今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米ADP雇用者数マイナスに沈む」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 東京時間からドルは上値の重い展開だったが、NYでは労働市場の鈍化を示す指標に、利下げ観測が一段と強まりドル円は155円01銭まで下落。
  • ドル安の流れにユーロドルは続伸。およそ1ヵ月半ぶりに1.1677まで買われる。
  • 株式市場は3指数が揃って上昇したが、引けにかけては上げ幅を縮小。利下げ観測がさらに強まり多くの株価が買われたが、大手IT株は冴えず。
  • 債券は反発。長期金利は4.06%台に低下。
  • 金と原油は反発。
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11月ADP雇用者数 → −3.2万人
9月輸入物価指数 → 0.0%
9月輸出物価指数 → 0.0%
9月鉱工業生産 → 0.1%
9月設備稼働率 → 75.9%
11月ISM非製造業景況指数 → 52.6
11月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値) → 54.1
11月S&Pグローバル総合PMI(改定値) → 54.2
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ドル/円 155.01 〜 155.60
ユーロ/ドル 1.1655 〜 1.1677
ユーロ/円 180.79 〜 181.46
NYダウ +408.44 → 47,882.90ドル
GOLD +11.70 → 4,232.50ドル
WTI +0.31 → 58.95ドル
米10年国債 −0.023 → 4.063%

本日の注目イベント

  • 豪 豪10月貿易収支
  • 欧 ユーロ圏10月小売売上高
  • 米 10月貿易収支
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 加 カナダ10月貿易収支

本日のコメント

前日のNYでは156円台前半まで反発したドル円でしたが、昨日の東京時間では株価が上昇した割にはドルの上値は重く、欧州市場が開くとユーロが対ドルで買われたことと歩調を合わせ、円買いが優勢になりました。NYでは「11月のADP雇用者数」が市場予想を下回ったことで利下げ観測がさらに強まり、ドルを押し下げました。

ADP雇用者数は「3万2000人減少」と、市場予想の「1万人増加」を大きく下回りました。10月分は「4万7000人増加」(速報値は4万2000人増加)に上方修正されました。ブルームバーグは、「来週に予定されているFOMCの年内最後の政策会合を前に、この日のADP雇用者数の弱い内容は、労働市場の悪化が加速するとの懸念を一段と高める可能性がある。政府の11月雇用統計の発表が政府機関の閉鎖で遅れているため、ADP統計は当局が会合までに参照できる数少ない経済指標の一つとして、通常以上の重要性を持つとみられる」とコメントしていました。ADPのチーフエコノミスト、リチャードソン氏は発表文で「消費者の慎重姿勢と不透明なマクロ経済環境の中で、最近の雇用は不安定な動きを示している」と指摘。「11月の雇用減速は広範囲に及んだが、小規模事業者の雇用縮小が主導した」と述べています。なお、ADPは最近、週次ベースの雇用データの公表も開始しており、直近は3週連続で雇用が減少しています。

今週は、次期FRB議長の名前を巡る様々な情報が入ってきましたが、現時点ではハセット国家経済会議(NEC)委員長が「当確」でしょう。そのハセット氏に関して、「債券投資家は米財務省に対して、ハセット氏が次期FRB議長に起用される可能性を巡り懸念を伝えた」と、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じています。トランプ大統領を喜ばせるため、ハセット氏が積極的な利下げに踏み切るのではないかと債券投資家は不安視しているということのようです。FTによると、財務省は11月、ウォール街の銀行大手や資産運用大手、米国債市場の主要プレーヤーの経営幹部らと個別に協議し、ハセット氏や他のFRB議長候補について意見を求めていたとのことです。米国におけるFRB議長の地位は非常に高く、筆者は以前、「米国では大統領に次ぐ重要かつ、重い地位だ」という言葉を聞いたこともあります。ブルームバーグも最近、「何故、ハセット氏が次期FRB議長の最有力候補になったのか」というコラムの中で、「彼が、最もトランプ氏に忠実だからだ」と、ややアイロニーを込めたコメントをしていました。「物価の安定と労働市場の最大化」というFRBの2大責務を無視して、政策金利を動かすことはないと思われますが、懸念が残ります。

さらにFRBに関して以下のような情報もありました。ベッセント財務長官は地区連銀総裁の候補者について、就任前に少なくとも3年間は担当地区に居住していることを義務づける新たな規則を推進すると述べています。ベッセント氏はかねて、FRBが本来の使命から逸脱し、金融政策運営という主要な任務から外れつつあると批判していました。ベッセント氏は「FRBの当初の枠組みから乖離が生じていると確信している」とニューヨーク・タイムズ(NYT)のイベントで発言し、「地区連銀総裁は元来、その地区出身であることが想定されていた。現在は外部から人目を引く人材を引っ張ってくるという発想になっている」と指摘しています。1世紀余り前に創設されたFRBは、ワシントンの理事会と全米12の地区連銀で構成されています。ベッセント氏は、現在の地区連銀総裁3人が、自身が唱えている基準を満たしていないとの考えを改めて示し、その上で「地区連銀総裁に関して、これからは就任前に少なくとも3年間その地区に居住していることを必須とすべきだとの提案を推進していく」と述べました。「現在の制度では、各地区連銀の理事会(金融機関の勤務者は除く)が総裁候補を指名し、FRB理事会が採決で承認する仕組みとなっている。総裁の任期は5年ごとに再承認が必要で、現行の任期は来年2月に満了となる。米アトランタ連銀のボスティック総裁は任期終了に伴い退任する意向を示している」(ブルームバーグ)

今週月曜日の植田日銀総裁の発言以来、テクニカルで観る限りドル高基調は変わっていませんが、ドルの上値は重くなっています。また、両中銀の今月の政策スタンスも、市場はほぼ織り込みつつあります。目先の下値のメドは154円台半ばと、さらに週足転換線が位置する153円40銭前後かと思います。

本日のドル円は154円50銭〜156円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
12/1 植田・日銀総裁 「内外経済・物価情勢や金融資本市場の動向を、さまざまなデータや情報を基に点検・議論し、利上げの是非について適切に判断したい」、(米国経済に関する不確実性が)「数カ月前よりかなり低下した」、「遅すぎることもなく早すぎることもなく、緩和度合いを適切に調整していくことは、日本経済を息の長い成長軌道に乗せるために必要だ」、「政府と日本銀行の取り組みを最終的に成功させることにつながる」、「利上げは緩和的な金融環境の中での調整だ。景気にブレーキをかけるものではなく、安定した経済・物価の実現に向けて、アクセルをうまく緩めていくプロセスだ」 ドル円は156円前後からNYでは154円67銭まで下落。日経平均株価は一時1000円を超える下落。長期金利はおよそ17年ぶりに1.875%まで上昇。
11/21 片山財務大臣 「足元の動きは一方的で急激であると憂慮している」(日米財務相共同声明に沿って適切に対応するとした上で、為替介入は選択肢として)「当然考えられる」 ドル円、やや円高に振れる。
11/20 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「労働市場を支えるために利下げを行えば、高止まりしているインフレの時期を長引かせるリスクがあり、金融市場でのリスクテークを助長する恐れもある」、「次に景気の減速局面が訪れた際には、本来よりも深刻になり、経済への影響がさらに大きくなる恐れがある」 株価は下落し、ドル円は買われる。
11/20 グールズビー・シカゴ連銀総裁 (インフレについて)、「足踏み状態にあると見受けられ、むしろ悪化の兆しを見せているようだ。だから少し不安を感じている」、「米経済はかなり堅調だが、いずれは『金利を大きく引き下げることができる』状況に戻るだろうと感じている。ただ当面は、利下げを前倒しで進めすぎ、『一時的な現象でインフレ率はまた低下するだろう』との見方に頼るのは少し不安だ」 株価は下落し、ドル円は買われる。
11/20 ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 「自分がFRB議長であれば、今すぐに利下げするだろう。データがそのようにすべきだと示していると考えられるためだ」 --------
11/17 ジェファーソン・FRB副議長 「ここ数カ月で経済のリスクバランスが変化したとみている。具体的にはインフレの上振れリスクがやや低下する一方、雇用の下振れリスクが高まっている」 --------
11/17 ウォラー・FRB理事 「基調的なインフレ率がFOMCの目標に近く、労働市場の弱さを示す証拠がある中、12月の会合で政策金利を25ベーシスポイント引き下げることを支持する」、「私の関心は労働市場にある。数カ月にわたる軟化を踏まえると、今週発表される9月の雇用統計や今後数週間に明らかになるデータが、この見方を変える可能性は低い」 --------
11/14 シュミッド・カンザスシティー連銀総裁 「追加利下げが労働市場の亀裂を修復する効果は限定的だろう。こうした緊張は、テクノロジーや移民政策の構造的変化に起因する可能性が高い」、「しかしながら、2%の物価目標へのコミットメントが一段と疑問視される中で利下げすれば、インフレに長期的な影響を与える可能性がある」 利下げ観測が後退し、ドル円は153円台半ばから154円台半ばまで上昇。
11/14 ローガン・ダラス連銀総裁 「インフレ率が想定を上回るペースで鈍化している、あるいは労働市場がこれまでの緩やかな減速以上の冷え込みを見せているという確かな証拠が得られない限り、追加利下げを支持するのは難しいと思う」 利下げ観測が後退し、ドル円は153円台半ばから154円台半ばまで上昇。
11/12 コリンズ・ボストン連銀総裁 この極めて不確実な環境下では、インフレと雇用のリスクを均衡させるため、しばらくの間は政策金利を現行水準に維持するのが適切となる公算が大きい」 --------
11/13 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「総合的に判断すると、インフレ率をFRB目標に向かって引き下げる圧力を維持するため、幾分景気抑制的な姿勢を続ける必要がある」、「私は労働市場を懸念している。低中所得層や時給で働く人たちと話すと、彼らが本当に苦しんでいることが分かる」、「根強い高インフレが現在あり、最終的にこの状態は今後10年間の大半において続くだろう。経済状況が変化しない限り、これ以上の利下げを支持することはない」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「金融政策が過度に緩和的にならずに追加利下げを行う余地は限られているため、慎重に対応を進める必要がある」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「公表されたデータはおおむね同じ傾向を示しており、12月会合についてはデータ次第では利下げを主張することも、据え置きを支持することもあり得る。現時点では見極めが必要だ」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 デーリー・SF連銀総裁 「『利下げはしない』と断言するのも、『利下げする』と断言するのも、どちらも時期尚早だ。政策の方向性は中立的に見える」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/6 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ面で問題が生じていても、それを確認できるまでにはかなり時間がかかるだろう」、「だからこそ、私は一層の不安を感じている」 --------
11/6 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「高いインフレを引き続き懸念しており、政策はこれに対抗する方向で運営されるべきだ」、「われわれの責務は目標未達であり、その規模と長さ、リスクを比較すると、私にとってはインフレの方がより差し迫った懸念事項だ」とし、「インフレを適切なタイミングで2%に戻すには、政策金利に関してやや景気抑制的なスタンスを維持することが必要だ」 --------
11/4 デーリー・SF連銀総裁 「今後入ってくる情報を慎重に見極め、予断を持たずに判断する。リスクのバランスを取りながら、経済がソフトランディングを実現できるようにすることを意味する」 --------
11/4 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「私はインフレの方を心配している。4年半にわたって目標を上回って推移しており、好ましくない方向に進んでいる12月会合でどうするかは、まだ決めていない。インフレ鈍化に合わせて金利を引き下げていくのが、恐らく最も慎重な対応だろう」 --------
11/4 クック・FRB理事 「今後の政策はあらかじめ決められた道筋をたどるわけではない。われわれは現在、2つの使命の双方でリスクが高まっている局面にある」、「雇用に対する下振れリスクの方が、インフレの上振れリスクよりも大きいと考えている」 --------
11/4 ミラン・FRB理事 「FRBは過度に景気抑制的であり、中立水準が現行政策よりかなり低いところにある。FOMCの一部メンバーに比べてインフレに関し楽観的である自身の見通しを踏まえると、金融政策を景気抑制的に維持する理由を見いだせない」、「しばらく隠れていた信用問題が突如として表面化した。一見すると相関関係のないような問題が続けて起きている。これは金融政策スタンスについて何かを示唆している」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和