今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「マイラン氏、FOMC会合に出席」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は売られ、1ヵ月ぶりに146円28銭までドル安が進む。米金利が低下したことに加え、マイランCEA委員長がFOMC会合に出席したことで、利下げ圧力が増すとの見方にドルが売られた。
  • ユーロドルでもドルが売られ、ユーロは1.1878まで上昇。ユーロは対円でも1ヵ月半ぶりの高値を付ける。
  • 株式市場では上昇が一服。3指数は揃って反落。FOMC会合を前に一旦利益を確定する動きにダウは125ドル安。
  • 債券は買われ、長期金利は4.02%台に低下。
  • 金と原油は続伸。
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8月小売売上高 → 0.6%
8月輸入物価指数 → 0.3%
8月輸出物価指数 → 0.3%
8月鉱工業生産 → 0.1%
8月設備稼働率 → 77.4%
9月NAHB住宅市場指数 → 32
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ドル/円 146.28 〜 147.26
ユーロ/ドル 1.1790 〜 1.1878
ユーロ/円 173.30 〜 173.84
NYダウ −125.55 → 45,757.90
GOLD +6.10 → 3,725.10ドル
WTI +1.22 → 64.52
米10年国債 −0.010 → 4.028%

本日の注目イベント

  • 日 8月貿易統計
  • 欧 ユーロ圏8月消費者物価指数(改定値)
  • 英 英8月消費者物価指数
  • 米 8月住宅着工件数
  • 米 8月建設許可件数
  • 米 FOMC 政策金利発表
  • 米 パウエル議長記者会見

本日のコメント

FOMC会合が開催されました。FRBの報道官によれば、16日午前に始まったFOMC会合にはクック氏と、新たにFRB理事に就任したマイラン大統領経済諮問委員会(CEA)委員長が共に出席しています。今回の会合では0.25ポイントの利下げ決定が予想されていますが、ベッセント財務長官はCNNの番組で、「今週のFOMC会合での25ベーシスポイントの利下げは市場にすでに織り込まれている」との見方を示しました。ベッセント氏は「FRBが中立金利を目指すのか、あるいは景気刺激的なスタンスに転じるのか、見極めることになる」と発言。「市場は年末までに計75bpの利下げを織り込んでいると思う」とも語っています。また、「イールドカーブの短期部分は逆イールドになっている」と指摘し、「長期金利については非常に安定している」と述べていました。仮に今回の利下げが25bpであっても、ベッセント氏は残りの2回の会合全てで25bpの利下げがあると考えていることになります。これもトランプ大統領が何度も繰り返してきたことと同じように、FRBに対する利下げ圧力になります。

前日ワシントンの連邦高裁が、クック理事が解任の無効を訴える訴訟が進行している間は職務を継続できると判断したことに関してトランプ政権は、トランプ大統領によるクック理事の解任を認めるよう連邦最高裁に申し立てる意向だと、ホワイトハウスの当局者が明らかにしました。司法省がいつ最高裁に文書を提出するかは不明だとしていますが、ホワイトハウスのデサイ報道官は声明で、「トランプ大統領は正当な理由に基づき合法的にリサ・クック氏を解任した」とし、「政権は今回の判断を受けて上告し、この問題で最終的な勝利を収めると期待している」と述べています。

イスラエル軍は、長らく予告していたパレスチナ自治区ガザの中心部に対する大規模な空爆を実施しました。ネタニヤフ首相は16日、「ガザ市で集中的な作戦を始めた」と発言し、米国が今回の大規模空爆を容認したと判断した模様です。米国のルビオ国務長官はイスラエルを訪れ、15日にはネタニヤフ首相と会談しています。ガザの事実上の首都とも言えるガザ市では、ここ数週間イスラエルによる空爆が繰り返されており、民間人の犠牲者が一段と増えることが懸念されています。ガザ市からは数十万人が避難していますが、なお多くの人が取り残されているとみられます。イスラエル軍は同市内で「大規模な地上作戦」を開始したと発表し、状況評価に応じて攻撃は拡大すると付け加えていました。これに対して国連の独立調査委員会(COI)は、イスラエルがパレスチナ自治区ガザで「ジェノサイド(大量虐殺)」の罪を犯したと結論づける報告書を出しました。イスラエル軍によるパレスチナ人の殺害や支援妨害、強制移住などをジェノサイドの根拠にしています。トランプ大統領はロシアの暴挙は止めますが、イスラエルのそれを止めることはないようです。

そのトランプ氏、今度はニューヨーク・タイムズ紙(NYT)に対して150億ドル(約2兆2100億円)の名誉毀損訴訟を起しています。トランプ氏は自身のSNSへの投稿で、この訴訟はフロリダ州で提起されていると説明。同紙記者が2024年に出した書籍や同紙の記事などを問題視しています。トランプ氏は「NYTが私に対して自由にうそをつき、中傷し、名誉を傷つけることをあまりにも長い間許されてきた」と主張しています。これに対して同紙は、この訴訟には「根拠がない」との声明を出し、広報担当者は「正当な法的主張が欠落し、独立した報道を抑圧・萎縮させる試みだ。ニューヨーク・タイムズは威圧的な戦術には屈しない」と表明しています。

明日未明にはFOMC会合の結果が発表されます。今回ほどメンバーの意見が割れそうな会合は過去になかったと思われます。仮に25bpの利下げを決めたとしても、残り2回の会合でもそれぞれ25bpの引き下げを予想する大手金融機関も増えてきました。およそ1ヵ月ぶりに146円台前半まで下げて来たドル円が、その前触れかもしれませんが、波乱含みであることには違いありません。

本日のドル円は145円〜148円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
9/11 ラガルド・ECB総裁 「基調的なインフレの指標は、ECBの中期的な目標である2%と一致する状態が続いている」、「最近の貿易協定によって不確実性は和らいだものの、貿易関係が再び悪化すれば、輸出が一段と冷え込み、投資や消費にも下押し圧力がかかる可能性がある」 --------
9/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「もっと情報を得たい。私はまだ決めていない。インフレの数値が穏やかであれば、それだけ労働市場に集中しやすくなる」、「しかし最新のインフレ統計ではサービス部門でインフレ上振れが見られた。従ってそれが一時的なものであり、もっと深刻な兆候ではないことを確認したい」 --------
9/3 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「完全雇用の労働市場とコアインフレがFRBの目指す2%を1ポイント近く上回っている環境と、やや引き締め的な現行の政策金利は整合する」、「現時点では政策においてバランスの取れたアプローチを取ることが重要であり、労働市場の支援やインフレ抑制のいずれかに偏り過ぎるべきではない。先行きを見通すと、労働市場は徐々に冷え込みながらも完全雇用に近い状態を維持するだろうが、リスクは下方向に傾いている」 --------
9/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「物価安定が依然として最大の関心事項ではあるものの、労働市場は十分減速しており、年内残りの期間において恐らく25ベーシスポイントの政策緩和が妥当になると考えられる」、「今後数カ月のインフレ動向や雇用市場の展開によっては、この認識は変わり得る」 --------
9/3 ウォラー・FRB理事 「次回会合で利下げを始める必要がある。その後は決まった道筋を踏まなくてもいい。人々は関税によるインフレをまだ懸念しており、状況を見極めながら進めることができる」、「米国の政策金利は現在、景気を刺激も抑制もしない中立金利を上回っており、金融政策が経済を抑制している」、「中立に近づきたいことは認識している。どれくらい利下げすべきかもおおよそ分かっていて、例えば100から150ベーシスポイントだ。ただ、その水準にどれだけの速さで到達するかは、入ってくるデータ次第になるだろう」 --------
8/27 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「私の見解では、全ての会合が間違いなくライブだ」、(最大雇用と物価安定というFRBの2大責務に言及し)、「リスクは一段と均衡してきている」、(金利水準は)「やや景気抑制的だ」、「利下げを実施しても、依然としていくぶんか景気抑制的な状態を維持できるだろう。ただし、経済で実際に何が起きているのかを見極める必要がある」 --------
8/26 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「経済が緩やかな動きとなれば、金利調整は小幅にとどまるだろう。実際に経済が緩やかな動きになるかは分からない。それはその時に確認しなければならない。従ってこれは私の予測だが、予測は変わり得る」 --------
8/21 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「労働市場の動向は気掛かりな要因となり得る」、「現時点でも基本的には同じ考えだ」、「ただ、足元の環境においては、あらゆる見通しや予測に幅広い不確実性が伴う」、「特定の見通しに固執しているわけではない」 ドルが買われ、債券と株は下落。
8/21 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「米国のインフレは高過ぎる上、過去1年を通じて上昇基調にある」、「もし政策会合が明日開催されるとして、現時点の情報に基づけば、利下げの論拠は見当たらない」 ドルが買われ、債券と株は下落。
8/21 ブラード氏・前セントルイス連銀総裁 「金利は現時点でやや高過ぎる。2026年に向けて100bp程度の引き下げが可能だと考える。それは9月の会合での利下げから始まり、恐らく年内に追加利下げがあるだろう」 --------
8/14 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「現時点での戦略的アプローチは『動いて、待つ』というものになるだろう」、「われわれの行動後、経済がどう動くか分かるまでに時間がかかるかもしれない。その間に、次にどのような行動を取るべきか鮮明になるだろう」、「労働市場が堅調を維持すれば、年内は1度の利下げが適切になるという見方はなお変わらない」、「いつ行動を起こすかについては予断を持っていない。特定の時期に固執していない」 --------
8/14 ムサレム・セントルイス連銀総裁 (9月の会合で)「私自身としてどういった政策を支持できるかを正確に述べるのは時期尚早だ」、(9月会合で0.5ポイントの利下げが正当化され得るかとの質問に)、「経済の現状や見通しを踏まえれば支持されない」、「データは、より持続的なインフレの可能性があるかどうかを示し始めている。労働市場には下振れリスクがある」、「私は両方の要素を意識している」、「われわれの2つの責務の間に緊張が見られる場合は、バランスの取れたアプローチで臨む必要がある」 --------
8/14 デーリー・SF連銀総裁 「0.5ポイントというのは、われわれが緊急性を認識しているように聞こえる。労働市場について私が感じているものとは違う緊急シグナルを発することになると懸念する」、「そうは見ていないし、遅れを取り戻す必要も感じない」 --------
8/13 ベッセント・財務長官 「9月の0.5ポイント利上げを皮切りに、そこから一連の利下げを実施できるだろうと考えている。どのモデルを見ても、金利は恐らく150、175ベーシスポイント低い水準にあるできだろう」、「トランプ大統領も望んでいる」、「日本はインフレ問題を抱えており、確実に日本からの波及がある」、(日銀の植田総裁と話したこと明らかにしたうえで)、「これは総裁の見解ではなく、私見だが、日銀は後手に回っており、利上げするだろう」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は147円08銭まで下落。
8/12 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「米経済の先行きに対する不透明感は薄れつつあるものの、FRBがインフレ抑制と雇用の下支えのどちらに重点を置くべきかは、依然として明確ではない」 --------
8/12 シュミッド・カンザスシティ連銀総裁 「経済が勢いをなお維持し、企業の楽観的な見方が強まり、インフレが当局の目標を上回る水準にとどまる中では、緩やかな引き締め状態にある金融政策スタンスを当面維持するのが適切だ」 --------
8/7 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「年内に1回の利下げが実施される可能性が高いとの見通しは変わらない」、「関税の影響が一時的なものなのか、あるいはもっと持続的なものなのかという点が、現時点では恐らく最も重要な問題だ」、「この日発動された関税の影響が、一時的な物価上昇にとどまるという教科書的な関税の例に当てはまるには、いくらか会懐疑的な理由がある」、「これは一度きりで、ある朝目が覚めたら全ての関税が明らかになっているという話ではない。むしろ、関税が頻繁に変化することで、消費者の意識の中に関税や物価上昇見通しが浮かぶ期間が長くなり、インフレ期待が高まるリスクがある」 --------
8/6 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「景気は減速している。短期的にFF金利の調整を開始することが適切になる可能性がある」、「関税の影響が明確になるまで、どれくらい待てるのか、それが現在、私を悩ませている。最良の選択肢が、多少の調整を行い、その後に一時停止や方向転換を迫られる展開であっても、関税の影響が明確になるまで何もしないで待つより望ましい可能性がある」 --------
8/6 クック・FRB理事 「7月の雇用統計は懸念すべき内容だった。こうしたデータの修正は転換点でよく見られる傾向だ」 --------
8/4 デーリー・SF連銀総裁 (先週のFOMCの決定について)、「もう1会合見送る用意はあったが永遠に待つことはできない」、「インフレが加速・波及したり、雇用市場が持ち直したりすれば、2回未満の利下げでも十分かもしれないが、より可能性が高いのは、2回を超える利下げが必要になるかもしれないことだと考える。労働市場が弱い局面に入りつつある一方で、インフレへの波及が見られない場合、さらに措置を講じる準備も必要というのが私の見解だ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和