今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米9、10月の求人件数いずれも760万件前後」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は続伸。米求人件数が予想を上回ったことで、利下げペースが緩やかになるとの観測が浮上。米金利も上昇したことで156円96銭までドル高が進む。
  • ユーロドルは前日と同水準で小動き。ユーロ円は新高値を付け、182円64銭近辺まで上昇。
  • 株式市場は高安まちまち。ナスダックは30ポイント上昇したが、他の2指数は小幅安。
  • 債券は続落。長期金利は4.18%台に上昇。
  • 金は反発し、原油は続落。
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9月雇用動態調査(JOLTS)求人件数 → 765.8万件
10月雇用動態調査(JOLTS)求人件数 → 767.0万件
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ドル/円 156.24 〜 156.96
ユーロ/ドル 1.1616 〜 1.1641
ユーロ/円 181.88 〜 182.64
NYダウ −179.03 → 47,560.29ドル
GOLD +18.50 → 4,236.20ドル
WTI −0.63 → 58.25ドル
米10年国債 +0.020 → 4.184%

本日の注目イベント

  • 中 中国11月消費者物価指数
  • 中 中国11月生産者物価指数
  • 欧 ラガルドECB総裁、フィナンシャル・タイムズ(FT)のイベントで講演
  • 英 英11月消費者物価指数
  • 米 7−9月労働コスト指数
  • 米 11月財政収支
  • 米 FOMC 政策金利発表
  • 米 パウエル議長記者会見

本日のコメント

昨日の東京時間に156円台を回復したドル円は、NYでは156円96銭前後まで続伸し、約2週間ぶりのドル高水準を付けました。米金利が上昇しましたが、日銀の利上げがほぼ確実視される中でも、円売りの流れは変わっていないようです。

日銀の植田総裁は、英紙フィナンシャルタイムズ(FT)が8日夜に収録し9日に配信したインタビューで、「持続的な2%のインフレに近づいている」と発言。「私はそう考えていると言える」と述べ、日銀が物価目標の達成に近づきつつあるとの認識を示しました。来週の金融政策決定会合で利上げに踏み切るとの観測が一段と強まった格好です。また、「持続的に2%のインフレを達成するまで、日銀は緩和の度合いを緩やかに調整し続ける」と述べ、「政策金利が自然利子率(中立金利)の水準に戻るまで続け、その水準がどこであるにしてもだ」とも述べていました。市場はすでに日銀が政策金利を0.75%に引き上げることを織り込んでおり、実現すれば1995年以来の高水準となります。通常、為替相場の水準には言及しない日本の首相ですが、昨日の衆院予算委員会で、立憲民主党の本庄氏が「高市政権の積極財政が長期金利の上昇を招き、円安の要因になっている」との質問に対し高市首相は、「投機的な動向も含めて、過度な変動や無秩序な動きについては必要に応じて適切な対応をとっていく」と答え、さらに「一国の経済財政運営を担う者として、常に注視している」と続けていました。仮にさらに円安が進み市場介入が必要となった場合、その判断は財務省(財務官)ですが、事後報告として首相には伝えられます。首相が為替に言及したことで、「介入が近い」とは考えられませんが、円安が進んでいるとの認識が共有されていることは事実で、やはり注意は必要です。

その存在が日増しに目立って来た米国家経済会議(NEC)のハセット委員長は、FRBの政策金利には大幅な引き下げ余地があるとの認識を示しました。ブルームバーグの報道によれば、ハセット氏はトランプ大統領が進める次期FRB議長人事で最有力候補とされており、9日、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)主催のCEOカウンシル・サミットで、FRB議長に就任した場合、大統領が求める「大幅利下げ」を推進するかどうか問われました。ハセット氏は「データがそれを示しているのであれば、例えば今なら、そうした利下げには十分な余地があると思う」と答えています。また、「それは25ベーシスポイントを超える引き下げを意味するのか」との質問には、「その通りだ」と述べています。トランプ氏自身も、9日に公開されたポリティコとのインタビューで、「借り入れコストの迅速な引き下げが、自らが指名するFRB議長の試金石になるのか」と問われ、「イエス」と答えています。一方で、ハセット氏が議長に就任し、トランプ氏が主張する大幅な利下げに対する懸念の声が、米国債を扱う業界から挙がっています。

トランプ大統領はロシアがウクライナとの戦争では軍事的優位にあると主張し、欧州は対話ばかり重ねているが成果に乏しいと「こき下ろして」いました。政治メディアのポリティコが9日に公表した広範囲にわたるインタビューで、トランプ氏は、「ロシアが優勢で、戦争開始当初から常にそうだった。この意味で、ロシアははるかに大きく、強い。ウクライナの国民と軍には、その勇敢さと戦いぶりに大きな敬意を表する。しかし、一般的にはある時点で規模が物を言う。そして今回はその規模が圧倒的だ」と語ったと報じられています。その上で、「自分が大統領になるかなり前から、ウクライナは領土を失っていた。海岸線の全体、海沿いの大きな地域を失った。多くの土地、しかも非常に価値のある土地を失った。これでは、勝利とは到底言えないだろう」と、続けています。米国はここ数週間、ロシアとウクライナの間での停戦成立に向けた取り組みを強化してきましたが、ウクライナのゼレンスキー大統領は今週初め、米国とは領土に関して意見の隔たりがあると述べ、米国による安全の保証についても議論を詰めていく必要があると語っていました。これについてもトランプ氏は、「ゼレンスキー氏は、そろそろ本当に状況を受け入れ始める必要がある。負けている時というのは、そういうものだ。ゼレンスキー氏は負けている」と主張しています。さらにウクライナを支援する欧州については、ロシアとウクライナの和平実現に十分な役割を果たしていないとして、トランプ氏は複数の角度から欧州に対する批判を展開しています。「欧州は話すばかりで、成果を生めていない。これはウクライナのことだ。欧州は口だけで、結果を出せていない。だから戦争が延々と続いている」と述べています。一方ドイツのメルツ首相は9日、先週公表された米国の新たな安保戦略の複数の要素は欧州にとって受け入れられないと明言し、トランプ氏に孤立化の回避を呼び掛けています。メルツ氏は、「米国の新戦略は、安保政策で欧州、そしてドイツが米国からはるかにもっと自立することが必要だという自分の考えを裏付けている」と論じ、「『アメリカ・ファースト(米国第一)』という理念はもっともだが、『アメリカ・アローン(米国の孤立)』は米国の利益になり得ない」とし、「世界ではパートナーも必要で、欧州はそのパートナーになり得る。欧州全体が難しいなら、せめてドイツをパートナーに選んでほしい。自分はその関係を築こうとしている」と語っていました。

本日はFOMCと政策金利発表があります。0.25ポイントの利下げは間違いないと思われ、焦点は来年以降の政策スタンスについてパウエル議長からヒントが得られるのかどうかです。本日のドル円は155円50銭〜158円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
12/9 ハセット・NEC委員長 (FRB議長に就任した場合、大統領が求める「大幅利下げ」を推進するかどうか問われ)、「データがそれを示しているのであれば、例えば今なら、そうした利下げには十分な余地があると思う」、(それは25ベーシスポイントを超える引き下げを意味するのかとの質問に)、「その通りだ」 --------
12/1 植田・日銀総裁 「内外経済・物価情勢や金融資本市場の動向を、さまざまなデータや情報を基に点検・議論し、利上げの是非について適切に判断したい」、(米国経済に関する不確実性が)「数カ月前よりかなり低下した」、「遅すぎることもなく早すぎることもなく、緩和度合いを適切に調整していくことは、日本経済を息の長い成長軌道に乗せるために必要だ」、「政府と日本銀行の取り組みを最終的に成功させることにつながる」、「利上げは緩和的な金融環境の中での調整だ。景気にブレーキをかけるものではなく、安定した経済・物価の実現に向けて、アクセルをうまく緩めていくプロセスだ」 ドル円は156円前後からNYでは154円67銭まで下落。日経平均株価は一時1000円を超える下落。長期金利はおよそ17年ぶりに1.875%まで上昇。
11/21 片山財務大臣 「足元の動きは一方的で急激であると憂慮している」(日米財務相共同声明に沿って適切に対応するとした上で、為替介入は選択肢として)「当然考えられる」 ドル円、やや円高に振れる。
11/20 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「労働市場を支えるために利下げを行えば、高止まりしているインフレの時期を長引かせるリスクがあり、金融市場でのリスクテークを助長する恐れもある」、「次に景気の減速局面が訪れた際には、本来よりも深刻になり、経済への影響がさらに大きくなる恐れがある」 株価は下落し、ドル円は買われる。
11/20 グールズビー・シカゴ連銀総裁 (インフレについて)、「足踏み状態にあると見受けられ、むしろ悪化の兆しを見せているようだ。だから少し不安を感じている」、「米経済はかなり堅調だが、いずれは『金利を大きく引き下げることができる』状況に戻るだろうと感じている。ただ当面は、利下げを前倒しで進めすぎ、『一時的な現象でインフレ率はまた低下するだろう』との見方に頼るのは少し不安だ」 株価は下落し、ドル円は買われる。
11/20 ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 「自分がFRB議長であれば、今すぐに利下げするだろう。データがそのようにすべきだと示していると考えられるためだ」 --------
11/17 ジェファーソン・FRB副議長 「ここ数カ月で経済のリスクバランスが変化したとみている。具体的にはインフレの上振れリスクがやや低下する一方、雇用の下振れリスクが高まっている」 --------
11/17 ウォラー・FRB理事 「基調的なインフレ率がFOMCの目標に近く、労働市場の弱さを示す証拠がある中、12月の会合で政策金利を25ベーシスポイント引き下げることを支持する」、「私の関心は労働市場にある。数カ月にわたる軟化を踏まえると、今週発表される9月の雇用統計や今後数週間に明らかになるデータが、この見方を変える可能性は低い」 --------
11/14 シュミッド・カンザスシティー連銀総裁 「追加利下げが労働市場の亀裂を修復する効果は限定的だろう。こうした緊張は、テクノロジーや移民政策の構造的変化に起因する可能性が高い」、「しかしながら、2%の物価目標へのコミットメントが一段と疑問視される中で利下げすれば、インフレに長期的な影響を与える可能性がある」 利下げ観測が後退し、ドル円は153円台半ばから154円台半ばまで上昇。
11/14 ローガン・ダラス連銀総裁 「インフレ率が想定を上回るペースで鈍化している、あるいは労働市場がこれまでの緩やかな減速以上の冷え込みを見せているという確かな証拠が得られない限り、追加利下げを支持するのは難しいと思う」 利下げ観測が後退し、ドル円は153円台半ばから154円台半ばまで上昇。
11/12 コリンズ・ボストン連銀総裁 この極めて不確実な環境下では、インフレと雇用のリスクを均衡させるため、しばらくの間は政策金利を現行水準に維持するのが適切となる公算が大きい」 --------
11/13 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「総合的に判断すると、インフレ率をFRB目標に向かって引き下げる圧力を維持するため、幾分景気抑制的な姿勢を続ける必要がある」、「私は労働市場を懸念している。低中所得層や時給で働く人たちと話すと、彼らが本当に苦しんでいることが分かる」、「根強い高インフレが現在あり、最終的にこの状態は今後10年間の大半において続くだろう。経済状況が変化しない限り、これ以上の利下げを支持することはない」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「金融政策が過度に緩和的にならずに追加利下げを行う余地は限られているため、慎重に対応を進める必要がある」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「公表されたデータはおおむね同じ傾向を示しており、12月会合についてはデータ次第では利下げを主張することも、据え置きを支持することもあり得る。現時点では見極めが必要だ」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 デーリー・SF連銀総裁 「『利下げはしない』と断言するのも、『利下げする』と断言するのも、どちらも時期尚早だ。政策の方向性は中立的に見える」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/6 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ面で問題が生じていても、それを確認できるまでにはかなり時間がかかるだろう」、「だからこそ、私は一層の不安を感じている」 --------
11/6 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「高いインフレを引き続き懸念しており、政策はこれに対抗する方向で運営されるべきだ」、「われわれの責務は目標未達であり、その規模と長さ、リスクを比較すると、私にとってはインフレの方がより差し迫った懸念事項だ」とし、「インフレを適切なタイミングで2%に戻すには、政策金利に関してやや景気抑制的なスタンスを維持することが必要だ」 --------
11/4 デーリー・SF連銀総裁 「今後入ってくる情報を慎重に見極め、予断を持たずに判断する。リスクのバランスを取りながら、経済がソフトランディングを実現できるようにすることを意味する」 --------
11/4 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「私はインフレの方を心配している。4年半にわたって目標を上回って推移しており、好ましくない方向に進んでいる12月会合でどうするかは、まだ決めていない。インフレ鈍化に合わせて金利を引き下げていくのが、恐らく最も慎重な対応だろう」 --------
11/4 クック・FRB理事 「今後の政策はあらかじめ決められた道筋をたどるわけではない。われわれは現在、2つの使命の双方でリスクが高まっている局面にある」、「雇用に対する下振れリスクの方が、インフレの上振れリスクよりも大きいと考えている」 --------
11/4 ミラン・FRB理事 「FRBは過度に景気抑制的であり、中立水準が現行政策よりかなり低いところにある。FOMCの一部メンバーに比べてインフレに関し楽観的である自身の見通しを踏まえると、金融政策を景気抑制的に維持する理由を見いだせない」、「しばらく隠れていた信用問題が突如として表面化した。一見すると相関関係のないような問題が続けて起きている。これは金融政策スタンスについて何かを示唆している」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和