国債の発行見通しに対する安心材料となり、昨日の米債券市場では債券が買われ、金利が低下していました。
ベッセント財務長官は19日、次期FRB議長候補の11人と面会する予定だとし、「おそらく9月1日のレーバーデー前後に会うことになる」と述べています。そこから候補者を絞り込み、トランプ大統領に提示するとしています。 また、およそ1週間後に発動予定の対インドへの追加関税についても「われわれはインドに対する関税を引き上げる計画だ。これは制裁対象であるロシア産原油を購入したことに対する2次関税だ」と説明しています。日本との貿易合意に関する文書については、ラトニック商務長官が、「数週間後になる」との見方を示していました。
為替市場では、ドル円は146円台から148円程度、ユーロドルは1.16台から1.17台でのもみ合いが続き明確な方向感が見られません。週末のジャクソンホールでのパウエル議長の発言を確認したいとの姿勢が強まっているからですが、すでに25bpの利下げは市場に織り込まれていると見られます。議長は、次回9月のFOMC会合での利下げには前向きな姿勢を見せながらも、「それ以降の金融政策についてはデータ次第」であることを強調するのではないかと予想しています。
本日のドル円は146円70銭〜148円30銭程度を予想します。
佐藤正和の書籍紹介
![]() これだけ! FXチャート分析 三種の神器 |
![]() チャートがしっかり読めるようになるFX入門 |
What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
---|---|---|---|
8/14 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「現時点での戦略的アプローチは『動いて、待つ』というものになるだろう」、「われわれの行動後、経済がどう動くか分かるまでに時間がかかるかもしれない。その間に、次にどのような行動を取るべきか鮮明になるだろう」、「労働市場が堅調を維持すれば、年内は1度の利下げが適切になるという見方はなお変わらない」、「いつ行動を起こすかについては予断を持っていない。特定の時期に固執していない」 | -------- |
8/14 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | (9月の会合で)「私自身としてどういった政策を支持できるかを正確に述べるのは時期尚早だ」、(9月会合で0.5ポイントの利下げが正当化され得るかとの質問に)、「経済の現状や見通しを踏まえれば支持されない」、「データは、より持続的なインフレの可能性があるかどうかを示し始めている。労働市場には下振れリスクがある」、「私は両方の要素を意識している」、「われわれの2つの責務の間に緊張が見られる場合は、バランスの取れたアプローチで臨む必要がある」 | -------- |
8/14 | デーリー・SF連銀総裁 | 「0.5ポイントというのは、われわれが緊急性を認識しているように聞こえる。労働市場について私が感じているものとは違う緊急シグナルを発することになると懸念する」、「そうは見ていないし、遅れを取り戻す必要も感じない」 | -------- |
8/13 | ベッセント・財務長官 | 「9月の0.5ポイント利上げを皮切りに、そこから一連の利下げを実施できるだろうと考えている。どのモデルを見ても、金利は恐らく150、175ベーシス・ポイント低い水準にあるできだろう」、「トランプ大統領も望んでいる」、「日本はインフレ問題を抱えており、確実に日本からの波及がある」、(日銀の植田総裁と話したこと明らかにしたうえで)、「これは総裁の見解ではなく、私見だが、日銀は後手に回っており、利上げするだろう」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は147円08銭まで下落。 |
8/12 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「米経済の先行きに対する不透明感は薄れつつあるものの、FRBがインフレ抑制と雇用の下支えのどちらに重点を置くべきかは、依然として明確ではない」 | -------- |
8/12 | シュミッド・カンザスシティ連銀総裁 | 「経済が勢いをなお維持し、企業の楽観的な見方が強まり、インフレが当局の目標を上回る水準にとどまる中では、緩やかな引き締め状態にある金融政策スタンスを当面維持するのが適切だ」 | -------- |
8/7 | ポスティック・アトランタ連銀総裁 | 「年内に1回の利下げが実施される可能性が高いとの見通しは変わらない」、「関税の影響が一時的なものなのか、あるいはもっと持続的なものなのかという点が、現時点では恐らく最も重要な問題だ」、「この日発動された関税の影響が、一時的な物価上昇にとどまるという教科書的な関税の例に当てはまるには、いくらか会懐疑的な理由がある」、「これは一度きりで、ある朝目が覚めたら全ての関税が明らかになっているという話ではない。むしろ、関税が頻繁に変化することで、消費者の意識の中に関税や物価上昇見通しが浮かぶ期間が長くなり、インフレ期待が高まるリスクがある」 | -------- |
8/6 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「景気は減速している。短期的にFF金利の調整を開始することが適切になる可能性がある」、「関税の影響が明確になるまで、どれくらい待てるのか、それが現在、私を悩ませている。最良の選択肢が、多少の調整を行い、その後に一時停止や方向転換を迫られる展開であっても、関税の影響が明確になるまで何もしないで待つより望ましい可能性がある」 | -------- |
8/6 | クック・FRB理事 | 「7月の雇用統計は懸念すべき内容だった。こうしたデータの修正は転換点でよく見られる傾向だ」 | -------- |
8/4 | デーリー・SF連銀総裁 | (先週のFOMCの決定について)、「もう1会合見送る用意はあったが永遠に待つことはできない」、「インフレが加速・波及したり、雇用市場が持ち直したりすれば、2回未満の利下げでも十分かもしれないが、より可能性が高いのは、2回を超える利下げが必要になるかもしれないことだと考える。労働市場が弱い局面に入りつつある一方で、インフレへの波及が見られない場合、さらに措置を講じる準備も必要というのが私の見解だ」 | -------- |
7/30 | FOMC声明文 | 「経済活動の伸びは緩やかになった。景気見通しに関する不確実性は依然として高い。委員会は長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指し、2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」 | -------- |
7/30 | パウエル・FRB議長 | 「解決すべき不確実性は非常に多い。そのプロセスの終わりが間近に迫っているという感触はない」、(利下げ次期については)、「9月については何も決定していない」 | ドル円は買われ、149円54銭まで上昇。 |
7/24 | ラガルド・ECB総裁 | 「現在の状況は良好だ。今は金利を据え置き、リスクが今後数か月の間にどう展開いていくかを見守ることが適切な状況にある」 | -------- |
7/24 | ECB声明文 | 「これまでのところ経済は全体として底堅さを示している。しかし、通商摩擦をはじめとする要因により、依然として先行きは極めて不透明だ」 | -------- |
7/10 | デーリー・SF連銀総裁 | 「2回の利下げというのが可能性の高いシナリオだと私はみているが、あらゆる当局の予測には不確実性が伴う」 | -------- |
7/10 | ペンス・元副大統領 | 「われわれは主に中国を対象に、相手の行動の変化を促すべく関税やその脅威を交渉手段として用いた。目的は本質的に貿易障壁を下げ、貿易を拡大することだった」、「トランプ氏は米産業政策の長期的な転換を進めており、恒久的かつ一方的な貿易関税が米国にとって長期的に有益だと見なしているとは、私は考えていない」、「自由市場を信奉する保守派として、私はそれには賛同できない」 | -------- |
7/2 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「経済指標は非常に堅調だ。経済が悪い方向に進んでいるという切迫感はない。また、経済環境全体に切迫感がない限り、霧の中を運転するように、ゆっくり進むのが妥当だ」、「現時点で政策金利を引き下げる緊急性はない」 | -------- |
7/1 | パウエル・FRB議長 | 「(関税の行方に)われわれは注視している。夏にかけていくらかの数値が上がると予想している」と話し、その上で「ただし影響が想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのかは、今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意がある」、(月利下げについては)「検討は会合ごとに行われる。どの会合も選択肢から排除しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」 | 利下げの可能性を排除しなかったことで、ドル円はやや売られる。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書