今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米8月のCPIは予想通り」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は148円台から反落。CPIはほぼ予想通りだったが、失業保険申請件数が4年ぶりの高水準だったことで利下げ観測が強まり147円前後まで売られる。
  • ECBが政策金利の据え置きを決めたが、ユーロドルは前日とほぼ変わらず1.17を挟む展開。
  • 利下げ期待がさらに高まり、株式市場では3指数が揃って最高値を更新。ダウは前日比600ドルを超える大幅上昇。
  • 債券は買われ、長期金利は4.02%台に低下。
  • 金は続落。原油も反落。
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8月消費者物価指数 → 0.4%
新規失業保険申請件数 → 26.3万件
4−6月期家計純資産 → 7086b
8月財政収支 → 344.8b
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ドル/円 146.99 〜 147.20
ユーロ/ドル 1.1661 〜 1.1745
ユーロ/円 172.49 〜 173.06
NYダウ +617.08 → 46,108.00
GOLD −8.40 → 3,673.60ドル
WTI −1.30 → 62.37
米10年国債 −0.025 → 4.021%

本日の注目イベント

  • 日 7月鉱工業生産(確定値)
  • 独 独8月消費者物価指数(改定値)
  • 英 英7月鉱工業生産
  • 英 英7月貿易収支
  • 米 9月ミシガン大学消費者マインド(速報値)
  • 加 カナダ7月住宅建設許可件数

本日のコメント

注目された「米8月の消費者物価指数(CPI)」は、ほぼ市場予想通りでしたが、同時に発表された「失業保険申請件数」が大幅に増加していたことで、利下げ観測がさらに高まり、ドル円は148円台から147円前後まで押し戻されています。昨日は東京時間にもかかわらずドル円は、147円台前半からジリジリと買われました。日経平均株価の上昇が寄与したと思われます。依然として146円台前後ではドル買い意欲が強く底堅い動きを見せますが、それでも冷静に見れば、上値を徐々に切り下げているようにも感じます。いよいよ来週はFOMC会合が開催されます。市場は「50bpの利下げもあり得る」との方向に傾きつつあります。仮に25bpの利下げにとどまるようなら、「利下げにも関わらずドルが買われる可能性」も、ないとは言えないと考えています。理由は、「市場が25bpの利下げを完全に織り込んでいる」からです。かなり極端な見方かもしれませんが、頭の片隅に入れておいた方がベターでしょう。

8月のCPIは前月比0.4%で、市場予想の中央値は0.3%でした。また、前年同月比では2.9%と、こちらは市場予想と同じでした。変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は前月比0.3%、前年同月比では3.1%と、コア指数ではどちらも市場予想と一致していました。ただ、記憶にとどめておきたいのは、コア指数の前年同月比を除いて、残りは全て前月よりも上昇している点です。トランプ関税の実施を受けて、メーカーの価格転嫁が進んでいると受け止めることも出来そうです。

相場を動かしたのは失業保険申請件数の内容でした。同件数は前週から2万7000件増の26万3000件と、市場予想の中央値である23万5000件よりも大幅に増加していました。失業保険申請件数は祝日を挟む時期に変動しやすいため、週ごとではなく、平均で見る必要があります。今回の統計には「レーバーデー」の週末が含まれており、週ごとの変動をならした4週移動平均では24万5500件と、6月以来の高水準になります。ブルームバーグは、「テキサス州での大幅な申請増が全体の押し上げ要因となった。同州は季節調整前で1万5304件増。2番目に大きかったのはミシガン州で、2980件増加した。一方、大半の州では申請件数が減少した。ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、イライザ・ウィンガー氏は、9月第1週の新規失業保険申請件数の急増は主にテキサス州によるもので、大半の州では申請が減少した。労働市場の弱さが増す中で、こうした悪化には注意が必要だが、より広範囲で申請件数が増加していれば、はるかに深刻な懸念材料となっていただろうと述べた」と伝えています。来週16〜17日にはFOMC会合が予定されており、今回の統計は米労働市場に関する最後の重要なデータとなります。昨日のNYではこの件数の増加に利下げ観測がさらに強まり、連続利下げ期待も膨らみました。金利が低下したことで株式市場では3指数が大きく買われ、揃って「史上最高値を更新」しています。個人的には、市場は利下げに対してやや前のめり過ぎているように感じます。

ECBは11日の政策委員会会合で、予想通り、中銀預金金利を2%に据え置くことを決めました。据え置きは2会合連続になります。インフレ圧力が抑制され、景気が堅調に推移しているとの認識から金利を現状で維持しました。これを受けて市場では、今後の追加利下げはないとの見方が強まっています。ラガルド総裁は記者会見で、「基調的なインフレの指標は、ECBの中期的な目標である2%と一致する状態が続いている」と指摘する一方で、「最近の貿易協定によって不確実性は和らいだものの、貿易関係が再び悪化すれば、輸出が一段と冷え込み、投資や消費にも下押し圧力がかかる可能性がある」と続け、依然としてトランプ関税に関わる影響を懸念していました。

本日は「9月ミシガン大学消費者マインド(速報値)」が注目されます。消費者マインドが低下しているようだと、利下げにとって追い風になります。市場予想は「58.0」です。

本日のドル円は146円30銭〜148円30銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
9/11 ラガルド・ECB総裁 「基調的なインフレの指標は、ECBの中期的な目標である2%と一致する状態が続いている」、「最近の貿易協定によって不確実性は和らいだものの、貿易関係が再び悪化すれば、輸出が一段と冷え込み、投資や消費にも下押し圧力がかかる可能性がある」 --------
9/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「もっと情報を得たい。私はまだ決めていない。インフレの数値が穏やかであれば、それだけ労働市場に集中しやすくなる」、「しかし最新のインフレ統計ではサービス部門でインフレ上振れが見られた。従ってそれが一時的なものであり、もっと深刻な兆候ではないことを確認したい」 --------
9/3 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「完全雇用の労働市場とコアインフレがFRBの目指す2%を1ポイント近く上回っている環境と、やや引き締め的な現行の政策金利は整合する」、「現時点では政策においてバランスの取れたアプローチを取ることが重要であり、労働市場の支援やインフレ抑制のいずれかに偏り過ぎるべきではない。先行きを見通すと、労働市場は徐々に冷え込みながらも完全雇用に近い状態を維持するだろうが、リスクは下方向に傾いている」 --------
9/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「物価安定が依然として最大の関心事項ではあるものの、労働市場は十分減速しており、年内残りの期間において恐らく25ベーシスポイントの政策緩和が妥当になると考えられる」、「今後数カ月のインフレ動向や雇用市場の展開によっては、この認識は変わり得る」 --------
9/3 ウォラー・FRB理事 「次回会合で利下げを始める必要がある。その後は決まった道筋を踏まなくてもいい。人々は関税によるインフレをまだ懸念しており、状況を見極めながら進めることができる」、「米国の政策金利は現在、景気を刺激も抑制もしない中立金利を上回っており、金融政策が経済を抑制している」、「中立に近づきたいことは認識している。どれくらい利下げすべきかもおおよそ分かっていて、例えば100から150ベーシスポイントだ。ただ、その水準にどれだけの速さで到達するかは、入ってくるデータ次第になるだろう」 --------
8/27 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「私の見解では、全ての会合が間違いなくライブだ」、(最大雇用と物価安定というFRBの2大責務に言及し)、「リスクは一段と均衡してきている」、(金利水準は)「やや景気抑制的だ」、「利下げを実施しても、依然としていくぶんか景気抑制的な状態を維持できるだろう。ただし、経済で実際に何が起きているのかを見極める必要がある」 --------
8/26 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「経済が緩やかな動きとなれば、金利調整は小幅にとどまるだろう。実際に経済が緩やかな動きになるかは分からない。それはその時に確認しなければならない。従ってこれは私の予測だが、予測は変わり得る」 --------
8/21 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「労働市場の動向は気掛かりな要因となり得る」、「現時点でも基本的には同じ考えだ」、「ただ、足元の環境においては、あらゆる見通しや予測に幅広い不確実性が伴う」、「特定の見通しに固執しているわけではない」 ドルが買われ、債券と株は下落。
8/21 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「米国のインフレは高過ぎる上、過去1年を通じて上昇基調にある」、「もし政策会合が明日開催されるとして、現時点の情報に基づけば、利下げの論拠は見当たらない」 ドルが買われ、債券と株は下落。
8/21 ブラード氏・前セントルイス連銀総裁 「金利は現時点でやや高過ぎる。2026年に向けて100bp程度の引き下げが可能だと考える。それは9月の会合での利下げから始まり、恐らく年内に追加利下げがあるだろう」 --------
8/14 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「現時点での戦略的アプローチは『動いて、待つ』というものになるだろう」、「われわれの行動後、経済がどう動くか分かるまでに時間がかかるかもしれない。その間に、次にどのような行動を取るべきか鮮明になるだろう」、「労働市場が堅調を維持すれば、年内は1度の利下げが適切になるという見方はなお変わらない」、「いつ行動を起こすかについては予断を持っていない。特定の時期に固執していない」 --------
8/14 ムサレム・セントルイス連銀総裁 (9月の会合で)「私自身としてどういった政策を支持できるかを正確に述べるのは時期尚早だ」、(9月会合で0.5ポイントの利下げが正当化され得るかとの質問に)、「経済の現状や見通しを踏まえれば支持されない」、「データは、より持続的なインフレの可能性があるかどうかを示し始めている。労働市場には下振れリスクがある」、「私は両方の要素を意識している」、「われわれの2つの責務の間に緊張が見られる場合は、バランスの取れたアプローチで臨む必要がある」 --------
8/14 デーリー・SF連銀総裁 「0.5ポイントというのは、われわれが緊急性を認識しているように聞こえる。労働市場について私が感じているものとは違う緊急シグナルを発することになると懸念する」、「そうは見ていないし、遅れを取り戻す必要も感じない」 --------
8/13 ベッセント・財務長官 「9月の0.5ポイント利上げを皮切りに、そこから一連の利下げを実施できるだろうと考えている。どのモデルを見ても、金利は恐らく150、175ベーシスポイント低い水準にあるできだろう」、「トランプ大統領も望んでいる」、「日本はインフレ問題を抱えており、確実に日本からの波及がある」、(日銀の植田総裁と話したこと明らかにしたうえで)、「これは総裁の見解ではなく、私見だが、日銀は後手に回っており、利上げするだろう」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は147円08銭まで下落。
8/12 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「米経済の先行きに対する不透明感は薄れつつあるものの、FRBがインフレ抑制と雇用の下支えのどちらに重点を置くべきかは、依然として明確ではない」 --------
8/12 シュミッド・カンザスシティ連銀総裁 「経済が勢いをなお維持し、企業の楽観的な見方が強まり、インフレが当局の目標を上回る水準にとどまる中では、緩やかな引き締め状態にある金融政策スタンスを当面維持するのが適切だ」 --------
8/7 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「年内に1回の利下げが実施される可能性が高いとの見通しは変わらない」、「関税の影響が一時的なものなのか、あるいはもっと持続的なものなのかという点が、現時点では恐らく最も重要な問題だ」、「この日発動された関税の影響が、一時的な物価上昇にとどまるという教科書的な関税の例に当てはまるには、いくらか会懐疑的な理由がある」、「これは一度きりで、ある朝目が覚めたら全ての関税が明らかになっているという話ではない。むしろ、関税が頻繁に変化することで、消費者の意識の中に関税や物価上昇見通しが浮かぶ期間が長くなり、インフレ期待が高まるリスクがある」 --------
8/6 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「景気は減速している。短期的にFF金利の調整を開始することが適切になる可能性がある」、「関税の影響が明確になるまで、どれくらい待てるのか、それが現在、私を悩ませている。最良の選択肢が、多少の調整を行い、その後に一時停止や方向転換を迫られる展開であっても、関税の影響が明確になるまで何もしないで待つより望ましい可能性がある」 --------
8/6 クック・FRB理事 「7月の雇用統計は懸念すべき内容だった。こうしたデータの修正は転換点でよく見られる傾向だ」 --------
8/4 デーリー・SF連銀総裁 (先週のFOMCの決定について)、「もう1会合見送る用意はあったが永遠に待つことはできない」、「インフレが加速・波及したり、雇用市場が持ち直したりすれば、2回未満の利下げでも十分かもしれないが、より可能性が高いのは、2回を超える利下げが必要になるかもしれないことだと考える。労働市場が弱い局面に入りつつある一方で、インフレへの波及が見られない場合、さらに措置を講じる準備も必要というのが私の見解だ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和