今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米8月NFP予想を大幅に下回る」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 「米8月の雇用統計」で非農業部門雇用者数が市場予想を大きく下回ったことでドル円は148円台から急落。年内の利下げ回数が3回との見方も強まり、ドル円は146円82銭まで売られる。
  • ドルが売られたことでユーロドルも1.1759まで反発。
  • 株式市場は金利低下を好感するよりも、景気悪化懸念が高まり、3指数が揃って下落。
  • 債券は大きく買われ、長期金利は4.07%台に低下。
  • 金は続伸し最高値を更新。原油は続落し61ドル台に。
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8月失業率 → 4.3%
8月非農業部門雇用者数 → 2.2万人
8月平均時給 (前月比) → 0.3%
8月平均時給 (前年比) → 3.7%
8月労働参加率 → 62.3%
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ドル/円 146.82 〜 148.20
ユーロ/ドル 1.1686 〜 1.1759
ユーロ/円 172.48 〜 173.27
NYダウ −220.43 → 45,400.86
GOLD +46.60 → 3,653.30ドル
WTI −1.61 → 61.87
米10年国債 −0.086 → 4.074%

本日の注目イベント

  • 日 4−6月GDP(改定値)
  • 日 7月国際収支・経常収支
  • 日 8月景気ウオッチャー調査
  • 中 中国 8月貿易収支
  • 独 独7月貿易収支
  • 独 独7月鉱工業生産
  • 米 7月消費者信用残高

本日のコメント

予想されてはいましたが、石破首相が昨日突然の辞任を発表しました。5日に発表された「米8月の雇用統計」で非農業部門雇用者数(NFP)が先月同様、市場予想を大きく下回ったことで一時は146円台後半まで売られたドル円でしたが、石破首相辞任を受け、今朝は窓を大きく開けて取引が開始されています。首相は昨日の緊急記者会見で、「まだやり遂げなければならないことがあるなかで、身を引くことは苦渋の決断だ」と、その心境を述べていましたが、実際は本日予定されていた自民党総裁選を前倒しするのかどうか判断する手続きを前に、自身の閣僚からも造反者が出るなど、首相続投には事態が一段と不利になってきたことを踏まえて辞任を決断したものと見られます。雇用統計で売られたドル円は再び元の水準を回復しています。目先はドルの上値が重いとは考えますが、今後次期首相を巡りさらに政治的混迷が深まるようだと、円が一段と売られる可能性もないとは言えません。

8月の米雇用統計では、雇用者数の伸びが大きく鈍化し、失業率は2021年以来の高水準に上昇しました。労働市場が本格的な悪化局面に差しかかっているとの懸念が強まってきました。NFPは前月比2万2000人と、市場予想の中央値7万5000人を大きく下回る結果でした。7月分は7万9000人と、速報値の7万3000人から上方修正されています。また、失業率も4.3%と、前月の4.2%から悪化しています。今回の雇用統計を受け、16〜17日の次回FOMC会合で利下げに踏み切ることが確実視されるようになりましたが、引き下げ幅も通常の25bpではなく、50bpを予想する割合も1割ほどに高まり、さらに年内3会合全てで利下げするとの予想も前日の5割弱から7割近くに上昇してきました。パウエル議長も先月のジャクソンホール会合での講演で、利下げの可能性を示唆していました。ただ、この日の結果を踏まえた上でも、シカゴ連銀のグールズビー総裁は今月開催されるFOMCでどのような行動を支持するかについて、8月の雇用統計が発表された今もまだ決めかねており、来週発表される物価統計を確認したいと述べていました。総裁は、「もっと情報を得たい。私はまだ決めていない。インフレの数値が穏やかであれば、それだけ労働市場に集中しやすくなる」と述べた上で、「しかし最新のインフレ統計ではサービス部門でインフレ上振れが見られた。従ってそれが一時的なものであり、もっと深刻な兆候ではないことを確認したい」と5日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで話していました。

ロシア軍は7日未明、ウクライナ首都キーウにある主要な政府庁舎を初めて攻撃しました。ウクライナのゼレンスキー大統領はその数時間後、フランスのマクロン大統領と、ウクライナの防衛力強化に向けた措置について協議しています。ゼレンスキー氏はテレグラムへの投稿で、首都を含む複数の都市に対するドローンとミサイルの集中攻撃により、少なくとも4人が死亡し、約44人が負傷したと明らかにしています。一方、ロシアに対しては厳しい制裁を課す可能性を示唆し、イスラエルに対しては沈黙を守っているトランプ大統領は7日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」では、「ハマスには、受け入れなかった場合どうなるか警告してきた。これが最後の警告だ。次はない!」と投稿しています。

足元でのドル円の岩盤レンジである145−150円を、どちらかに抜けるきっかけは今回の「雇用統計」か、再来週の「FOMC会合後のパウエル議長の会見」ではないかと見ていましたが、前者の材料では失敗に終わりました。残りの材料では、パウエル議長がジャクソンホールでの発言からよりハト派に傾き、どこまで利下げに前向きな発言を行うのか、あるいは利下げは行うものの、さらなる利下げには慎重な姿勢を見せるのかにかかってきました。

本日のドル円は147円30銭〜149円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
9/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「もっと情報を得たい。私はまだ決めていない。インフレの数値が穏やかであれば、それだけ労働市場に集中しやすくなる」、「しかし最新のインフレ統計ではサービス部門でインフレ上振れが見られた。従ってそれが一時的なものであり、もっと深刻な兆候ではないことを確認したい」 --------
9/3 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「完全雇用の労働市場とコアインフレがFRBの目指す2%を1ポイント近く上回っている環境と、やや引き締め的な現行の政策金利は整合する」、「現時点では政策においてバランスの取れたアプローチを取ることが重要であり、労働市場の支援やインフレ抑制のいずれかに偏り過ぎるべきではない。先行きを見通すと、労働市場は徐々に冷え込みながらも完全雇用に近い状態を維持するだろうが、リスクは下方向に傾いている」 --------
9/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「物価安定が依然として最大の関心事項ではあるものの、労働市場は十分減速しており、年内残りの期間において恐らく25ベーシスポイントの政策緩和が妥当になると考えられる」、「今後数カ月のインフレ動向や雇用市場の展開によっては、この認識は変わり得る」 --------
9/3 ウォラー・FRB理事 「次回会合で利下げを始める必要がある。その後は決まった道筋を踏まなくてもいい。人々は関税によるインフレをまだ懸念しており、状況を見極めながら進めることができる」、「米国の政策金利は現在、景気を刺激も抑制もしない中立金利を上回っており、金融政策が経済を抑制している」、「中立に近づきたいことは認識している。どれくらい利下げすべきかもおおよそ分かっていて、例えば100から150ベーシスポイントだ。ただ、その水準にどれだけの速さで到達するかは、入ってくるデータ次第になるだろう」 --------
8/27 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「私の見解では、全ての会合が間違いなくライブだ」、(最大雇用と物価安定というFRBの2大責務に言及し)、「リスクは一段と均衡してきている」、(金利水準は)「やや景気抑制的だ」、「利下げを実施しても、依然としていくぶんか景気抑制的な状態を維持できるだろう。ただし、経済で実際に何が起きているのかを見極める必要がある」 --------
8/26 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「経済が緩やかな動きとなれば、金利調整は小幅にとどまるだろう。実際に経済が緩やかな動きになるかは分からない。それはその時に確認しなければならない。従ってこれは私の予測だが、予測は変わり得る」 --------
8/21 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「労働市場の動向は気掛かりな要因となり得る」、「現時点でも基本的には同じ考えだ」、「ただ、足元の環境においては、あらゆる見通しや予測に幅広い不確実性が伴う」、「特定の見通しに固執しているわけではない」 ドルが買われ、債券と株は下落。
8/21 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「米国のインフレは高過ぎる上、過去1年を通じて上昇基調にある」、「もし政策会合が明日開催されるとして、現時点の情報に基づけば、利下げの論拠は見当たらない」 ドルが買われ、債券と株は下落。
8/21 ブラード氏・前セントルイス連銀総裁 「金利は現時点でやや高過ぎる。2026年に向けて100bp程度の引き下げが可能だと考える。それは9月の会合での利下げから始まり、恐らく年内に追加利下げがあるだろう」 --------
8/14 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「現時点での戦略的アプローチは『動いて、待つ』というものになるだろう」、「われわれの行動後、経済がどう動くか分かるまでに時間がかかるかもしれない。その間に、次にどのような行動を取るべきか鮮明になるだろう」、「労働市場が堅調を維持すれば、年内は1度の利下げが適切になるという見方はなお変わらない」、「いつ行動を起こすかについては予断を持っていない。特定の時期に固執していない」 --------
8/14 ムサレム・セントルイス連銀総裁 (9月の会合で)「私自身としてどういった政策を支持できるかを正確に述べるのは時期尚早だ」、(9月会合で0.5ポイントの利下げが正当化され得るかとの質問に)、「経済の現状や見通しを踏まえれば支持されない」、「データは、より持続的なインフレの可能性があるかどうかを示し始めている。労働市場には下振れリスクがある」、「私は両方の要素を意識している」、「われわれの2つの責務の間に緊張が見られる場合は、バランスの取れたアプローチで臨む必要がある」 --------
8/14 デーリー・SF連銀総裁 「0.5ポイントというのは、われわれが緊急性を認識しているように聞こえる。労働市場について私が感じているものとは違う緊急シグナルを発することになると懸念する」、「そうは見ていないし、遅れを取り戻す必要も感じない」 --------
8/13 ベッセント・財務長官 「9月の0.5ポイント利上げを皮切りに、そこから一連の利下げを実施できるだろうと考えている。どのモデルを見ても、金利は恐らく150、175ベーシスポイント低い水準にあるできだろう」、「トランプ大統領も望んでいる」、「日本はインフレ問題を抱えており、確実に日本からの波及がある」、(日銀の植田総裁と話したこと明らかにしたうえで)、「これは総裁の見解ではなく、私見だが、日銀は後手に回っており、利上げするだろう」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は147円08銭まで下落。
8/12 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「米経済の先行きに対する不透明感は薄れつつあるものの、FRBがインフレ抑制と雇用の下支えのどちらに重点を置くべきかは、依然として明確ではない」 --------
8/12 シュミッド・カンザスシティ連銀総裁 「経済が勢いをなお維持し、企業の楽観的な見方が強まり、インフレが当局の目標を上回る水準にとどまる中では、緩やかな引き締め状態にある金融政策スタンスを当面維持するのが適切だ」 --------
8/7 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「年内に1回の利下げが実施される可能性が高いとの見通しは変わらない」、「関税の影響が一時的なものなのか、あるいはもっと持続的なものなのかという点が、現時点では恐らく最も重要な問題だ」、「この日発動された関税の影響が、一時的な物価上昇にとどまるという教科書的な関税の例に当てはまるには、いくらか会懐疑的な理由がある」、「これは一度きりで、ある朝目が覚めたら全ての関税が明らかになっているという話ではない。むしろ、関税が頻繁に変化することで、消費者の意識の中に関税や物価上昇見通しが浮かぶ期間が長くなり、インフレ期待が高まるリスクがある」 --------
8/6 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「景気は減速している。短期的にFF金利の調整を開始することが適切になる可能性がある」、「関税の影響が明確になるまで、どれくらい待てるのか、それが現在、私を悩ませている。最良の選択肢が、多少の調整を行い、その後に一時停止や方向転換を迫られる展開であっても、関税の影響が明確になるまで何もしないで待つより望ましい可能性がある」 --------
8/6 クック・FRB理事 「7月の雇用統計は懸念すべき内容だった。こうしたデータの修正は転換点でよく見られる傾向だ」 --------
8/4 デーリー・SF連銀総裁 (先週のFOMCの決定について)、「もう1会合見送る用意はあったが永遠に待つことはできない」、「インフレが加速・波及したり、雇用市場が持ち直したりすれば、2回未満の利下げでも十分かもしれないが、より可能性が高いのは、2回を超える利下げが必要になるかもしれないことだと考える。労働市場が弱い局面に入りつつある一方で、インフレへの波及が見られない場合、さらに措置を講じる準備も必要というのが私の見解だ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和