FX チャート術|成果を挙げるために必要なFXのチャート分析|第16回 ディールスコープ&一目均衡表雲&GMMAetc.|外為オンライン

FXの売買ポジション数がわかるIMMやディールスコープ

国際決済銀行(BIS)が発表する世界の為替取引高は、2010年の調査で1日4兆ドル。たった1日で日本のGDPの約3分の2の巨大マネーがやり取りされているのがFX市場です。
ちなみに、日本の東証1部の売買高は1日1兆円を割り込むことが多く、NY株式市場の年間売買高ですら18兆ドル程度ですから、5日間の為替取引だけで、世界一の株式市場の1年分の取引総額を上回る計算です。

世界中の銀行間(インターバンク)で24時間取引されているからこそ、取引高が膨大なのですが、唯一の欠点といえるのは、決まった時間に決まった取引所で売買されているわけではないので、株式投資における「売買高(出来高)」がわからないことです。

ある時間帯の売買高と為替レートがわかれば、その時間帯にどれぐらいのポジションが生まれたかを推測できます。たとえば、「ドル/円」が1ドル80円で大量に売買されたということは、1ドル80円でドルを買った投資家が大量にいるということ。

彼らからすると、1ドルが80円を割り込むとポジションに損失が発生するので、それを防ぐための買い増しを行う可能性があります。そのため、1ドル80円は「ドル/円」の下落を防ぐ壁となります。
反対に1ドル80円を明確に割り込むと、損失拡大を怖れた彼らの売りで「ドル/円」の下落に拍車がかかる可能性が強くなります。

このように出来高がわかると今後の相場予想に役立つわけです。
むろん、FXにおいても、こうした「投資家の需給動向」を推測する指標は存在します。それはシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の「インターナショナル・マネタリー・マーケット(IMM)」と呼ばれる通貨先物市場です。

IMMでは、毎週金曜日の取引終了後に火曜日時点の投機的な先物取引のポジションを発表しています。たとえば、「ドル/円」では「円の買い越し(円高要因)が10万枚を越えると、利益確定でいったん円安方向に動く」「投機筋が円の売り越し(円安要因)に転じたときは実際の『ドル/円』でも円安の流れが加速しやすい」といった投資家の利益確定や、損切り需要といった「需給」に注目した相場予測ができます。
このIMM通貨先物ポジション以上に役立つのが、外為オンラインの「ディールスコープ」(図1)です。

図1:外為オンラインのディールスコープ

5年連続FX取引高No.1の外為オンラインにおける買いと売りのポジション総額や、人数の推移を指標化したもので、Java版チャートを立ち上げると見ることができます。

FXの個人投資家の最大の特徴は「逆張り」です。実際、ディールスコープを見ると、円高が進むと、安値で外貨を仕込みたいと考える個人投資テクニカル講座家の外貨買いポジションが増え、逆に、円安が進むと、利益確定の売りポジションが増える逆相関の関係が如実に表れています。
この習性を使って、

★ディールスコープの買い優勢がピークアウトしたから買い。
★ディールスコープの売り優勢がピークアウトしたら売り。

という逆張りを好む日本の個人投資家の、さらに裏をかくことが相場で勝つ極意になるのです。「ディールスコープ」と実際の相場には非常に強い逆相関が確認できるので、ぜひ、外為オンラインに口座を開いて使ってほしい指標です。

高値や上値の移動平均線=抵抗帯
安値や下値の平均線=支持帯

ただし、1日320兆円という取引高全体の需給を考えるためには、チャートを見る以外ありません。
その基本となるのが、過去の高値や安値をレジスタンスやサポートと考えるチャート分析法です。
外為オンラインのブラウザ版チャートにも、分析系ツールとして「サポート&レジスタンス」が用意されています(図2)。

図2:サポート&レジスタンス

過去の高値は、そこで高値づかみして損失を抱えた買いの投資家がたくさん残っていて、戻り売りが出やすいレート帯、過去の安値は、そこで売って損している売りの投資家が買い戻しを狙っているレート帯です。すなわち、

  • ★過去の高値は上昇を阻む壁。
  • ★過去の安値は下落を止める土台〇高値を抜けると上昇に弾み。
  • ★安値を抜けると下落の勢い。

という法則が成り立ちます。その法則に照らして「過去の高値=レジスタンス(抵抗帯)、過去の安値=サポート(支持帯)」と考える手法は、チャート分析の基本中の基本といえるでしょう。
また、トレンド系ツールの定番である移動平均線から「投資家の事情」を判断することもできます(図3)。

図3:移動平均線と需給

移動平均線はある一定期間の為替レートの平均値ですが、それはその期間中に売買した投資家の平均的な売買レートと考えられます。つまり、現在値が移動平均線を上回っているということは、その期間中に、その通貨ペアを買った平均的な投資家が儲かっている状態なのです。

相場は「強いものにつく」のが鉄則ですから、買い方が優勢であれば、買いの勢いがさらに強くなります。そうなると、売り方は損失が膨らんで、やむをえず損切りの買い決済注文に走るので、「踏み上げ」「ショート・スクイーズ」と呼ばれる、売り方の買い戻しによる急上昇に繋がります。

つまり、現在値が移動平均線を越えて上昇すると、投資家のフトコロ事情から考えても、買いが買いを呼び、上昇が続く展開になりやすいわけです。
とくに、100日、200日といった長期移動平均線は、短期の投機筋だけでなく、実需筋や長期投資家の平均売買レートを推測する意味で重要です。

  • ★為替レートが100日移動平均線超え=需給好転、上昇が続く。
  • ★100日移動平均線割れ=相場暗転、下落が続く。

という見方が可能なのです。
相場の抵抗帯・支持帯を一目でわかるビジュアルとして見る指標としては、一目均衡表の「雲」がわかりやすいでしょう(図4)。

図4:一目均衡表の雲と需給

過去の投資家のすう勢が立体的にわかる一目の雲やGMMA

一目均衡表は、一定期間の「最高値と最安値の中間値」に注目した指標です。高値と安値の中間値ですから、移動平均線ほど正確ではないにせよ、その期間中の投資家全体のすう勢をとらえています。

一目均衡表の雲は、

  • ★先行スパン1=転換線(過去9日間の高値と安値の中間値)と基準線(過去26日の中間値)のさらに中間値を26日先にずらしたもの。
  • ★先行スパン2=過去52日間の高値と安値の中間値を26日先にずらしたもの。

という2つの線で挟まれた領域で、為替レートの支持帯や抵抗帯として機能します。一目の雲は、比較的短期の中間値と長期の中間値を未来に26日分ずらすことで、過去に頻繁に売買した投資家全体の取引ゾーン、買い方と売り方の攻防が激しかった領域を示しています。

現在値がそのゾーンに近づくと、過去の投資家の利益確定や損切りなどが起こるので、支持帯や抵抗帯として機能すると考えることができるわけです。雲のなかに為替レートが入ると乱高下が起こりやすいのも、買い方と売り方の攻防が激しくなって売買が交錯しやすいからといえるでしょう。

最近、書籍が発売されて注目を浴びているGMMA(複合型移動平均線)もまた、投資家の需給を測る指標として使うことができます(図5)。

図5:GMMA(複合型移動平均線)と需給

GMMAは、期間が30〜60日の指数平滑移動平均線6本の「長期線」、3〜15日の平均線6本の「短期線」、計12本の移動平均線を描画したトレンド系テクニカル指標です。

先ほど見たように、移動平均線は期間中の投資家の平均売買レートと考えることができますから、GMMAの長期線の束は、長期投資を行う投資家がこれまで売買してきた平均的なゾーン、短期線は短期売買を行う投機家が売買してきたゾーンになります。

その2つの束よりも現在値が上にあるか下にあるかを見ることで、長期投資家や短期投機家のフトコロ事情が判断できるわけです。

とくに、長期組の束は為替レートの勢いが加速すると広がり、失速すると収束することで、長期的なトレンドの強さを、まるで一目均衡表の雲のように立体的にとらえることができます。
長期組の束が分厚く広がっている状態は強いトレンドが続いていて、投資家が一方向に向かって勢いづいている証拠。

為替レートがその束を上や下に突破するのは容易ではないと判断できます。
逆に、長期線の束が収縮して1本の線のようになり、短期線とも絡むようになると、投資家全体が方向性に迷って、トレンドレスな状態になっていると判断できます。それは、次に大きなトレンド転換が起こる予兆になるのです。

  • ★GMMA長期組の幅に注目することで投資家の勢いがわかる。
  • ★分厚い束の長期組は強い支持帯・抵抗帯に。
  • ★長期組の幅が狭くなるとトレンド転換しやすい。

といった判断が可能なのです。

投資家心理を先読みするフィボナッチ・リトレースメント

最後に、投資家心理という点に焦点を当てた指標としては、フィボナッチ・リトレースメントも有効です。
為替相場は「儲けたい」「損したくない」という投資家心理によって値動きします。そのため、為替レートが安値から高値まで上昇して、「上がりすぎ」と見た買い方の利益確定や売り方の新規参戦が始まると、かならず調整局面を迎えます。

こうした調整は、ファンダメンタルズというよりも、投資家の不安や期待という心理によって起こるもの。だからこそ、人間の審美眼などに強い影響を与える「黄金比=フィボナッチ数列」が役立つのです。
図6は「ドル/円」の12時間足チャートですが、長らく続いた上昇後、利益確定の調整が起こったものの、フィボナッチ・リトレースメントの23.6%、38.2%ラインで下落がいったん止まっている様子がわかります。

図6:フィボナッチ・リトレースメント

図6の場合、38.2%ラインで下落が止まって再度上昇が続けば、今回の下落は買い方の利益確定によるポジション調整にすぎず、上昇トレンドはまだ続いていると判断できます。
しかし、38.2%ラインを割り込むようだと、上昇から下降へのトレンド転換の可能性もあるので、売りで勝負する選択肢も出てくるでしょう。

チャート分析というのは、「投資家みんなが見ているから当たる」という側面があります。フィボナッチ・リトレースメントは欧米の投資家に信奉者が多く、1日320兆円の取引をしている多くの投資家が意識しているものです。だからこそ当たりやすいという面もあるのでしょう。

今回は、外国為替相場を動かす「投資家の損益事情=需給」から相場予測をする方法を見ていきました。為替相場は、長期的には各国のファンダメンタルズの影響を受けますが、短期になるほど「儲かっているからもっと買う(or売る)」「十分儲かったから利益確定/損失に耐え切れなくなったから損切り」といった投資家事情で動きやすくなります。そのため、投資家の需給を判断する指標がますます効果を発揮するのです。

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