FX 実践テクニカルチャート術【第3回】一目均衡表・新値足

このページの監修者
外為オンライン シニアアナリスト 佐藤 正和
概要
一目均衡表は時間を過去・未来にずらした三次元チャートで、「雲」や「遅行線」から相場の勢いと先行きを判断できる指標です。新値足は時間軸を排し、トレンド相場での売買判断に強いチャートです。
一目均衡表とは?時間軸を未来・過去へずらした「三次元チャート」の仕組み
一目均衡表とは、日本で考案された、「時間」の概念を軸に相場の均衡を捉える指標です。過去・現在・未来の為替レートバランスから相場のトレンドの方向性や転換点をひと目で判断できる三次元的な構造が特徴です。
一目均衡表は、株式評論家の細田悟一氏が一目山人というペンネームで戦前に発表したテクニカル指標です。外国人FXトレーダーにも「東洋の神秘」として注目され、今では「ローソク足チャート」とともに日本で生まれ、世界的に有名になった定番指標として知られています。
そんな一目均衡表の考え方を一言でまとめると、「為替レートの値動きは時間による影響を受けている」というものになります。チャートは、縦軸に為替レート、横軸に時間をとった2次元的なものです。しかし、横軸の時間は単純に前に前に進んでいくわけでなく、過去に起こった値動きの支配下にあり、現在の値動きは未来に大きな影響を与えます。
時間の流れには一種の周期性やリズムや起承転結があり、時間と為替変動の関係性を「日柄」という考え方で体系化したのが、一目均衡表なのです。
トレンドを多角的に捉える構成要素
一目均衡表は「転換線・基準線・雲・遅行線(遅行スパン)」で構成されています。
一目均衡表がほかのテクニカル指標とまったく違う部分は、為替レートやその平均値を未来や過去にずらして、「雲」や「遅行線」を描画し、売買判断に使用するところです。二次元のチャートに過去や未来という三次元的な奥行きを持たせている点は、世界で唯一無二、オンリーワンの指標といっても過言ではないでしょう(図1)。
図1一目均衡表の構成要素

- 転換線
- 過去9日間の「(高値+安値)÷2」
- 基準線
- 過去26日間の「(高値+安値)÷2」
- 雲
- 2つの線(「先行スパン1」と「先行スパン2」)に囲まれた領域
- 遅行線
(遅行スパン) - 現在のチャートを26日分過去にずらした線
- 先行スパン1
- 基準線と転換線の中間値を26日未来へずらした線
- 先行スパン2
- 52日間の基準線と転換線の中間値を26日未来へずらした線
まずは一目均衡表の仕組みを解説しましょう。
「転換線」と「基準線」の役割 移動平均線より相場の動きを素早く察知する
「転換線」と「基準線」は、過去一定期間(9日・26日)の高値と安値の中間値を結んだ線のことです。移動平均線よりもレート更新に敏感に反応するため、線の傾きや交差を見ることで、トレンドの発生をいち早く察知できます。
ほかのテクニカル指標同様に一目均衡表でも、「ある一定期間の高値と安値の中間値」という"平均値的なもの"に注目します。日足チャートであれば、以下の2つのテクニカル指標に注目します。
- 転換線
-
当日を含む過去9日間の高値Hと安値Lの中間値
=(H[9]+L[9])÷2
- 基準線
-
当日を含む過去26日間の高値Hと安値Lの中間値
=(H[26]+L[26])÷2
移動平均線のように各終値すべてを足して平均値を求めるのではなく、一定期間の高値と安値の中間値ですから、為替レートの高値・安値の更新がない場合、横ばいで推移することが多いのが、その特徴といえるでしょう。
逆にいうと、転換線や基準線が上がったり下がったり傾きが変わるのは、これまでの為替レートが高値や安値をブレイクした瞬間です(むろん、過去の高値や安値が期間からハズれることによる消極的な上下動もあります)。
そのため、転換線・基準線の傾きは、為替レートの勢いを端的に表わすものとして、移動平均線の上下動よりも強い売買シグナルになるのです。
転換線と基準線から売買シグナルを読み取る方法と判断基準
為替レートが転換線を上下に抜ける動きや、転換線と基準線が交差するポイントは、トレンドの初動を捉える強力な売買シグナルとなります。
図2はドル/円の日足チャートに一目均衡表の転換線、基準線だけを描画したものです。
図2転換線と基準線の売りシグナル発生事例

図2のチャート中央で発生している売りシグナルの根拠は、以下の通りです。
まず1では、為替レートが転換線を上から下に抜けているため、過去9日間の中間値を現在値が割り込んだことが分かります。現在値が転換線を下回ったら売りという判断基準に合っており、勝率の高い売りシグナルとなります。
また、チャート中央の2では基準線と転換線が右肩下がりになっているため、過去の安値を更新して下落の勢いが増していることが分かります。
このように基準線と転換線が大きく下落したポイントは、明確な売りシグナルとなります。他にも、転換線が基準線を下から上に抜くゴールデンクロス、 転換線が基準線を上から下に抜くデッドクロスなどにも注目します。
まとめると、以下が売買判断の重要なシグナルになります。
転換線と基準線による売買判断
- 転換線・基準線の傾きの変化
- 転換線・基準線の位置関係
- 転換線と現在値の位置関係
この3つに注目すると、為替レートの勢いを初動段階でかなり正確にとらえることができるはずです。
次に、一目均衡表の中でもっとも有名な「雲」について見てみましょう。
一目均衡表の「雲」はどう見る?上値・下値のメドを予測する活用術
支持帯・抵抗帯となる「雲」の仕組み
「雲」とは2本の先行スパンに挟まれた領域のことで、現在の値動きが将来の為替レートに及ぼす影響を、支持帯(サポート)や抵抗帯(レジスタンス)として視覚化したものです。
この「雲」こそ、過去や現在を未来にスライドさせて、その影響を見るという一目均衡表独自の考え方に基づくものです。日足チャートでは、
- 先行スパン1
- (当日の転換線+基準線)÷2を当日を含め26日先にスライドさせたもの
- 先行スパン2
- 過去52日間の高値と安値の平均値(H[52]+L[52])÷2を当日を含め26日先にスライドさせたもの
となり、先行スパン1と2で囲まれた部分が「雲」です。
ちなみに、なぜ26日先にずらすのかに関しては、一目均衡表の深遠な時間論が関係しています。一目山人は、相場は安値-高値-安値-高値のN字型など、さまざまな波動で動くことが多いと考え、どのような時間軸で、波動が生まれるのかを研究しました。その過程で、「9、17、26、33、42、68、72……」といった数字が自然の流れを体現した周期であることを発見。中でも「26」は一セットの上下動が起こりやすい「一節」と考えられ、重要視されています。
そのため、一目均衡表ではほかの指標のように、設定期間の数値を自分好みに変化させることはあまりおすすめしません。多くの投資家が9、26、52という期間設定を使っていることもあり、その数値のまま使うほうが的中率も上がりやすいように思えます。
「雲」が示しているものをあえて単純化すると、これまでの為替レート変動の中心ゾーンということになります。
過去の値動きの中心ゾーンである「雲」は、今後の為替レートの下落を阻止する支持帯や、上昇を阻む抵抗帯として働きます。
図3はさきほどの図2のドル/円日足チャートに雲を描画したものです。
図3先行スパンが作る「雲」の視覚的構造

- 1
下降トレンドでは雲の上限や下限が為替レートの上昇を阻む抵抗帯(レジスタンスゾーン)となっている。
反対に上昇トレンドでは雲が支持帯(サポート)になるケースが多い。 - 2
現在の為替レートと雲の位置関係から、もし上昇した場合の上値メドなどを判断する。
期間中、ドル/円の下降トレンドが続いていますが、1では雲の下限や上限がドル/円上昇を阻む頑強な抵抗帯として働いていることが分かります。
雲でトレンドの強さを見極めるには?厚みや位置関係による判断基準
為替レートが雲の上にあれば上昇トレンド、下にあれば下降トレンドと判断し、雲の厚みを見ることでそのトレンドの強固さを推し量ることができます。
雲に関する売買判断としては、以下の通りです。
雲による売買判断
- 為替レートが雲の上にあるときには支持帯、雲の下にあるときには抵抗帯として働く。
- 雲の厚みで抵抗帯・支持帯の強さ、または弱さを判断する。
- 為替レートの雲入りは、乱高下の前兆。為替レートの雲抜けはトレンド発生のシグナル。
なにより、今後の為替レートがどのように動くのかの道しるべ役として使えるのが「一目の雲」のすばらしいところでしょう。
非常に大ざっぱではありますが、雲は過去の投資家の平均的な売買為替レートを表わしていると考えることもできます。
為替レートが雲の上にあると過去の投資家の損益がプラス転換するので上昇に弾みがつき、雲入りすると損益が曖昧になるので乱高下が起こり、雲割れするとマイナスになるので下降に勢いがつく、といったイメージでとらえると分かりやすいかもしれません。
最後に、一目均衡表の中で私が絶大な信頼を置いている「遅行線」について解説しましょう。
なぜ「遅行線の日々線抜け」は高精度?モメンタムと同じ判定ロジック
「遅行線」とは?26日前の終値と比較する単純で高精度な指標
現在の為替レートを26日過去にずらして表示した線のことで、「今の為替レート」(日々線)と「26日前の為替レート」を直接比較して相場の勢い(モメンタム)を判断する仕組みです。
- 遅行線(遅行スパン)
- 現在の為替レートを26日前にさかのぼって描画したもの
「遅行線の日々線抜け」から判断する売買タイミング
遅行線が日々線を上抜けた場合は買い、下抜けた場合は売りとして、売買のタイミングを判断します。
売買判断としては、以下のようになります。
「遅行線」による売買判断
- 遅行線が現実のチャート(日々線)を上に突き抜けたら「買い」
- 遅行線が現実のチャート(日々線)を下に突き抜けたら「売り」
考え方は、「現在の為替レート-X日前の為替レート」で算出する「モメンタム」という指標とまったく同じです。図4はドル/円の一目均衡表に遅行線を付け加えたものです。あまりきれいなクロスではありませんが、〇の部分で遅行線が日々線を突き抜けた直後に、ドル/円が一段安している様子が分かります。
図4遅行線と日々線から読み取る売買シグナル

- 日々線実際の為替レートの値動きを表すローソク足チャートのこと。
三役好転の発生条件 遅行線・転換線・雲抜けが示す買いタイミング
一目均衡表では、「転換線の基準線上抜け」「為替レートの雲抜け」「遅行線の日々線上抜け」がそろった瞬間を「三役好転」=強い買いシグナルと見なしています(その反対は「三役逆転」)。3つのシグナルが絶好の売買タイミングで重なることは稀ですので、最初に起こりすやい「遅行線の日々線上抜け」と「転換線の基準線上抜け」「雲抜け」のいずれかが出揃った「二役好転」で早仕掛けする手もあり、でしょう。
図5三約好転の発生例

三役好転の条件
- 1転換線の基準線上抜け
- 2為替レートの雲抜け
- 3遅行線の日々線上抜け
三役好転の条件が揃うのは稀。最初に起こりすやい「遅行線の日々線上抜け」と「転換線の基準線上抜け」「雲抜け」のいずれかが出揃った「二役好転」で早仕掛けする手もあります。
「新値足」とは?時間軸を無視してトレンド相場に強くなる仕組み
「新値足」とは?時間軸を使わないトレンド重視チャート
新値足は、時間の経過に関わらず、あらかじめ設定した本数分の高値・安値を更新した時だけ新しい足を描画する仕組みです。これによって相場の「ノイズ」を取り除き、純粋な為替レートの勢いだけを可視化できます。
本連載では、今後、一目均衡表のような人気の高い指標だけでなく、あまりなじみがないものの、勝率の高い指標も取り上げて、その使い方を簡単に紹介していきたいと思います。
26種類という豊富なテクニカル指標を自由自在に使いこなせる外為オンラインのブラウザ版チャート。その中で一目均衡表とともに、日本独自の指標として採用されているのが「新値足」です。
一目均衡表は独特な時間の概念を取り入れた指標ですが、反対に為替レートの値動きから時間軸を取り除いたシンプルなチャートが新値足です。新値足の作り方は、以下の通りです(図6)。
図6新値足の描画ルール(新値三本足の場合)
日ごとの終値(ドル/円日足チャート)
| 1日目 | 2日目 | 3日目 | 4日目 | 5日目 |
|---|---|---|---|---|
| 77.50 | 77.00 | 76.80 | 76.85 | 76.50 |
| 6日目 | 7日目 | 8日目 | 9日目 | 10日目 |
|---|---|---|---|---|
| 75.95 | 76.20 | 76.50 | 76.90 | 77.25 |

図6では、2・3・5・6日目に安値を更新したため陰線が描画されています。9・10日目に高値を更新したため陽線が描画されています。
また、ここでは設定本数を3本とした新値三本足を用いており、9日目の終値(76.90)が直近の陰線3本(6〜8日目)の最高値(76.50)を上回ったため、新値足のトレンドが転換(陽転)し、初めて陽線が描画されています。
新値足の描画ルール
- 新値足は、高値を更新すると陽線、安値を更新すると陰線が描画され、終値が設定本数分の直近の足の高値(または安値)を反対方向に更新するとトレンドが転換します。
※一般的には「新値三本足」が用いられ、直近3本分の高値・安値を基準にトレンド転換を判断します。
新値足の陽転・陰転による売買シグナルと、急変時のサイン遅延への注意点
陰線から陽線に変わる「陽転」で買い、陽線から陰線に変わる「陰転」で売りと判断します。トレンドに強い反面、急変時のサインの遅れや「ダマシ」に注意が必要なため、長期トレンドに沿った運用が基本です。
時間軸をまったく気にすることなく、新値足が陽線に転換したら買い、陰線に転換したら売りというトレンド転換だけに注目した指標ですので、相場と四六時中睨めっこしている必要がない点は魅力といえるかもしれません。
ただし、急激な上昇後の急落などの場合、為替レートが直前の陽線3本分を下回るまでに相当時間がかかってしまうため、売買判断がかなり出遅れてしまう危険性が高いのも事実です。
時間軸にとらわれないという意味では中長期投資向きといえますが、08年のリーマン・ショック以降は為替レートの乱高下が続いており、いまひとつフィットしない状態です。どちらかというと、持ち合い相場や乱高下相場よりも、比較的長く一定のトレンドが続く通貨ペアや相場状況に向いた指標といえるでしょう。
図7はポンド/円の日足チャートに新値足を描画したものです。
図7新根足の売買シグナルとダマシ

外為オンラインのチャートツールでは、単純に新値足が描画されるのではなく、実際のチャートの上に上書きする形で描かれているので判断しやすくなっています。このチャートでも、乱高下のあったチャート中央の上昇Aでは途中に大きな急落もあってフィットしていません。急激な上昇後の下落(下落後の上昇)などでは陽転・陰転のサインが遅れがちで乗り遅れたり、強制ロスカットされる可能性があります。陽転・陰転が頻繁に繰り返されるとダマシに終わる可能性も高いです。しかし、前半部分でポンド/円が大きく下落する場面Bでは、新値足の陰転での売買が大成功しています。
そう考えると、あまりレバレッジをかけない少額トレードで、大きなトレンド転換を狙っていく取引に向いた指標といえるでしょう。短期売買の場合は、長期的なトレンドの方向性にシグナルが出た場合のみ、エントリーするような手法が有効です。直近の為替相場では、長期的な下降トレンドが続くユーロ/円やポンド/円などでの売り取引などで使うと、シュアに儲けられる可能性が高そうです。
新値足による売買判断
- 売買シグナル
- 陽転で買い、陰転で売り。トレンド継続時のみに絞り「ダマシ」を回避する。
- 最適相場
- 乱高下を避け、ユーロ/円などの中長期的な「トレンド通貨」で活用する。
- リスク管理
- 急変時のサイン遅延を前提に、損切り幅を広くとった「低レバレッジ」で運用する。
このコンテンツは投資を促すものではありません。実際の投資に関しては、自己責任において行ってくださいますようお願いいたします。





