今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円年内最後の重要イベントを控え小動き」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は小動きの中、米金利が上昇したことを受け156円10銭まで買われたが勢いはなく、155円台後半で越週。
  • ユーロドルは1.17台で堅調に推移。対円では183円15銭前後まで買われ、連日で最高値を更新。
  • 株式市場では3指数が揃って下落。特にハイテク株が大きく売られ、ナスダックは398ポイント安。
  • 債券は続落。長期金利は4.18%台に上昇。
  • 金は続伸し、原油は続落。
ドル/円 155.68 〜 156.10
ユーロ/ドル 1.1724 〜 1.1750
ユーロ/円 182.68 〜 183.15
NYダウ −245.96 → 48,458.05ドル
GOLD +15.30 → 4,328.30ドル
WTI −0.16 → 57.45ドル
米10年国債 +0.029 → 4.184%

本日の注目イベント

  • 日 10−12月期日銀短観
  • 中 中国11月小売売上高
  • 中 中国11月鉱工業生産
  • 欧 ユーロ圏10月鉱工業生産
  • 米 12月NY連銀製造業景況指数
  • 米 12月NAHB住宅市場指数
  • 米 ミラン・FRB理事、対談に参加
  • 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演
  • 加 カナダ11月住宅着工件数
  • 加 カナダ11月消費者物価指数

本日のコメント

ドル円はレンジ内で推移していますが、先週のFOMCで25bp利下げを決め、パウエル議長のハト派寄りの発言もあったことから、ややドルの上値の重い展開を予想していました。しかしそれでも、先週末のNYでは米金利が上昇したことで156円台に乗せる場面もありました。今週は、日銀の金融政策会合に加え、米国では消費者物価指数(CPI)や雇用統計が発表され、予想外の動きがあることも予想されます。もっとも、今週大きな動きがなければ、来週は海外市場がほぼクリスマス・モードに入ることから、足元のレンジ(154円台半ば〜157円程度)内で越年する可能性が大きくなります。

早ければ年内にもその名前が公表される可能性のある次期FRB議長。筆者はケビン・ハセット米国家経済会議(NEC)委員が大本命だと考えていますが、トランプ大統領は12日、同氏とケビン・ウォーシュ元FRB理事の2人が最有力だと述べていました。また、次期FRB議長に金利政策について自身と協議するよう求める意向も示しています。トランプ氏は米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、「2人のケビンはいずれも優秀な人材だと思う。このほかにも優秀な人材が数人いると考えている」と話していました。ブルームバーグは、「ハセット氏がこれまで次期議長レースをリードしていると多くが考えていたが、ここに来てウォーシュ氏が追い上げてきたことが示唆された」と報じています。そのハセット氏が、14日のCBSの番組で、FRB議長に自身が選ばれた場合は、トランプ大統領の政策的見解を考慮するだろうと述べると同時に、政策金利に関するFRBの判断においては独立性が保たれると見解を示していました。ハセット氏は、「トランプ大統領には、われわれが取るべき対応に関して非常に強く、しっかりとした考えがある」と発言。「しかし最終的には、FRBの仕事は独立性を維持した上で、理事会やFOMCのメンバーと協力し、金利水準について合意形成を図ることだ」と述べていました。筆者は、依然としてハセット氏が有利と予想していますが、二人の候補者の違いはトランプ氏に対する忠誠心という点で、「ハセット氏の方がより強い」と、これまでの様々な発言から感じています。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアの将来的な侵攻を防ぐ手段として、これまでの方針とは異なり、北大西洋条約機構(NATO)加盟という長期目標に代わる形で、米欧による安全保障を受け入れる可能性を示唆しました。ウクライナ政府は長年、将来の安全確保のためとしてNATO加盟を求めてきました。しかしながら、米国や欧州の一部の国が慎重姿勢を示しているほか、米国が戦争終結に向けた取り組みを進めていることを受け、発言を変えてきています。ゼレンスキー氏は、「米国との安全保障に関する合意がNATO5条のように機能し得る」との認識を記者団に表明。「欧州やカナダ、日本などによる保証もロシアによる今後の侵略を防ぐ可能性がある」と述べています。米国からの和平案を受け入れるよう求められているゼレンスキー氏は、拒否すれば米国という「強力な後ろ盾」を失うこととなり、一方ロシアが要求しているドネツク州など一部領土の割譲は到底受け入れることが出来ないことを踏まえての方針変更のようです。ゼレンスキー氏は「これは既にわれわれ側からの譲歩だ」と語っていました。領土の一部割譲については「国民投票」を行い、国民の意向を尊重すると述べていましたが、寒さが日増しに厳しくなる一方、和平案を巡りゼレンスキー氏の苦悩も日増しに強まっています。

本日のドル円は、重要イベントを控え小動きかと思いますが、日経平均株価の下落を手掛かりに、ドルの上値は重くなると予想します。レンジは154円90銭〜156円30銭程度かと思います。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
12/10 パウエル・FRB議長 「こうした政策スタンスの一段の正常化は、関税の影響が一巡した後、労働市場の安定化に寄与するとともに、インフレ率が2%に向けて再び低下基調をたどることを可能にするだろう」、(次の政策変更が利下げになるのは既定路線なのかとの質問に対して)、「利上げを基本シナリオと見なしている当局者はいない」 政策金利を0.25ポイント引き下げことで、ドル円は156円台半ばから155円80銭まで下落。
12/10 FOMC声明文 「入手可能な複数の指標は、経済活動が緩やかなペースで拡大していることを示唆する。雇用の伸びは今年鈍化し、失業率は9月末までやや上昇した。より最近の指標もこうした動きと整合的だ。インフレは今年の早い時期以降に上昇しており、幾分高止まりしている」、「委員会はより長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指す。景気見通しに関する不確実性は依然として高い。委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っており、雇用の下振れリスクはここ数カ月に高まったと判断している」 --------
12/9 ハセット・NEC委員長 (FRB議長に就任した場合、大統領が求める「大幅利下げ」を推進するかどうか問われ)、「データがそれを示しているのであれば、例えば今なら、そうした利下げには十分な余地があると思う」、(それは25ベーシスポイントを超える引き下げを意味するのかとの質問に)、「その通りだ」 --------
12/1 植田・日銀総裁 「内外経済・物価情勢や金融資本市場の動向を、さまざまなデータや情報を基に点検・議論し、利上げの是非について適切に判断したい」、(米国経済に関する不確実性が)「数カ月前よりかなり低下した」、「遅すぎることもなく早すぎることもなく、緩和度合いを適切に調整していくことは、日本経済を息の長い成長軌道に乗せるために必要だ」、「政府と日本銀行の取り組みを最終的に成功させることにつながる」、「利上げは緩和的な金融環境の中での調整だ。景気にブレーキをかけるものではなく、安定した経済・物価の実現に向けて、アクセルをうまく緩めていくプロセスだ」 ドル円は156円前後からNYでは154円67銭まで下落。日経平均株価は一時1000円を超える下落。長期金利はおよそ17年ぶりに1.875%まで上昇。
11/21 片山財務大臣 「足元の動きは一方的で急激であると憂慮している」(日米財務相共同声明に沿って適切に対応するとした上で、為替介入は選択肢として)「当然考えられる」 ドル円、やや円高に振れる。
11/20 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「労働市場を支えるために利下げを行えば、高止まりしているインフレの時期を長引かせるリスクがあり、金融市場でのリスクテークを助長する恐れもある」、「次に景気の減速局面が訪れた際には、本来よりも深刻になり、経済への影響がさらに大きくなる恐れがある」 株価は下落し、ドル円は買われる。
11/20 グールズビー・シカゴ連銀総裁 (インフレについて)、「足踏み状態にあると見受けられ、むしろ悪化の兆しを見せているようだ。だから少し不安を感じている」、「米経済はかなり堅調だが、いずれは『金利を大きく引き下げることができる』状況に戻るだろうと感じている。ただ当面は、利下げを前倒しで進めすぎ、『一時的な現象でインフレ率はまた低下するだろう』との見方に頼るのは少し不安だ」 株価は下落し、ドル円は買われる。
11/20 ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 「自分がFRB議長であれば、今すぐに利下げするだろう。データがそのようにすべきだと示していると考えられるためだ」 --------
11/17 ジェファーソン・FRB副議長 「ここ数カ月で経済のリスクバランスが変化したとみている。具体的にはインフレの上振れリスクがやや低下する一方、雇用の下振れリスクが高まっている」 --------
11/17 ウォラー・FRB理事 「基調的なインフレ率がFOMCの目標に近く、労働市場の弱さを示す証拠がある中、12月の会合で政策金利を25ベーシスポイント引き下げることを支持する」、「私の関心は労働市場にある。数カ月にわたる軟化を踏まえると、今週発表される9月の雇用統計や今後数週間に明らかになるデータが、この見方を変える可能性は低い」 --------
11/14 シュミッド・カンザスシティー連銀総裁 「追加利下げが労働市場の亀裂を修復する効果は限定的だろう。こうした緊張は、テクノロジーや移民政策の構造的変化に起因する可能性が高い」、「しかしながら、2%の物価目標へのコミットメントが一段と疑問視される中で利下げすれば、インフレに長期的な影響を与える可能性がある」 利下げ観測が後退し、ドル円は153円台半ばから154円台半ばまで上昇。
11/14 ローガン・ダラス連銀総裁 「インフレ率が想定を上回るペースで鈍化している、あるいは労働市場がこれまでの緩やかな減速以上の冷え込みを見せているという確かな証拠が得られない限り、追加利下げを支持するのは難しいと思う」 利下げ観測が後退し、ドル円は153円台半ばから154円台半ばまで上昇。
11/12 コリンズ・ボストン連銀総裁 この極めて不確実な環境下では、インフレと雇用のリスクを均衡させるため、しばらくの間は政策金利を現行水準に維持するのが適切となる公算が大きい」 --------
11/13 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「総合的に判断すると、インフレ率をFRB目標に向かって引き下げる圧力を維持するため、幾分景気抑制的な姿勢を続ける必要がある」、「私は労働市場を懸念している。低中所得層や時給で働く人たちと話すと、彼らが本当に苦しんでいることが分かる」、「根強い高インフレが現在あり、最終的にこの状態は今後10年間の大半において続くだろう。経済状況が変化しない限り、これ以上の利下げを支持することはない」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「金融政策が過度に緩和的にならずに追加利下げを行う余地は限られているため、慎重に対応を進める必要がある」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「公表されたデータはおおむね同じ傾向を示しており、12月会合についてはデータ次第では利下げを主張することも、据え置きを支持することもあり得る。現時点では見極めが必要だ」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/13 デーリー・SF連銀総裁 「『利下げはしない』と断言するのも、『利下げする』と断言するのも、どちらも時期尚早だ。政策の方向性は中立的に見える」 株安・債券安が進み、米金利が上昇したことでドル円は154円台で底堅く推移。
11/6 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ面で問題が生じていても、それを確認できるまでにはかなり時間がかかるだろう」、「だからこそ、私は一層の不安を感じている」 --------
11/6 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「高いインフレを引き続き懸念しており、政策はこれに対抗する方向で運営されるべきだ」、「われわれの責務は目標未達であり、その規模と長さ、リスクを比較すると、私にとってはインフレの方がより差し迫った懸念事項だ」とし、「インフレを適切なタイミングで2%に戻すには、政策金利に関してやや景気抑制的なスタンスを維持することが必要だ」 --------
11/4 デーリー・SF連銀総裁 「今後入ってくる情報を慎重に見極め、予断を持たずに判断する。リスクのバランスを取りながら、経済がソフトランディングを実現できるようにすることを意味する」 --------
11/4 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「私はインフレの方を心配している。4年半にわたって目標を上回って推移しており、好ましくない方向に進んでいる12月会合でどうするかは、まだ決めていない。インフレ鈍化に合わせて金利を引き下げていくのが、恐らく最も慎重な対応だろう」 --------
11/4 クック・FRB理事 「今後の政策はあらかじめ決められた道筋をたどるわけではない。われわれは現在、2つの使命の双方でリスクが高まっている局面にある」、「雇用に対する下振れリスクの方が、インフレの上振れリスクよりも大きいと考えている」 --------
11/4 ミラン・FRB理事 「FRBは過度に景気抑制的であり、中立水準が現行政策よりかなり低いところにある。FOMCの一部メンバーに比べてインフレに関し楽観的である自身の見通しを踏まえると、金融政策を景気抑制的に維持する理由を見いだせない」、「しばらく隠れていた信用問題が突如として表面化した。一見すると相関関係のないような問題が続けて起きている。これは金融政策スタンスについて何かを示唆している」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和