今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「FOMC、3会合連続の利下げを決定」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • FOMCで利下げが決められたことで米金利が低下。ドル円は155円80銭まで売られる。
  • ドル安が進み、ユーロドルは1.17まで上昇。
  • 株式市場では利下げ決定を受け3指数が大幅に上昇。S&P500は46ポイント上昇し最高値に迫る。
  • 債券も買われ、長期金利は4.15%台に低下。
  • 金は反落し、原油は小幅高。
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7−9月労働コスト指数 → 0.8%
11月財政収支 → −173.3b
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ドル/円 155.80 〜 156.72
ユーロ/ドル 1.1628 〜 1.1700
ユーロ/円 182.00 〜 182.55
NYダウ +497.46 → 48,057.75ドル
GOLD −11.50 → 4,224.70ドル
WTI +0.21 → 58.46ドル
米10年国債 −0.037 → 4.151%

本日の注目イベント

  • 豪 豪11月雇用統計
  • 欧 BOE総裁、フィナンシャル・タイムズ(FT)のイベントで講演
  • 米 11月生産者物価指数
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 9月貿易収支

本日のコメント

市場予想通り、FOMC会合では政策金利を0.25ポイント引き下げ、FF金利の誘導目標レンジは3.5−3.75%となりました。これで利下げは3会合連続です。また2026年については、利下げ1回との見通しを維持しました。FOMCでは賛成9、反対3で利下げを決定しています。FOMC会合で3人の反対票が出たのは2019年以来のことで、事前予想通り参加者の見方は分かれ、異論が出る格好となりました。シカゴ連銀のグールズビー総裁とカンザスシティー連銀のシュミッド総裁が、金利据え置きを主張。一方でミラン理事はより大幅な0.5ポイントの利下げを主張していましたが、これも想定通りでした。

声明文では、「入手可能な複数の指標は、経済活動が緩やかなペースで拡大していることを示唆する。雇用の伸びは今年鈍化し、失業率は9月末までやや上昇した。より最近の指標もこうした動きと整合的だ。インフレは今年の早い時期以降に上昇しており、幾分高止まりしている」とし、「委員会はより長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指す。景気見通しに関する不確実性は依然として高い。委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っており、雇用の下振れリスクはここ数カ月に高まったと判断している」と述べていました。

パウエル議長は会合後の記者会見で、雇用への悪影響を抑えるための措置は十分講じた一方、金利水準は物価圧力を抑制し続けるだけの十分な高さを維持しているとの考えを示唆しました。「こうした政策スタンスの一段の正常化は、関税の影響が一巡した後、労働市場の安定化に寄与するとともに、インフレ率が2%に向けて再び低下基調をたどることを可能にするだろう」と述べています。ただ、次の政策変更が利下げになるのは既定路線なのかとの質問に対して、パウエル氏は明言を避けつつ、「利上げを基本シナリオと見なしている当局者はいない」とも述べています。議長の発言では、インフレに対する警戒感をこれまでより「やや緩めた」印象でしたが、政策金利決定の過程での反対票の存在と、金利見通しは、労働市場の弱さと根強いインフレのどちらが、米経済にとってより大きなリスクなのかを巡る、当局者間にある見解の相違を浮き彫りにしていました。

この決定を受け、トランプ大統領が再び吠えています。トランプ氏はホワイトハウスで、25ベーシスポイントの利下げ幅は「かなり小さい数字で、少なくとも2倍には出来たはずだ」と述べ、パウエル議長を「堅物」、「役立たず」と批判していました。さらに金融当局について、「国がうまくいっているときは、その成長を止めたくないという考え方を持たなければならない」とし、「今、彼らがやっているのはそれだ。彼らは成長の息の根を止めている」と語っています。トランプ氏は政権2期目でFRBへの影響力を強めようとし、パウエル議長の下で金融当局が積極的に政策金利を引き下げていないとしてたびたび不満を表明。またトランプ氏は、来年5月に任期満了となるパウエル議長の後任には積極的な利下げを目指す人物を起用する意向を示しています。その意味では、0.5ポイントの引き下げを主張したミラン氏は、まさに「適任」のようです。FOMCの政策決定を受けて市場では、債券が買われ金利が低下したことで、ドル円は一時155円80銭前後まで売られました。NY株式市場では主要3指数が大きく買われ、S&P500は最高値に迫っています。

やや気になるニュースが一つ。9日に投開票された米フロリダ州マイアミ市長選で、民主党候補アイリーン・ヒギンズ氏の当選が確実になりました。民主党の市長誕生は約30年ぶりのことです。フロリダ州に私邸「マールアラーゴ」を構えるトランプ大統領にとって、いわば「お膝もと」での敗北となります。AP通信によると、全ての開票所の開票が終了した時点で、ヒギンズ氏は共和党のエミリオ・ゴンザレス候補を18ポイント以上リード。今回の市長選は全国的な注目を集めたようで、大物政治家も相次いで関与していました。民主党はニュージャージー州やバージニア州の知事選など、最近相次ぎ勝利を収めており、今回のヒギンズ氏の当選で勢いが増した格好です。2026年の中間選挙を控え、共和党にとっては警戒シグナルだと広く受け止められています。人口48万人程度のマイアミ市ですが、民主党にとっては共和党の牙城である「赤い州」で勝利したことで、来年に向けてさらなる追い風となりそうです。また、トランプ関税への逆風は依然として強いようです。

本日のドル円は155円〜156円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
12/10 パウエル・FRB議長 「こうした政策スタンスの一段の正常化は、関税の影響が一巡した後、労働市場の安定化に寄与するとともに、インフレ率が2%に向けて再び低下基調をたどることを可能にするだろう」、(次の政策変更が利下げになるのは既定路線なのかとの質問に対して)、「利上げを基本シナリオと見なしている当局者はいない」 政策金利を0.25ポイント引き下げことで、ドル円は156円台半ばから155円80銭まで下落。
12/10 FOMC声明文 「入手可能な複数の指標は、経済活動が緩やかなペースで拡大していることを示唆する。雇用の伸びは今年鈍化し、失業率は9月末までやや上昇した。より最近の指標もこうした動きと整合的だ。インフレは今年の早い時期以降に上昇しており、幾分高止まりしている」、「委員会はより長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指す。景気見通しに関する不確実性は依然として高い。委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っており、雇用の下振れリスクはここ数カ月に高まったと判断している」 --------
12/9 ハセット・NEC委員長 (FRB議長に就任した場合、大統領が求める「大幅利下げ」を推進するかどうか問われ)、「データがそれを示しているのであれば、例えば今なら、そうした利下げには十分な余地があると思う」、(それは25ベーシスポイントを超える引き下げを意味するのかとの質問に)、「その通りだ」 --------
12/1 植田・日銀総裁 「内外経済・物価情勢や金融資本市場の動向を、さまざまなデータや情報を基に点検・議論し、利上げの是非について適切に判断したい」、(米国経済に関する不確実性が)「数カ月前よりかなり低下した」、「遅すぎることもなく早すぎることもなく、緩和度合いを適切に調整していくことは、日本経済を息の長い成長軌道に乗せるために必要だ」、「政府と日本銀行の取り組みを最終的に成功させることにつながる」、「利上げは緩和的な金融環境の中での調整だ。景気にブレーキをかけるものではなく、安定した経済・物価の実現に向けて、アクセルをうまく緩めていくプロセスだ」 ドル円は156円前後からNYでは154円67銭まで下落。日経平均株価は一時1000円を超える下落。長期金利はおよそ17年ぶりに1.875%まで上昇。
11/21 片山財務大臣 「足元の動きは一方的で急激であると憂慮している」(日米財務相共同声明に沿って適切に対応するとした上で、為替介入は選択肢として)「当然考えられる」 ドル円、やや円高に振れる。
11/20 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「労働市場を支えるために利下げを行えば、高止まりしているインフレの時期を長引かせるリスクがあり、金融市場でのリスクテークを助長する恐れもある」、「次に景気の減速局面が訪れた際には、本来よりも深刻になり、経済への影響がさらに大きくなる恐れがある」 株価は下落し、ドル円は買われる。
11/20 グールズビー・シカゴ連銀総裁 (インフレについて)、「足踏み状態にあると見受けられ、むしろ悪化の兆しを見せているようだ。だから少し不安を感じている」、「米経済はかなり堅調だが、いずれは『金利を大きく引き下げることができる』状況に戻るだろうと感じている。ただ当面は、利下げを前倒しで進めすぎ、『一時的な現象でインフレ率はまた低下するだろう』との見方に頼るのは少し不安だ」 株価は下落し、ドル円は買われる。
11/20 ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 「自分がFRB議長であれば、今すぐに利下げするだろう。データがそのようにすべきだと示していると考えられるためだ」 --------
11/17 ジェファーソン・FRB副議長 「ここ数カ月で経済のリスクバランスが変化したとみている。具体的にはインフレの上振れリスクがやや低下する一方、雇用の下振れリスクが高まっている」 --------
11/17 ウォラー・FRB理事 「基調的なインフレ率がFOMCの目標に近く、労働市場の弱さを示す証拠がある中、12月の会合で政策金利を25ベーシスポイント引き下げることを支持する」、「私の関心は労働市場にある。数カ月にわたる軟化を踏まえると、今週発表される9月の雇用統計や今後数週間に明らかになるデータが、この見方を変える可能性は低い」 --------
11/14 シュミッド・カンザスシティー連銀総裁 「追加利下げが労働市場の亀裂を修復する効果は限定的だろう。こうした緊張は、テクノロジーや移民政策の構造的変化に起因する可能性が高い」、「しかしながら、2%の物価目標へのコミットメントが一段と疑問視される中で利下げすれば、インフレに長期的な影響を与える可能性がある」 利下げ観測が後退し、ドル円は153円台半ばから154円台半ばまで上昇。
11/14 ローガン・ダラス連銀総裁 「インフレ率が想定を上回るペースで鈍化している、あるいは労働市場がこれまでの緩やかな減速以上の冷え込みを見せているという確かな証拠が得られない限り、追加利下げを支持するのは難しいと思う」 利下げ観測が後退し、ドル円は153円台半ばから154円台半ばまで上昇。
11/12 コリンズ・ボストン連銀総裁 この極めて不確実な環境下では、インフレと雇用のリスクを均衡させるため、しばらくの間は政策金利を現行水準に維持するのが適切となる公算が大きい」 --------
11/13 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「総合的に判断すると、インフレ率をFRB目標に向かって引き下げる圧力を維持するため、幾分景気抑制的な姿勢を続ける必要がある」、「私は労働市場を懸念している。低中所得層や時給で働く人たちと話すと、彼らが本当に苦しんでいることが分かる」、「根強い高インフレが現在あり、最終的にこの状態は今後10年間の大半において続くだろう。経済状況が変化しない限り、これ以上の利下げを支持することはない」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「金融政策が過度に緩和的にならずに追加利下げを行う余地は限られているため、慎重に対応を進める必要がある」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「公表されたデータはおおむね同じ傾向を示しており、12月会合についてはデータ次第では利下げを主張することも、据え置きを支持することもあり得る。現時点では見極めが必要だ」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 デーリー・SF連銀総裁 「『利下げはしない』と断言するのも、『利下げする』と断言するのも、どちらも時期尚早だ。政策の方向性は中立的に見える」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/6 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ面で問題が生じていても、それを確認できるまでにはかなり時間がかかるだろう」、「だからこそ、私は一層の不安を感じている」 --------
11/6 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「高いインフレを引き続き懸念しており、政策はこれに対抗する方向で運営されるべきだ」、「われわれの責務は目標未達であり、その規模と長さ、リスクを比較すると、私にとってはインフレの方がより差し迫った懸念事項だ」とし、「インフレを適切なタイミングで2%に戻すには、政策金利に関してやや景気抑制的なスタンスを維持することが必要だ」 --------
11/4 デーリー・SF連銀総裁 「今後入ってくる情報を慎重に見極め、予断を持たずに判断する。リスクのバランスを取りながら、経済がソフトランディングを実現できるようにすることを意味する」 --------
11/4 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「私はインフレの方を心配している。4年半にわたって目標を上回って推移しており、好ましくない方向に進んでいる12月会合でどうするかは、まだ決めていない。インフレ鈍化に合わせて金利を引き下げていくのが、恐らく最も慎重な対応だろう」 --------
11/4 クック・FRB理事 「今後の政策はあらかじめ決められた道筋をたどるわけではない。われわれは現在、2つの使命の双方でリスクが高まっている局面にある」、「雇用に対する下振れリスクの方が、インフレの上振れリスクよりも大きいと考えている」 --------
11/4 ミラン・FRB理事 「FRBは過度に景気抑制的であり、中立水準が現行政策よりかなり低いところにある。FOMCの一部メンバーに比べてインフレに関し楽観的である自身の見通しを踏まえると、金融政策を景気抑制的に維持する理由を見いだせない」、「しばらく隠れていた信用問題が突如として表面化した。一見すると相関関係のないような問題が続けて起きている。これは金融政策スタンスについて何かを示唆している」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和