今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「クック理事提訴へ」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は朝方買われたが、FRBのクック理事を巡る問題が法廷闘争に発展する見通しからドルが売られた。
  • ユーロドルは1.16台半ばを中心に小動き。
  • 株式市場は3指数が揃って反発。ダウは135ポイント高。今夜のエヌビディアの決算が最大の注目。
  • 債券は買われ、長期金利は4.26%台に低下。
  • 金は反発し、原油は売られる。
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米7月耐久財受注 → −2.8%
6月ケース・シラ−住宅価格指数 → 2.14%
6月FHFA住宅価格指数 → −0.2%
米8月コンファレンスボード消費者信頼感指数 → 97.4
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ドル/円 147.10 〜 147.71
ユーロ/ドル 1.1635 〜 1.1665
ユーロ/円 171.51 〜 172.12
NYダウ +135.60 → 45,418.07
GOLD +15.50 → 3,433.00ドル
WTI −1.55 → 63.25
米10年国債 −0.014 → 4.261%

本日の注目イベント

  • 米 バーキン・リッチモンド連銀総裁講演

本日のコメント

先ずは、先週のジャクソンホールでのパウエル議長の講演内容を確認しておきたいと思います。

議長は、インフレ懸念が残るとしながらも、これまでとはやや異なり、労働市場の鈍化を認めながら、「政策の調整を正当化しうる」と発言。筆者が予想した以上に「ハト派的」でした。この発言に市場では、ドルが売られ、株と債券が買われ金利が低下しました。9月のFOMC会合での利下げ確率が高まりましたが、この点に筆者は以前から「利下げはほぼ間違いない」と予想していたため、違和感はありません。ドル円は講演を受けて146円57銭前後まで売られました。ただ、翌日には148円近くまで反発しており、今回も145―150円レンジは維持され、むしろより強固になっているようです。また、チャートを見る限り、日足の一目均衡表の「雲」にサポートされている流れは、現時点では維持されています。ドル円の上値は重いいものの、なかなか146円台を割り込めず、さらにそれほど遠くはない145円が「鉄壁」になりつつあります。

FRBが利下げモードを加速させる可能性があり、日銀も追加利上げのタイミイングを模索する状況から、日米金利差は縮小傾向にあります。一方、やや落ち着いてはきたものの、政局の混迷は続いており、次期首相が誰になるのかは、円売りの要素として今も存在します。また昨日は、2026年度予算の概算要求で、財務省は国債の元利払いに充てる費用として、過去最大の32兆3865億円を予定していました。長期金利が上昇していることで、利払いが増えていることが主因です。税収も増加しているものの、防衛費の増大も止まらず、財政赤字拡大が続けば、日本国債の格下げもないとは言えません。昨日の日本の債券市場では長期金利が1.62%まで上昇してきました。日銀に対する政策金利引き上げを催促している動きとも取れますが、利上げはさらに国債の利払いを増やす恐れもあります。円安要因も依然として存在しています。

トランプ大統領は26日、FRBのクック理事が住宅ローン申請書類を巡り不正を働いたとの疑惑を受け、クック氏を即時解任する意向を表明していましたが、クック理事も提訴する意向を示しており、法定闘争へと発展しそうな気配です。クック氏は声明で、「私は辞任しない。2022年から続けてきたように、米国経済を支える職務を引き続き果たしていくつもりだ」と述べていました。クック氏の弁護士アビー・ローウェル氏は26日、トランプ大統領にクック理事を解任する権限はないと主張。「書簡1通だけを根拠にクック氏を解任しようとする試みは、事実的にも法的にも根拠がない。違法な行為として訴訟を提起する」と表明していました。また、トランプ氏の「違法行為」を「阻止するために必要なあらゆる手段」を講じるとしています。一方、FRBは26日、「クックFRB理事は弁護士を通じ、提訴によって職務を続けられることの確認を司法の判断に委ねると表明した」との声明を出し、「FRBはこれまで通り、いかなる裁判所の決定にも従う」と中立的な立場であることを表明しています。現行法では、クック理事を解任するのには「正当な理由」が必要ですが、クック理事が住宅ローンを巡る不正を実際に行ったのかどうか、また仮にそうだとすれば、それが解任の理由にあたるのかどうかという点がはっきりしません。

本日のドル円は146円80銭〜148円30銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
8/21 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「労働市場の動向は気掛かりな要因となり得る」、「現時点でも基本的には同じ考えだ」、「ただ、足元の環境においては、あらゆる見通しや予測に幅広い不確実性が伴う」、「特定の見通しに固執しているわけではない」 ドルが買われ、債券と株は下落。
8/21 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「米国のインフレは高過ぎる上、過去1年を通じて上昇基調にある」、「もし政策会合が明日開催されるとして、現時点の情報に基づけば、利下げの論拠は見当たらない」 ドルが買われ、債券と株は下落。
8/21 ブラード氏・前セントルイス連銀総裁 「金利は現時点でやや高過ぎる。2026年に向けて100bp程度の引き下げが可能だと考える。それは9月の会合での利下げから始まり、恐らく年内に追加利下げがあるだろう」 --------
8/14 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「現時点での戦略的アプローチは『動いて、待つ』というものになるだろう」、「われわれの行動後、経済がどう動くか分かるまでに時間がかかるかもしれない。その間に、次にどのような行動を取るべきか鮮明になるだろう」、「労働市場が堅調を維持すれば、年内は1度の利下げが適切になるという見方はなお変わらない」、「いつ行動を起こすかについては予断を持っていない。特定の時期に固執していない」 --------
8/14 ムサレム・セントルイス連銀総裁 (9月の会合で)「私自身としてどういった政策を支持できるかを正確に述べるのは時期尚早だ」、(9月会合で0.5ポイントの利下げが正当化され得るかとの質問に)、「経済の現状や見通しを踏まえれば支持されない」、「データは、より持続的なインフレの可能性があるかどうかを示し始めている。労働市場には下振れリスクがある」、「私は両方の要素を意識している」、「われわれの2つの責務の間に緊張が見られる場合は、バランスの取れたアプローチで臨む必要がある」 --------
8/14 デーリー・SF連銀総裁 「0.5ポイントというのは、われわれが緊急性を認識しているように聞こえる。労働市場について私が感じているものとは違う緊急シグナルを発することになると懸念する」、「そうは見ていないし、遅れを取り戻す必要も感じない」 --------
8/13 ベッセント・財務長官 「9月の0.5ポイント利上げを皮切りに、そこから一連の利下げを実施できるだろうと考えている。どのモデルを見ても、金利は恐らく150、175ベーシス・ポイント低い水準にあるできだろう」、「トランプ大統領も望んでいる」、「日本はインフレ問題を抱えており、確実に日本からの波及がある」、(日銀の植田総裁と話したこと明らかにしたうえで)、「これは総裁の見解ではなく、私見だが、日銀は後手に回っており、利上げするだろう」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は147円08銭まで下落。
8/12 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「米経済の先行きに対する不透明感は薄れつつあるものの、FRBがインフレ抑制と雇用の下支えのどちらに重点を置くべきかは、依然として明確ではない」 --------
8/12 シュミッド・カンザスシティ連銀総裁 「経済が勢いをなお維持し、企業の楽観的な見方が強まり、インフレが当局の目標を上回る水準にとどまる中では、緩やかな引き締め状態にある金融政策スタンスを当面維持するのが適切だ」 --------
8/7 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「年内に1回の利下げが実施される可能性が高いとの見通しは変わらない」、「関税の影響が一時的なものなのか、あるいはもっと持続的なものなのかという点が、現時点では恐らく最も重要な問題だ」、「この日発動された関税の影響が、一時的な物価上昇にとどまるという教科書的な関税の例に当てはまるには、いくらか会懐疑的な理由がある」、「これは一度きりで、ある朝目が覚めたら全ての関税が明らかになっているという話ではない。むしろ、関税が頻繁に変化することで、消費者の意識の中に関税や物価上昇見通しが浮かぶ期間が長くなり、インフレ期待が高まるリスクがある」 --------
8/6 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「景気は減速している。短期的にFF金利の調整を開始することが適切になる可能性がある」、「関税の影響が明確になるまで、どれくらい待てるのか、それが現在、私を悩ませている。最良の選択肢が、多少の調整を行い、その後に一時停止や方向転換を迫られる展開であっても、関税の影響が明確になるまで何もしないで待つより望ましい可能性がある」 --------
8/6 クック・FRB理事 「7月の雇用統計は懸念すべき内容だった。こうしたデータの修正は転換点でよく見られる傾向だ」 --------
8/4 デーリー・SF連銀総裁 (先週のFOMCの決定について)、「もう1会合見送る用意はあったが永遠に待つことはできない」、「インフレが加速・波及したり、雇用市場が持ち直したりすれば、2回未満の利下げでも十分かもしれないが、より可能性が高いのは、2回を超える利下げが必要になるかもしれないことだと考える。労働市場が弱い局面に入りつつある一方で、インフレへの波及が見られない場合、さらに措置を講じる準備も必要というのが私の見解だ」 --------
7/30 FOMC声明文 「経済活動の伸びは緩やかになった。景気見通しに関する不確実性は依然として高い。委員会は長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指し、2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」 --------
7/30 パウエル・FRB議長 「解決すべき不確実性は非常に多い。そのプロセスの終わりが間近に迫っているという感触はない」、(利下げ次期については)、「9月については何も決定していない」 ドル円は買われ、149円54銭まで上昇。
7/24 ラガルド・ECB総裁 「現在の状況は良好だ。今は金利を据え置き、リスクが今後数か月の間にどう展開いていくかを見守ることが適切な状況にある」 --------
7/24 ECB声明文 「これまでのところ経済は全体として底堅さを示している。しかし、通商摩擦をはじめとする要因により、依然として先行きは極めて不透明だ」 --------
7/10 デーリー・SF連銀総裁 「2回の利下げというのが可能性の高いシナリオだと私はみているが、あらゆる当局の予測には不確実性が伴う」 --------
7/10 ペンス・元副大統領 「われわれは主に中国を対象に、相手の行動の変化を促すべく関税やその脅威を交渉手段として用いた。目的は本質的に貿易障壁を下げ、貿易を拡大することだった」、「トランプ氏は米産業政策の長期的な転換を進めており、恒久的かつ一方的な貿易関税が米国にとって長期的に有益だと見なしているとは、私は考えていない」、「自由市場を信奉する保守派として、私はそれには賛同できない」 --------
7/2 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「経済指標は非常に堅調だ。経済が悪い方向に進んでいるという切迫感はない。また、経済環境全体に切迫感がない限り、霧の中を運転するように、ゆっくり進むのが妥当だ」、「現時点で政策金利を引き下げる緊急性はない」 --------
7/1 パウエル・FRB議長 「(関税の行方に)われわれは注視している。夏にかけていくらかの数値が上がると予想している」と話し、その上で「ただし影響が想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのかは、今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意がある」、(月利下げについては)「検討は会合ごとに行われる。どの会合も選択肢から排除しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」 利下げの可能性を排除しなかったことで、ドル円はやや売られる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和