今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米第2四半期GDP上振れ」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 上値の重いドル円は、米GDP発表直後は買われ147円台前半まで戻したが続かず。NY時間帯での多くは146円台で推移。
  • ユーロドルは小幅に反発。ドル安が進み1.1697まで上昇。
  • 株式市場はGDPの発表もあり、3指数が揃って3日続伸。S&P500は初の「6500台」に乗せ、連日で最高値を更新。
  • 債券は続伸。長期金利は4.20%台に低下。
  • 金は3日続伸。原油も小幅に続伸。
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4−6月GDP(改定値) → 3.3%
新規失業保険申請件数 → 22.9万件
7月中古住宅販売成約件数 → −0.4%
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ドル/円 146.66 〜 147.23
ユーロ/ドル 1.1659 〜 1.1697
ユーロ/円 171.32 〜 171.79
NYダウ +71.67 → 45,636.90
GOLD +25.70 → 3,474.30ドル
WTI +0.45 → 64.60
米10年国債 −0.031 → 4.203%

本日の注目イベント

  • 日 7月失業率
  • 日 7月鉱工業生産
  • 独 独7月輸入物価指数
  • 独 独7月小売売上高
  • 独 独8月雇用統計
  • 独 独8月消費者物価指数(速報値)
  • 米 7月個人所得
  • 米 7月個人支出
  • 米 7月PCEデフレータ(前月比)
  • 米 7月PCEデフレータ(前年比)
  • 米 7月PCEコアデフレータ(前月比)
  • 米 7月PCEコアデフレータ(前年比)
  • 米 8月シカゴ購買部協会景気指数
  • 米 8月ミシガン大学消費者マインド(確定値)
  • 加 カナダ4−6月期GDP

本日のコメント

FRBのクック理事は28日、住宅ローン申請に関する不正疑惑を理由に自身を解任しようとしているトランプ大統領に抗議し、ワシントンの連邦裁判所に提訴しました。ブルームバーグは、「FRBの独立性を巡る歴史的な法廷闘争が始まった」と伝えています。クック理事の弁護士は、トランプ氏の試みは権力の掌握が狙いであり、米経済に「修復不能な危害」を与えかねないと非難しています。また同弁護士は、今回の疑惑が生じた原因は、意図せぬ「事務上の手違い」にあるとの見方を示していました。

FRBの体制を自身に従順な人物で占めようと目論み、次回9月のFOMC前までにミラン米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を理事に送り込みたいトランプ氏の構想が実現しそうな気配です。ミラン氏をFRB理事にするには議会の承認が必要ですが、民主党はミラン氏の承認を単独で阻止することはできないと非公式に認めているようです。規則上、民主党にできるのは、来週に予定されている指名承認公聴会後に銀行委員会で手続きを遅らせることや、本会議で数日間引き延ばす程度にとどまるとの見方があります。共和党が主導する上院で、手続き上の不備や想定外の反対がなければ実現する見通しです。公聴会の日程はまだ発表されていませんが、9月のFOMC会合は16−17日に予定されています。これに関して、ECB政策委員会のメンバーであるレーン・フィンランド中銀総裁は28日の講演で、「米連邦準備制度の自律性が数十年ぶりに試練に直面しており、市場や経済に「重大な」リスクをもたらしている」と指摘し、「1980年代に2桁台のインフレが抑え込まれて以来、米金融当局の独立性は不可侵の原則と見なされてきたが、今やその原則が損なわれつつある」と述べていました。また「中央銀行に対する信頼があれば、人々や企業、金融市場は、中銀が物価安定を堅持すると信じる。この信頼こそがインフレ期待を安定させる」と語っています。

米第2四半期GDPの改定値は「3.3%」と、速報値の「3.0%」から上方修正され、市場予想の「3.1%」をも上回る結果でした。設備投資が上向きに修正された他、貿易も大きく寄与し、個人消費も堅調でした。米GDPの強さの一つに、生産年齢人口(15歳〜64歳の人口)が2.24億人と、総人口の64.7%を占めていることにあるとも言われています。人口減少や高齢化が深刻化している欧州や中国、日本など、先進国の中では飛び抜けており、今後も労働人口における懸念はなく、この面での米国の優位性は揺るぎないものと見られます。ドル円はこの発表を受け147円23銭まで買われましたが続かず、146円台半ばまで押し戻されています。FRBによる利下げ観測に加え、昨日山口県で講演を行った中川日銀審議委員が「現在の実質金利の水準を踏まえると、日銀の経済・物価の見通しが実現していけば、それに応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」と、従来の方針を改めて示したことも材料視されたようです。日本の長期金利は今週1.63%台まで上昇し、日銀の利上げを催促するような動きとなり、利上げ観測は従来よりも高まっています。

赤沢経済再生担当相は28日から予定していた10回目の米国訪問を、昨日急遽取りやめました。取りやめの理由については、「事務的に議論すべき点が見つかったため」と説明していましたが、ここまで来て日米間で齟齬が見つかったのか・・・?15%関税の早期適用に、大統領の署名が待たれます。

本日は何度もテストしてブレイクできなかった「146円台半ば」を下回るのかどうかが焦点です。仮に明確に下回るようだと、ドル売りに拍車がかかる可能性もありそうです。

本日のドル円は145円80銭〜147円80銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
8/27 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「私の見解では、全ての会合が間違いなくライブだ」、(最大雇用と物価安定というFRBの2大責務に言及し)、「リスクは一段と均衡してきている」、(金利水準は)「やや景気抑制的だ」、「利下げを実施しても、依然としていくぶんか景気抑制的な状態を維持できるだろう。ただし、経済で実際に何が起きているのかを見極める必要がある」 --------
8/26 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「経済が緩やかな動きとなれば、金利調整は小幅にとどまるだろう。実際に経済が緩やかな動きになるかは分からない。それはその時に確認しなければならない。従ってこれは私の予測だが、予測は変わり得る」 --------
8/21 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「労働市場の動向は気掛かりな要因となり得る」、「現時点でも基本的には同じ考えだ」、「ただ、足元の環境においては、あらゆる見通しや予測に幅広い不確実性が伴う」、「特定の見通しに固執しているわけではない」 ドルが買われ、債券と株は下落。
8/21 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「米国のインフレは高過ぎる上、過去1年を通じて上昇基調にある」、「もし政策会合が明日開催されるとして、現時点の情報に基づけば、利下げの論拠は見当たらない」 ドルが買われ、債券と株は下落。
8/21 ブラード氏・前セントルイス連銀総裁 「金利は現時点でやや高過ぎる。2026年に向けて100bp程度の引き下げが可能だと考える。それは9月の会合での利下げから始まり、恐らく年内に追加利下げがあるだろう」 --------
8/14 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「現時点での戦略的アプローチは『動いて、待つ』というものになるだろう」、「われわれの行動後、経済がどう動くか分かるまでに時間がかかるかもしれない。その間に、次にどのような行動を取るべきか鮮明になるだろう」、「労働市場が堅調を維持すれば、年内は1度の利下げが適切になるという見方はなお変わらない」、「いつ行動を起こすかについては予断を持っていない。特定の時期に固執していない」 --------
8/14 ムサレム・セントルイス連銀総裁 (9月の会合で)「私自身としてどういった政策を支持できるかを正確に述べるのは時期尚早だ」、(9月会合で0.5ポイントの利下げが正当化され得るかとの質問に)、「経済の現状や見通しを踏まえれば支持されない」、「データは、より持続的なインフレの可能性があるかどうかを示し始めている。労働市場には下振れリスクがある」、「私は両方の要素を意識している」、「われわれの2つの責務の間に緊張が見られる場合は、バランスの取れたアプローチで臨む必要がある」 --------
8/14 デーリー・SF連銀総裁 「0.5ポイントというのは、われわれが緊急性を認識しているように聞こえる。労働市場について私が感じているものとは違う緊急シグナルを発することになると懸念する」、「そうは見ていないし、遅れを取り戻す必要も感じない」 --------
8/13 ベッセント・財務長官 「9月の0.5ポイント利上げを皮切りに、そこから一連の利下げを実施できるだろうと考えている。どのモデルを見ても、金利は恐らく150、175ベーシス・ポイント低い水準にあるできだろう」、「トランプ大統領も望んでいる」、「日本はインフレ問題を抱えており、確実に日本からの波及がある」、(日銀の植田総裁と話したこと明らかにしたうえで)、「これは総裁の見解ではなく、私見だが、日銀は後手に回っており、利上げするだろう」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は147円08銭まで下落。
8/12 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「米経済の先行きに対する不透明感は薄れつつあるものの、FRBがインフレ抑制と雇用の下支えのどちらに重点を置くべきかは、依然として明確ではない」 --------
8/12 シュミッド・カンザスシティ連銀総裁 「経済が勢いをなお維持し、企業の楽観的な見方が強まり、インフレが当局の目標を上回る水準にとどまる中では、緩やかな引き締め状態にある金融政策スタンスを当面維持するのが適切だ」 --------
8/7 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「年内に1回の利下げが実施される可能性が高いとの見通しは変わらない」、「関税の影響が一時的なものなのか、あるいはもっと持続的なものなのかという点が、現時点では恐らく最も重要な問題だ」、「この日発動された関税の影響が、一時的な物価上昇にとどまるという教科書的な関税の例に当てはまるには、いくらか会懐疑的な理由がある」、「これは一度きりで、ある朝目が覚めたら全ての関税が明らかになっているという話ではない。むしろ、関税が頻繁に変化することで、消費者の意識の中に関税や物価上昇見通しが浮かぶ期間が長くなり、インフレ期待が高まるリスクがある」 --------
8/6 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「景気は減速している。短期的にFF金利の調整を開始することが適切になる可能性がある」、「関税の影響が明確になるまで、どれくらい待てるのか、それが現在、私を悩ませている。最良の選択肢が、多少の調整を行い、その後に一時停止や方向転換を迫られる展開であっても、関税の影響が明確になるまで何もしないで待つより望ましい可能性がある」 --------
8/6 クック・FRB理事 「7月の雇用統計は懸念すべき内容だった。こうしたデータの修正は転換点でよく見られる傾向だ」 --------
8/4 デーリー・SF連銀総裁 (先週のFOMCの決定について)、「もう1会合見送る用意はあったが永遠に待つことはできない」、「インフレが加速・波及したり、雇用市場が持ち直したりすれば、2回未満の利下げでも十分かもしれないが、より可能性が高いのは、2回を超える利下げが必要になるかもしれないことだと考える。労働市場が弱い局面に入りつつある一方で、インフレへの波及が見られない場合、さらに措置を講じる準備も必要というのが私の見解だ」 --------
7/30 FOMC声明文 「経済活動の伸びは緩やかになった。景気見通しに関する不確実性は依然として高い。委員会は長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指し、2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」 --------
7/30 パウエル・FRB議長 「解決すべき不確実性は非常に多い。そのプロセスの終わりが間近に迫っているという感触はない」、(利下げ次期については)、「9月については何も決定していない」 ドル円は買われ、149円54銭まで上昇。
7/24 ラガルド・ECB総裁 「現在の状況は良好だ。今は金利を据え置き、リスクが今後数か月の間にどう展開いていくかを見守ることが適切な状況にある」 --------
7/24 ECB声明文 「これまでのところ経済は全体として底堅さを示している。しかし、通商摩擦をはじめとする要因により、依然として先行きは極めて不透明だ」 --------
7/10 デーリー・SF連銀総裁 「2回の利下げというのが可能性の高いシナリオだと私はみているが、あらゆる当局の予測には不確実性が伴う」 --------
7/10 ペンス・元副大統領 「われわれは主に中国を対象に、相手の行動の変化を促すべく関税やその脅威を交渉手段として用いた。目的は本質的に貿易障壁を下げ、貿易を拡大することだった」、「トランプ氏は米産業政策の長期的な転換を進めており、恒久的かつ一方的な貿易関税が米国にとって長期的に有益だと見なしているとは、私は考えていない」、「自由市場を信奉する保守派として、私はそれには賛同できない」 --------
7/2 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「経済指標は非常に堅調だ。経済が悪い方向に進んでいるという切迫感はない。また、経済環境全体に切迫感がない限り、霧の中を運転するように、ゆっくり進むのが妥当だ」、「現時点で政策金利を引き下げる緊急性はない」 --------
7/1 パウエル・FRB議長 「(関税の行方に)われわれは注視している。夏にかけていくらかの数値が上がると予想している」と話し、その上で「ただし影響が想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのかは、今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意がある」、(月利下げについては)「検討は会合ごとに行われる。どの会合も選択肢から排除しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」 利下げの可能性を排除しなかったことで、ドル円はやや売られる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和