今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円150円台定着をテストか?」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 週明けの東京時間にドル円は大きく買われ、150円44銭前後までドル高が進行。NYでのもう一段のドル高期待もあったが、上値を追う動きはなく、元内閣参与の発言が伝えられ、149円75銭まで売られる場面も。
  • ユーロドルではややユーロが売られドル高に。
  • 株式市場ではダウが売られたものの、ナスダックとS&P500は買われ、最高値を更新。
  • 債券は続落し、長期金利は4.15%台に上昇。
  • 金は大幅に続伸。原油も買われる。
ドル/円 149.75 〜 150.40
ユーロ/ドル 1.1674 〜 1.1721
ユーロ/円 174.97 〜 176.13
NYダウ −63.31 → 46,694.97
GOLD +67.40 → 3,976.30ドル
WTI +0.81 → 61.69
米10年国債 +0.033 → 4.152%

本日の注目イベント

  • 豪 豪10月ウエストパック消費者信頼感指数
  • 日 8月景気先行指数(CI)(速報値)
  • 日 8月景気一致指数(CI)(速報値)
  • 独 独8月製造業新規受注
  • 米 8月消費者信用残高
  • 米 8月貿易収支
  • 米 9月NY連銀インフレ期待
  • 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会に参加
  • 米 ミラン・FRB理事、討論会に参加
  • 米 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁講演

本日のコメント

「タカイチWHO?」・・・・。昨日は、そんな声も海外から聞こえてきそうな「高市トレード」でした。「過去の新総裁決定後の株価反応では、歴代一位となる4.8%上昇した」(日経新聞)といった報道もあるように、株価の想定外の上昇が円売りを加速させた面もありました。昨日のこの欄で、「ひょっとしたら、2ヵ月ぶりに150円を見るかもしれない」と書きましたが、150円台にはあっさりと乗せ、一時は150円44銭近辺まで円が売られました。日経平均株価が先週末比2300円を超える上昇を見せたことに呼応し、リスクオンが強まり、円売りを加速させたことは間違いないでしょう。このまま行けばNYでもう一段の円売りも出るのではとの観測もありましたが、大幅な「ドル高円安」の動きは、「東京市場様限定の特別セール」だったようです。NYではドルの上値は重く、むしろ元内閣参与の発言が伝えられ、円買いにつながり149円75銭までドル安が進む場面もありました。ただ、今回のドル急騰は「これまでドルが買われた局面とはやや異なる」と感じています。

久しぶりにその名前を目にしましたが、本田悦朗元内閣官房参与は高市氏の経済ブレーンの1人であると紹介されています。筆者は、安倍元首相の時によく本田氏のコメントを目にし、その後スイス大使に転出したことまでは記憶していますが、高市氏のブレーンだったとは知りませんでした。その本田氏が6日、ブルームバーグとのインタビューで、「日銀の利上げについて高市氏が慎重に進めてほしいと考えており、いつならいいとか、今はだめだとか言うことはない」と指摘し、その上で「10月中旬ごろとみられている首相就任から間もない29、30日の会合で利上げに踏み切るのは、さすがに難しい」と語っています。これだけなら、「ドル買い材料」でしたが、さらに「円安進行が日銀の利上げの判断を複雑化させる可能性がある。円安は一般論として日本経済のサポート要因になる」としつつも、「過度な進行は物価を高止まりさせてしまう。円安が150円を超えたら、やや行き過ぎだろう」との認識を示しました。本田氏はまた、トランプ大統領との関係について、「高市氏がトランプ大統領と親交の深かった安倍晋三元首相に近いことから、良好な日米関係を築くことが可能とみている。トランプ大統領は安倍元首相が好きだった。高市氏はトランプ大統領と良い関係を作ることができると思う。石破茂首相は安倍氏と親しい関係ではなかった」とも話していました。

イスラエルとハマスとの停戦合意の可能性が急浮上する一方、トランプ政権からさらなる圧力をかけられているロシアは、ウクライナへの攻撃の手を緩めていません。ロシアは4日夜から5日朝にかけてウクライナ全土のエネルギー関連施設などに大規模な空爆を行い、少なくとも5人が死亡、複数人が負傷しています。ウクライナのゼレンスキー大統領はXへの投稿で、北東部ハルキウ州から西部のリビウ州、黒海沿岸のオデーサ州に至る広い地域が攻撃を受けたと説明。極超音速弾道ミサイル「キンジャール」を含むミサイル50発強と攻撃型ドローン約500機が使用されたと述べています。ウクライナの国営ガス会社ナフトガスによると、今回の攻撃でガス関連インフラも損傷した。クリメンコ内相は攻撃により11万世帯余りが停電していると述べ、「ロシアは住宅や学校、エネルギー施設への攻撃を続けており、依然として破壊が唯一の戦略であることを示した」と強く非難しています。

最後に、カンザスシティー連銀のシュミッド総裁の発言です。同総裁は6日、カンザスシティーでのイベントに向けた講演で「インフレ率がなお高過ぎる状況では、金融政策は需要の伸びを抑制すべきだ。供給拡大の余地を確保し、経済全体の物価圧力を和らげるためだ」と発言。さらに、「政策金利はやや景気抑制的な水準にある。現状は適切だ」との見方を示しました。

本日も株価は上がりそうな気配です。先週金曜日も上げており、これで3日大幅続伸ということになるのか?強気の株式関係者は「日本株を持たないリスク」に言及していました。昨日同様、株高が円売りを加速させるのか?本日のドル円は149円30銭〜151円30銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
10/6 シュミッド・カンザスシティー連銀総裁 「インフレ率がなお高過ぎる状況では、金融政策は需要の伸びを抑制すべきだ。供給拡大の余地を確保し、経済全体の物価圧力を和らげるためだ」、「政策金利はやや景気抑制的な水準にある。現状は適切だ」 --------
10/2 ローガン・ダラス連銀総裁 「インフレ率は現在の目標である2%を上回って推移している」、「向こう数カ月に関税がインフレをさらに押し上げると予想する」、「従って、2%に確実に到達するため、政策経路の正常化をやや減速させることになるというのが私の予想だ。時間はしばらくかかるだろう」 --------
10/2 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「労働市場にある程度の安定が見られると思うし、基調としての経済もかなり堅調に成長を続けていると考えている」 --------
9/29 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「総合およびコアのインフレ率に対する圧力が引き続き見られる。なかでもサービス分野を懸念している」、「今後1−2年は目標を上回る状態が続き、2%に戻るのは2027年末から2028年初めになるとの予測だ」 --------
9/29 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「インフレ率が当局目標を依然として上回っていることを踏まえると、政策運営は慎重に進めるべきだ」 --------
9/29 野口審議委員 「2%の物価安定目標の達成は着実に近づいている」、「政策金利調整の必要性がこれまで以上に高まりつつあることを意味している」、(現状の日本経済・物価においては)「下方リスクはありつつも、政策判断における上方リスクの重みがより増している」、わが国の金融政策は今、状況の見極めが必要な局面に差し掛かっている」 ドル円149円台前半から148円71銭まで下落。
9/25 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「完全雇用の維持と2%インフレ実現の公算がデータに示されれば、金利は現在水準からもっと低下し得る」、「ただそうした確信を得る前に、金融緩和を過剰に前倒しすることには若干不安を感じる」 --------
9/25 デーリー・SF連銀総裁 「金利水準は依然としてやや景気引き締め的な状態にある」、「労働市場が一段と弱まるかどうかを当局が注視している」 --------
9/25 シュミッド・カンザスシティー連銀総裁 「先週の25ベーシスポイント利下げは適切なリスク管理戦略だったとみている」、「インフレは依然あまりに高く、労働市場は減速しつつも、おおむね均衡が取れている。現行の金融政策スタンスは、わずかに景気抑制的なだけであり、適切な位置にあると考える」 --------
9/25 ミラン・FRB理事 「経済が急減速するとは考えていない。労働市場が崖から落ちるような事態になるとも思わない」、「大惨事の発生を待つより、先手を打って事前に利下げするべきだ」、「中立金利は低下傾向にあり、それに応じて政策も調整することが求められている」、「金融政策が過度に引き締められた状態を長期間続けると、失業率が大幅に上昇する恐れがある」 --------
9/24 ベッセント・財務長官 「金利はあまりに景気抑制的であり、下がる必要がある」と指摘。「パウエル議長が年内に少なくとも100−150ベーシスポイントという目標を示唆していないことに少し驚いている」 --------
9/24 デーリー・SF連銀総裁 「価安定を回復しつつ労働市場への必要な支援を行うため、今後さらに政策調整が必要になる可能性が高い」、「ただ、これは見通しであって約束ではない。目標を基軸に据え、トレードオフを評価し、繰り返し判断を重ねることが重要だ」、「労働市場は減速しているものの現時点で弱いわけではなく、リセッションのリスクもない。今回の利下げは雇用市場がこれ以上悪化しないようにするための措置でもある」 --------
9/23 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「私は先週のFOMC会合での25ベーシスポイントの利下げを支持した。労働市場が完全雇用を維持することを支え、さらなる軟化を防ぐことを意図した予防的な措置だ」、「しかし、政策が過度に緩和的なものにならないようにするには、追加緩和の余地は限られていると考える。関税の影響、労働供給の伸び鈍化、あるいは他の理由によるものであれ、目標を上回るインフレが続く場合、金融政策はそれに対抗し続けるべきだ」 --------
9/23 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「ここ4年半余り、目標水準に達していないことを踏まえると、インフレには確実に注意を払う必要がある」、「インフレとの闘いにおいて、われわれには引き続き警戒を続ける責任があると思う」、(雇用とインフレに関しては)「雇用リスクへの懸念は大きく高まっており、多くの人にとってはインフレリスクに匹敵する」、(WSJ紙とのインタビューで)「先週の利下げに違和感はないが、年内追加利下げの必要性はほとんど感じない」 --------
9/23 ボウマン・FRB副議長 「労働市場の悪化が数カ月続いていることを踏まえ、労働市場の活力低下や脆弱性の兆候に対応するため、委員会は断固かつ先手を打った行動を取るべき時だ」、「私の見解では、雇用統計の年次ベンチマーク改定の速報値を含め、最近のデータは労働市場の悪化に対応する上で、すでに後手に回っている深刻なリスクがあることを示している」、「こうした状況が続けば、今後はより速いペースで、より大幅な政策調整を余儀なくされることを懸念している」 --------
9/23 ミラン・FRB理事 「中立金利はこれまで過大評価されていた可能性が高く、最近では関税や移民規制、税制によってさらに低下している」、「そのため、経済への悪影響を回避するには、金利はもっと低くあるべきだ」、「これはパニックではない。75ベーシスポイント以上の引き下げならパニック的な措置だろう」、「パニックには陥っていないが、中立金利を大きく上回る水準が長引けばリスクが高まるとみている」、「自分の考えが変わらない限り、この見解を主張し続ける。もしそれが反対票を投じ続けることを意味するなら、反対を続ける。存在しないコンセンサスの幻想を作り出すためだけに、自分が信じないものに賛成票を投じるつもりはない」 --------
9/23 パウエル・FRB議長 「両面のリスクがあるということは、リスクの全くない道は存在しないことを意味する」、労働力の供給と需要の双方が顕著に鈍化している。これは異例かつ困難な展開だ」、「労働市場は活力が弱まってやや軟化しており、雇用への下振れリスクは高まっている」、「関税引き上げがサプライチェーン全体に浸透するには時間がかかり、一時的な価格押し上げが数四半期に及ぶ可能性がある」、「財の価格がインフレ加速の要因になっている」、「世界中の民主主義国で、経済・政治機関に対する信頼が揺らいでいる」、「われわれ公職にある者は、荒波や強風の中でも、自らの使命を全力で果たすことに集中しなければならない」 株価が下落し、債券は買われる。
9/17 FOMC声明文 「最近の複数の指標は経済活動の伸びが今年上期に緩やかになったことを示唆する。雇用の伸びは鈍化し、失業率はやや上昇したものの、低いままだ。インフレは上昇し、幾分高止まりしている」 ドル円は146円台前半から急落し145円50銭まで売られたが、その後147円台まで反発。債券は売られ、株式市場はまちまちの動き。
9/17 パウエル議長 「労働市場に軟化の兆しが強まっている」、「労働需要は軟化し、最近の雇用創出ペースは失業率の安定維持に必要な水準を下回っているようだ。非常に堅調だとはもはや言えなくなった」、「インフレは上昇し、幾分高止まりしている」(失業率については)、「やや上昇したものの、低いままだ」、「雇用の下振れリスクは高まった」 ドル円は146円台前半から急落し145円50銭まで売られたが、その後147円台まで反発。債券は売られ、株式市場はまちまちの動き。
9/11 ラガルド・ECB総裁 「基調的なインフレの指標は、ECBの中期的な目標である2%と一致する状態が続いている」、「最近の貿易協定によって不確実性は和らいだものの、貿易関係が再び悪化すれば、輸出が一段と冷え込み、投資や消費にも下押し圧力がかかる可能性がある」 --------
9/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「もっと情報を得たい。私はまだ決めていない。インフレの数値が穏やかであれば、それだけ労働市場に集中しやすくなる」、「しかし最新のインフレ統計ではサービス部門でインフレ上振れが見られた。従ってそれが一時的なものであり、もっと深刻な兆候ではないことを確認したい」 --------
9/3 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「完全雇用の労働市場とコアインフレがFRBの目指す2%を1ポイント近く上回っている環境と、やや引き締め的な現行の政策金利は整合する」、「現時点では政策においてバランスの取れたアプローチを取ることが重要であり、労働市場の支援やインフレ抑制のいずれかに偏り過ぎるべきではない。先行きを見通すと、労働市場は徐々に冷え込みながらも完全雇用に近い状態を維持するだろうが、リスクは下方向に傾いている」 --------
9/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「物価安定が依然として最大の関心事項ではあるものの、労働市場は十分減速しており、年内残りの期間において恐らく25ベーシスポイントの政策緩和が妥当になると考えられる」、「今後数カ月のインフレ動向や雇用市場の展開によっては、この認識は変わり得る」 --------
9/3 ウォラー・FRB理事 「次回会合で利下げを始める必要がある。その後は決まった道筋を踏まなくてもいい。人々は関税によるインフレをまだ懸念しており、状況を見極めながら進めることができる」、「米国の政策金利は現在、景気を刺激も抑制もしない中立金利を上回っており、金融政策が経済を抑制している」、「中立に近づきたいことは認識している。どれくらい利下げすべきかもおおよそ分かっていて、例えば100から150ベーシスポイントだ。ただ、その水準にどれだけの速さで到達するかは、入ってくるデータ次第になるだろう」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和