今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円149円台に乗せるも維持できず」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は東京市場の終盤におよそ1ヵ月ぶりに149円台に乗せたが、NYでは労働市場の指標が下振れ下落。米金利が低下したこともあり、147円88銭までドルが売られる。
  • ユーロドルは小幅に反発し1.1682まで買われる。
  • 株式市場はまちまちの展開。ハイテク株が買い戻されナスダックは218ポイント上昇。
  • 債券は反発。長期金利は4.21%台に低下。
  • 金は続伸し連日で最高値を更新。原油は反落。
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7月雇用動態調査(JOLTS)求人件数 → 718.1万件
7月製造業受注 → 1.1%
7月耐久財受注 → −2.8%
8月自動車販売台数 → 1607万台
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ドル/円 147.88 〜 148.79
ユーロ/ドル 1.1639 〜 1.1682
ユーロ/円 172.45 〜 173.30
NYダウ −24.68 → 45,271.23
GOLD +43.30 → 3,635.50ドル
WTI −1.62 → 63.97
米10年国債 −0.045 → 4.217%

本日の注目イベント

  • 欧 ユーロ圏7月小売売上高
  • 米 8月ADP雇用者数
  • 米 7月貿易収支
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 8月ISM非製造業景況指数
  • 米 8月S&Pグローバルサービス業PMI(確報値)
  • 米 8月S&Pグローバル総合PMI(確報値)
  • 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演
  • 米 グールズビー・シカゴ連銀総裁、質疑応答

本日のコメント

中国の習近平国家主席は3日、ロシアのプーチン大統領および北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記と共に10年に一度の軍事パレード式典に出席し、中国の持つ軍事力をアピールしました。パレードでは、台湾を意識してか、様々な新兵器を披露するとともに、中国の外交的影響力を示す場となったようです。今回の式典は抗日戦争の勝利から80年を記念するもので、中国とロシア、北朝鮮の3首脳が公の場でそろって姿を見せるのは初めてとなりました。習氏は天安門楼上で、プーチン、金両氏と共に、中国人民解放軍による礼砲と国旗掲揚を見守り、米国主導の国際秩序に対抗する姿勢をより明確に示した格好でした。

パレードを終えて、3首脳が習氏を真ん中に挟み歓談しながら歩く映像が流れましたが、存在感もあり、映画のワンシーンを観ているようでした。トランプ政権から、ウクライナとの停戦に臨まないのであれば、さらなる厳しい制裁を突きつけられているプーチン氏にとって、今回の3首脳による会談は強い後ろ盾になったことでしょう。これに対してトランプ大統領は、習氏が北京での大規模な軍事パレードに各国首脳を招いたことを踏まえ、同氏を非難しました。トランプ氏はSNSに、「ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記に、よろしくお伝えください。あなた方は米国に対して共謀しているようですので」と、余裕のある投稿をしていました。

植田日銀総裁は3日、首相官邸で石破首相と物価や為替に関して意見交換を行いました。その後の記者会見で、経済・物価見通しが実現していけば利上げを継続する方針を改めて表明し、予断を持たずに判断するとの見解を示しました。会談では、経済・物価や市場の動向などについて意見交換したと説明。その中で為替の話も出たが、具体的内容は差し控えるとした上で、「ファンダメンタルズに沿って安定的に推移することが望ましい」と語り、政府と連絡を取りつつモニターしていくとも述べていました。2日の氷見野日銀副総裁の講演では、市場は利上げについてややハト派的と受け止め、ドル円が上昇しましたが、植田総裁の会見後は、円が買われ日経平均株価が下げ幅を拡大する動きも見られました。

米上院銀行委員会は4日、トランプ大統領がFRB理事に指名したミラン大統領経済諮問委員会(CEA)委員長の指名承認公聴会を開きます。「銀行委員会によるミラン氏の任命審査は、著名な共和党上院議員らが、独立した中央銀行を長年支持してきた立場と、トランプ氏への忠誠心との間でどう折り合いをつけるかを問われる最初の機会となる。トランプ氏は、FRB理事会で『ごく近いうちに多数派を確保する』と公言し、金利を引き下げる意向を示している」と、ブルームバーグは伝えています。ミラン氏は4日の公聴会で「中央銀行の最も重要な任務は、大恐慌やハイパーインフレを回避することだ。金融政策の独立性は、その実現に欠かせない要素だ」と証言する予定で、「私はその独立性を守り、米国民に全力で奉仕する意向だ」としています。上院銀行委員会が3日に証言原稿を公表していました。

FOMC会合を控え、まもなく「ブラックアウト」期間に入りますが、それを前にメンバーの発言も注目され始めています。利下げに関して最も積極的な人物から記述していくと、ウォラー理事は「次回会合で利下げを始める必要がある。その後は決まった道筋を踏まなくてもいい。人々は関税によるインフレをまだ懸念しており、状況を見極めながら進めることができる」と語っています。またウォラー氏は、「米国の政策金利は現在、景気を刺激も抑制もしない中立金利を上回っており、金融政策が経済を抑制している」との見方を示し、「中立に近づきたいことは認識している。どれくらい利下げすべきかもおおよそ分かっていて、例えば100から150ベーシスポイントだ。ただ、その水準にどれだけの速さで到達するかは、入ってくるデータ次第になるだろう」と話しています。

アトランタ連銀のボスティック総裁は、「物価安定が依然として最大の関心事項ではあるものの、労働市場は十分減速しており、年内残りの期間において恐らく25ベーシスポイントの政策緩和が妥当になると考えられる」と述べ、その上で、「今後数カ月のインフレ動向や雇用市場の展開によっては、この認識は変わり得る」と続けていました。ボスティック氏は、年内の利下げは1回が妥当との見解を改めて示しながら、ただし、インフレや労働市場の動向次第で変わる可能性もあると語っていました。

これまで最も利下げには慎重なスタンスを見せていたセントルイス連銀のムサレム総裁は、現在の経済環境において金利は良好な水準にあるとの認識を示していました。ムサレム氏は、「完全雇用の労働市場とコアインフレがFRBの目指す2%を1ポイント近く上回っている環境と、やや引き締め的な現行の政策金利は整合する」とワシントンのピーターソン国際経済研究所が開いたイベントで講演しました。総裁はさらに、「現時点では政策においてバランスの取れたアプローチを取ることが重要であり、労働市場の支援やインフレ抑制のいずれかに偏り過ぎるべきではない。先行きを見通すと、労働市場は徐々に冷え込みながらも完全雇用に近い状態を維持するだろうが、リスクは下方向に傾いている」と続けていました。昨日は「7月雇用動態調査(JOLTS)求人件数」が発表され下振れしたことで、今回の会合での利下げはほぼ織込まれた模様です。

本日は、「8月ADP雇用者数」や「新規失業保険申請件数」といった労働市場に関する重要指標が発表されます。市場の関心がこれまで以上にインフレから雇用に移りつつあります。

本日のドル円は147円30銭〜148円80銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
9/3 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「完全雇用の労働市場とコアインフレがFRBの目指す2%を1ポイント近く上回っている環境と、やや引き締め的な現行の政策金利は整合する」、「現時点では政策においてバランスの取れたアプローチを取ることが重要であり、労働市場の支援やインフレ抑制のいずれかに偏り過ぎるべきではない。先行きを見通すと、労働市場は徐々に冷え込みながらも完全雇用に近い状態を維持するだろうが、リスクは下方向に傾いている」 --------
9/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「物価安定が依然として最大の関心事項ではあるものの、労働市場は十分減速しており、年内残りの期間において恐らく25ベーシスポイントの政策緩和が妥当になると考えられる」、「今後数カ月のインフレ動向や雇用市場の展開によっては、この認識は変わり得る」 --------
9/3 ウォラー・FRB理事 「次回会合で利下げを始める必要がある。その後は決まった道筋を踏まなくてもいい。人々は関税によるインフレをまだ懸念しており、状況を見極めながら進めることができる」、「米国の政策金利は現在、景気を刺激も抑制もしない中立金利を上回っており、金融政策が経済を抑制している」、「中立に近づきたいことは認識している。どれくらい利下げすべきかもおおよそ分かっていて、例えば100から150ベーシスポイントだ。ただ、その水準にどれだけの速さで到達するかは、入ってくるデータ次第になるだろう」 --------
8/27 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「私の見解では、全ての会合が間違いなくライブだ」、(最大雇用と物価安定というFRBの2大責務に言及し)、「リスクは一段と均衡してきている」、(金利水準は)「やや景気抑制的だ」、「利下げを実施しても、依然としていくぶんか景気抑制的な状態を維持できるだろう。ただし、経済で実際に何が起きているのかを見極める必要がある」 --------
8/26 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「経済が緩やかな動きとなれば、金利調整は小幅にとどまるだろう。実際に経済が緩やかな動きになるかは分からない。それはその時に確認しなければならない。従ってこれは私の予測だが、予測は変わり得る」 --------
8/21 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「労働市場の動向は気掛かりな要因となり得る」、「現時点でも基本的には同じ考えだ」、「ただ、足元の環境においては、あらゆる見通しや予測に幅広い不確実性が伴う」、「特定の見通しに固執しているわけではない」 ドルが買われ、債券と株は下落。
8/21 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「米国のインフレは高過ぎる上、過去1年を通じて上昇基調にある」、「もし政策会合が明日開催されるとして、現時点の情報に基づけば、利下げの論拠は見当たらない」 ドルが買われ、債券と株は下落。
8/21 ブラード氏・前セントルイス連銀総裁 「金利は現時点でやや高過ぎる。2026年に向けて100bp程度の引き下げが可能だと考える。それは9月の会合での利下げから始まり、恐らく年内に追加利下げがあるだろう」 --------
8/14 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「現時点での戦略的アプローチは『動いて、待つ』というものになるだろう」、「われわれの行動後、経済がどう動くか分かるまでに時間がかかるかもしれない。その間に、次にどのような行動を取るべきか鮮明になるだろう」、「労働市場が堅調を維持すれば、年内は1度の利下げが適切になるという見方はなお変わらない」、「いつ行動を起こすかについては予断を持っていない。特定の時期に固執していない」 --------
8/14 ムサレム・セントルイス連銀総裁 (9月の会合で)「私自身としてどういった政策を支持できるかを正確に述べるのは時期尚早だ」、(9月会合で0.5ポイントの利下げが正当化され得るかとの質問に)、「経済の現状や見通しを踏まえれば支持されない」、「データは、より持続的なインフレの可能性があるかどうかを示し始めている。労働市場には下振れリスクがある」、「私は両方の要素を意識している」、「われわれの2つの責務の間に緊張が見られる場合は、バランスの取れたアプローチで臨む必要がある」 --------
8/14 デーリー・SF連銀総裁 「0.5ポイントというのは、われわれが緊急性を認識しているように聞こえる。労働市場について私が感じているものとは違う緊急シグナルを発することになると懸念する」、「そうは見ていないし、遅れを取り戻す必要も感じない」 --------
8/13 ベッセント・財務長官 「9月の0.5ポイント利上げを皮切りに、そこから一連の利下げを実施できるだろうと考えている。どのモデルを見ても、金利は恐らく150、175ベーシスポイント低い水準にあるできだろう」、「トランプ大統領も望んでいる」、「日本はインフレ問題を抱えており、確実に日本からの波及がある」、(日銀の植田総裁と話したこと明らかにしたうえで)、「これは総裁の見解ではなく、私見だが、日銀は後手に回っており、利上げするだろう」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は147円08銭まで下落。
8/12 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「米経済の先行きに対する不透明感は薄れつつあるものの、FRBがインフレ抑制と雇用の下支えのどちらに重点を置くべきかは、依然として明確ではない」 --------
8/12 シュミッド・カンザスシティ連銀総裁 「経済が勢いをなお維持し、企業の楽観的な見方が強まり、インフレが当局の目標を上回る水準にとどまる中では、緩やかな引き締め状態にある金融政策スタンスを当面維持するのが適切だ」 --------
8/7 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「年内に1回の利下げが実施される可能性が高いとの見通しは変わらない」、「関税の影響が一時的なものなのか、あるいはもっと持続的なものなのかという点が、現時点では恐らく最も重要な問題だ」、「この日発動された関税の影響が、一時的な物価上昇にとどまるという教科書的な関税の例に当てはまるには、いくらか会懐疑的な理由がある」、「これは一度きりで、ある朝目が覚めたら全ての関税が明らかになっているという話ではない。むしろ、関税が頻繁に変化することで、消費者の意識の中に関税や物価上昇見通しが浮かぶ期間が長くなり、インフレ期待が高まるリスクがある」 --------
8/6 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「景気は減速している。短期的にFF金利の調整を開始することが適切になる可能性がある」、「関税の影響が明確になるまで、どれくらい待てるのか、それが現在、私を悩ませている。最良の選択肢が、多少の調整を行い、その後に一時停止や方向転換を迫られる展開であっても、関税の影響が明確になるまで何もしないで待つより望ましい可能性がある」 --------
8/6 クック・FRB理事 「7月の雇用統計は懸念すべき内容だった。こうしたデータの修正は転換点でよく見られる傾向だ」 --------
8/4 デーリー・SF連銀総裁 (先週のFOMCの決定について)、「もう1会合見送る用意はあったが永遠に待つことはできない」、「インフレが加速・波及したり、雇用市場が持ち直したりすれば、2回未満の利下げでも十分かもしれないが、より可能性が高いのは、2回を超える利下げが必要になるかもしれないことだと考える。労働市場が弱い局面に入りつつある一方で、インフレへの波及が見られない場合、さらに措置を講じる準備も必要というのが私の見解だ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和