今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円152円台に急騰」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は一段と上昇し、NYでは約8ヵ月ぶりに152円台まで一気にドル高が進む。クロス円での円売りもあり、円全面安の展開に。
  • ドル高の中、ユーロドルは1.16台半ばまで下落。一方対円では177円13銭までユーロ高に。
  • 株式市場では3指数が揃って下落。利益確定の売りや、市場では買い疲れとの声も。
  • 債券は買われ、長期金利は4.12%台に低下。
  • 金は続伸し、初の4000ドル台に。原油も小幅ながら続伸。
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8月消費者信用残高 → 0.363b
8月貿易収支 → Delayed
9月NY連銀インフレ期待 → 3.38%
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ドル/円 150.74 〜 152.04
ユーロ/ドル 1.1645 〜 1.1681
ユーロ/円 176.88 〜 177.13
NYダウ −91.99 → 46,602.98
GOLD +28.10 → 4,004.40ドル
WTI +0.04 → 61.73
米10年国債 −0.029 → 4.123%

本日の注目イベント

  • 日 8月国際収支・経常収支
  • 日 9月景気ウオッチャー調査
  • 独 独8月貿易収支
  • 米 FOMC議事録(9月16−17日分)
  • 独 独8月鉱工業生産
  • 米 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁講演
  • 米 バー・FRB理事講演

本日のコメント

約8ヵ月ぶりの152円台。想定以上の急ピッチで「ドル高」というよりも、「円安」が進んでいます。筆者は、早くからドル高を想定していましたが、本コメントを書いた昨日の朝方の150円30銭前後から、一晩で152円台まで円売りが進んだことにはやや驚きです。ただ一方で8月1日に記録した150円92銭という、目先のドルの高値を抜けば、ドル高が加速する可能性もあるのではないかという印象はありました。昨日の動きは上昇スピードは速すぎるものの、まさに直近のドルの高値を抜けたことで投機筋などのドル買い戻しを「炙り出したもの」と考えられます。実際に、シカゴ先物市場での投機筋の円ポジションを見ると、9月23日時点では「ネットの円買いが7万9500枚」となっており、4月29日にピークだった「17万9000枚」から大きく減少しています。ただ、まだ「ネット円買い」でしたので、その後円がさらに売られたことを考えると、円買い枚数はさらに大きく減少していると予想されます。

先週金曜日のNYでのドル円は147円08銭まで下げましたので、土曜日の高市総裁誕生を経て、わずか2日間でほぼ5円上昇したことになります。これまでの経験から、ドル下落時にはこのような大きな値動きは観られますが、ドル上昇時にはなかなかお目にかかれません。しかも、FRBによる追加利下げが予想される中での動きです。今回の急激な「ドル高円安」の動きは米国サイドの理由ではなく、ほぼ日本サイドの理由によるものです。「高市トレード」と言われていますが、高市氏は、昨年ほど「過激な発言」は影を潜め温和になったとは言え、総裁選で勝利したことで日銀の利上げ時期が「後ずれ」したのは間違いありません。筆者は、依然として10月会合での利上げの可能性が若干残っていると考えていますが、市場が予想する「OIS」では、直近の利上げ確率は「23.6%」まで低下しています。因みに12月会合での確率も「54%」まで低下しています。

「高市トレード」が活発になり、株高、ドル高が続いていますが、金価格の上昇にも驚きです。昨日はついに4000ドル台に乗せました。通常「金」はドルの代替品という位置づけのため、「ドルが売られれば、金が買われ」、「ドルが買われれば、金が売られる」という構図が長い間続いてきました。しかし今年の春ごろから金とドルの「逆相関」が崩れています。昨日もそうでしたが、ここ最近はドルと金が共に買われてきました。昨日の日本での金の店頭価格は2万1000円台に乗せました。この店頭価格の急騰は円安が急激に進んだことも、大きな要因です。昨日のNYコメックスでの金の引け値は4004ドルです。この価格は1トロイオンス当たりの価格です。1トロイオンスは31.1035グラムですので、「4004ドル+1ドル(保険)×152円÷31.1035グラム=19,572円」と、計算されます。これに諸経費が加算されて店頭価格が決まりますが、今日も最高値が提示されるはずです。

昨日発表された「9月のNY連銀インフレ期待」では、1年先インフレ期待は「3.4%」に上昇していました。低・中所得層が特に物価上昇圧力の負担を感じている兆候が見られます。ブルームバーグは、「インフレ期待の上昇は、年間所得5万ドル(約760万円)未満の世帯と、最終学歴が高校卒業の消費者の間で最も顕著だった。5年先のインフレ期待は3%と、前月(2.9%)から小幅に上昇。3年先は3%で横ばいだった」と説明しています。ミランFRB理事は講演で、人口増加ペースの減速に加え、トランプ大統領の関税政策によるインレへの影響は限定的だとする自身の見通しなどを理由に挙げ、「FRBが利下げを継続することは可能だ」との見解を改めて表明しました。一方、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、大幅な利下げはインフレを再び加速させるリスクがあると、全く逆の見方を示しています。カシュカリ氏は、ミネソタ・スター・トリビューン紙が主催したAIと経済に関するパネル討論会で「大幅利下げを行えば、経済が一時的に高インフレに見舞われることになるだろう」と指摘。「基本的に、経済の潜在成長力や供給能力を超えるペースで景気を押し上げようとすれば、最終的には経済全体で物価が上昇することになる」と述べていました。

本日は9月のFOMC議事録が公開されます。FRBはこの会議で25bpの利下げを決め、パウエル議長も会見で「労働需要は軟化し、最近の雇用創出ペースは失業率の安定維持に必要な水準を下回っているようだ。非常に堅調だとはもはや言えなくなった」と、利下げに前向きなスタンスへと変化させた時の議事録です。本日のドル円は150円80銭〜152円80銭程度予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
10/7 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「大幅利下げを行えば、経済が一時的に高インフレに見舞われることになるだろう」、「基本的に、経済の潜在成長力や供給能力を超えるペースで景気を押し上げようとすれば、最終的には経済全体で物価が上昇することになる」 --------
10/7 ミラン・FRB理事 「人口増加ペースの減速に加え、トランプ大統領の関税政策によるインレへの影響は限定的だ」、「FRBが利下げを継続することは可能だ」 --------
10/6 シュミッド・カンザスシティー連銀総裁 「インフレ率がなお高過ぎる状況では、金融政策は需要の伸びを抑制すべきだ。供給拡大の余地を確保し、経済全体の物価圧力を和らげるためだ」、「政策金利はやや景気抑制的な水準にある。現状は適切だ」 --------
10/2 ローガン・ダラス連銀総裁 「インフレ率は現在の目標である2%を上回って推移している」、「向こう数カ月に関税がインフレをさらに押し上げると予想する」、「従って、2%に確実に到達するため、政策経路の正常化をやや減速させることになるというのが私の予想だ。時間はしばらくかかるだろう」 --------
10/2 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「労働市場にある程度の安定が見られると思うし、基調としての経済もかなり堅調に成長を続けていると考えている」 --------
9/29 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「総合およびコアのインフレ率に対する圧力が引き続き見られる。なかでもサービス分野を懸念している」、「今後1−2年は目標を上回る状態が続き、2%に戻るのは2027年末から2028年初めになるとの予測だ」 --------
9/29 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「インフレ率が当局目標を依然として上回っていることを踏まえると、政策運営は慎重に進めるべきだ」 --------
9/29 野口審議委員 「2%の物価安定目標の達成は着実に近づいている」、「政策金利調整の必要性がこれまで以上に高まりつつあることを意味している」、(現状の日本経済・物価においては)「下方リスクはありつつも、政策判断における上方リスクの重みがより増している」、わが国の金融政策は今、状況の見極めが必要な局面に差し掛かっている」 ドル円149円台前半から148円71銭まで下落。
9/25 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「完全雇用の維持と2%インフレ実現の公算がデータに示されれば、金利は現在水準からもっと低下し得る」、「ただそうした確信を得る前に、金融緩和を過剰に前倒しすることには若干不安を感じる」 --------
9/25 デーリー・SF連銀総裁 「金利水準は依然としてやや景気引き締め的な状態にある」、「労働市場が一段と弱まるかどうかを当局が注視している」 --------
9/25 シュミッド・カンザスシティー連銀総裁 「先週の25ベーシスポイント利下げは適切なリスク管理戦略だったとみている」、「インフレは依然あまりに高く、労働市場は減速しつつも、おおむね均衡が取れている。現行の金融政策スタンスは、わずかに景気抑制的なだけであり、適切な位置にあると考える」 --------
9/25 ミラン・FRB理事 「経済が急減速するとは考えていない。労働市場が崖から落ちるような事態になるとも思わない」、「大惨事の発生を待つより、先手を打って事前に利下げするべきだ」、「中立金利は低下傾向にあり、それに応じて政策も調整することが求められている」、「金融政策が過度に引き締められた状態を長期間続けると、失業率が大幅に上昇する恐れがある」 --------
9/24 ベッセント・財務長官 「金利はあまりに景気抑制的であり、下がる必要がある」と指摘。「パウエル議長が年内に少なくとも100−150ベーシスポイントという目標を示唆していないことに少し驚いている」 --------
9/24 デーリー・SF連銀総裁 「価安定を回復しつつ労働市場への必要な支援を行うため、今後さらに政策調整が必要になる可能性が高い」、「ただ、これは見通しであって約束ではない。目標を基軸に据え、トレードオフを評価し、繰り返し判断を重ねることが重要だ」、「労働市場は減速しているものの現時点で弱いわけではなく、リセッションのリスクもない。今回の利下げは雇用市場がこれ以上悪化しないようにするための措置でもある」 --------
9/23 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「私は先週のFOMC会合での25ベーシスポイントの利下げを支持した。労働市場が完全雇用を維持することを支え、さらなる軟化を防ぐことを意図した予防的な措置だ」、「しかし、政策が過度に緩和的なものにならないようにするには、追加緩和の余地は限られていると考える。関税の影響、労働供給の伸び鈍化、あるいは他の理由によるものであれ、目標を上回るインフレが続く場合、金融政策はそれに対抗し続けるべきだ」 --------
9/23 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「ここ4年半余り、目標水準に達していないことを踏まえると、インフレには確実に注意を払う必要がある」、「インフレとの闘いにおいて、われわれには引き続き警戒を続ける責任があると思う」、(雇用とインフレに関しては)「雇用リスクへの懸念は大きく高まっており、多くの人にとってはインフレリスクに匹敵する」、(WSJ紙とのインタビューで)「先週の利下げに違和感はないが、年内追加利下げの必要性はほとんど感じない」 --------
9/23 ボウマン・FRB副議長 「労働市場の悪化が数カ月続いていることを踏まえ、労働市場の活力低下や脆弱性の兆候に対応するため、委員会は断固かつ先手を打った行動を取るべき時だ」、「私の見解では、雇用統計の年次ベンチマーク改定の速報値を含め、最近のデータは労働市場の悪化に対応する上で、すでに後手に回っている深刻なリスクがあることを示している」、「こうした状況が続けば、今後はより速いペースで、より大幅な政策調整を余儀なくされることを懸念している」 --------
9/23 ミラン・FRB理事 「中立金利はこれまで過大評価されていた可能性が高く、最近では関税や移民規制、税制によってさらに低下している」、「そのため、経済への悪影響を回避するには、金利はもっと低くあるべきだ」、「これはパニックではない。75ベーシスポイント以上の引き下げならパニック的な措置だろう」、「パニックには陥っていないが、中立金利を大きく上回る水準が長引けばリスクが高まるとみている」、「自分の考えが変わらない限り、この見解を主張し続ける。もしそれが反対票を投じ続けることを意味するなら、反対を続ける。存在しないコンセンサスの幻想を作り出すためだけに、自分が信じないものに賛成票を投じるつもりはない」 --------
9/23 パウエル・FRB議長 「両面のリスクがあるということは、リスクの全くない道は存在しないことを意味する」、労働力の供給と需要の双方が顕著に鈍化している。これは異例かつ困難な展開だ」、「労働市場は活力が弱まってやや軟化しており、雇用への下振れリスクは高まっている」、「関税引き上げがサプライチェーン全体に浸透するには時間がかかり、一時的な価格押し上げが数四半期に及ぶ可能性がある」、「財の価格がインフレ加速の要因になっている」、「世界中の民主主義国で、経済・政治機関に対する信頼が揺らいでいる」、「われわれ公職にある者は、荒波や強風の中でも、自らの使命を全力で果たすことに集中しなければならない」 株価が下落し、債券は買われる。
9/17 FOMC声明文 「最近の複数の指標は経済活動の伸びが今年上期に緩やかになったことを示唆する。雇用の伸びは鈍化し、失業率はやや上昇したものの、低いままだ。インフレは上昇し、幾分高止まりしている」 ドル円は146円台前半から急落し145円50銭まで売られたが、その後147円台まで反発。債券は売られ、株式市場はまちまちの動き。
9/17 パウエル議長 「労働市場に軟化の兆しが強まっている」、「労働需要は軟化し、最近の雇用創出ペースは失業率の安定維持に必要な水準を下回っているようだ。非常に堅調だとはもはや言えなくなった」、「インフレは上昇し、幾分高止まりしている」(失業率については)、「やや上昇したものの、低いままだ」、「雇用の下振れリスクは高まった」 ドル円は146円台前半から急落し145円50銭まで売られたが、その後147円台まで反発。債券は売られ、株式市場はまちまちの動き。
9/11 ラガルド・ECB総裁 「基調的なインフレの指標は、ECBの中期的な目標である2%と一致する状態が続いている」、「最近の貿易協定によって不確実性は和らいだものの、貿易関係が再び悪化すれば、輸出が一段と冷え込み、投資や消費にも下押し圧力がかかる可能性がある」 --------
9/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「もっと情報を得たい。私はまだ決めていない。インフレの数値が穏やかであれば、それだけ労働市場に集中しやすくなる」、「しかし最新のインフレ統計ではサービス部門でインフレ上振れが見られた。従ってそれが一時的なものであり、もっと深刻な兆候ではないことを確認したい」 --------
9/3 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「完全雇用の労働市場とコアインフレがFRBの目指す2%を1ポイント近く上回っている環境と、やや引き締め的な現行の政策金利は整合する」、「現時点では政策においてバランスの取れたアプローチを取ることが重要であり、労働市場の支援やインフレ抑制のいずれかに偏り過ぎるべきではない。先行きを見通すと、労働市場は徐々に冷え込みながらも完全雇用に近い状態を維持するだろうが、リスクは下方向に傾いている」 --------
9/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「物価安定が依然として最大の関心事項ではあるものの、労働市場は十分減速しており、年内残りの期間において恐らく25ベーシスポイントの政策緩和が妥当になると考えられる」、「今後数カ月のインフレ動向や雇用市場の展開によっては、この認識は変わり得る」 --------
9/3 ウォラー・FRB理事 「次回会合で利下げを始める必要がある。その後は決まった道筋を踏まなくてもいい。人々は関税によるインフレをまだ懸念しており、状況を見極めながら進めることができる」、「米国の政策金利は現在、景気を刺激も抑制もしない中立金利を上回っており、金融政策が経済を抑制している」、「中立に近づきたいことは認識している。どれくらい利下げすべきかもおおよそ分かっていて、例えば100から150ベーシスポイントだ。ただ、その水準にどれだけの速さで到達するかは、入ってくるデータ次第になるだろう」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和