「ミシガン大学消費者マインド下振れ」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円はミシガン大学消費者マインド確報値の下振れで売られ、146円78銭まで下げたが147円台に乗せ越週。
- ユーロドルは小動きで1.16台半ばから1.17前後で推移。
- 株式市場では3指数が揃って反落。ハイテク株の下げが目立ち、ナスダックは249ポイント下落。
- 債券は売られ、長期金利は4.22%台に上昇。
- 金は大幅に続伸。原油は反落。
7月個人所得 → 0.4%
7月個人支出 → 0.5%
7月PCEデフレータ(前月比) → 0.2%
7月PCEデフレータ(前年比) → 2.6%
7月PCEコアデフレータ(前月比) → 0.3%
7月PCEコアデフレータ(前年比) → 2.9%
8月シカゴ購買部協会景気指数 → 41.5
8月ミシガン大学消費者マインド(確定値) → 58.2
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ドル/円 | 146.78 〜 147.42 |
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ユーロ/ドル | 1.1651 〜 1.1709 |
ユーロ/円 | 171.54 〜 172.01 |
NYダウ | −92.02 → 45,544.88 |
GOLD | +41.50 → 3,516.10ドル |
WTI | −0.59 → 64.01 |
米10年国債 | +0.025 → 4.228% |
本日の注目イベント
- 豪 豪7月住宅建設許可件数
- 中 8月RatingDogサービス業PMI
- 中 8月RatingDog総合PMI
- 欧 ユーロ圏8月製造業PMI(改定値)
- 欧 ユーロ圏7月失業率
- 米 株式、債券市場休場(レーバーデー)
本日のコメント
トランプ大統領による世界的な関税措置について、その合憲性が問われていた訴訟で、ワシントンの連邦巡回区控訴裁判所は29日、相互関税などを憲法違反だとした一審判決を支持する判断を下しました。相互関税などの発動は「大統領権限の逸脱」で、憲法違反だとした5月の一審・米国際貿易裁判所の判断を支持しました。トランプ大統領はSNSで、「すべての関税は依然有効だ。党派的な裁判所が関税撤回すべきだと誤った判断を下した」と直ちに批判しました。今後トランプ政権は速やかに連邦最高裁に上訴する可能性があります。連邦最高裁は9人の判事のうち6人が保守派であることから、一審・二審で下した判断を支持するかどうかはわかりませんが、トランプ氏は勝機ありと考えているようです。
訴訟関連ではさらに、クックFRB理事にトランプ氏が解任を通告した問題で、同理事が求めた仮差し止め令を巡る緊急審理が29日、ワシントンの連邦地裁で開かれました。2時間弱に及ぶ審理を経て、コブ判事は仮差し止め令の是非について判断を下しませんでした。トランプ大統領に理事解任の「正当な理由」があったかどうかが審理の焦点でしたが、コブ連邦地裁判事はこの点に関する質問を双方の弁護士に求めましたが、仮差し止めについて判断を下さず、審理は終了しました。トランプ政権が繰り返してきたFRB批判は、この日の審理をもって法廷に場を移し、激しい法廷闘争がスタートしました。クック理事の代理人であるアビー・ローウェル弁護士は、「不正の追及はトランプ大統領にとって、自分のアジェンダに邪魔な人物を排除する『常套手段』になっている」と指摘。さらに、「トランプ氏が望むFRB理事は『一度も過ちを犯したことのない人物』ではなく、トランプ氏の『要求に応じて金利を引き下げる人物』だ」と、ローウェル氏は主張していました。(ブルームバーグ)
先週末に発表された「7月の個人消費支出(PCE)」は、ほぼ市場予想通りでしたが、根強いインフレの中でも底堅い需要が続いていることを示唆していました。一方同じく同日に発表された8月のミシガン大学消費者マインド確報値は「58.2」と速報値の「58.6」から下方修正されました。同指標の下方修正で9月の利下げ確率がさらに高まり、ドル円は146円78銭まで売られましたが、米国では9月1日が「レーバーデー」による祝日ということもあり、大きな動きにはつながっていません。また今週末には極めて重要だと見られている「8月の雇用統計」が発表されます。この結果を見極めたいとする市場関係者も多く、「嵐の前の静けさ」といった状況とも言えます。ドルの上値が重い展開が続く中でも、売られても146円台半ばでサポートされるのは、「8月の雇用統計」の内容が読み切れないことに一因がありそうです。
日本を訪れ、石破首相と東北新幹線に乗り、仙台では半導体大手の東京エレクトロンを訪問したインドのモディ首相。半導体供給網で日本と結束する姿勢をアピールしていましたが、昨日は中国へ飛び習近平国家主席と会談し、親密さを見せていました。米国からの高関税に強い抵抗を示し、中国との結束にも努めていました。習氏は「両国がライバルでなくパートナーであり続け、互いを脅威でなく発展の機会と見なす限り、中印関係は繁栄し、着実に前進する」と述べていました。インドの「全方位外交」が今後同国にとって有利に働くのか、見極めていきたいところです。
本日のドル円は146円〜147円50銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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8/27 | ウィリアムズ・NY連銀総裁 | 「私の見解では、全ての会合が間違いなくライブだ」、(最大雇用と物価安定というFRBの2大責務に言及し)、「リスクは一段と均衡してきている」、(金利水準は)「やや景気抑制的だ」、「利下げを実施しても、依然としていくぶんか景気抑制的な状態を維持できるだろう。ただし、経済で実際に何が起きているのかを見極める必要がある」 | -------- |
8/26 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「経済が緩やかな動きとなれば、金利調整は小幅にとどまるだろう。実際に経済が緩やかな動きになるかは分からない。それはその時に確認しなければならない。従ってこれは私の予測だが、予測は変わり得る」 | -------- |
8/21 | ポスティック・アトランタ連銀総裁 | 「労働市場の動向は気掛かりな要因となり得る」、「現時点でも基本的には同じ考えだ」、「ただ、足元の環境においては、あらゆる見通しや予測に幅広い不確実性が伴う」、「特定の見通しに固執しているわけではない」 | ドルが買われ、債券と株は下落。 |
8/21 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「米国のインフレは高過ぎる上、過去1年を通じて上昇基調にある」、「もし政策会合が明日開催されるとして、現時点の情報に基づけば、利下げの論拠は見当たらない」 | ドルが買われ、債券と株は下落。 |
8/21 | ブラード氏・前セントルイス連銀総裁 | 「金利は現時点でやや高過ぎる。2026年に向けて100bp程度の引き下げが可能だと考える。それは9月の会合での利下げから始まり、恐らく年内に追加利下げがあるだろう」 | -------- |
8/14 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「現時点での戦略的アプローチは『動いて、待つ』というものになるだろう」、「われわれの行動後、経済がどう動くか分かるまでに時間がかかるかもしれない。その間に、次にどのような行動を取るべきか鮮明になるだろう」、「労働市場が堅調を維持すれば、年内は1度の利下げが適切になるという見方はなお変わらない」、「いつ行動を起こすかについては予断を持っていない。特定の時期に固執していない」 | -------- |
8/14 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | (9月の会合で)「私自身としてどういった政策を支持できるかを正確に述べるのは時期尚早だ」、(9月会合で0.5ポイントの利下げが正当化され得るかとの質問に)、「経済の現状や見通しを踏まえれば支持されない」、「データは、より持続的なインフレの可能性があるかどうかを示し始めている。労働市場には下振れリスクがある」、「私は両方の要素を意識している」、「われわれの2つの責務の間に緊張が見られる場合は、バランスの取れたアプローチで臨む必要がある」 | -------- |
8/14 | デーリー・SF連銀総裁 | 「0.5ポイントというのは、われわれが緊急性を認識しているように聞こえる。労働市場について私が感じているものとは違う緊急シグナルを発することになると懸念する」、「そうは見ていないし、遅れを取り戻す必要も感じない」 | -------- |
8/13 | ベッセント・財務長官 | 「9月の0.5ポイント利上げを皮切りに、そこから一連の利下げを実施できるだろうと考えている。どのモデルを見ても、金利は恐らく150、175ベーシス・ポイント低い水準にあるできだろう」、「トランプ大統領も望んでいる」、「日本はインフレ問題を抱えており、確実に日本からの波及がある」、(日銀の植田総裁と話したこと明らかにしたうえで)、「これは総裁の見解ではなく、私見だが、日銀は後手に回っており、利上げするだろう」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は147円08銭まで下落。 |
8/12 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「米経済の先行きに対する不透明感は薄れつつあるものの、FRBがインフレ抑制と雇用の下支えのどちらに重点を置くべきかは、依然として明確ではない」 | -------- |
8/12 | シュミッド・カンザスシティ連銀総裁 | 「経済が勢いをなお維持し、企業の楽観的な見方が強まり、インフレが当局の目標を上回る水準にとどまる中では、緩やかな引き締め状態にある金融政策スタンスを当面維持するのが適切だ」 | -------- |
8/7 | ポスティック・アトランタ連銀総裁 | 「年内に1回の利下げが実施される可能性が高いとの見通しは変わらない」、「関税の影響が一時的なものなのか、あるいはもっと持続的なものなのかという点が、現時点では恐らく最も重要な問題だ」、「この日発動された関税の影響が、一時的な物価上昇にとどまるという教科書的な関税の例に当てはまるには、いくらか会懐疑的な理由がある」、「これは一度きりで、ある朝目が覚めたら全ての関税が明らかになっているという話ではない。むしろ、関税が頻繁に変化することで、消費者の意識の中に関税や物価上昇見通しが浮かぶ期間が長くなり、インフレ期待が高まるリスクがある」 | -------- |
8/6 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「景気は減速している。短期的にFF金利の調整を開始することが適切になる可能性がある」、「関税の影響が明確になるまで、どれくらい待てるのか、それが現在、私を悩ませている。最良の選択肢が、多少の調整を行い、その後に一時停止や方向転換を迫られる展開であっても、関税の影響が明確になるまで何もしないで待つより望ましい可能性がある」 | -------- |
8/6 | クック・FRB理事 | 「7月の雇用統計は懸念すべき内容だった。こうしたデータの修正は転換点でよく見られる傾向だ」 | -------- |
8/4 | デーリー・SF連銀総裁 | (先週のFOMCの決定について)、「もう1会合見送る用意はあったが永遠に待つことはできない」、「インフレが加速・波及したり、雇用市場が持ち直したりすれば、2回未満の利下げでも十分かもしれないが、より可能性が高いのは、2回を超える利下げが必要になるかもしれないことだと考える。労働市場が弱い局面に入りつつある一方で、インフレへの波及が見られない場合、さらに措置を講じる準備も必要というのが私の見解だ」 | -------- |
7/30 | FOMC声明文 | 「経済活動の伸びは緩やかになった。景気見通しに関する不確実性は依然として高い。委員会は長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指し、2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」 | -------- |
7/30 | パウエル・FRB議長 | 「解決すべき不確実性は非常に多い。そのプロセスの終わりが間近に迫っているという感触はない」、(利下げ次期については)、「9月については何も決定していない」 | ドル円は買われ、149円54銭まで上昇。 |
7/24 | ラガルド・ECB総裁 | 「現在の状況は良好だ。今は金利を据え置き、リスクが今後数か月の間にどう展開いていくかを見守ることが適切な状況にある」 | -------- |
7/24 | ECB声明文 | 「これまでのところ経済は全体として底堅さを示している。しかし、通商摩擦をはじめとする要因により、依然として先行きは極めて不透明だ」 | -------- |
7/10 | デーリー・SF連銀総裁 | 「2回の利下げというのが可能性の高いシナリオだと私はみているが、あらゆる当局の予測には不確実性が伴う」 | -------- |
7/10 | ペンス・元副大統領 | 「われわれは主に中国を対象に、相手の行動の変化を促すべく関税やその脅威を交渉手段として用いた。目的は本質的に貿易障壁を下げ、貿易を拡大することだった」、「トランプ氏は米産業政策の長期的な転換を進めており、恒久的かつ一方的な貿易関税が米国にとって長期的に有益だと見なしているとは、私は考えていない」、「自由市場を信奉する保守派として、私はそれには賛同できない」 | -------- |
7/2 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「経済指標は非常に堅調だ。経済が悪い方向に進んでいるという切迫感はない。また、経済環境全体に切迫感がない限り、霧の中を運転するように、ゆっくり進むのが妥当だ」、「現時点で政策金利を引き下げる緊急性はない」 | -------- |
7/1 | パウエル・FRB議長 | 「(関税の行方に)われわれは注視している。夏にかけていくらかの数値が上がると予想している」と話し、その上で「ただし影響が想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのかは、今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意がある」、(月利下げについては)「検討は会合ごとに行われる。どの会合も選択肢から排除しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」 | 利下げの可能性を排除しなかったことで、ドル円はやや売られる。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書