今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「トランプ大統領、再びFRBに圧力」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は再び147円台から146円台に下落。FRBへの圧力がドル売りにつながる。ただその後147円台に戻す展開は変わらず。
  • ユーロドルは小幅に反発したが1.16台で推移。
  • 株式市場ではハイテク株への売りが続く。ナスダックはこの日も142ポイント下げる。
  • 債券は続伸。長期金利は4.29%台に低下。
  • 金は反発。原油も買われ63ドル台を回復。
ドル/円 146.88 〜 147.54
ユーロ/ドル 1.1643 〜 1.1673
ユーロ/円 171.27 〜 171.95
NYダウ +16.04 → 44,938.31
GOLD +29.80 → 3,388.50ドル
WTI +0.86 → 63.21
米10年国債 −0.016 → 4.291%

本日の注目イベント

  • 独 独8月製造業PMI(速報値)
  • 独 独8月サービス業PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏8月消費者信頼感指数(速報値)
  • 欧 ユーロ圏8月製造業PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏8月サービス業PMI(速報値)
  • 英 英8月製造業PMI(速報値)
  • 英 英8月サービス業PMI(速報値)
  • 米 8月フィラデルフィア連銀景況指数
  • 米 8月S&Pグローバル製造業PMI(速報値)
  • 米 8月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値)
  • 米 8月S&Pグローバル総合PMI(速報値)
  • 米 7月景気先行総合指数
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 7月中古住宅販売件数
  • 米 ジャクソンホール会合(23日まで)
  • 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁講演

本日のコメント

トランプ大統領が再びFRBに対する圧力を強めています。

米連邦住宅金融局(FHFA)のパルト局長は2件の住宅ローンに絡み、クック理事を捜査するよう、ボンディ司法長官に書簡で要請していましたが、トランプ大統領は、「クック氏は今すぐ辞任すべきだ」と自身のSNSであるトゥルース・ソーシャルに投稿。パルト氏も今回の疑惑は、トランプ氏がクック氏を「解任する根拠」になるとSNSに書き込んでいます。これに対してクック理事は声明で、「ツイートでいくつかの疑問が提起されたからといって、辞任を要求されるつもりは全くない」と答え、「連邦準備制度の一員として、自身の財務履歴に関するいかなる質問にも真摯に対応するつもりで、正確な情報を収集して、正当な疑問に答え、事実を提示する準備を進めている」と説明していました。ブルームバーグは「トランプ政権がFRBへの圧力を強める構図が改めて鮮明になっている」と伝えています。クック氏はバイデン前大統領の指名を受けて、2022年に黒人女性で初となるFRB理事に就任。その後、2038年までの任期でバイデン氏に再指名されました。同じくバイデン氏が指名したクーグラー前理事は今月、任期満了を待たずに退任しています。さらにFRBを巡っては、パウエル議長の後任候補の一角で、ジェフリーズでチーフ・マーケット・ストラテジストを務めるザーボス氏は、「FRBが独立していたことは一度もない。FRBへの政治的な圧力はこれまで常に強まっていたし、今も強まり続けている」と経済専門局CNBCで発言しました。「近年には民主党議員が金融政策当局に利下げを求めて圧力をかけていた」と説明し、パウエル議長については、「政治的に左派寄りだ」と評していました。

FRBが20日に公表した7月29−30日開催のFOMC議事要旨によると、「雇用を巡る懸念よりもインフレリスクの方が大きい」と大半の当局者が指摘しており、関税の影響を背景にFOMC内でも見解の相違が拡大していることが明らかになりました。当局者らはインフレ高進と雇用軟化の懸念を認めつつ、参加者18人のうちの大半は「この2つのリスクのうちインフレ上振れリスクの方が大きいと判断した」という内容でした。議事要旨によると、当局の2大責務へのリスクはおおむね均衡していると幾人かが指摘した一方、労働市場の方が気掛かりだと表明した当局者は2人いたとしています。議事要旨では当局者の名前は明らかにしていませんが、ウォラー理事とボウマン副議長は0.25ポイントの利下げを主張し、金利据え置きの決定に反対票を投じたことは明らかになっており、この2名であると思えます。議事録の公開を受け、9月のFOMC会合での利下げ確率は幾分低下して来ました。

トランプ氏の仲介により、2週間以内にロシアのプーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が直接会って会談すると見られていますが、直接会談についての認識にズレがあると報じられています。ロシアのラブロフ外相は国営テレビのインタビューで、「首脳が関与するあらゆる接触は綿密に準備する必要がある」と述べ、そう簡単には応じられないといったニュアンスを示しています。一方、「無条件で会談し、戦争の終結に向けた道のりのさらなる進展について考えるべきだ」と述べていたゼレンスキー氏は、ドンバス地方に関する領土交渉について、「現在の前線がスタート地点になるべきだ」と、こちらはやや歩み寄る姿勢を見せていました。候補地についても、ハンガリーのブダペストの他に、スイスやトルコ、さらにはオーストリアも名乗りを上げているようです。日程も場所も決まっていない上に、両国の事前の駆け引きもあり、会談そのものの実現もやや不透明です。

ジャクソンホールでのパウエル議長の講演では、50bpはないにしても、9月会合での25bp利下げを示唆するのは確実かと思います。同時にインフレへの警戒感も根強く、複数回の連続利下げの可能性には言及しないでしょう。講演後市場がどのように反応するのか、なかなか予想も難しくなってきました。

本日のドル円は146円50銭〜148円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
8/14 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「現時点での戦略的アプローチは『動いて、待つ』というものになるだろう」、「われわれの行動後、経済がどう動くか分かるまでに時間がかかるかもしれない。その間に、次にどのような行動を取るべきか鮮明になるだろう」、「労働市場が堅調を維持すれば、年内は1度の利下げが適切になるという見方はなお変わらない」、「いつ行動を起こすかについては予断を持っていない。特定の時期に固執していない」 --------
8/14 ムサレム・セントルイス連銀総裁 (9月の会合で)「私自身としてどういった政策を支持できるかを正確に述べるのは時期尚早だ」、(9月会合で0.5ポイントの利下げが正当化され得るかとの質問に)、「経済の現状や見通しを踏まえれば支持されない」、「データは、より持続的なインフレの可能性があるかどうかを示し始めている。労働市場には下振れリスクがある」、「私は両方の要素を意識している」、「われわれの2つの責務の間に緊張が見られる場合は、バランスの取れたアプローチで臨む必要がある」 --------
8/14 デーリー・SF連銀総裁 「0.5ポイントというのは、われわれが緊急性を認識しているように聞こえる。労働市場について私が感じているものとは違う緊急シグナルを発することになると懸念する」、「そうは見ていないし、遅れを取り戻す必要も感じない」 --------
8/13 ベッセント・財務長官 「9月の0.5ポイント利上げを皮切りに、そこから一連の利下げを実施できるだろうと考えている。どのモデルを見ても、金利は恐らく150、175ベーシス・ポイント低い水準にあるできだろう」、「トランプ大統領も望んでいる」、「日本はインフレ問題を抱えており、確実に日本からの波及がある」、(日銀の植田総裁と話したこと明らかにしたうえで)、「これは総裁の見解ではなく、私見だが、日銀は後手に回っており、利上げするだろう」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は147円08銭まで下落。
8/12 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「米経済の先行きに対する不透明感は薄れつつあるものの、FRBがインフレ抑制と雇用の下支えのどちらに重点を置くべきかは、依然として明確ではない」 --------
8/12 シュミッド・カンザスシティ連銀総裁 「経済が勢いをなお維持し、企業の楽観的な見方が強まり、インフレが当局の目標を上回る水準にとどまる中では、緩やかな引き締め状態にある金融政策スタンスを当面維持するのが適切だ」 --------
8/7 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「年内に1回の利下げが実施される可能性が高いとの見通しは変わらない」、「関税の影響が一時的なものなのか、あるいはもっと持続的なものなのかという点が、現時点では恐らく最も重要な問題だ」、「この日発動された関税の影響が、一時的な物価上昇にとどまるという教科書的な関税の例に当てはまるには、いくらか会懐疑的な理由がある」、「これは一度きりで、ある朝目が覚めたら全ての関税が明らかになっているという話ではない。むしろ、関税が頻繁に変化することで、消費者の意識の中に関税や物価上昇見通しが浮かぶ期間が長くなり、インフレ期待が高まるリスクがある」 --------
8/6 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「景気は減速している。短期的にFF金利の調整を開始することが適切になる可能性がある」、「関税の影響が明確になるまで、どれくらい待てるのか、それが現在、私を悩ませている。最良の選択肢が、多少の調整を行い、その後に一時停止や方向転換を迫られる展開であっても、関税の影響が明確になるまで何もしないで待つより望ましい可能性がある」 --------
8/6 クック・FRB理事 「7月の雇用統計は懸念すべき内容だった。こうしたデータの修正は転換点でよく見られる傾向だ」 --------
8/4 デーリー・SF連銀総裁 (先週のFOMCの決定について)、「もう1会合見送る用意はあったが永遠に待つことはできない」、「インフレが加速・波及したり、雇用市場が持ち直したりすれば、2回未満の利下げでも十分かもしれないが、より可能性が高いのは、2回を超える利下げが必要になるかもしれないことだと考える。労働市場が弱い局面に入りつつある一方で、インフレへの波及が見られない場合、さらに措置を講じる準備も必要というのが私の見解だ」 --------
7/30 FOMC声明文 「経済活動の伸びは緩やかになった。景気見通しに関する不確実性は依然として高い。委員会は長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指し、2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」 --------
7/30 パウエル・FRB議長 「解決すべき不確実性は非常に多い。そのプロセスの終わりが間近に迫っているという感触はない」、(利下げ次期については)、「9月については何も決定していない」 ドル円は買われ、149円54銭まで上昇。
7/24 ラガルド・ECB総裁 「現在の状況は良好だ。今は金利を据え置き、リスクが今後数か月の間にどう展開いていくかを見守ることが適切な状況にある」 --------
7/24 ECB声明文 「これまでのところ経済は全体として底堅さを示している。しかし、通商摩擦をはじめとする要因により、依然として先行きは極めて不透明だ」 --------
7/10 デーリー・SF連銀総裁 「2回の利下げというのが可能性の高いシナリオだと私はみているが、あらゆる当局の予測には不確実性が伴う」 --------
7/10 ペンス・元副大統領 「われわれは主に中国を対象に、相手の行動の変化を促すべく関税やその脅威を交渉手段として用いた。目的は本質的に貿易障壁を下げ、貿易を拡大することだった」、「トランプ氏は米産業政策の長期的な転換を進めており、恒久的かつ一方的な貿易関税が米国にとって長期的に有益だと見なしているとは、私は考えていない」、「自由市場を信奉する保守派として、私はそれには賛同できない」 --------
7/2 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「経済指標は非常に堅調だ。経済が悪い方向に進んでいるという切迫感はない。また、経済環境全体に切迫感がない限り、霧の中を運転するように、ゆっくり進むのが妥当だ」、「現時点で政策金利を引き下げる緊急性はない」 --------
7/1 パウエル・FRB議長 「(関税の行方に)われわれは注視している。夏にかけていくらかの数値が上がると予想している」と話し、その上で「ただし影響が想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのかは、今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意がある」、(月利下げについては)「検討は会合ごとに行われる。どの会合も選択肢から排除しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」 利下げの可能性を排除しなかったことで、ドル円はやや売られる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和