今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円一時149円に迫る」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 日銀副総裁の講演、政局不安、さらには米金利の上昇が相まって、ドル円は大きく買われた。 NYでは149円に迫る水準まで買われ、クロス円も軒並み上昇。
  • ドル高の流れにユーロは下げ、1.1613まで下落。
  • 株式市場では3指数が続落。エヌビディアの株価が下げ止まらず、ナスダックは175ポイント下げる。
  • 債券は続落。長期金利は4.26%台で推移。
  • 金は5日続伸し最高値を更新。原油も買われ65ドル台を回復。
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8月S&Pグローバル製造業PMI(確報値) → 53.0
8月ISM製造業景況指数 → 48.7
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ドル/円 147.94 〜 148.94
ユーロ/ドル 1.1613 〜 1.1682
ユーロ/円 172.62 〜 173.21
NYダウ −249.07 → 45,295.81
GOLD +76.10 → 3,592.20ドル
WTI +1.58 → 65.59
米10年国債 0.033 → 4.261%

本日の注目イベント

  • 豪 豪4−6月期GDP
  • 中 8月RatingDogサービス業PMI
  • 中 8月RatingDog総合PMI
  • 欧 ユーロ圏7月卸売物価指数
  • 欧 ユーロ圏8月総合PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏8月サービス業PMI(改定値)
  • 英 イングランド銀行総裁議会証言
  • 米 7月雇用動態調査(JOLTS)求人件数
  • 米 7月製造業受注
  • 米 7月耐久財受注
  • 米 8月自動車販売台数
  • 米 ベージュブック(地区連銀経済報告)
  • 米 ムサレム・セントルイス連銀総裁講演

本日のコメント

日銀の氷見野副総裁は昨日の講演で、経済・物価見通しが実現していけば、引き続き利上げを行うことが適切との見解を改めて示しましたが、特に追加利上げ時期を示唆するような発言はありませんでした。氷見野氏は北海道釧路市での講演で、経済・物価のメインシナリオが実現していけば「経済・物価情勢の改善に応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが適切だ」と話した上で、経済と物価には上下双方向のリスクが考えられるとし、「予断を持たずにみていきたい」と述べていました。利上げに対して特段踏み込んだ発言がなかったことで、ドル円はジリジリと買われ、午後3時過ぎには一時148円台に乗せる場面もありました。さらにNYでは、この日行われた自民党の「両院議員総会」で、森山幹事長が辞任を申し出るなど、政局不安を材料に円が売られ、ドル円は一時148円94銭まで上昇しました。日銀の今会合での利上げ確率は「五分五分」と予想していますが、講演内容からするとその確率はやや下がってきたと感じました。ドル円の149円に迫る上昇は、FRBの利下げ観測やFRBに対する介入が強まり、さらに極めて重要な雇用統計を控えドル安が進みそうな中、やや想定外の動きでした。この辺りが、為替の難しさかもしれません。

トランプ大統領が住宅ローン申請に関する不正疑惑を理由に解任に動いたクックFRB理事に対し、著名エコノミストが支援の声を上げているとブルームバーグが報じています。「450人余りのエコノミストがクック氏を支持する公開書簡に署名。FRB理事の解任には極めて高いハードルがあるとし、選挙で選ばれた公職者は中央銀行の独立性を損なう行為や発言を控えるべきだと訴えた」と伝えています。2日に公表された書簡には、ノーベル経済学賞受賞者のクラウディア・ゴールディン氏やポール・ローマー氏、オバマ元政権下で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたクリスティーナ・ローマー氏、クック理事と共同で論文を執筆したオハイオ州立大学教授のトレボン・ローガン氏らが署名しており、「クック理事に関する最近の公的な発言は、解任の脅しや既に解任されたとの主張など、いずれも証拠のない疑惑と共に持ち出されている」と書簡では指摘。「こうしたやり方は中央銀行の独立性という根本的な原則を脅かし、米国で最も重要な機関の一角に対する信頼を損なうものだ」と続けています。書簡にはカリフォルニア大学バークレー校のデービッド・ローマー教授や、元FRBエコノミストのクラウディア・サーム氏やジュリア・コロナド氏も署名しており、「われわれはクック理事および長年にわたり米経済の強さを支えてきた制度的な仕組みを支持する」と記しています。こうした書簡は、政権が始動して以来、FRBに対する執拗な介入を続けているトランプ氏に反対する声の集積だと考えられます。

世界的に、長期・超長期国債が売られ、金利が上昇傾向にあります。背景には、各国政府が歳出に向けて借り入れを拡大するとの懸念や、日本の根強いインフレやフランスの政局不安に加え、トランプ大統領の利下げ圧力により米国内の物価圧力が強まるとの見方があることなどが指摘されています。昨日は英国の長期債が大きく売られ、利回りは1998年以来の高水準に上昇しました。英国の30年債の利回りは一時8bp上昇し、5.72%。10年債利回りも6bp上昇して4.81%と、1月以来の高水準を付けています。金利の大幅上昇は財政負担が増えるとの観測から、ポンドは対ドルで一時1.5%安と大きく売られました。

本日のドル円は147円50銭〜149円30銭程度を予想しています。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
8/27 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「私の見解では、全ての会合が間違いなくライブだ」、(最大雇用と物価安定というFRBの2大責務に言及し)、「リスクは一段と均衡してきている」、(金利水準は)「やや景気抑制的だ」、「利下げを実施しても、依然としていくぶんか景気抑制的な状態を維持できるだろう。ただし、経済で実際に何が起きているのかを見極める必要がある」 --------
8/26 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「経済が緩やかな動きとなれば、金利調整は小幅にとどまるだろう。実際に経済が緩やかな動きになるかは分からない。それはその時に確認しなければならない。従ってこれは私の予測だが、予測は変わり得る」 --------
8/21 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「労働市場の動向は気掛かりな要因となり得る」、「現時点でも基本的には同じ考えだ」、「ただ、足元の環境においては、あらゆる見通しや予測に幅広い不確実性が伴う」、「特定の見通しに固執しているわけではない」 ドルが買われ、債券と株は下落。
8/21 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「米国のインフレは高過ぎる上、過去1年を通じて上昇基調にある」、「もし政策会合が明日開催されるとして、現時点の情報に基づけば、利下げの論拠は見当たらない」 ドルが買われ、債券と株は下落。
8/21 ブラード氏・前セントルイス連銀総裁 「金利は現時点でやや高過ぎる。2026年に向けて100bp程度の引き下げが可能だと考える。それは9月の会合での利下げから始まり、恐らく年内に追加利下げがあるだろう」 --------
8/14 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「現時点での戦略的アプローチは『動いて、待つ』というものになるだろう」、「われわれの行動後、経済がどう動くか分かるまでに時間がかかるかもしれない。その間に、次にどのような行動を取るべきか鮮明になるだろう」、「労働市場が堅調を維持すれば、年内は1度の利下げが適切になるという見方はなお変わらない」、「いつ行動を起こすかについては予断を持っていない。特定の時期に固執していない」 --------
8/14 ムサレム・セントルイス連銀総裁 (9月の会合で)「私自身としてどういった政策を支持できるかを正確に述べるのは時期尚早だ」、(9月会合で0.5ポイントの利下げが正当化され得るかとの質問に)、「経済の現状や見通しを踏まえれば支持されない」、「データは、より持続的なインフレの可能性があるかどうかを示し始めている。労働市場には下振れリスクがある」、「私は両方の要素を意識している」、「われわれの2つの責務の間に緊張が見られる場合は、バランスの取れたアプローチで臨む必要がある」 --------
8/14 デーリー・SF連銀総裁 「0.5ポイントというのは、われわれが緊急性を認識しているように聞こえる。労働市場について私が感じているものとは違う緊急シグナルを発することになると懸念する」、「そうは見ていないし、遅れを取り戻す必要も感じない」 --------
8/13 ベッセント・財務長官 「9月の0.5ポイント利上げを皮切りに、そこから一連の利下げを実施できるだろうと考えている。どのモデルを見ても、金利は恐らく150、175ベーシス・ポイント低い水準にあるできだろう」、「トランプ大統領も望んでいる」、「日本はインフレ問題を抱えており、確実に日本からの波及がある」、(日銀の植田総裁と話したこと明らかにしたうえで)、「これは総裁の見解ではなく、私見だが、日銀は後手に回っており、利上げするだろう」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は147円08銭まで下落。
8/12 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「米経済の先行きに対する不透明感は薄れつつあるものの、FRBがインフレ抑制と雇用の下支えのどちらに重点を置くべきかは、依然として明確ではない」 --------
8/12 シュミッド・カンザスシティ連銀総裁 「経済が勢いをなお維持し、企業の楽観的な見方が強まり、インフレが当局の目標を上回る水準にとどまる中では、緩やかな引き締め状態にある金融政策スタンスを当面維持するのが適切だ」 --------
8/7 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「年内に1回の利下げが実施される可能性が高いとの見通しは変わらない」、「関税の影響が一時的なものなのか、あるいはもっと持続的なものなのかという点が、現時点では恐らく最も重要な問題だ」、「この日発動された関税の影響が、一時的な物価上昇にとどまるという教科書的な関税の例に当てはまるには、いくらか会懐疑的な理由がある」、「これは一度きりで、ある朝目が覚めたら全ての関税が明らかになっているという話ではない。むしろ、関税が頻繁に変化することで、消費者の意識の中に関税や物価上昇見通しが浮かぶ期間が長くなり、インフレ期待が高まるリスクがある」 --------
8/6 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「景気は減速している。短期的にFF金利の調整を開始することが適切になる可能性がある」、「関税の影響が明確になるまで、どれくらい待てるのか、それが現在、私を悩ませている。最良の選択肢が、多少の調整を行い、その後に一時停止や方向転換を迫られる展開であっても、関税の影響が明確になるまで何もしないで待つより望ましい可能性がある」 --------
8/6 クック・FRB理事 「7月の雇用統計は懸念すべき内容だった。こうしたデータの修正は転換点でよく見られる傾向だ」 --------
8/4 デーリー・SF連銀総裁 (先週のFOMCの決定について)、「もう1会合見送る用意はあったが永遠に待つことはできない」、「インフレが加速・波及したり、雇用市場が持ち直したりすれば、2回未満の利下げでも十分かもしれないが、より可能性が高いのは、2回を超える利下げが必要になるかもしれないことだと考える。労働市場が弱い局面に入りつつある一方で、インフレへの波及が見られない場合、さらに措置を講じる準備も必要というのが私の見解だ」 --------
7/30 FOMC声明文 「経済活動の伸びは緩やかになった。景気見通しに関する不確実性は依然として高い。委員会は長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指し、2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」 --------
7/30 パウエル・FRB議長 「解決すべき不確実性は非常に多い。そのプロセスの終わりが間近に迫っているという感触はない」、(利下げ次期については)、「9月については何も決定していない」 ドル円は買われ、149円54銭まで上昇。
7/24 ラガルド・ECB総裁 「現在の状況は良好だ。今は金利を据え置き、リスクが今後数か月の間にどう展開いていくかを見守ることが適切な状況にある」 --------
7/24 ECB声明文 「これまでのところ経済は全体として底堅さを示している。しかし、通商摩擦をはじめとする要因により、依然として先行きは極めて不透明だ」 --------
7/10 デーリー・SF連銀総裁 「2回の利下げというのが可能性の高いシナリオだと私はみているが、あらゆる当局の予測には不確実性が伴う」 --------
7/10 ペンス・元副大統領 「われわれは主に中国を対象に、相手の行動の変化を促すべく関税やその脅威を交渉手段として用いた。目的は本質的に貿易障壁を下げ、貿易を拡大することだった」、「トランプ氏は米産業政策の長期的な転換を進めており、恒久的かつ一方的な貿易関税が米国にとって長期的に有益だと見なしているとは、私は考えていない」、「自由市場を信奉する保守派として、私はそれには賛同できない」 --------
7/2 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「経済指標は非常に堅調だ。経済が悪い方向に進んでいるという切迫感はない。また、経済環境全体に切迫感がない限り、霧の中を運転するように、ゆっくり進むのが妥当だ」、「現時点で政策金利を引き下げる緊急性はない」 --------
7/1 パウエル・FRB議長 「(関税の行方に)われわれは注視している。夏にかけていくらかの数値が上がると予想している」と話し、その上で「ただし影響が想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのかは、今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意がある」、(月利下げについては)「検討は会合ごとに行われる。どの会合も選択肢から排除しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」 利下げの可能性を排除しなかったことで、ドル円はやや売られる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和