今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「微妙な高市発言」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は続伸し153円台に。欧州勢が参入した夕方16時頃に153円台に乗せたが、テレビ東京の番組で高市自民党総裁の発言が伝わると一気に152円台前半まで急落した。ただその後直ぐに153円台を回復し、153円23銭までドル高が進む。
  • ユーロドルは続落。ドル高の流れに加えフランスの政局不安もあり、ユーロは1.1543まで下落。
  • 高値圏で推移していた株式市場では3指数が揃って下落。ダウは243ドル安。
  • 債券も売られ、長期金利は4.12%台に上昇。
  • 連日高値を更新していた金は100ドルに迫る大幅反落。原油も売られる。
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新規失業保険申請件数 → Delayed
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ドル/円 152.11 〜 153.23
ユーロ/ドル 1.1543 〜 1.1623
ユーロ/円 176.50 〜 177.48
NYダウ −243.36 → 46,358.42
GOLD −97.90 → 3,972.60ドル
WTI −1.04 → 61.51
米10年国債 +0.021 → 4.138%

本日の注目イベント

  • 英 英9月消費者物価指数
  • 米 10月ミシガン大学消費者マインド(速報値)
  • 米 9月財政収支
  • 米 ムサレム・セントルイス連銀総裁講演
  • 米 グールズビー・シカゴ連銀総裁、開会で挨拶
  • 加 カナダ9月新規雇用者数
  • 加 カナダ9月失業率

本日のコメント

東京時間では底堅い動きは見せたものの、153円台テストは見られなかったドル円でしたが、欧州時間に入ると153円台に乗せてきました。ただ、22時過ぎにはテレビ東京の番組に出演した高市自民党総裁の発言で1円ほど押し戻される場面もありましたが、その後再び153円台に乗せ、153円23銭までドル高が進みました。NY株式市場では、高値圏で推移していた主要3指数が売られましたが、株高・ドル高の「高市トレード」はまだ終わっていないようです。

高市総裁はテレビ東京の番組で、インフレの一因として指摘されている円安について問われ、「行き過ぎた円安ということを誘発するつもりはございません」と発言しました。ただ、「一般論として円安にはいい面も悪い面もある」とも指摘し、「輸出企業にとっては競争力が生まれる側面がある」と述べていました。高市氏が総裁就任後、円安の状況について語るのは初めてで、150円を超えるドル円相場は許容範囲かとの質問に対しては、「発言すべき事柄ではない」とし、「金融政策の手段は日銀が決める」とも指摘。「私の立場で利上げそのものについて発言すべきでないということは分かっている」としていました。

一方で、連立の枠組みを巡っては公明党との間で溝は埋まっていません。靖国参拝など、高市氏自身が極めて保守色が強く、公明党の支持基盤である創価学会から支持を得られないことが大きな理由になっています。公明党の斎藤代表も「連立をしないということは、(首班指名で)高市早苗と書かないということです」と、強気の姿勢を崩していません。それでも高市氏は、上記番組の中で「公明代表から連立解消という話はいただいていない」と話していました。またNHKに出演した際にも「自公連立は基本中の基本だ」とも述べていました。「自公連立」が望めないとすれば、高市氏は国民民主党や、維新などと連立の可能性を模索することになりますが、それでも公明党の穴を埋めるには、どちらか1党だけでは連立政権は維持できず、最低でも野党の中から2党を取り込む必要があります。首班指名に向けて残り時間はそう多くないことから、政局不安が予想外に強まるようだと、これも「円売り材料」にされる可能性があり、堅調な日本株にもブレイキをかけることになります。

どちらかと言えば、政策金利についてはニュートラルと見られていたNY連銀のウィリアムズ総裁が、9日掲載のニューヨーク・タイムズ(NYT)のインタビューで、今年中にさらなる利下げを支持する考えを示しました。ウィリアムズ氏はインタビューで「労働市場のさらなる減速リスクには特に注意を払っている」と述べ、インフレ率が約3%に上昇し、失業率が現在の4.3%を上回る水準にわずかに上昇するなど、経済が予想通りに推移する場合は「今年中の利下げを支持するが、その具体的な意味合いは、今後見極める必要がある」と語っています。

2018年3月から23年3月まで日銀副総裁を務めた若田部早稲田大学教授はロイター通信とのインタビューで、「足元の労働市場は芳しくないと」し、11月17日に政府が発表する7─9月期のGDP速報値の数字が悪ければ「12月の利上げは難しいのではないか」と話しています。「10月あるいは12月に利上げするのかどうか、日銀はコミットしているようには見えず、シグナルも出していない」とも述べ、その上で、「経済が巡航スピードで推移し、物価安定目標を持続的・安定的に達成する見込みの確度が高まってくるなら利上げは当然ありうる」と、日銀が利上げを継続する方針に理解を示す一方、望ましい金融政策運営は「高圧経済論と統合運用論だ」と指摘。景気を「無理に過熱させる必要はないが、ある程度景気は温め続けることが望ましい」と話していました。

イスラエルとハマスとの停戦協議は8日、戦争開始から2年たってようやく「第1段階での合意」が実現しました。ガザではすでに6万7000人以上が犠牲になっており、今後ハマスの武装解除やイスラエル軍の完全撤退など課題は残るものの、ようやくパレスチナ自治区ガザから銃声音や爆撃音のない日々が訪れようとしています。今回の停戦に向けた動きは、イスラエル寄りとは批判されながらも、トランプ大統領の功績は大きいと思われます。今日は、ちょうど「ノーベル平和賞」発表の日です。タイミングが良すぎますが、まさかトランプ氏が受賞することはないと思われます・・・・。

本日のドル円は152円〜153円80銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
10/9 高市・自民党総裁 「行き過ぎた円安ということを誘発するつもりはございません」、「一般論として円安にはいい面も悪い面もある」、「輸出企業にとっては競争力が生まれる側面がある」、(150円を超えるドル円相場は許容範囲かとの質問に対して)、「発言すべき事柄ではない」、「金融政策の手段は日銀が決める」、「私の立場で利上げそのものについて発言すべきでないということは分かっている」 ドル円は153円台前半から1円ほど円高に振れる。
10/9 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「労働市場のさらなる減速リスクには特に注意を払っている」、(インフレ率が約3%に上昇し、失業率が現在の4.3%を上回る水準にわずかに上昇するなど、経済が予想通りに推移する場合は)「今年中の利下げを支持するが、その具体的な意味合いは、今後見極める必要がある」 --------
10/7 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「大幅利下げを行えば、経済が一時的に高インフレに見舞われることになるだろう」、「基本的に、経済の潜在成長力や供給能力を超えるペースで景気を押し上げようとすれば、最終的には経済全体で物価が上昇することになる」 --------
10/7 ミラン・FRB理事 「人口増加ペースの減速に加え、トランプ大統領の関税政策によるインレへの影響は限定的だ」、「FRBが利下げを継続することは可能だ」 --------
10/6 シュミッド・カンザスシティー連銀総裁 「インフレ率がなお高過ぎる状況では、金融政策は需要の伸びを抑制すべきだ。供給拡大の余地を確保し、経済全体の物価圧力を和らげるためだ」、「政策金利はやや景気抑制的な水準にある。現状は適切だ」 --------
10/2 ローガン・ダラス連銀総裁 「インフレ率は現在の目標である2%を上回って推移している」、「向こう数カ月に関税がインフレをさらに押し上げると予想する」、「従って、2%に確実に到達するため、政策経路の正常化をやや減速させることになるというのが私の予想だ。時間はしばらくかかるだろう」 --------
10/2 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「労働市場にある程度の安定が見られると思うし、基調としての経済もかなり堅調に成長を続けていると考えている」 --------
9/29 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「総合およびコアのインフレ率に対する圧力が引き続き見られる。なかでもサービス分野を懸念している」、「今後1−2年は目標を上回る状態が続き、2%に戻るのは2027年末から2028年初めになるとの予測だ」 --------
9/29 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「インフレ率が当局目標を依然として上回っていることを踏まえると、政策運営は慎重に進めるべきだ」 --------
9/29 野口審議委員 「2%の物価安定目標の達成は着実に近づいている」、「政策金利調整の必要性がこれまで以上に高まりつつあることを意味している」、(現状の日本経済・物価においては)「下方リスクはありつつも、政策判断における上方リスクの重みがより増している」、わが国の金融政策は今、状況の見極めが必要な局面に差し掛かっている」 ドル円149円台前半から148円71銭まで下落。
9/25 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「完全雇用の維持と2%インフレ実現の公算がデータに示されれば、金利は現在水準からもっと低下し得る」、「ただそうした確信を得る前に、金融緩和を過剰に前倒しすることには若干不安を感じる」 --------
9/25 デーリー・SF連銀総裁 「金利水準は依然としてやや景気引き締め的な状態にある」、「労働市場が一段と弱まるかどうかを当局が注視している」 --------
9/25 シュミッド・カンザスシティー連銀総裁 「先週の25ベーシスポイント利下げは適切なリスク管理戦略だったとみている」、「インフレは依然あまりに高く、労働市場は減速しつつも、おおむね均衡が取れている。現行の金融政策スタンスは、わずかに景気抑制的なだけであり、適切な位置にあると考える」 --------
9/25 ミラン・FRB理事 「経済が急減速するとは考えていない。労働市場が崖から落ちるような事態になるとも思わない」、「大惨事の発生を待つより、先手を打って事前に利下げするべきだ」、「中立金利は低下傾向にあり、それに応じて政策も調整することが求められている」、「金融政策が過度に引き締められた状態を長期間続けると、失業率が大幅に上昇する恐れがある」 --------
9/24 ベッセント・財務長官 「金利はあまりに景気抑制的であり、下がる必要がある」と指摘。「パウエル議長が年内に少なくとも100−150ベーシスポイントという目標を示唆していないことに少し驚いている」 --------
9/24 デーリー・SF連銀総裁 「価安定を回復しつつ労働市場への必要な支援を行うため、今後さらに政策調整が必要になる可能性が高い」、「ただ、これは見通しであって約束ではない。目標を基軸に据え、トレードオフを評価し、繰り返し判断を重ねることが重要だ」、「労働市場は減速しているものの現時点で弱いわけではなく、リセッションのリスクもない。今回の利下げは雇用市場がこれ以上悪化しないようにするための措置でもある」 --------
9/23 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「私は先週のFOMC会合での25ベーシスポイントの利下げを支持した。労働市場が完全雇用を維持することを支え、さらなる軟化を防ぐことを意図した予防的な措置だ」、「しかし、政策が過度に緩和的なものにならないようにするには、追加緩和の余地は限られていると考える。関税の影響、労働供給の伸び鈍化、あるいは他の理由によるものであれ、目標を上回るインフレが続く場合、金融政策はそれに対抗し続けるべきだ」 --------
9/23 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「ここ4年半余り、目標水準に達していないことを踏まえると、インフレには確実に注意を払う必要がある」、「インフレとの闘いにおいて、われわれには引き続き警戒を続ける責任があると思う」、(雇用とインフレに関しては)「雇用リスクへの懸念は大きく高まっており、多くの人にとってはインフレリスクに匹敵する」、(WSJ紙とのインタビューで)「先週の利下げに違和感はないが、年内追加利下げの必要性はほとんど感じない」 --------
9/23 ボウマン・FRB副議長 「労働市場の悪化が数カ月続いていることを踏まえ、労働市場の活力低下や脆弱性の兆候に対応するため、委員会は断固かつ先手を打った行動を取るべき時だ」、「私の見解では、雇用統計の年次ベンチマーク改定の速報値を含め、最近のデータは労働市場の悪化に対応する上で、すでに後手に回っている深刻なリスクがあることを示している」、「こうした状況が続けば、今後はより速いペースで、より大幅な政策調整を余儀なくされることを懸念している」 --------
9/23 ミラン・FRB理事 「中立金利はこれまで過大評価されていた可能性が高く、最近では関税や移民規制、税制によってさらに低下している」、「そのため、経済への悪影響を回避するには、金利はもっと低くあるべきだ」、「これはパニックではない。75ベーシスポイント以上の引き下げならパニック的な措置だろう」、「パニックには陥っていないが、中立金利を大きく上回る水準が長引けばリスクが高まるとみている」、「自分の考えが変わらない限り、この見解を主張し続ける。もしそれが反対票を投じ続けることを意味するなら、反対を続ける。存在しないコンセンサスの幻想を作り出すためだけに、自分が信じないものに賛成票を投じるつもりはない」 --------
9/23 パウエル・FRB議長 「両面のリスクがあるということは、リスクの全くない道は存在しないことを意味する」、労働力の供給と需要の双方が顕著に鈍化している。これは異例かつ困難な展開だ」、「労働市場は活力が弱まってやや軟化しており、雇用への下振れリスクは高まっている」、「関税引き上げがサプライチェーン全体に浸透するには時間がかかり、一時的な価格押し上げが数四半期に及ぶ可能性がある」、「財の価格がインフレ加速の要因になっている」、「世界中の民主主義国で、経済・政治機関に対する信頼が揺らいでいる」、「われわれ公職にある者は、荒波や強風の中でも、自らの使命を全力で果たすことに集中しなければならない」 株価が下落し、債券は買われる。
9/17 FOMC声明文 「最近の複数の指標は経済活動の伸びが今年上期に緩やかになったことを示唆する。雇用の伸びは鈍化し、失業率はやや上昇したものの、低いままだ。インフレは上昇し、幾分高止まりしている」 ドル円は146円台前半から急落し145円50銭まで売られたが、その後147円台まで反発。債券は売られ、株式市場はまちまちの動き。
9/17 パウエル議長 「労働市場に軟化の兆しが強まっている」、「労働需要は軟化し、最近の雇用創出ペースは失業率の安定維持に必要な水準を下回っているようだ。非常に堅調だとはもはや言えなくなった」、「インフレは上昇し、幾分高止まりしている」(失業率については)、「やや上昇したものの、低いままだ」、「雇用の下振れリスクは高まった」 ドル円は146円台前半から急落し145円50銭まで売られたが、その後147円台まで反発。債券は売られ、株式市場はまちまちの動き。
9/11 ラガルド・ECB総裁 「基調的なインフレの指標は、ECBの中期的な目標である2%と一致する状態が続いている」、「最近の貿易協定によって不確実性は和らいだものの、貿易関係が再び悪化すれば、輸出が一段と冷え込み、投資や消費にも下押し圧力がかかる可能性がある」 --------
9/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「もっと情報を得たい。私はまだ決めていない。インフレの数値が穏やかであれば、それだけ労働市場に集中しやすくなる」、「しかし最新のインフレ統計ではサービス部門でインフレ上振れが見られた。従ってそれが一時的なものであり、もっと深刻な兆候ではないことを確認したい」 --------
9/3 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「完全雇用の労働市場とコアインフレがFRBの目指す2%を1ポイント近く上回っている環境と、やや引き締め的な現行の政策金利は整合する」、「現時点では政策においてバランスの取れたアプローチを取ることが重要であり、労働市場の支援やインフレ抑制のいずれかに偏り過ぎるべきではない。先行きを見通すと、労働市場は徐々に冷え込みながらも完全雇用に近い状態を維持するだろうが、リスクは下方向に傾いている」 --------
9/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「物価安定が依然として最大の関心事項ではあるものの、労働市場は十分減速しており、年内残りの期間において恐らく25ベーシスポイントの政策緩和が妥当になると考えられる」、「今後数カ月のインフレ動向や雇用市場の展開によっては、この認識は変わり得る」 --------
9/3 ウォラー・FRB理事 「次回会合で利下げを始める必要がある。その後は決まった道筋を踏まなくてもいい。人々は関税によるインフレをまだ懸念しており、状況を見極めながら進めることができる」、「米国の政策金利は現在、景気を刺激も抑制もしない中立金利を上回っており、金融政策が経済を抑制している」、「中立に近づきたいことは認識している。どれくらい利下げすべきかもおおよそ分かっていて、例えば100から150ベーシスポイントだ。ただ、その水準にどれだけの速さで到達するかは、入ってくるデータ次第になるだろう」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和